俺が大猿化し、指名手配されてから数日後、ようやくキャベツ狩りの報酬が支払われることになった。
冒険者によっては報酬を分割したり、自分の取り分は自分のモノ、とする者も居た。
俺たちはアクアの提案により後者となった。
報酬を受け取り贅沢する者や、装備を新調するもの、貯蓄する者など様々な用途が見受けられた。
俺達も、めぐみんが杖にマナタイトを仕込んだり、ダクネスが鎧を修理ついでに改造したりと、満足しているようである。
「なぁヒデオ、カズマ。鎧を改造してみたのだが、どうだろう?」
「いいんじゃないか?どうでも」
「…」
「私だって素直に褒めて欲しい時だってあるんだが…。ヒデオに至っては食事に夢中で聞いてすらいないし…。こんな時でもお前達は容赦ないな…」
カズマと俺の対応にダクネスが少しへこんだ様子を見せる。
飯食ってるから仕方ないね。
「そんなことよりそこに居るお前を越えそうな変態をどうにかして欲しいんだが」
そう言い、カズマはダクネスの後方にいるめぐみんに視線を向ける。
「この色艶…!ハァッ…!」
めぐみんは先程からずっとこの調子で新調した杖に体を擦り付けている。ドン引き。
そんなやり取りをしていると、受付の方から叫び声の様なものが聞こえてきた。
「ちょっといったいどういう事よ!!なんであんなに捕まえたのに報酬がこんなに少ないのよ!!この10倍は下らないはずでしょ!?」
アクアが大声を上げながら受付嬢の肩を掴み揺らしていた。どうやら報酬に不満があるようだ。すると受付嬢が。
「あ、アクア様の持って来たものは、殆どがレタスでして…」
「なんでキャベツの軍団にレタスが混じってんのよー!!」
「そ、そう言われましても…」
アクアは抗議を続けるが、やがて諦めてカズマらの所に戻ってきて、カズマに詰め寄る。
「カーズーマーさんっ。今回の報酬は、お幾ら万円?」
「100万ちょい。当然の事だが分けないからな。そもそも今回の報酬は各々で、って言ったのお前じゃねーか」
カズマが見越していたかのようにアクアが言おうとしたことを潰す。するとアクアは喚き出し、カズマにすがり付く。
「うわぁぁん!だって、私だけ大儲け出来ると思ったんだもん!それに私、今回の報酬が相当なものになるって踏んで、この酒場に10万くらいツケてるのよ!ツケ返す分だけでいいからー!ヒデオでもカズマでもどっちでもいいからぁ!お願いぃぃ!」
女神とは思えないほど情けない姿を晒しだした。
はぁ…。
「しゃーねーな。おいカズマ。俺こいつにツケの半分貸すからお前ももう半分貸してやれよ。貸してくれるまで止めねぇぞこいつ」
「ハァ…。半分くらいならいいか。この金で拠点を手に入れたかったんだが…」
「ありがとう二人とも!」
お金を受け取るとそう言い、アクアは酒場にツケを返しに行った。
幸運が最低レベルだとこんなことが起きるのね。なるほど。
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報酬を受け取り一悶着あって少し後、俺とヒデオは他の冒険者からの情報収集に勤しんでいた。
「知ってるか?魔王軍の幹部がこの街の近くの古い城に住み着き始めたらしいぜ」
「物騒な話だな。まぁ俺らにはあんまり縁のない話だけど」
「むしろ縁があってたまるかって話だよな」
「ははっ。違ぇねぇ」
情報をくれた男に礼を言い席を立つ。
ヒデオはさっきの男の知り合いに、『徒手空拳』というスキルのデモンストレーションを見せてもらいに行った。どうやら武器を使わない体術を使えるようになるスキルらしい。
アクア達がいる席に戻ると、3人が俺をじっと見ていた。
「なんだよ。俺の顔になにかついてるか?」
「別にー?カズマとヒデオがどっかのパーティーに行っちゃうかもなんて考えてないしー」
そう言いつつアクアはチラチラと俺の方へ視線を送る。
何言ってんだこいつ。
「…?情報収集というか、世間話してただけなんだが?」
頭の中には疑問符が浮かびまくっていた。
「楽しそうでしたね。カズマ。ほかのパーティーのメンバーと、随分親しげでしたね?」
「何だこの新感覚は…。これが寝取られというやつか?」
「だから何言ってんだよお前ら。こういう所での情報収集とかは基本だろ?」
なんで拗ねるんだ???
