この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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視点を変えたものはオリジナルと呼ぶべきか否か。


思ったより吉良の同僚ネタが通じなくて泣きました。まる


第十八話

 

ダストとの一件から数日。

 

 

俺達は、アクセルの近くにあるダンジョンに来ていた。通称「キールのダンジョン」と呼ばれているそこは、初めてダンジョンに挑むのに丁度いい難易度らしい。

 

 

なので、俺は今後のダンジョン探索の実験がてら、アンデッドを浄化でき、かつ暗闇でも目が見えるアクアと共にダンジョン内を探索している。

 

 

ちなみに、ダンジョン内で爆裂魔法が使えなくなるめぐみんと、未だ療養中のヒデオ、装備がまだ無いダクネスはダンジョンの外で待機してもらっている。時間までに帰って来なかったら街に帰って応援を呼んでもらうためだ。

 

 

ワラワラ出てくるアンデッドをアクアに浄化してもらい、奥へと進んで行く。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

カズマ達がダンジョンに入って特にすることもなく暇なので、運動しようかと思い小屋から出ようとしたが、めぐみんとダクネスに止められた。

 

 

「ちょっと運動しに行くだけだしいいじゃねーか」

 

 

「ダメです!私たちはアクアに言われてるんですよ!ヒデオが修行しに行こうとしたら止めろって!」

 

 

「そうだ。ここ最近お前は無茶しすぎな気がする。この間だって初心者殺しを倒したそうだな。偶には休んだらどうだ?」

 

 

2人は俺の前に立ちはだかりここは通さんとばかりに仁王立ちしている。

 

 

「でもマジで暇なんだよ。ほら、運動って言っても軽くだからさ」

 

 

「軽く…。どのくらい軽いのですか?」

 

 

めぐみんがそう聞いてくる。

 

 

ふむ。ならば教えてやろう。

 

 

「ただ疲れない程度に全力で走り回ったり気を放ちまくったり高めまくったり空を自由に飛び回ったりしてちょっと死にかけるだけだ」

 

 

ちなみにキツめだと殆ど死ぬ。

 

 

「それの何処が軽いと言うのですか!ヒデオがなんと言おうと、ここは通しませんからね!」

 

 

「それでも通りたくば、この私を殴り倒してから行け!ほら!さぁ来い!」

 

 

ダクネスの発言はともかくとして、二人共俺を心配してくれてるんだな。

 

 

…二人に免じてここは大人しく従っとくか。

 

 

「わかった、わかったよ。今日は修行しない」

 

 

諦めたように両手を挙げて椅子に座る。やっと言う事を聞いた、とダクネスが一息つき、めぐみんがフフンと鼻を鳴らす。

 

 

「分かればいいのです!さ、ヒデオ!爆裂魔法をぶっ放しに行きますよ!」

 

 

……。

 

 

「何をしているのです?ヒデオ。早く準備して下さい」

 

 

俺は無言で立ち上がり、めぐみんへと近付く。

 

 

「さ、行きますよ!あ、あれ?なんで私の頭に手を置くのですか?流石に何の脈絡もなく頭を撫でられるのはあぁぁあぁっ!痛い痛い痛いです!!頭を鷲づかまないで!やめ、ヤメロぉぉぉー!ぎゃぁあぁぁ!!」

 

 

 

なんとなくムカついたので、取り敢えず頭を鷲掴みにし力を込める。

 

 

「あ、謝りますから!やりたい事が出来ないヒデオの前で存分に自分のやりたい事をやってドヤ顔したいとか思ってぎゃああああ!!潰れます!潰れちゃいます!」

 

 

やっぱりか。いい性格してんなコイツ。俺がめぐみんの頭を掴み続けていると、ダクネスが止めに入る。

 

 

「そ、そのへんにしてやれヒデオ。めぐみんの自業自得とはいえ、流石に可哀想だ。それでもやり足りないというなら、是非私に…」

 

 

モジモジしながら言うダクネスはスルーし、もういいだろうとめぐみんを解放する。

 

 

「は、はぁ…。死ぬかと思いました…」

 

 

「おら、ロリっ子。撃ちに行くんだろ?そんな所で座ってないで早く行くぞ。ダクネス、留守は任せた」

 

 

「了解した。気を付けてな」

 

 

「ろ、ロリ…!」

 

 

何か言いたそうなめぐみんを放置し、先に小屋から出る。爆裂ついでに舞空術披露してやろ。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「もうこの辺でいいじゃねーか。誰がおぶって帰ると思ってんだ」

 

 

結構歩いた。運動するなとか言ってた奴は誰だっけ。

 

 

「ダメです。いい感じの岩がないと…」

 

