幼馴染の陽乃。   作:うみがめ。

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幼馴染の陽乃は八幡にお弁当を作ってあげる。

「はい、あーん」

 

陽乃はそう言い、箸で卵焼きをつまみ、俺の口に運んでくる。

「いや、自分で食えるから」

「むっ……いいから、あーん」

「自分で、」

「あーん」

 

なかなか引き下がらない陽乃に根負けし俺は渋々と口を開ける。

すると口には卵焼きの甘い味が広がる。

 

「どう?美味しい?」

「うん、美味い」

「良かった」

 

そう言って陽乃は満足したのか自分の分の弁当を美味しいそうに食べ始める。

それをみて、俺も弁当を食べ始める。

うん、さすが長いこと一緒にいるだけあって俺の好きな味付けで美味しい。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

どうしたもんかな。

今、教室はざわついている。

昼。今は昼休みの真っ最中。

普段もこの時間はざわつくけれども、今日はいつもとは違うざわつき方で俺たちの方を興味のある視線を向けてざわついている。

こんな状態になっている元凶はこいつのせいだ。

ニコニコ笑顔で近くの机を動かし、俺の机にくっつけている少女。

雪ノ下陽乃。

俺の唯一の友人で、幼馴染である。

そんな陽乃はクラスのトップカーストを張っている。つまり俺とは真逆の人種って言っていいだろう。そんな少女がニコニコ笑顔で鞄の中からお弁当を2個取り出し、そのうちの1つを俺の前にそっと置く。

うん、周りからの視線が痛い。あれだよ、ぼっちってね人に見られるの慣れてないの。普段から慣れてないのにこんなに見られるのは困るんですよ。少し見られてるだけでテンパってあたふたするからね。それに少し見られただけでなんか変な目で見られてるって思って焦りだすからね?だからぼっちのことは見るな危険だから。

いや、でもこの状況は困った。あっ!確か困った時は笑顔だった!困ったときは笑顔だよ!

そう思い俺も目の前の人のようにニコッと笑顔になる。

「なにその笑顔」

 

しかし、俺の作り笑顔は一蹴されてしまう。

んだよ、カナリアさんよ困った時は笑顔じゃないのかよ。笑顔を作ったけどさらに困っただけだよ。

まぁ、はい。そもそもなんで陽乃は俺に弁当を作ってきてるの?今までに一度もなかったことなのに。

そこを疑問に思った俺は聞いてみることに、

 

「えっと、いきなり弁当作ってくるってどうした?」

 

と、耳元で囁いてみると。

「ん、んんっ。ちょ、耳弱いから」

 

顔を赤く染め、モジモジとする陽乃。

あ、なんかごめんなさい。

今の陽乃の色っぽい声のせいで更に教室中の視線が集中したんだが。

なんかもう、あーしさんが今にも俺に飛びかかってくるぐらガン飛ばしてきてるんですけど。うん、ごめんねあーしさん。陽乃のこと好きだもんね。君のグループから取ったりしないから安心して。

つか、本当になんで弁当を俺に作ってきているの?本当に今まで一度も陽乃がこんなことをしてくれることなんてなかったよ。そもそも学校の中、特にクラス内では話さないってのが俺と陽乃の中での暗黙の了解だったってのに。俺の中では。

 

「それで、雪ノ下さんこの弁当はなんですか?」

 

俺はなるべく親しい関係がバレないようにやんわりと聞いてみると、

 

「雪ノ下さんって?八幡って私のこと陽乃って呼んでなかった?」

 

陽乃は俺のやんわりとした多田野のようなスローボールに対して全盛期の藤川のようなど真ん中の火の玉ストレートを放ってきた。

ちょっ!俺のこと考えて!あーしさんに睨まれっぱなしなんすけど?陽乃さんよ?これ分かっててやってるんだよね?

って陽乃?俯いて体をプルプル震えさせてるけどこの状況を笑ってる?だとしたらなんなんだよ?

この状況をどうするんですか?

そして、俯いて笑うのをやめ今度は顔を赤く染めモジモジとしながら、

 

「それでね、このお弁当は八幡のために私が作ってきたの。結構早起きして作ったから美味しいと思うよ」

 

とさらなる爆弾を落としてきた。

その発言で、クラス内の俺たちのことを聞き耳をたてていた女子は意味ありげに顔を見合わせる。男子はあの陽乃が俺なんかに弁当を作ってきたものだからショックを受けている。あーしさんは席を立ちこちらに向かってくる。

よし、ここは逃げよう。逃げたいときは逃げるものだ。

俺は席を立ち、いつものベストプレイスへと向かう。

 

「あっ、八幡。待って待って」

 

そのあとを陽乃はお弁当を持ち付いてくる。

 

 

 

ーーーーーー

 

「それで?この弁当はなに?」

「んー?だから八幡に作ってきたんだよ?」

 

場所を移動し今はあまり人のこない俺のベストプレイスにやってきた。

あらやだ。あまり人のこないところに連れ込むなんて八幡卑猥。

うん、今はそんなこと関係ないね。

それより今は弁当のことだ。再度陽乃に聞くと。

 

「まぁ、八幡はパンばっかり食べてるからたまにはお弁当もいいと思ってね?……それに雪乃ちゃんもこの前のことで本気だしそうだからね」

 

あぁ、普段は昼はパンだしね。陽乃の優しい気遣いなんだけれども、教室でのことで優しさを感じられない。

あと雪乃が本気出すってなに?なんか怖いんですけども?

