この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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評価バーが赤になる夢を見た。そうしたい。


よんでますよ、ダクネスさん。 編
第二十三話


 前回までのあらすじ。

 

 

 ひょんなことからサイヤ人(混血)となり異世界に転生した俺、タナカヒデオは同じく転生してきた少年、サトウカズマのパーティーに入る事となった。

 

 そのパーティーにはカズマが転生特典として連れてきたアクシズ教徒が崇める女神アクアことアークプリーストのアクアを筆頭に、アクセルに知らぬ者なしと呼び声の高い頭のおかしい爆裂娘のアークウィザードのめぐみんや、美人でスタイル抜群!巨乳!なおかつ実家は金持ち!だけども性癖には誰もがドン引きするドMクルセイダーのダクネスといった見てくれだけはいいメンバーが揃っていた。

 

 こいつらと共に魔王軍幹部を撃破したり超大物賞金首の機動要塞デストロイヤーを撃破したりと大活躍をしたんだが…。

 

 どこの世界も、そう上手くはいかないようで。

 

 

「冒険者サトウカズマ!貴様には、国家転覆罪の容疑がかけられている!自分と一緒に来てもらおうか!」

 

 

 どうやらパーティーリーダーのカズマが何かをやらかしたようで、国家転覆罪なる重そうな罪に問われる容疑をかけられたようだ。

 正直な感想としては、なんだこの女。である。

 

 とりあえず真偽を確かめるべくカズマの隣に行きコショコショと囁く。

 

 

「なぁカズマ、お前なんかやらかしたのか?国家転覆罪ってなんかめちゃくちゃやばそうなんだが」

 

「知らねぇよ。報酬受け取りに来ただけだってのに、何でこんな…」

 

 

 ふむ、心当たりはないようだ。あっても困るが。

 こいつが知らないって言ってるんだし本当に知らないんだろう。よし。

 俺はカズマとその女の間に立ち、出来るだけ丁寧に。

 

 

「あの、人違いじゃないですかね?こいつは確かに性格が歪んでると言っても過言ではないですし、巷では鬼畜とかパンツ脱がせ魔とか呼ばれてる小悪党ですけど、国家転覆罪なんて容疑がかけられることをする馬鹿でもないですし、そんなことをする度胸もないですよ?なので、今日のところはお引き取り願えませんかね?そもそも何の理由でこいつを疑うんですか?あと、自分の素性を明かしもしない人に仲間をどうこう言われたくありませんね」

 

「擁護してんのか喧嘩売ってんのかどっちだお前」

 

 

 事実だからね。仕方ない。

 突っかかってくるカズマを無視し出来るだけ柔らかな表情で言葉を促す。

 すると、

 

 

「これは失礼致しました。私は王国検察官のセナと申します。そこの男には現在、テロリストもしくは魔王軍の手の者ではないかとの疑いがあります」

 

 

 ……全くもってわからない。魔法軍の手先?テロリスト?俺らが魔王軍幹部ぶっ倒したって知らねぇのか?

 

 色々と思うところはあるが、とりあえず後ろで何故かギャーギャーと喚いているアクア達は放置して、目の前に集中する。

 

 

「具体的には何をした疑いがあるんですか?証拠はあるんですか?」

 

「証拠はないですが、その男の指示で転送された機動要塞デストロイヤーの核であるコロナタイトがこの地の領主様の屋敷を吹き飛ばしました」

 

「なんと」

 

 

 予想外だった。コレは疑われても仕方ない…のか?

 ふと、騒いでいたカズマらの方を見てみると、カズマは顔を青ざめさせていた。

 

 

「なんてこった…。俺のせいで領主が爆死しちまったのか…」

 

 

 カズマは頭を抱えながらそう呟いた。自分のせいで人が死んじまったんだもんな。顔も青くなるわ。と思っていたのだが。

 

 

「死んでいない!勝手に殺すな!不幸中の幸いというべきか、使用人は出払っていたし領主様は地下室に籠っておられたから死傷者は出ていない。屋敷は吹き飛んだがな」

 

 

 え、そうなのか。よかったよかった。

 

 