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「戻ったぞー」
ヒデオがスキルを見せてもらい戻ってきた。ついでに『両手剣』スキルも見せてもらったらしい。
「おかえり。なぁダクネス。毎度言うが、『両手剣』スキルとか覚えて、命中率をあげようとは思わないのか?」
「思わんな。私は言ってはなんだが、体力と筋力はある。そんな私が『両手剣』スキルを覚えてしまっては、簡単に敵が倒せてしまうではないか。かといって、わざと攻撃を外すのは違う。必死で攻撃するも当たらず蹂躙されるというのが気持ちいい」
「もういい。お前に期待した俺が馬鹿だった。ちょっと黙ってろ」
「くっ…!自分から聞いておいてこの仕打ち…!流石だ…!」
見悶えているダクネスを放置し、ヒデオに向き直る。
「ヒデオ。お前のスキル、どんな感じなんだ?」
「さっき覚えたのが『徒手空拳』と『両手剣』。んで最初に覚えた『気功術』だな」
ちなみに現在の気功術のレベルは4。気の感知が使えるレベルらしい。
「おっ、ついに格闘系スキルを覚えたのか。これでやっとまともな前衛が…」
カ攻撃のできる前衛がパーティーに増えた事に若干感動していると、ダクネスが。
「何?私はまともな前衛ではないと?そう言っているのかカズマ」
「はっはっは。ダクネス。何を言うかと思えば…。そんなの当たり前じゃないか!」
「なっ…!」
ダクネスがぎゃあぎゃあと喚き、俺に掴みかかってきた。
力強い!
そんな俺達を放置し、ヒデオはめぐみんとアクアに。
「なぁ、今日はどうすんだ?クエスト行くのか?」
「私は行きたいわ!お金が無いもの!報酬がいいヤツにしましょう!」
「クエストに行くなら、たくさんの雑魚モンスターがいる奴がいいです」
「いや、屈強なモンスターがいるヤツにしよう」
俺に掴みかかりながらも意見を言うダクネス。この意見のバラバラさにヒデオは少々呆れた様子を見せる。
「まとまりねぇな…」
そう呟き、諦めたように目を背けるヒデオ。
うん。気持ちはわかる。
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クエストを受けようと掲示板前に来ているが、問題が起きた。
「なんで高難易度のクエストしかないんだ?」
そう。何故かお手頃なクエストがなく、高難易度のものしか無かったのだ。
受付嬢に聞いてみると、どうやらこの近くにやってきた魔王軍の幹部のせいで、付近の雑魚モンスターが居なくなったそうだ。
「こればっかりは仕方ないな。王都から強い人達が派遣されてくるまでクエストは我慢だな。まぁ金がないならバイトでもしろよアクア」
「うわぁぁぁん!なんでよぉぉぉ!!」
ギルドに、アクアの断末魔が響き渡る。
可哀想。
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ヒデオは修行をしに山へ、ダクネスは筋トレをしに実家へ帰り、アクアは金が無いのでバイトを始めた。俺はと言うと、特にすることも無いのでめぐみんの1日一爆裂に付き合っていた。
街の外れに廃城を見つけた俺達は、どうせ壊す予定だろうと、そこに爆裂魔法を撃ち込むことにした。
毎日欠かさずに廃城へ訪れた。
爆裂魔法を隣で見続けた俺は、その日の爆裂魔法の出来が分かるようになっていた。
「ナイス爆裂!」
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爆裂魔法を廃城へ撃ち込むことを習慣にして一週間が経ち、さて今日もレッツ爆裂と意気込んでいた所、キャベツ狩りの時のように緊急の呼び出しが入った。
「今度はなんだ?また野菜が飛んでくるのか?」
「まぁなんにせよ大した事ではないだろ」
正門へ向かいながらヒデオとそんな会話をする。キャベツ狩りの前例があるので、対して緊張感が無い。
正門に着くとそこには。
デュラハンが居た。冒険者がくると、左脇に抱えていた己の頭を目の前に差し出す。頭から、くぐもった声が聞こえる。
「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが…」
その言葉に、さっきまで騒いでいた冒険者達が皆沈黙する。
やがて、デュラハンの頭がプルプルと震えだし…
「まままま、毎日毎日毎日毎日っ!俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿は、誰だァァァァぁぁっ!」
魔王軍の幹部であるデュラハンは、誰が見てもわかる怒りっぷりであった。
怖っ。
△▼△▼△▼△▼△▼
冒険者達が呼び出されたのはデュラハンが原因のようだ。
「…爆裂魔法?」
「爆裂魔法って言ったら…」
皆口々にそう言い、自然とめぐみんの方へ視線が集まる。
視線を寄せられためぐみんは、さも自分ではないかのように隣にいた魔法使いの女の子へ視線を向ける。すると他の冒険者の視線もその子へ向かう。
こいつぅ!