 

めぐみん曰く、ベルディアの城にぶち込みまくってからという物の、最低でも大岩を壊さないと爆裂欲が満たされないそうだ。コイツそのうち建造物を破壊しないと満たされないとか言うんじゃないだろうな。

 

 

そんな事を考えながら歩いていると、めぐみんが目標を見つけたようだ。

 

 

「あ、あの岩がいい感じです!」

 

 

めぐみんが指をさしたそれは、中々の大きさを有していた。それに硬さも有りそうだ。

 

 

「そうか。じゃ、撃てよ」

 

 

「何を言ってるのです?この距離から届くわけ無いでしょう?馬鹿なんですか?もっと近付かないと…」

 

 

突然バカにされたのでカチンと来た。

 

 

めぐみんの真後ろに立ち、両脇に手を回し、突っ込む。

 

 

「ひゃっ!ちょ!何するんですか!セクハラです…か…え、うわぁあぁあ!」

 

 

 

少しムカついたので、予告無しに舞空術で空を飛ぶ。流石に空を飛んだ経験は無いのか、かなり驚いている。

 

 

「ちょ、なんで浮いてるんですか!?ヒデオ、いつの間にそんな技を…!ひゃっ!どさくさに紛れて胸を触らないでください!」

 

 

「これは舞空術っていう技だ。雪精討伐の後に覚えた。ていうか触ってねぇよ。それにお前のは触るほどない」

 

 

 

「なっ…!喧嘩を売っているのなら買いますよ!!」

 

 

「ちょ!危ないから暴れんな!落ちても知らんぞ!」

 

 

めぐみんがジタバタ暴れるので慌てて止める。あぶねー。

 

 

「取り敢えず今は我慢してあげます。降りたら覚えておいてくださいね」

 

 

……降りんの怖くなってきた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

一悶着あったが、無事爆裂魔法を放ちスッキリしためぐみんを背負い空を飛ぶ。

 

 

「便利ですね。障害物とか気にしなくても大丈夫ですし」

 

 

「結構疲れるけどな。それよりもめぐみん、俺がこの技を覚えたことにより、お前の爆裂魔法はさらなる脅威を持つようになったぞ」

 

 

俺は背中から話しかけてくるめぐみんに言う。

 

 

「さらなる脅威?なんですか詳しく教えてください」

 

 

爆裂魔法の事となるとくいつき方が尋常ではない。

 

 

「ほら、俺は空を飛べるだろ?で、お前を背負いながらも飛べる。つまり、お前は爆裂魔法の射程を気にせずに上空から安全に爆裂出来るってこった。分かったか?」

 

 

爆撃機ならぬ爆裂機ってとこか?空から突然爆裂魔法とか恐怖でしかない。

 

 

俺の言葉に、めぐみんはプルプルと震えだし…

 

 

「す、素晴らしいじゃないですか!天才ですかあなたは!これからはアクセルの爆裂コンビとして名を馳せて行きましょう!!」

 

 

恐ろしいコンビだな…。

 

 

「ま、気が向いたらな」

 

 

次は空から爆裂したい、高速で過ぎ去りながら爆裂したい、だの夢を膨らませながら、小屋へ帰る。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

小屋の外でダクネスは紅茶を飲みながら佇んでいた。

 

 

「おーい。ダクネスー。何してんだー?」

 

 

「あ、二人共、おかえり…。ん?どこだ?声はするが…」

 

 

ダクネスは辺りを見回しているが、俺達を見つけられていない。

 

 

「こっちです!上です上!」

 

 

めぐみんが俺の背からダクネスに手を振る。

 

 

「上…?は!?ヒデオ、お前飛んでるのか!?」

 

 

ダクネスが俺達を見て驚く。この反応何度目だ。

 

 

「おう。こないだ飛べるようになったんだよ」

 

 

「…本当に何でも出来るなお前は」

 

 

ダクネスが若干落ち込みながら言ってくる。自身と比較しているのだろうか。

 

 

「何でもは出来ねぇよ。出来ることだけだ。っと、ほらめぐみん。降りろ」

 

 

言いながらめぐみんを降ろす。

 

 

「ありがとうございます!初めての体験で中々楽しめました!」

 

 

めぐみんはまだ興奮冷めやらぬといった状態で、いい笑顔をしている。まぁ俺も舞空術使えた時はかなりテンション上がったしな。

 

 

ふとダクネスを見てみると、なにやらめぐみんの方をチラチラと見ている。ははーん?