「てことは、このデストロイヤー戦ではヒデオ以外特に誰も大きい怪我もしてないし死者も出てないってことか。よかったよかった」

 

 

 胸をなでおろしながらそう言うカズマにセナが。

 

 

「何が良い!貴様、状況がわかっているのか!?領主の邸宅に爆発物を送り込み、屋敷を吹き飛ばしたのだぞ?先程言ったとおり、貴様には色々と嫌疑がかけられている。署まで来てもらおうか」

 

 

 などと言い出した。

 うーん。なんかこの人婚期逃しそうだなー。ま、それはともかく。

 

 

「そうカッカしないでください。セナさん…でしたっけ?世界を救ったようなもんだし金持ちの屋敷1個くらい吹き飛ばしても充分お釣りが来る功績じゃないですか?それか、これが世界を救った人間に対する態度なんですか?」

 

「それとこれとは話が別です」

 

 

 頭が固いというかなんというか…。

 そもそもカズマが意図的にやったとかいう証拠も何も無いのにいきなり検挙はどうなんだ?異世界だと当たり前なのか?

 

 ベルディアの時も思ったが世界救ったんだからそれくらい負担してくれよな。

 

 ……理不尽だ。

 

 

「それを言ったら領主の屋敷にコロナタイトを送ったことだって魔王軍とかとは関係ないじゃねぇか。さっきのカズマの反応を見ても意図的にやったわけじゃない事がわかるしな」

 

 

 イラつきでつい敬語が外れる。もういいや。めんどくせぇ。

 

 

「そもそもアンタ、俺らが魔王軍幹部ベルディアの討伐に一役も二役も買ってること知らねぇのか?仮に魔王軍の手先ならそんな事しねぇだろ。テロリストってんなら、こんな辺鄙な街の領主の邸宅じゃなく、もっと人が多い、王都とかに送ると思うぞ」

 

「そうですよ!それに、カズマはデストロイヤー戦においての功労者ですよ?確かにコロナタイトを転送するように指示したのはカズマですが、それだって緊急の措置で仕方なくです。カズマの機転と決断がなかったら、コロナタイトの爆発で屋敷が吹き飛ぶよりも多大な損害が出ていたんですよ?褒められはしても非難される謂れはありません。それに、あなたが言っているのは領主の屋敷よりも民衆の命の方が軽いと言っているのと同じですよ?」

 

 

 俺に次いでめぐみんも言い、静まっていたギルド内からもそうだそうだと賛同する声が響く。

 

 が。

 

 

「ちなみに、国家転覆罪は主犯以外の者にも適用される場合がある。裁判が終わるまでは言動に注意した方がいいぞ」

 

 

 その言葉に皆押し黙る。さっきまでの威勢はどこに行ったんだ。

 

 

「お、おい!お前ら急にどうしたんだよ!もっと抗議しろよ!」

 

「言っても無駄だぞカズマ。コイツらは後でシメればいい。それよりも今は余計な事を言わせないようにするのが先だ」

 

「お、おう…。そうだな…。お前ら、後で覚えとけよ」

 

 

 カズマはそう言いセナの方へ向き直る。俺もそれに倣う。周りの奴らが何かを言おうとしたら直ぐに止めれるように一応身構えながら。

 

 

「茶番は終わりか?ならば、私と共に来てもらおうか」

 

 

 そう言いカズマを捕らえようと、従えてきた騎士2人に指示を出す。

 だが、まだ納得がいかない。

 

 傷は癒えたがまだ重度の筋肉痛な両腕を気にしながら騎士2人の前に立ちはだかる。

 俺の行動が理解出来なかったのか、セナは俺を鋭い目つきで睨みつけながら。

 

 

「……何のつもりだ?邪魔をすると言うなら貴様も連行するぞ?」

 

 

 おっと。こわいこわい。

 

 

「連行?してみろよ。出来るもんならな。仮に牢獄に入れられたとしても直ぐに脱獄してお前らの面目ぶっ潰してやるから」

 

「おい!この生意気な男も捕らえろ!」

 

 

 そう指示を出され騎士の1人が向かってくるが、遅い。速さが足りんな。

 

 だが反撃して公務執行妨害的な罪に問われるのも嫌なので避け続ける。体力が無くなるまで逃げ続けてやんよ。

 

 

「そらそらどうした!これが騎士なのか!遅い!遅すぎ…へにゃ…」

 

 

 急に力が抜け倒れ伏す。見ると、前のようにアクアが尻尾を掴んでいた。

 このクソアマ…!

