この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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やっとアニメ分が終わった


第二十二話

  気が付くと、見覚えのある場所に居た。ここに来るのは何度目になるだろうか。

  …また、死んだのか。

 

  あの女神様が居るのだろうと辺りを見回そうとするが、体が思うように動かない…。あ、あれ?おかしいぞ?そういえば両腕が燃えるように熱い。体を動かそうとすると変な音を立てて激痛がするし、心無しどころか全力で膝が大爆笑してるし、尻尾すら動かせない。

 

 

 ……………しっぽ?

 

 

  死んだはずなのになぜ尻尾があるのか。前回(冬将軍の時)は、地球人の田中英夫としてここに連れてこられた。死んだのだから特典を剥奪されててもおかしくないし、今回もそうだろうと思っていたのだが。

 

 

「どういうことだってばよ…」

 

 

  不可解な状況に、某七代目のような語尾になってしまう。

 

  いやほんと、どういう事これ?

 

 

  おしえて!エリス様!

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

  デストロイヤーの魔導砲を見事撃ち返し砲台ごとぶっ壊した今回のMVP、ヒデオが消えた。

  何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何も起きたのか分からなかった…。白昼夢とかサキュバスの淫夢サービスとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わっているぜ…。

 

 ………淫夢サービスはチャチじゃないな。うん。

 

 

  とまぁ、冗談はさておき。

 

  ヒデオが消えた。それも跡形もなく影すら残さず消えた。一瞬デストロイヤーの魔導砲にやられたのかと思ったが、魔導砲には撃ち勝っている。謎だ…。

  なので、直前までヒデオの近くに居たアクアに聞こうとアクアの方へ行くと。

 

  こいつ、気絶してやがる…。

 

 

「おいアクア。起きろ。ヒデオはどこいったんだ」

 

「…ん。あれ?カズマ、朝ごはん?」

 

「何を寝ぼけてんだ。ヒデオどこ行ったか知らねーか?」

 

 

  後頭部にたんこぶが出来てるし、恐らくこけたかなんかして頭を打って気絶したのだろう。

 

 

「あれ、ほんとだ。居ないわね。どこに行ったのかしら?」

 

 

  知らないか…。流石にちょっと心配になってきたぞ。10倍とか言ってたしな。無事だと良いんだが…。

 

  ヒデオの身を心配して色々と考えていると、なにやら騒がしくなってきた。

 

 なんだなんだと見てみたら、応えてくれたよテイラーが。

 

 

「おいカズマ!なんかやばいぞ!」

 

 

  爆裂された古代兵器の遺物には、エクストリームやばい結末待ってたぜ☆

 

  などとロケット団の口上風に現実逃避をしてみたが、状況が変わるはずもなく。

 

 

『この機体は、機動を停止致しました。排熱及びエネルギーの消費が出来なくなっています。搭乗員は速やかにこの機体から避難してください。繰り返します…』

 

 

  このろくでもない要塞は最後まで本当にろくでもない!

  突然の異常に冒険者達は皆慌ててしまっている。

 

 ……いい加減にしやがれこのクソ要塞が!!

 

 

『熱とエネルギーの逃げ道がなくなってアボーンだと!?ふざけやがって!足と砲台ぶっ壊されたくらいで甘えんな!根性見せろ!それでも20億の賞金首か!!』

 

 

  またもや降って湧いた理不尽に思わず拡声器を使い叫ぶ。

  いやほんと、勝手に来てぶっ倒された挙句大爆発とかシャレになりません。いい加減にしてください。マジで。

 

 

「カズマ!気持ちは分かるけど落ち着いて!相手は機械よ!」

 

『いーや!もう我慢ならねぇ!野郎ども!あのクソッタレの要塞に乗り込んでボコボコにしてやれ!!この街には色々と世話になってんだろ!ここで男を見せやがれ!!!』

 

 

  アクアの制止も聞かず、拡声器を使い冒険者達(主に男)に発破をかける。すると、さっきまで慌てふためいていたのが嘘のように顔付きが変わり、皆(主に男)は雄叫びを上げ全速力でクソッタレデストロイヤーへと駆け出して行った!

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

  カズマ達は今頃どうしているだろうか。ふと気になったが、今はそれどころではない。

  何故なら。

 

 

「タナカヒデオさん。やりすぎです」

 

 

  女神エリスが絶賛激おこぷんぷん丸だからである。美人は怒ると怖いと聞いていたが、この女神様は怒ってても可愛い。やだ、不謹慎!

