この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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第二十四話

 夕方、屋敷。

 

 

「駄女神よ!俺は帰ってきたァァー!」

 

 

 ドアをバーンと勢いよく開けてそう叫ぶ。

 

 さぁ、楽しい楽しいお祭りの始まりだぁ!

 

 

「あ、あれ?ヒデオ?お、おかえり…」

 

 

 アクアは俺が帰ってくるとは思っていなかったのか、ギョッとした表情でこちらを見る。

 

 

「ん?どうした?妙にビクビクして。なにか怖いことでもあるのか?」

 

 

 なぜか縮こまりながらビクビクと震えているアクアにニコニコしながら近付いていく。

 何を怯えているんだい?

 

 

「ひ、ヒデオ、怒ってない?」

 

「あぁ。怒ってないよ」

 

「ほんとにほんと?」

 

「あぁ!俺が仲間に怒るなんてあるはずがないじゃないか!あははは!」

 

 

 アクアを安心させるためににこやかにそう言う。はっはっはっ。

 

 

「そ、そうよね!ヒデオはそんな子じゃ無いわよね!よかったー!」

 

「あぁ!安心してくれ!」

 

 

 ホッと胸を撫で下ろすアクアにある提案を持ちかける。

 

 

「なぁアクア。ちょっと相談があるんだが」

 

「なぁに?なんでも言ってちょうだい!」

 

「今からちょっとクエストに行こうと思うんだが、それにはお前の力が必要なんだ。来てくれるか?」

 

 

 帰りにギルドで受注してきたクエストの紙をひらひらと見せる。

 

 そう。このクエストにはアクアの力が必要不可欠なのだ。

 

 

「なになに?えーと、『暖かくなってきたので、また例のカエルが出てきています。討伐をお願いします』。…ね、ねぇ。ヒデオ。私これ前にも見たことがあるんですけど…」

 

 

 おそるおそるこちらを見るアクアの言葉には応えず、黙って背後に立つ。

 

 

「ね、ねぇ。なんで私の肩を物理的に持つの?あ、あれ?なんか浮いてる気がするんですけど…」

 

「あははははは」

 

「な、なんでずっと笑ってるの!?めちゃくちゃ怖いんですけどー!」

 

 

 ジタバタと暴れるアクア。

 掴む力を強め、落とさないように気を付ける。

 

 

「じゃ、いくか」

 

「ちょ、待っ!嫌ぁぁあ!!!許してぇぇぇ!!」

 

 

 しっかりとアクアを抱えながら、空を飛びカエルのいる草原へと向かう。

 

 おっと、1つ言い忘れていたことがあったな。

 

 

「おいアクア」

 

「な、なに?」

 

 

 半泣きになりながら聞き返してくるアクア。そんなアクアにハッキリと言ってやる。

 

 

「怒っていないと言ったな。あれは嘘だ」

 

「嫌ぁぁぁぁ!!」

 

 

 罪深き女神の断末魔が、夕暮れの空へと響き渡る。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 夜、屋敷。

 

 

「…うふふふふふ」

 

「な、なぁヒデオ。なんでアクアはずっと笑っているんだ?さっき風呂に入れた時もこうだった。目が据わっているし、かなり怖いんだが…」

 

 

 アクアへのお仕置きを済ませ、屋敷で寛いでいるとダクネスが聞いてきた。

 

 

「さぁ?ジャイアントトードに食わせてギリギリで助けるってのをカエルが辺りに居なくなるまでやってたらいつの間にかそうなってた」

 

 

 ちなみに帰りはカエルの粘液で汚いのでゴザをまいて吊るして飛んで帰ってきた。

 

 

「そ、それはさぞ楽しそ…じゃない。やりすぎではないか?」

 

 

 ダクネスが自分がやられる様を想像したのか頬を赤らめながら言ってきた。

 

 やりすぎ、か。

 

 

「そうか?妥当だと思うが。もしこいつが男ならもっとエグい事してるだろうし、かなり優しいと思うんだが」

 

「え、エグい事…。ごくり…。ヒデオ、試しに私に…」

 

「やんねぇからな」

 

「即断…!ハァ…ハァ…」

 

 

 相変わらず欲望に忠実な変態は置いといて、カズマの裁判について考える。

 

