私が学生生活を終えてから一体何年の時が過ぎただろう。同窓会に集まってきたのは、手がしおれはじめ体系も化粧もすっかり変わってしまった連中だけが集まっている。人によっては子供がいるからと参加していないらしいが、大人になって何年もたったのにもかかわらずこうして大勢で集まれることは喜ばしいことなのだろう。
「でさ~、あの時のーーってさ。---だったよね」
そんな話声が聞こえてくるが、私だけが誰のことを言っているか理解できなかった。
誰? 戦車道を選択した男がいる? 誰? 誰の事?
……ああ。あいつのことか。そう、あいつだ。名前は……たしか……。出てこない……。
そういえば、ここに集まっているのは誰たちなのだろう。誰? 名前は? 私のことは覚えているの? 私とどんな話をしたの?
私は? 私は、どうして何も思い出せないのだろう?
頭の中をぐるぐるとかき回すような気職の悪い感触がひしめいたとき、ふと私は現実へと引き戻される。
私はどうやら、大量の汗をかきながら悪夢を見ていたようだった。基本寝相の言い渡しには珍しく、着ている服も髪もシーツも掛布団も乱れ切っていた。
「あ~。もう……」
勢いよく目覚めてしまったせいで、眠気もなくそのまま私はベッドをもとのきれいな状態に戻し、いつも通りの朝を迎えた。
学校へ着くと、奇妙なものを見るような視線が私に向けられる。どうしたのかと考えてしまったが、思い当たる節は一つだけだった。
面倒だな。そう感じていた私に、戦車道を共にしている同級生が声をかけてくる。どうして私が隊長になったのか、の質問を先頭にして複数の質問を投げかけてくるがその答えを知りたいのは私の方だとそう言うしかなかった。
一度やめた場所に戻ることほど、戻りにくいことはないなとこの時ばかりはそう感じた。
放課後にたどり着くまでの時間、私には顔も知らない人達が私によく質問を飛ばしてきた。それに対応しているだけで、相当体力を消耗する羽目になり、重い足を引きずりながら、誰よりも早くに戦車を格納している倉庫へと逃げ込んだ。
人が私一人しかいないため、とても静かだ。私が歩くたびに足音を反響させ、その音が思ったよりも心地いい。
並べて止められている戦車たちを見つめながら、またこいつらに乗るのかとそんなことを考えながら近くにあったベンチに腰掛ける。
嗅ぎなれた異臭もまた、私の楽しかった時間をよみがえらせる。
「忘れない思い出にしないとね。せっかくの高校生活を」
夢のことをふと思い出した私は、柄にもなくそんなことをつぶやいた。