「えっ!?何であたしをみるのっ!?あたし、爆裂魔法なんて使えないよっ!」
女の子が慌てて否定する中、俺とめぐみんは冷や汗をかいていた。
廃城って、毎日ボンボン爆裂魔法撃ってたあれだよな…。
「ふぅ…」
めぐみんがため息をつき、心底嫌そうな顔で前へ出る。冒険者達も自然と道を開ける。
そのめぐみんに、俺、アクア、ダクネス、ヒデオも付いていく。
前に出てきためぐみんを見ると、デュラハンはまた震えだした。
「お、お前が…!お前が毎日毎日俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿者か!俺が魔王軍幹部と知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城へ攻めて来るがいい!ねぇ、何でこんな陰湿な嫌がらせするの!?どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば、調子に乗って1日に2度も毎日欠かさずポンポンポンポン!頭おかしいんじゃないのか貴様!」
デュラハンにめぐみんが名乗ったりしている中、ふとデュラハンの言葉に疑問を持った。
「ん?2度?」
めぐみんは一日に一発しか撃てないはずだし、それはおかしい。
そう考えていると、視界の端でヒデオがそろーっと逃げようとしているのが見えた。
「おい。お前なんか知ってるだろ」
逃げようとしたヒデオの肩を捕まえ、問いただす。
「い、いや…その…。はぁ。あいつ、1日に2度って言ったろ?その内の1回は、俺のかめはめ波なんだ。修行ついでにダッシュしたりしてたら、いい感じの城があって、なんか既にちょっと壊れてたから良いかなーって」
この男、なんとめぐみんに罪を擦り付けようとしたのだ。見事なまでのクズである。
「お前もいってこい!」
ヒデオを突き飛ばし、めぐみんの隣へ立たせる。
「なんだ貴様は。まさか貴様も爆裂魔法を撃ち込んできた1人か?」
「俺のは爆裂魔法じゃない。かめはめ波だ」
「カメハメハ?何言ってんだお前。頭大丈夫か?」
「おい。喧嘩売ってんなら買うぞ。サイヤ人はそういう種族だ」
「先ほどの私への発言と言い、デュラハンは人の頭をどうこう言えるほどまともな頭をしていないと思うのですが。取れてますし」
2人の返答に、デュラハンは再びプルプルと震えだした。
「ま、まぁなんにせよ、これからは爆裂魔法とカメハメハとやらは使うな。いいな?」
「それは、私に死ねと言っているのですか?紅魔族は日に一度爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」
「サイヤ人も日に一度かめはめ波を撃たないとなんやかんやで死ぬ」
「お、おい!適当な嘘をつくな!」
2人がデュラハンとこんなやり取りをする中、俺達はこのやり取りを楽しそうに眺めていた。なんか面白いなこいつら
「どうあってもあの迷惑行為を止めるつもりが無いと言うなら、俺にも考えがある…!」
「迷惑なのは私達の方です!あなたが来たせいで、仕事もろくに出来ないんですよ!余裕ぶってられるのも今のうちです。この街にはアンデットのスペシャリストがいるのですから!先生!お願いします!」
そう言い、めぐみんはアクアに丸投げした。
「しょうがないわねー!ノコノコと昼間に一人でやってくるなんて、浄化してくださいって言ってるようなもんだわ!覚悟はいいかしら!」
先生と呼ばれたアクアは、満更でも無さそうな顔でデュラハンの前に出る。
するとデュラハンはアクアをじっと見る。
「ほう。これはこれは。アークプリーストか?仮にも俺は魔王軍の幹部。アークプリースト対策は出来ている。どれ、ここは1つそこの2人を苦しませてやろう!」
デュラハンはそう言い、ヒデオとめぐみんの方へ人差し指を突き出し、叫ぶ。
まずい!このパターンは!