 屋敷の賠償とかだけで済めばいいが、相手は領主だ。権力と金に物言わせて極刑も有り得る。

 そうなった場合、俺はどうするのが正しいか。

 

 領主をぶっ殺してその場から逃げるのがいいのか、今からカズマを脱獄させに行くのか。

 

 それとも、1度カズマには刑を受けてもらい死んでから蘇生するか、だ。

 一応外的要因による死だからリザレクションは使えるだろう。

 

 

「うーん。どうしたもんか…」

 

 

 天井を仰ぎそう呟く。

 するといつの間にか広間にやって来ていためぐみんが。

 

 

「ヒデオ、どうかしたのですか?なにやら悩んでいるようですが」

 

 

 ふむ。

 こいつなら知力も高いしなにか思いつくかもな。

 

 

「いや、な。もしカズマが極刑になった場合どうするか考えててな。一番の有力候補はとりあえずカズマには刑を受けて死んでもらってその後蘇生って考えなんだが」

 

「あなた頭おかしいんじゃないですか?」

 

 

 お前には言われたくない。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 翌日、裁判所。

 

 

「これより、国家転覆罪に問われている被告人、サトウカズマの裁判を始める!一同、静粛に!」

 

 

 そう裁判長らしきおっさんに言われ、皆静かになる。

 

 告発側の席にやたら肥えて脂でテカっている毛深いおっさんがいた。おそらくこのデブが領主なのだろう。

 

 セナに紹介されたそのアルダープとかいう汚っさんは、立ち上がると俺と隣に立つヒデオを値踏みするように睨みつけ、そしてヒデオの隣に立っている見てくれだけはいい俺の仲間達にネットリとした視線を送る。

 

 気色わりぃな。死ね。

 

 

「なぁカズマ。あのおっさんなんか腹立つんだが」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

「あ、2人も同じ?私もなんか邪な目で見られてる気がしてならないの。目潰ししてきていい?」

 

「気持ちはわかるがやめんか」

 

 

 そう言ったアクアがヒデオに止められる。

 気持ちはわかるが、今は何もせずに黙っていてほしい。むしろアクアは弁護人の席から離れていて欲しい。

 

 俺達が話していると裁判長が静かにしろと言った視線でこちらを見てくる。黙ろ。

 

 

「はい。静かになるまで3分かかりました。では、検察官は前へ!なお、嘘をついてもこの魔道具で分かるので肝に銘じておくように」

 

 

 裁判長がそう言うと、検察官のセナが立ち上がり、起訴状を読み始めた。

 

 

「被告人サトウカズマは、機動要塞デストロイヤーを多数の冒険者と共に討伐。その際に、爆発寸前であったコロナタイトをテレポートで転送するように指示。転送されたコロナタイトは被害者の邸宅を吹き飛ばし、現在被害者のアルダープ殿は宿を借りる生活を余儀なくされております」

 

 

 セナが読み上げていく間も、領主の視線は俺達の方へ向いたままだった。

 こっち見んな死ね。

 

 

「危険物をテレポートで送る場合は、ランダムテレポートの使用は法で禁じられています。被告人の指示した行為は、それらの法に抵触します。また、領主という地位の人間の命を脅かした事は国家を揺るがしかねない事件です!よって自分は、被告人に国家転覆罪の適用を求めます!」

 

「異議あがふっ!」

 

 

 セナが言い終えると食い気味にアクアが何かを言おうとしたが、ヒデオがそれを当て身で阻止。ナイスヒデオ。

 

 恐ろしく速い手刀。俺には見えなかったね。

 

 

「…何か言いましたか?」

 

「いえ何も。さ、続けてください」

 

 

 クタッと倒れたアクアを抱えながらヒデオは淡々とそう言う。

 ほんと、助かります。

 

 

「では、被告人と弁護側、陳述を!」

 

 

 フッ。俺の活躍を世間に知らしめる時が来たか。

 

 俺は自身たっぷりに今までの冒険譚を話し始めた。

 

 

 

「ーーーとまぁこの様に、俺の活躍で魔王軍幹部を討伐することができて、機動要塞デストロイヤーも1人の犠牲者も出すことなく討伐することが出来たんです。ただ賞金首を倒すのとは訳が違いますよ?魔王軍に打撃を与えたし、人々を脅かす要塞も撃破しました。これはもう世界を間接的に救ったと言っても過言ではないと思います!そんな英雄扱いされてもおかしくない俺を極刑レベルの重罪人扱いですか!まったく、素晴らしい法制度ですね!尊敬します!」

