私、高森明菜の通っている大洗学園は、元々女子高だったが生徒数が著しく少なくなったため、共学になった。私が入学する今年から。
小中とあまり男子生徒とのかかわりなんてなかったため、思うことはさほどないのだけれど、問題は女子の数よりも男子の数のほうが多いという噂が立っていることだ。
どうしてかはわからない。けど、そこはかとなくいい学校生活が送れそうにない気がする。
これが、杞憂だったらいいんだけど……。
そんなことを入学前に思っていた私だけど、いざ始まってみれば普通に進んでゆくだった。
私は、戦車道を選択したのはいいが、同じ学年で選択した人が多くて選手になることはなかった。入学するときは、先輩たちの人数が少ないからうまくいけば、と思っていたけど同じ学年で経験者、しかも全国まで行ったことのある人たちばかりで当然その人たち中心に選手となっていった。そんな中に初心者同然の私が割って入っていけるわけもない。
関東にあるから、入試の内容が楽そうだったから。そういう理由で選んで、はっきりいって後悔した。
想像以上に勉強はだるいし、戦車道も満足にやれない。最近の楽しみなんて、なぜか戦車道のマネージャーをやることになった男子生徒、佐藤拓海とのlineである。
始めは、戦車道に関する話しかしていなかったけど、ふとしたきっかけでそれ以外のことも話すようになった。勉強が大変だとか、最近会ったニュースとか、いわゆる世間話を2時間したりしたこともあった。とはいっても、直接会って話すことはしていない。どうにも気恥ずかしいし、お互いクラスが違うために接点が全くと言っていいほどないのだ。
廊下とかで彼を見かけることはある。でも、声をかけようとは思わない。友達と話している彼に声をかけたらきちんと返してくれるのだろうかとか、私と話すことが嫌じゃないのだろうかとか、いろいろ思うところがあるせいで行動に起こそうという考えすら浮かばない。
時は、放課後の練習。
「よし、今日も無事に終わってくれた」
監督から片付けろという指示が入ったとき、私はぼそっとそうつぶやいた。
控えの選手というのも楽なもので、練習を見ているだけで練習が終わる。特に、大会に出場するメンバーも発表され、追い込みの時期に入った今は特にそうだ。
「あ~。疲れたわ~」
気怠そうな声を出しながら、適当に片づけをしている風を装い大会メンバーが戻ってくるのを待つ。
私以外にも何人かメンバー外の選手は、みんなそんな感じでだらけている。もちろん、監督や大会メンバーが見ていない時だけ。
「いっそ、ばれてしまえばいいのに」
半ば笑いながら、呆れたようにそういう佐藤は、ノートに何やら書き込んでいた手を休め、うんと体を伸ばす。
「あんただってやることなんて、作戦内容とかをメモしていくだけでしょ? どうせ適当に描いたってばれやしないじゃん」
同じメンバー外の生徒が佐藤に歩み寄り、ノートの内容を除きながらそう言った。
「ばれた時が大変だから手は抜けないって。それに、監督は普段は優しいくせに怒るときはすごいんだよ。ねちっこくて」
「なに? 怒られたことあんの?」急に顔がにやけだす女生徒。
「ちょっと、あってね」
「なになに? 教えてよ」
「やだよ」
それから他愛もない話を集合がかかるまで続けていた。その様子を私はチラチラと横目で見てしまっていたが、佐藤にも相手の女生徒にも気付かれなかったようで、ほっとした。
家に帰りついて夕食もお風呂も済ませ、ベッドでゴロンと横になっていると、携帯からlineの通知音が流れてくる。
大方の予想はついている。どうせ、佐藤だ。
携帯を起動させ、ラインを開く。
「隊長の連絡先って持ってる?」
「え? なんで持ってないの?」
「連絡事項があるんだけど、既読すらつかなくて。アカウント変わったのかなって」
「無視されてるだけじゃないの?(笑)」
「それが本当だったら辛いわー(´;ω;`)」
「じゃあ、私から言っておこうか?」
「助かります!」
「感謝してよね」
「します! します! んで、内容なんだけど、抽選会の日程がずれそうだから、また確認してほしいって監督が。日程表もあるから一緒に送ってほしい」
「はいよー」
「お願いします<m(__)m>」との書き込みとともに、一枚の画像が送信されてくる。
「じゃあ、送っておくね」と私がそう返したところで、会話は一時中断された。
その後すぐに、隊長に伝言内容と画像を送信しただけで、既読が付いたかどうかは確認しなかった。
携帯をしまおうとしたとき、佐藤から再び連絡が入る。
「そういえば、今日髪型変えてたね。いつも同じなのに、違ってたからびっくりしたよ」
「よくわかったね(笑)」
「たまたまだよ(笑) 大会メンバーの申す込みの締め切りが今週末らしいんだけどさ、あのメンバーで大丈夫だと思う?」
「大丈夫なんじゃない? 先輩が考えたメンバーなんだから、文句は言えないよ」
「そうはいってもさ」
「選ばれた人はみんなうまい人たちなんだし、勝ってくれることを願うだけだって。勝ってくれないと私の内申に響くしね(笑)」
「それが理由なの?」
「だって、試合暇じゃん?(笑)」
「ひどいな(笑)」
「まあ、問題があったとしてもさ、みんなうまいことはわかりきってるんだから大丈夫だよ。マネージャーもどきのあんたが信用しないでどうすんのさ」
「そう、かな」
「そうだよ」と私が言ったところで既読が付かなくなり、しばらく待ってもつくような感じがしなかったため、そのまま就寝した。
朝、寝坊して慌てて学校に向かったせいで、佐藤から言葉が送られていたことに放課後まで気が付かないでいた。
「ごめん。やっぱり、俺は君が選ばれてないのはおかしいと思う。だから、頑張ってみる」
その言葉を見たのは、家に帰りついて部屋に荷物を置いた後だった。
だから、練習中顔を見なかったのか。それに、終わるときにはなんか落ち込んでたし。
さて、ねぎらいの一つでもしてやるべきか……。
「なんのことかわかんないけど、お疲れさま」
そう送ってみたものの、既読が付くことはなかった。
久々に書いてみました。
リハビリ程度のつもりです。
あと、2500程度で済ませるつもりが、どんどん伸びてきたので一旦切ってます。