 

 

「ごめんねヒデオ!私達みんなが助かるにはこうするしかないの!」

 

「お…前…!覚え、とけよ…!後で泣かす…!」

 

 

 絶対に許さない。

 

 

 尻尾を掴まれながら手錠をかけられ、カズマと共に連行されてしまった。アクア、絶殺。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「だぁぁぁあクッソ!!!」

 

 

 ズガァァァン!!

 

 

 ヒデオが思いっきり鉄格子を蹴り、折り曲げた。

 あれ、これ脱獄できんじゃね?と思ったが、轟音を聞きつけすぐに看守がやって来て、ヒデオを制止しようとする。

 

 

「何をやってるんだ!やめなさい!」

 

 

 が。

 

 

「檻ッ!壊さずにはいられないッ!」

 

 

 看守が来てもなお檻を蹴り続けるヒデオ。檻がボコボコになって行く。

 荒れてんなー。

 

 

「や、やめなさい!壊れる!本当に壊れるから!」

 

 

 看守がアワアワと今もなお暴れるヒデオを止めようとするが、近づけそうにない。このままだと俺も怒られそうなので、仕方なく止めに入る。

 

 

「おいやめろヒデオ。イラつくのは分かるが、看守さんが困ってるだろーが」

 

「離せカズマ!俺は今からあのアホ女神をガチ泣きさせに行くんだよ!」

 

 

 ヒデオを羽交い締めにし動きを止めさせる。

 コイツ力強ッ!

 というかこれ以上キレると手がつけられなくなるので、最終手段を使おう。

 

 

「離せ…。力が…ぐぬぬ…」

 

 

 ふぅ。なんとかなった。

 いつまでも尻尾を握っているわけには行かないので、一応ドレインタッチで体力を吸っておこう。

 

 

「アクアめ…。次見たら絶対泣かす…」

 

「裏切ってお前の尻尾掴んで動き止めたせいでその場にいた全員に尻尾が弱点って教えたようなもんだもんな」

 

「思い出しただけでも腹立ってきた。スーパーサイヤ人なれそう」

 

 

 見ると、若干髪の毛が逆だっている。

 そのうち『おれはおこったぞー!!駄女神ー!!』とか言いそう。

 

 

「強くなってくれんのは有難いがブロリーパターンはやめてくれよ」

 

「善処………出来ぬぅ!!」

 

「するんだよ」

 

 

 などとやり取りをしていると、取り調べの時間がやってきた。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 取り調べ室。俺のターン!

 

 

「吐け」

 

「吐けって言われても、ギルドで話したので大体全部なんだが。それに、俺冒険者なんだぞ。冒険の時間が奪われてるんだよ?金が稼げないんだよ?冤罪確定したら、その分の賠償してくれんの?さらに賠償だけでなく数々の非礼を訴えるよ?あんた個人を訴えるけどいいの?」

 

「減らず口を…。まぁいい。これがなんだかわかるか?」

 

 

 そう言いセナが出したのは謎の物体。なんぞこれ。

 

 

「知らん」

 

「ふん。これはな、嘘をつくと音が鳴る魔道具だ。これで貴様の発言の真偽を確かめる」

 

 

 なるほど。嘘発見機ね。

 

 

「では早速質問していく。名前と年齢、職業と、前はどこで何をしていた?」

 

「サトウカズマ16歳。冒険者をやっている。前は日本という国で勉学に努めハーレム王を〈チリーン〉…と言うのは嘘で日本という国で特に何もせず自堕落な生活を送っていました」

 

「ふむ…。ニホンという国は知らないが、嘘は言っていないようだな」

 

 

 やべぇ。本物だ。

 

 

「では、続けるぞ」

 

 