 

 〈チリーン〉

 

「嘘です。全く尊敬してません。むしろ憎んですらいます」

 

「な、なるほど。もういいでしょう。被告人の言い分はよく分かりました。では検察官。被告人に国家転覆罪が適用されるであろう証拠の掲示を」

 

「わかりました。さぁ、証人をここへ!」

 

 

 セナが騎士に証人とやらを連れてこさせる。

 

 あ、あれ?見知った顔ばかりだ。

 

 

 ………不安しかない。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 証人その1、盗賊クリスの場合。

 

 

「なるほど、では証人は公衆の面前で下着を剥ぎ取られた挙句に有り金全部を奪われた、と」

 

「ま、まぁ、そうですね。あたしがこの人を挑発したのが悪いんですけどね」

 

 

 セナがそう言いながらメモを取る。確かに間違ってはいないが、もう少し言い方というものがあるのではないだろうか。

 

 

「証言は以上ですか?」

 

「はい」

 

「では、弁護人。発言を許可します。何か言うことは?」

 

 

 頼むぞ…!ヒデオ、めぐみん、ダクネス…!

 そう懇願するが、やはりパンツを剥ぎ取った罪は重かったようで。

 

 

「「「特にありません」」」

 

 

 3人とも見事にハモっていた。

 ちなみにアクアはまだのびている。

 

 あぁ…。心なしか周りの女性からの視線がゴミを見る目に…。

 

 俺がそう嘆いても、証人はまだいる。

 これが公開処刑か…!

 

 

 証人その2、魔剣使いミツルギとその一行の場合。

 

 

「とまぁ、このように自分から勝負をしかけて負けた訳ですから、悔しいですが納得はしています」

 

「なるほど…。そちらのお二方は、何か言うことはありませんか?」

 

 

 セナがミツルギの両隣にいた女の子にそう聞く。

 頼むから何も言ってくれるな…!

 

 しかし。

 

 

「公衆の面前でパンツを剥ぎ取ると言われました。自分は女性相手でもドロップキックを食らわせられる男だとも」

 

「その弁護側にいる男性にも服だけを吹き飛ばしてやるって脅されました」

 

 

 どんだけ恨んでんだよ…!ヒデオにまで飛び火してるし…。

 

 しかしいざという時には頼りになると俺の中で評判のヒデオ。ここまで言われて黙ってるつもりはないようで。

 

 

「異議あり!発言許可を求めます!」

 

 

 ビシッと右腕を挙げ裁判長に許可を求めるヒデオ。

 さぁ、言ってやれ!

 

 …ち、ちゃんと弁護してくれるよな?

 

 

「認めます。では弁護側、どうぞ」

 

「はい。先の発言についてですが、不備があります。確かに被告は男女平等主義を貫く公平な男を名乗り、パンツを剥ぎ取ると脅し、私は服だけを吹き飛ばすと脅したのは事実ですので否定はしません。しかし、そこまで言うに至ったのには理由があります。先程ミツルギ殿が2対1で私と被告人とで勝負をしたと言いましたね?そして敗北したとも。公平な勝負のはずが、彼女達はイチャモンを付けてきたのです。2人がかりなど卑怯だ、正々堂々戦え、とね。王都でも活躍する高レベル冒険者が当時駆け出しだった私たち二人に勝負を仕掛けてくる方が卑怯だと思うのですが」

 

 

 そう言い終えたヒデオは、ムフーと息を吐いた。

 よかった。杞憂だった。

 

 しかし、せっかくの証言を殆ど潰された二人はよく思っていないようで。

 

 

「な、なによ!卑怯なのは事実でしょ!」

 

「そうよそうよ!」

 

 

 苦し紛れにそう叫んでくるが、その程度でヒデオの口撃は止まらない。

 いいぞ、もっとやれ。

 

 