 

「まっ、あとは教室で私と八幡が仲良いことが分かれば八幡が今度から私に気遣わなくて済むでしょ?」

 

と陽乃はニコッとしながら言う。

あー、前に言ったことを気にしてたのか。でもね、今度からは話しかけるどころじゃなくて教室に居づらくなってるよ?

トップカーストの陽乃と俺のような奴があんなカップルみたいなやりとりしたら、ね?

 

「それに、今日ので八幡が教室に居づらくなったから今度からは教室にあまりいないでしょ?ほら私と八幡との時間が増える」

 

と、陽乃は笑顔で言い切る。

その言葉だとこれからは俺と一緒にいるってことに聞こえるのですか?そんなことをしたら俺、あーしさんに絞められるよ?

「まぁ、教室でのことはごめんね」

 

と陽乃はぺろっと舌を出しながら可愛く謝る。

はぁ、そんな謝り方された許すしかないだろ。

 

「それはもういいよ」

「うん、八幡ならそう言ってくれると思った」

 

あまり悪怯れなく陽乃はけろっとしている。

さっきのごめんねはなんだったんだよ。はぁ。

 

「それじゃあ、お弁当たべよ。早くしないと昼休み終わっちゃうよ」

「だな」

 

陽乃は手拭いで包まれている弁当の一つを俺に渡すことなく、二つ開ける。

……あれー?一つ俺のじゃないの?

そう思っていると、陽乃は卵焼きを一つ、つまみ俺に向かって「あーん」って言いながら差し出してくる。

 

「いや、自分で食えるから」

「いいから、いいから。ほらあーん」

「人来るかもよ?」

「そん時はそん時だよ」

 

一歩も引かない陽乃に俺は根負けし、渋々陽乃に食べさせてもらう。

「美味しい?」

「うまい」

「良かった良かった」

 

そう言い、一回だけあーんして満足したのか陽乃は弁当一つを俺に渡し、自分の分の弁当を食べ始める。

俺は手を合わしていただきますをして食べ始める。

うん、美味い。さすがなんでもできる自慢の幼馴染。

俺は陽乃の弁当の美味しさに舌鼓をうちながら弁当を食べ進む。

 

「ゲホッ、ゲホッ。へ、変なとこに入った」

 

しかし食べ急いだのか、俺はむせてしまった。

 

「もう、食べ急ぐからだよ」

 

やべ、水。って教室から逃げるようにここにきたから買うのわすれてたか。

すると、陽乃が「しょうがないなぁ」と言いながらもペットボトルのお茶を差し出してくれる。

 

「ほらこれ飲んで」

 

俺はありがたく受け取り、お茶を飲む。

ふぅ。あー。

「ありがと」

 

お礼をして、お茶を陽乃に返す。

けれども陽乃はお茶を両手で受け取ったまま口をつけるところを見ながら顔を赤くして止まっている。

 

「どうした?」

「あっ、いや。関節キスだなーって」

 

その一言で俺も今の状況を振り返る。

あ……。いや、でも昔は特に気にせずしてたし。……小学生時代は。

そこから、俺と陽乃は気まずくなり、チャイムが鳴るまで特に会話をすることなくお弁当を食べていた。

そして、チャイムが鳴り教室に向かって2人並んで歩き始める。

う、さっきの間接キスのせいで気まづい。なんで最近こんなに陽乃のことを意識しなくちゃいけないんだよ。年か?お年頃なのか?

そんなことを思いつつもこの空気を脱却するために。

 

「あっと、お弁当ありがとな」

「うん、お粗末様です。それで明日からも作ってあげようか?」

「大変だろ?」

「平気だよ、いつも私の分作ってたから2つになろうがあまり変わらないよ」

「なら、頼もうかな」

「うん、明日からも今日の場所で二人で食べようね」

「はいよ」

「それで、今日のお弁当は小町ちゃんの料理とどっちが美味しい?」

「小町」

「むっ、そこは流れ的に私の方が美味しいって言うところだよ。さすがシスコン」

「はいはい」

「……まずは小町ちゃんの料理に勝たないとなぁ」

 

そんな風に俺と陽乃はいつもの普段通りのやりとりをしながら、教室に入っていくのであった。

――しかし、ここは学校なので俺と陽乃が仲良く話しながら教室に入って行くものだから教室中から意味深な目で見られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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