 決して逃げる事の出来ない暴露大会(俺1人)が今、始まってしまった。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 カズマが帰ってくるのを待っていると、カズマではない気が近付いてきた。

 

 

「次はお前だ。来い」

 

「アイツは?」

 

「取り調べ室だ」

 

「ふーん」

 

 

 少々不思議に思いながら歩いていると、目的地へ着いた。

 

 

「入れ」

 

「おじゃましまー…あれ?カズマ。なんでお前縛られてんの?趣味?」

 

 

 取り調べ室には取り調べをするであろうセナと、何故かカズマが縄で縛られていた。

 

 

「趣味じゃねぇ」

 

「喋るな。この男は疑いが強くなったのでな。縛らさせてもらった。まぁ気にせず、そこにかけろ」

 

 

 またやらかしたパターン?まぁいいか。

 セナに促され、対面の椅子に腰掛ける。

 

 

「っしゃ。なんでも聞いてこい」

 

「では早速…。おっと。その前にこれを紹介しておこう。この魔道具は、嘘をつくと音が鳴る。この意味が分かるな?」

 

「わかりませーん」

 

 〈チリーン〉

 

「なるほど。よくわかった」

 

 

 間も置かずに鳴るのね。

 

 

「ふん。では先程のこの男にしたのと同じ様な質問をして行くぞ。名前、年齢、職業、種族と前はどこで何をしていたか言え」

 

「タナカヒデオ。16。職業は冒険者で、クラスはコンバットマスター。種族は言ってもわからんと思うがサイヤ人だ。前は、日本で学生をしていた」

 

 

 ……シーン。

 

 

「ふむ。嘘はついていないようだな。サイヤ人と言うのは知らないが。それにしても、またニホンか。こいつと同じとは、ますます怪しいな」

 

「出身地が同じだけで怪しまれるとか何やらかしたんだよ…」

 

「続けるぞ」

 

 

 一抹の不安を残しながらも、取り調べは続いた。

 

 

「冒険者になった理由は?」

 

「成り行きで。けど今は強くなる事に快感を覚えています」

 

 

 魔道具は鳴らない。

 

 

「…まぁいい。お前はその場にいなかったと聞いたが、領主様の屋敷が吹っ飛んだ事についてどう思う?」

 

「正直、ざまぁと思いました」

 

 

 魔道具は鳴らない。

 

 

「……一応聞くが、領主様に恨みとかは?」

 

「世界を救う手助けをした俺らにこんな仕打ちかよ。ぶっ殺すぞクソが、とは思いました。もし会うことがあったらボコボコにして汚い花火にしたいです」

 

 

 魔道具は鳴らない。

 

 

「……」

 

「どうした?もっと聞いてこいよ」

 

「…で、では、魔王軍について思うことは?」

 

「強い奴らばかりだと聞いているので、ワクワクしています。実際前に戦った幹部のベルディアはかなり強かったです。まぁ今なら死ぬ気でやれば多分勝てますが」

 

 

 もちろん魔道具は鳴らない。

 

 

「ワクワク…!?ま、まぁいい。最後の質問だ」

 

「こい」

 

 

 やっと最後か。

 

 

「魔王軍と関わりがあるか?」

 

「無い!多分!」

 

 

 魔道具は………

 

 

 

 

 

 鳴らない。

 

 

「多分、というのは?」

 

「俺が知らないうちに関わっている可能性があるので」

 

「なるほど…。今までの非礼、大変失礼致しました」

 

 

 無事切り抜けた。

 ったく。カズマはこの程度で何をしくじったんだ?

 

 

「俺はこの後どうすればいいんだ?それと、カズマはどうするんだ?」

 

「その男につきましては、疑惑が強くなったのでまだ釈放は出来ません。明日早速裁判にかけます。貴方は帰っていただいて構いませんが、裁判には出席して頂きます。今一度、今回の非礼を深くお詫び申し上げます」

 

 

 深々と頭を下げてくるセナ。

 

 一件落着…なのか?

 

 職員から謝罪とお詫びの品を貰って、カズマを置いて拘置所から去った。

 

 

 よし、とりあえずあの駄女神泣かしに行こ。

 

 




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