「卑怯…ですか。先程も言った通り、高レベル冒険者が駆け出しに勝負を挑む事自体卑怯かと。それに、貴方達はそんなミツルギ殿を止めようともせずただ見ていただけでした。それだけなら私達は文句は言いません。しかし、自分達が不利な状況に陥った途端に卑怯だ、などと喚き出すのは如何なものかと。その行為がミツルギ殿の品位を下げることになる行為だとわからないのですか?卑怯だという件についても私達はルールに則って勝負をしました。それに、貴方達は敵に合図をしてから攻撃するのですか?違いますよね?つまりそういうことです。はい論破」

 

 

 敬語と笑顔を崩さないヒデオ。

 敵に回すと怖いので気をつけよう。

 

 

「「うー…!」」

 

 

 ヒデオの正論に押し黙る二人。

 

 そのうーうー言うのをやめなさいって言ってるでしょ!

 

 

「べ、弁護人。発言は終わりですか?」

 

「いえ。私はまだ発言を残しています。この意味がわかりますね?」

 

「「ひっ…!」」

 

 

 ヒデオの容赦ないストレス発散が始まった。

 

 

 

 数分後。

 

 

「ぐ、ぐすっ!覚えときなさいよ!」

 

「絶対に許さないんだから!」

 

「ふ、二人共、行くぞ」

 

 

 泣きながら捨て台詞を吐く二人の背中をグイグイ押して退出するミツルギ。

 

 いやー。ヒデオがボロクソに言い負かしすぎててなんか女の子が可哀想に思えてきてたわ。

 

 

「フン。ムシケラが」

 

 

 最後までホント容赦無いのな。

 相手が何か言ってくる度に論破して「はい論破」って言ってたのには軽く引いた。

 

 

 証人その3、チンピラ冒険者ダストの場合。

 

 

 早速セナがダストを紹介する。

 

 

「裁判長もこの男は知っているでしょう。この男を紹介するとしたら、見ての通りチンピラです」

 

「んだと!その乳揉むぞコラァ!」

 

 

 キレるの早っ!

 まだ紹介されただけだぞ。沸点低すぎやしないか?

 

 ………こんなのと仲がいいって知れたら印象が悪くなるかもしれない。よし。

 

 

「あなたは被告人と仲がいいと聞きましたが、本当ですか?」

 

「あぁ。マブだマブ。そこにいるヒデオとも仲は良いぞ」

 

「ふむ。被告人、弁護人。このチンピラと友人なのですね?」

 

 

 セナが俺達に聞いてくる。

 恐らくチンピラとつるんでるから俺の素行も悪いってな感じで印象を下げに来るのだろう。

 

 だが、そうはさせない。

 ヒデオとアイコンタクトをとり、嘘発見器に引っかからない程度に誤魔化しを言う。

 

 

「知り合いです」

 

「顔は見たことあります」

 

「ひでぇ!」

 

 

 魔道具は鳴らない。

 まぁ嘘は言ってないしな。本当の事も言っていないが。

 

 

「な、なるほど…。これは失礼しました。付き合っている人間は素行の悪い人間ばかりだという主張がしたかったのですが…」

 

「いいんですよ。知り合いってのは事実ですし」

 

「人間誰しも間違いを犯すものですよ」

 

「俺達の友情はこんな浅いもんだったのかよ二人共!あったまきた!ヒデオがいるから喧嘩じゃ勝てねぇがネチネチと嫌がらせしてやるからな!」

 

 

 そう喚きながら騎士に退出させられるチンピラ。

 あいつ、誰だったかな?刹那で忘れちゃった。

 

 

「最後の証人はあてになりませんでしたが、今の証人たちは被告の人間性が悪い事を示すのに充分だったと思います。さらに、被告は被害者に対し恨みを持っていました。これらのことから、被告は事故を装いランダムテレポートではなく通常のテレポートでコロナタイトを送り付けたのではないか、と」

 

 

 ひっでぇ。言い掛かりにも程がある。

 素行だけで言えばあの悪そうな領主もなかなかヤバそうな顔と体型をしてるけどな。

 

 

「異議あり!発言許可を!」

 

「認めます」

 

 

 ヒデオが若干声を荒らげながら手を挙げる。

 こいつ怒ってない?心なしか空気が揺れてる気がするんだが。

 

 