 

 

「ちょっと!聞いてるんですか!?」

 

「すいません。エリス様の可愛さについて脳内で討論会が始まってるのでちょっと黙ってて貰えます?」

 

「なっ…!可愛…!」

 

 

  理不尽な要求をされた事への怒りと可愛いと褒められたことによる照れで顔が真っ赤になっている。可愛い。

 

 

「まぁ、冗談はこの位にして。あ、エリス様が可愛いってのは冗談じゃないですよ?」

 

「…」

 

 

  やっべ本気でキレそうだこの人。とりあえず土下座から始めよう。ちなみに傷は動ける程度に治してもらった。さすが女神。

 

 

「で、なんで俺はここにいるんですか?しかも、サイヤ人のタナカヒデオとして。死んだら前みたいに特典剥奪じゃないんですか?」

 

「…だから、さっきも言った通り、やりすぎです。それに、あなたは死んではいません」

 

 

  エリス様は拗ねながらそう言った。可愛い。ただこのままだと可愛いで埋まってしまうので割愛。

  はて、やりすぎとは?というか、死んでないのか…。

 

 

「で、どのへんがやりすぎなんですか?俺はただ限界をぶっ飛んだ全力をあの老害兵器にぶち込んだだけなんですが」

 

「そのぶっ飛んだ全力というのがやりすぎなんです!!見てましたが、いくら何でも10倍はオーバーキルすぎます!7.5倍程度でも普通に返せた筈ですよね?正直に言って、その事をわかってましたよね?」

 

Exactly!(その通りでございます)

 

「Exactly!じゃないんですよ!!なんで10倍なんて無茶やらかしたんですか!!危うく反動で死ぬところでしたよ!?」

 

 

  なんでやらかした、か。ふむ。

 

 

「いや、それは…なんて言うか…。気分と言いますか…。語呂と言いますか…。まぁぶっちゃけるとノリです」

 

「ノリ…!?あなた、ノリで命賭けたんですか!?馬鹿ですか!?馬鹿なんですね!?」

 

「ムッ。馬鹿と言われるのは心外です。ちゃんと俺なりに考えがあってやらかした事なんですよ」

 

 

  そう、なんの考えもなくこんな無茶をするはずが無い。

 

 

「して、その考えとやらを聞こうじゃないですか」

 

 

  エリス様は若干口調がヤカラみたいになってきている。まるでどこかの女神を見ているようだ。

  聞かれて黙ってる必要も無いので答える。

 

 

「でぇじょうぶだ。『リザレクション』で生き返れる」

 

「馬鹿ですかとか聞く必要も無かったです!!あなたは馬鹿です!!」

 

 

  ここまで馬鹿と一つの会話で言われたのは初めてだ。わぁい、初体験!

  エリス様は反省の色を見せない俺にギャーギャーと喚いていたが、やがて喚き疲れたのか声を出すのをやめた。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「大丈夫ですか?あんまり怒ると小じわができますよ?」

 

 

  美容の心配をしてあげる。これがデキる男なのだ。

 

 

「…」

 

「ちょ、ちょ、痛い痛い。まだ完治してないんですよ。勘弁してください。腕を集中的に無言でつんつくつんするのはやめてください。わかりました、わかりましたからやめて下さい!土下座でも何でもしますからいってぇぇぇ!!」

 

「ふふふ…」

 

 

  やべぇ…!この女神、文字通り傷口を抉りながら笑ってやがる…!しかし、今は猟奇系美少女に戦慄している場合ではない。

  エリス様の反応が可愛いせいで話が逸れてしまったが、本題に入ろう。

 

 

「で、10倍はオーバーキルすぎたのはわかりますけど、それだけでここに召還した訳では無いですよね?」

 

「…まったく、なんでそこまでわかってるのに話を逸らさせたのか理解に苦しみます」

 

 

  可愛いからに決まっている。

 

 

「はぁ…。結果というか、あのままだと起こっていた事態を説明しますね」

 

 

  エリス様は仰々しくため息をつくと、キリッと顔を整え真剣な眼差しで俺の方へ向く。余程重要な話なのだろう。ここは黙って聞いておく。

 

 

「まず、私がしたことから説明します。女神の力によりあなたのかめはめ波をある一定のレベルまで相殺、そしてあなたにお説教もとい注意事項を説明するためにこの場所へと強制召還しました」

 

「相殺?なんで相殺する必要が…」

 

「それは今から説明します。起こるはずだった事態とは、かめはめ波が魔導砲を蒸発させ、更には機体各部への損傷と裂傷。それによりコロナタイトが露出。そしてかめはめ波+魔導砲のエネルギーがコロナタイトへと吸収され、ありえない量のエネルギーを吸収してしまったコロナタイトが暴走。そして爆発。爆裂魔法ですら比にならないレベルの大規模爆破が起こり、アクセルの街は半分更地になるところでした」

 

 

  なんてこったい。街を守るつもりが街を壊滅させちゃってるじゃねぇか。コラテラルダメージとか、致し方ない犠牲とかいうレベルのもんじゃない。全然致し方なくない。

 

 

