死ねない女の奉仕(笑)物語   作:エステバリス

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完全なる解説回ですゆえ、にんにん。




にこめ やれよ解説

 

 

「━━━夢、か」

 

目を覚ました俺は思わずそう呟いた。今から数年前、ドライグと出会って、彼女にこの道に引きずり込まれる理由になったあの日の夢を見た。

 

『起きたか相棒、ミルフィーユに言い渡された特訓の為の起床時間はもう過ぎているぞ』

 

「マジか……やっべぇ。ミルねぇに知られたらどうなるか解ったもんじゃないな」

 

『まぁその時はその時だ。ヤツは気分屋だからな』

 

ドライグの声を聞きながら寝間着からジャージに着替える。ミルねぇに改造された自室に備え付けてある洗面台で歯磨き、顔洗いと一通り済ませて下に降り、パンが三枚入った袋を持って一枚咥えながら家を出る。

 

「ドライグ、今日何曜日だっけ」

 

『金曜日だな。発展能力強化指南だ』

 

「うげ、よりにもよってそれかよ……」

 

準備運動を済ませ、溜め息混じりに走り始める。他に考える事もないので、俺は適当にミルねぇに色々教えられた日を思い出す事にした。

 

◆◇◆

 

『ヤツの名は甘毒の龍妃(トリーズン・ドラゴン)セアダス。記録に存在する事のできない、智謀の龍』

 

「その通りですドライグ! ワタシ、いえ私こそがアナタの天敵にして抑止力、三大勢力の不倶戴天の敵! お菓子好きの綺麗な鉄ヲタお姉さんミルフィーユとは仮の姿、私の真の名はアナタの言う通り、甘毒の」

 

『長い』

 

「いけずぅ」

 

まぁ実際ワタシも長すぎると思いましたけどね。私の本能がアナタと出会えた事が嬉しすぎたのです。許してください。

 

「とはいえドライグ、私の素性をこの子達に語ったとしてもワタシはドラゴンはおろか、三大勢力についてすら語った事はありませんよ? いきなりその話をするのは早計ではないのでしょうか」

 

『む、そうなのか……』

 

完全にイッセーくんとイリナくんをおいてけぼりにしてドライグとお喋り。私をよく知る人達の中でもドライグは私が天敵という事もあり比較的対等に扱ってくれるから大好きです。

 

「お姉ちゃん……意味がわかんないよ」

 

「いや、あっはっは。ごめんごめん二人とも、今からしっかり説明するからね。……事実だから笑ってもいいけど、しっかり受け入れるよーに」

 

「「はーい」」

 

よろしい。幼子は正直だからおねーさん大好きです。

 

「では……こほん、まず二人とも。天使、悪魔、堕天使って知ってます?」

 

「知ってるよ、パパがきょーかい? のせんしさんなんだよ!」

 

おおう、マジですかイリナくん、ワタシ初耳ですよそれ。一方イッセーくんはいい人とわるい人! というような印象しかないようで、説明のし甲斐があるというもの。

 

「なるほどなるほど。では説明しましょう。イリナくんも復習がてら聞いてくださいね、いいですかイッセーくん」

 

二人のはーい、という返事を聞いておねーさん悶え死にそうです。ピュア最高、できれば二人ともずっとこのままでいてもらいたいものです。

 

「ではまずイッセーくん。天使とか悪魔とかはゲームの中の存在だと思っているでしょうけど……マジでいますよ、悪魔とか」

 

「え? そうなの?」

 

「ええいます。私やドライグはその天使や悪魔の大敵、ドラゴンです! あのカッコいい龍ですよー」

 

「お姉ちゃんが? ぜんぜん見えないけど……」

 

「いいんですぅー、ワタシは諸事情で今はニンゲンだからしょーがないんですぅー」

 

まぁ確かに、籠手に成り下がったドライグとニンゲンに成り下がったワタシではドラゴンらしさなど粉微塵もないのは事実です。うん、説得力ない。

 

「そうですね……じゃあ、ドラゴンとまではいかなくともワタシが普通の美人おねーさんじゃない証拠を見せちゃいましょう。そこの不思議なポッケで解決してくれそうな土管を御照覧あれ」

 

ワタシが指指した方向に二人は注目する。ワタシ自身もその土管に目を向けて左指を弾く。すると━━━

 

「え?」

 

どちらが声を挙げたかはワタシにはわからない。イッセーくんかもしれないし、イリナくんかもしれない。あるいは両方?

 

これを使うとアンチクショウの呪いのせいで耳がおかしくなる。声の混濁━━━声が意思を伝える信号から単語の羅列に変化する、と難しく言えるだろう。

 

ともかく、これで二人はワタシを少なくとも普通のニンゲンではないと理解しただろう。先程まで注目の的であった土管は見る影もなく粉々になっていた。

 

「ワタシのいくつかあるうちの一つ。圧壊……これが一番直接的だから使ってみたけど、どうです?」

 

「すごいすごい!」

 

「俺もやってみたいな! お姉ちゃんみたいになれればできる!?」

 

「いやはは、それは素質次第ですよ。ワタシだって好きでこんなことできるわけじゃないんですからね」

 

いやー参ったなー! 小さい子に慕われるってすごくいい気分だなー! 楽しいわーもっとイロイロ教えてあげたいなー!

 

「ま、それはそれとして。イッセーくんのその籠手に眠った龍、ドライグの力は冗談抜きで凄い。ワタシのなんかよりも何十倍もの力が秘められているんだ」

 

しかしワタシは一転して真剣な風貌になる。お父さんが教会関係者とあればイリナくんにも選択の猶予は回ってくるだろうが、イッセーくんはドライグを宿した以上否が応でもこっちの世界に来てしまう事になる。

 

ワタシはドライグが大好きだし、ワタシを慕ってくれているこの子達も大好きだ。だからいつになく真剣な表情で二人に話し掛ける。

 

「それにドラゴンは不思議な事に『力』を集める傾向がある。それは本人の意思に関わらないけど、私もかつてその力を使ってイロイロやったからね、あるのは確実だ。つまりイッセーくん、キミはこの先必ず力を持たないといけない」

 

だからワタシはキミが死なないようにキミを育てようと思う、とも付け足す。

 

「イッセーくん、どうだい? キミはいつか強くならなきゃいけない。それが今日とも明日とも、何年後とも限らない。だったらその日がいつ来ても笑い飛ばせるように━━━強くなってみないかい?」

 

煽るような口調。小さな子供には自主性を重んじさせる事が大事だ。それが好きなこととか、やらねばならない事であってもそうやって自分から取り組まないと飽きてしまう。あとそんな鬼みたいな事を出会って一ヶ月の女性に強要されたという事実について数年後詰め寄られると強く出れないし。

 

イッセーくんは小さく、でも確かに力強く頷いた。うんうん、若い子はこうじゃないとね!

 

「イリナくんはどうするんだい? キミが望むのならおねーさん、特別に特訓してあげるよー?」

 

「やる! イッセーよりずっと強くなる!」

 

「いい返事。それじゃあまずは夕日に向かって、ゴーwestゴー!」

 

『……コイツ、明らかにドラゴンだった頃より人生楽しんでるよな……』

 

 






やりましたよ解説(サブタイにセルフツッコミ)

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