「確かにカズマの性根が腐ってるのは認めるが、だからといってこんな言い掛かりを付けられては困るな!もっとマシな根拠持ってこい!そもそも通常のテレポートってのは場所を登録しないとダメなんじゃなかったか?わざわざウィズがそんなおっさんの家を登録すると思うのか!よく考えたら分かるだろ!そんなんだから彼氏の1人も出来な……いってサトウカズマ君が言ってました」

 

 

 おいセナに凄い目つきで睨まれたからって手のひら返して俺のせいにするな。

 

 

「おっさ…!おほん!根拠?いいでしょう!テレポートの件はともかく、根拠を出しましょう!この男がテロリストもしくは魔王軍の手先ではないかという根拠を!それと私事ですが後でサトウカズマさんとタナカヒデオさんにはお話があります」

 

 

 セナさん怒ってるじゃないか!ヒデオ!謝りなさい!

 

 まぁそれは置いといて。

 

 セナ曰く、対ベルディア戦で洪水を引き起こし民家と正門を破壊した。

 

 曰く、共同墓地に結界を張り悪霊騒ぎを引き起こした。

 

 曰く、爆裂魔法と謎の光により地形や生態系を変えた。

 

 ……うん。

 完全にテロリストですね。俺の仲間が。

 

 心当たりのあるサイヤ人と頭のおかしい爆裂娘はひゅーひゅーと口笛を吹いてあらぬ方向を見ている。アクアはまだのびている。

 

 もういい。こんな奴らほっとけ。俺の弁護は俺がする。

 

 

「おかしいじゃねぇか!今挙げたのは、俺の仕業じゃないじゃん!いや確かに俺の仲間の仕業だけども!俺に関する根拠をだしんしゃい!」

 

 

 そんな俺の悲痛な叫びに応えるようにセナが言う。

 

 

「そして、被告人サトウカズマはアンデッドにしか使えないスキル、ドレインタッチを使用していたという証言があります!あなたが魔王軍関係者ではないというのならーーーー耳を塞いでも無かったことには出来ませんよ!」

 

 

 いーや!なんも聞こえないね!聞いてない!聞いてないから無効だ!

 無駄な抵抗を続ける俺たちに止めをさすようにセナが指を突きつけ。

 

 

「そして、最も大きな根拠として、取り調べの際に魔王軍の者との交流はないのかと聞きました!あなたが交流は無いと言った時に魔道具が嘘を感知したのです!これこそが確たる証拠ではないでしょうか!?」

 

 

 ヤバイヤバイヤバイ!逃げるか!?

 

 今まで率先して弁護していたヒデオすらも、この証拠は予想外なのか目を丸くしてこちらを見ていた。

 あぁそうだよ!取り調べの時にウィズの事を思い浮かべていた馬鹿は俺だよ!

 

 半ば諦めてどうやってここから逃げるか考えていた、その時だった。

 

 

「それは違うわ!」

 

 

 その声は、いつの間にか起きていたアクアのものだった。

 

 そうだ!言ってやれ!

 普段だらしない分ここで活躍しろ!

 

 

「そうだ言ってやれ!俺が無実だっていう確たる根拠を!」

 

「はぁ?なに言ってんのカズマ。そんなものある訳ないじゃない。今のはこのセリフが言いたかったあだだだだ!!やめ、やめてヒデオ!無意味なことしないって約束破ったのは謝るから!ゆ、許して!だから頭を握り潰そうとしないで!痛い痛い痛い!」

 

 

 このクソ女神!!

 期待した俺が馬鹿だった!そのままヒデオに握られてろ!

 

 しかし、こんなくだらないやり取りをする俺達に痺れを切らしたのか、今まで見る専を決め込んでいた領主が。

 

 

「もういいだろう!その男はワシの家に爆発物を送り付けた!間違いなく魔王軍の関係者だ!殺せ!死刑にしろ!」

 

 

 ヤバい。

 最悪の事態だ。このままだと領主権限とかで本当に死刑にされかねん。

 すると、ヒデオが諦めたような顔をして俺の肩に手を置き。

 

 

「大丈夫だカズマ。リザレクションがある」

 

「頭おかしいだろお前」

 

 

 ただの鬼だこいつ!

 このアホは置いといて。

 おっさんの発言によりチャンスが出来たのでそれを利用させてもらう。

 

 

「おいお前ら!そこの魔道具をよく見とけ!いいか、言うぞ!俺は魔王軍の関係者ではない!!テロリストでもないし、わざと送り付けてもいない!」

 

 

 俺の渾身の叫びが室内に響き渡る。

 

 皆が魔道具を見るが、鳴らない。

 

 検察側の人間はセナや領主を筆頭に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。よし!