「そ、それは誠に申し訳ございませんでした。あと、助けて頂きありがとうございました」

 

 

  とりあえずいたたまれなくなったので感謝の意も込めて土下座する。するとエリス様は直接土下座された事などないのか、アワアワと慌てふためいている。

 

 

「あ、いや、謝って欲しいわけではなく、ただ今後このような事がないように注意を…。あの、頭を上げてください」

 

 

  そう言われ下げ続ける必要も無いので素直に上げる。しかし、いくつか引っかかるところがある。聞こう。

 

 

「エリス様、いくつか質問いいですか?」

 

「はい。どうぞ」

 

「どうやってエネルギーを相殺して俺をここまで連れてきたんですか?」

 

「女神パワーです」

 

 

  すげぇな女神パワー。

 

 

「なるほど。あ、前から気になってたんですがパッドって本当ですか?」

 

「……黙秘します」

 

「…まぁいいです。デストロイヤーってなんなんですか?アレ。あの世界の科学力では到底作れそうにないんですけど、古代兵器って言うじゃないですか。まさかとは思いますが、俺達みたいなチート持ちの仕業ですか?」

 

「よくわかりましたね…。その通りです。アクア先輩が転生させた人が作って酔っ払って暴走させたのがデストロイヤーです」

 

 

  本当にろくな奴が居ないなあの世界は。

 

  ん?アクアが転生させた…。古代…。500年前…。あっ。

 

 

「…なるほど。あ、エリス様って実際のところ何カップなんですか?」

 

「……黙秘します。というか、ちょくちょく挟んでくるその質問はなんなんですか?」

 

「セクハラですけど…。それがどうしたんですか?」

 

「セクっ…!そんな何言ってんだコイツみたいな顔をされても…!何言ってんだコイツなのは私の方ですよ!!」

 

 

  もはやツッコミキャラとして定着しつつありそうなエリス様。

 

 

「最後に質問いいですか?」

 

「はぁ…。セクハラでなければ」

 

「では。デストロイヤーが作られたのっていつでしたっけ」

 

「えーと…。約500年前ですね」

 

「アクアとエリス様の関係って何でしたっけ」

 

「……先輩後輩ですね」

 

 

  ふむ。次で最後だ。

 

 

「も一つ質問いいですか?」

 

「……なんですか?」

 

「エリス様って今お幾「ゴッドブロー!!」ふごぁっ!!」

 

 

  エリス様に右ストレートをくらい吹っ飛ぶ。

 

  な、なかなかいいパンチ持ってんじゃねぇか…!けど怪我人なんだから優しく扱ってほしい。

  顎にクリーンヒットしたせいか、意識が朦朧としてきた。

 

 

「ふん。あなたのような勘のい…デリカシーのない人は嫌いです」

 

 

  薄れゆく意識の中で、エリス様が頬を膨らませているのが見えた。可愛…い…。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「『エクスプロージョン』!!!」

 

 

  ズガァァァァン!!!!

 

 

「うるさっ!!」

 

 

  爆裂魔法と思われる爆音で飛び起きる。どうやら戻ってこれたようだ。音のした方を見ると、めくみんがデストロイヤーの残骸を消し飛ばしているのが見えた。あれが死体蹴りか。

 

  よく見るとその周りにはカズマ達が居たので、ふよふよと飛びながら向かう。

 

 

「おーいカズマー。何やってんだー?」

 

「ん?この声は…。ヒデオ!どこ行ってたんだよ!」

 

 

  どうやら俺が急に消えて心配してくれていたようだ。

 

 

「ちょっとな。何やってんだこれ?死体蹴りか?」

 

「ちげぇよ。なんかこのデカブツが排熱できなくて大爆発起こしそうだったからその前に爆裂魔法で消し飛ばした」

 

 

  なるほど。爆発しそうだから爆裂させるってもう意味わかんねぇな。

 

 

「なんにせよ、デストロイヤー討伐は成功したってことでいいのか?」

 

「まぁな。ってかお前腕大丈夫か?なんか血だらけなんだが」

 

 

  この状態でもかなり良くなったんだがな。グロイから多くは言わないけど、端的に言えば両腕の皮が吹き飛んでたって感じだな。

 

 

「あれ、ヒデオ。怪我してるの?治してあげるわ!」

 

「頼む」

 

 

  アクアに回復してもらい、その後街へと帰る。色々とあったようだが、まぁ何にせよ俺たち一行はまた世界を救ったようだ。

 

  報酬が楽しみだなー!

 

 

 

 

 

  と思っていた時代が私にもありました。

 

 

「サトウカズマ。貴様には、国家転覆罪の容疑がかけられている!!」

 

 

  世界を救った結果、パーティーのリーダーが前科持ちになりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………ほんっとうにろくでもねぇなこの世界は!!!

 

 

 




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