「汝らに死の宣告を!貴様らは1週間後に死ぬだろう!!」
デュラハンが呪いをかけるのと同時に、今まで空気だったダクネスがめぐみんを自分の後ろを隠す。ヒデオは呪いをかけられる寸前で身をかわした。すげぇなこいつ。
「あぶねっ」
「ダ、ダクネス!」
めぐみんがそう叫ぶ中、ダクネスの身体が一瞬黒く光る。
「ダクネス!大丈夫か!?」
ダクネスに駆け寄り、異常がないか聞く。
ダクネスは体を確かめるように動かすと。
「…ふむ。なんともないのだが」
ダクネスが平気そうな顔をしていると、デュラハンが。
「その呪いは今はなんともない。サイヤ人とやらは避けたようだが、当たったそのクルセイダーは一週間後に死ぬ。クハハ!そのクルセイダーはお前達のせいで死ぬのだ!せいぜい後悔するがいい!」
デュラハンの言葉にめぐみんが青ざめ、ヒデオが今にも突っ込んでいきそうな中、ダクネスが叫ぶ。
「な、なんて事だ!つまり貴様は、呪いを解いて欲しくば俺のいうことを聞けと、そういう事なのだな!!」
「へ?」
デュラハンはダクネスの言葉を理解出来ず、素で返した。
「なぁカズマ。俺あいつが何言ってるか理解したくないんだが」
「奇遇だな。俺もだ」
ヒデオと俺がそんな事を言う中、ダクネスは再び叫ぶ。
「くっ…!この程度で屈しはしないが…!あのデュラハンの目を見ろ!アレは、呪いを解いて欲しくば言うことを聞けと言わんばかりの変質者の目だ!どうしようカズマ!」
「…えっ」
「この私の体は好きに出来ても、心までは好きに出来ると思うなよ!あぁカズマ、行きたくはないが、行ってくりゅ!」
ダクネスがそう言い残しデュラハンの方へ駆けていく。それをヒデオと共に必死に止める。
「やめろ!デュラハンの人が困ってるだろ!」
「アイツはムカつくがそれは流石に気の毒だ!やめてやれ!」
「止めてくれるな!二人とも!」
「きちぃ…。ま、まぁなんにせよ、そこの2人!クルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るんだな!俺のところに来ることが出来たら、呪いを解いてやろう!だが、貴様らにたどり着くことが出来るかな?クハハ!待っているぞ!」
そう言い残し、デュラハンは城へと去っていった。
△▼△▼△▼△▼△▼
デュラハンが去った少し後、ヒデオとめぐみんが街の外へ行こうとする。
「おい。どこへ行く気だ。何する気だ」
二人を呼び止める。
「今からちょっとあのデュラハンにかめはめ波食らわせてくる」
「私も、爆裂魔法を撃ち込んで、ダクネスの呪いを解かせてきます」
「俺も行く。ヒデオはともかく、俺もお前に毎回ついて行って幹部の城って気付かなかったマヌケだしな」
そう言い、3人で作戦を立て始める。
「おいダクネス!絶対に呪いを解かせてやるから、安心し…」
「『セイクリッド・ブレイクスペル』!!」
ヒデオがそう言い終える前に、アクアがダクネスに魔法をかけた。すると、ダクネスの体が淡く光る。
「私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!どう?どう?私だって偶には役に立つでしょ?」
「「「えっ」」」
やる気満々だった3俺達は、やる気を返せとばかりにアクアを睨んだ。
6千字きたー。感想とか投票とかして欲しいなぁァァ!