 

 

「どうしたダクネス。めぐみんを羨ましそうに見て。お前も飛びたいのか?」

 

 

「うっ…」

 

 

ダクネスは頬を染め顔を背けるが、やがてゆっくりと頷く。うむ。自分に正直なのはいい事だ。いつもみたいに正直すぎるのはアレだけど。

 

 

「じゃ、いくぞー」

 

 

「え、ちょ、まだ心の準備が…!ってどこを触ってるんだお前は!」

 

 

さっきのめぐみんのように両脇に手を入れ飛ぶ。やっぱり暴れるよな。めぐみんとは違い、胸がばるんばるん揺れてますね。眼福。

 

 

てかコイツ力強っ!そしてちょっと重い!

 

 

「ダクネス、ちょっと重…、持ちにくいかららやっぱり背中に乗ってくれ」

 

 

一旦下ろしおんぶの体勢を取る。

 

 

「重!?重いと言ったか!?いくら私でも流石に傷付くぞ!取り消せ!」

 

 

「おいやめ、ぐえっ!うっ…!」

 

 

後ろからダクネスが俺の首を掴んできて息ができない。死ぬ…!

 

 

「い、息が…!と、取り消すから…ゆるして…!」

 

 

段々と血の気が引いていく。ヤバい…!トぶ…!

 

 

「だ、ダクネス!?ヒデオが真っ青になってますよ!?」

 

 

「わっ!す、すまんヒデオ!やり過ぎた!」

 

 

めぐみんの言葉にようやく事態に気付いたのか、慌てて手を離す。あ、危なかった…。

 

 

「い、いや今のは俺に非がある。すまん。デリカシーがなかったな」

 

 

今後はこんな事がないようにしよう。下手したら死ぬ…。首をさすりながら息を整えていると、めぐみんがふと

 

 

「…最近のヒデオは、やけに仲間想いですね」

 

 

などと言ってくる。次いでダクネスも

 

 

「そうだな。いつもなら、重たいお前が悪い、とか言って来たはずなのに」

 

 

こいつらの中での俺のイメージはどうなってんだ。まぁ大体あってるけども。

 

 

「あー…。アレだ。仲間の大切さを思い知ったというか、気が向いたというか…」

 

 

頬をかきながらボソボソと言う。こういうの面と向かって言うの恥ずかしいな。

 

 

「…いつもカズマに並ぶ鬼畜野郎とか思っててすいませんでした」

 

 

「おいその話詳しく」

 

 

俺はアイツほど鬼畜じゃねぇよ!ち、違うよね?まだ常識の範囲内だよね?

 

 

……いや、よく考えたら会って1日に満たない女の子、しかも女神をカエルに向けてぶん投げて囮にしたり、ムカつく奴とはいえ会って十数分の奴の股間を蹴りあげたり、抵抗できないのをいい事に魔王軍幹部の頭をボールにしてサッカーしたり。かなり鬼畜だわこれ。

 

 

俺が自分の本性に落ち込んでいると、ダクネスがポンと肩に手を置いてきた。

 

 

「まぁ、私はヒデオが鬼畜でも全然構わんのだが…。むしろバッチコイだ」

 

 

「…お前は相変わらずだな」

 

 

若干呆れていると、身をよじり興奮しだした。こいつ範囲広すぎないか?

 

 

その後もカズマ達が帰ってくるまで、ダクネスをおぶって飛んだり、ダクネスの淹れる紅茶が美味しかったり、謎のボードゲームをしたりと色々とやった。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

ダンジョンから戻ってくると、ヒデオがダクネスをおんぶしながら飛び回っていた。何やってんだアイツら。

 

 

「あ、カズマにアクア。おかえりなさい」

 

 

こっちに気付いためぐみんが手を振ってくる。

 

 

「おう、ただいま。で、ヒデオとダクネスは何やってんだ?舞空術で飛んでるってのはわかるが」

 

 

「あ、ホントだ。飛んでる。ねぇヒデオー!後で私も乗せてー!」

 

 

アクアが飛んでるヒデオに呼びかけ、ヒデオはおう、と短く返事をした。俺も乗っけてもらお。

 

 

「お疲れさまです二人共、ダンジョンはどうでした?」

 

 

めぐみんが聞いてきたので、ヒデオ達も呼び戻し、道中にあったことを話した。

 

 

やたらとアンデッドに見つかったり、スキルが役に立つことがわかったり、リッチーを浄化したり、アクアが女神っぽかったりと、色々とあったものだ。

 

 

「んじゃ、ヒデオの舞空術も堪能したし帰るか」

 

 

そう言い、ダンジョンを後にする。

 

 

宿屋に泊まるのは良いが、今後のことも考えてそろそろ拠点が欲しい、ヒデオが治ったら何かクエストに行こう、そんな事を語りながら街へと帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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漢字だけを並べたら中国語っぽい。

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