 

 魔道具での結果を証拠にするというならこちらもその手を使うまでだ。

 

 この結果を見て、裁判長はゆっくりと首をふり。

 

 

「このように魔道具を使った嘘の判別は曖昧なものです。これでは、これの反応を理由とする検察官の主張は証拠と認めるわけには行きません。あまりに根拠が薄すぎる。よって、被告人への嫌疑は不十分とみなしーー」

 

 

 裁判長が俺の無罪を言い渡そうとしたその時。

 

 

「もう一度言う。そいつは魔王軍の関係者。死刑にしろ」

 

 

 領主の横暴な発言に対してセナが。

 

 

「いえ、今回の事件では怪我人もなく、死刑にするほどでは…」

 

 

 そう告げられた領主は、セナの方をただじっと見つめた。すると。

 

 

「…いえ、そうですね。死刑にするべきです」

 

 

 なん…だと…!?

 一体何をやったんだこのおっさん!

 この謎の現象にアクアとヒデオがなにか感じ取ったらしく。

 

 

「おいおっさん!今なんかしただろ!何かはわかんねぇが、かなり強い気を感じた!」

 

「えぇ!邪な力を感じたわ!悪しき力で何かしたわね!」

 

 

 2人が領主に食ってかかるが。

 

 

「気?悪しき力?知らんな」

 

 

 魔道具が鳴らない…?本当のことを言ってんのか?

 

 

「あっ!今もなにかしたわね!邪な力をまた感じたわ!」

 

「知らんものは知らんと言っておろう!裁判長!早く判決を下せ!」

 

 

 マズイマズイマズイ!!

 

 

「はい。被告人、サトウカズマ。あなたの行ってきた度重なる悪行を鑑みるに、検察官の訴えは妥当と判断。よって判決は…」

 

 

 さっきとは真逆のことを言う裁判長。

 一体どうなってやがる…!

 

 

「死刑とする」

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 おかしい。さっきまで裁判長やセナも死刑にすべきでは無いと主張していたのに、あのおっさんが見つめた途端に意見を覆しやがった。

 

 

「おかしいだろぉぉぉ!!もっと確たる証拠を持ってこいクソッタレ!!コロコロ判決を変えるテメェらに裁判長と検察官を名乗る資格はねぇ!頭おかしいんじゃねぇか!?」

 

「被告人は発言を慎むように!」

 

 

 裁判長が声を荒らげながらそう言うが、納得がいかないものはいかないのだ。

 

 

「よろしい。それほどカズマをテロリスト扱いすると言うならば、私が真のテロをお見せ…うわ!なにをするんですか!離してください!セクハラですよ!」

 

 

騎士に抑えられるめぐみんの隣で。

 

 

「全員血祭りに上げてやる…!!」

 

 

 髪の毛を逆立て大気を震わせながらそう言うヒデオ。

 

 ヤバイ。こいつキレそうだ。下手したらこの場にいる全員死ぬ!

 

 

「おいアクア!ヒデオを止めるぞ!こいつマジでやりかねん!」

 

「わかったわ!」

 

 

 アクアと2人がかりで尻尾を掴む。

 暴れるなよ…!

 

 

「ぬぅ…!離せカカロットォォォー!」

 

「誰がカカロットだ!」

 

 

 ひとまずこのブロリーもどきは鎮めることができた。

 だが、肝心の死刑判決がどうにもなっていない。

 

 どうやってこの場を切り抜けるか考えていると、今までずっと黙っていたダクネスがスタスタと裁判長のところへ行き。

 

 

「裁判長、これを」

 

 

 なにやら高級そうな材質の紋章がついたペンダント。それを見た裁判長は目を見開き。

 

 

「そ、それは…!も、もしや貴方様は…」

 

 

 皆の注目を浴びながらダクネスは静かに。

 

 

「この裁判、私が預からせてもらいたい。無かったことにしようとしているのではない。少し時間が欲しい。その間に必ずこの男の無実を証明してみせる」

 

 

 かつて無いほどに頼りがいを見せた。

 

 

 ……どうする気だ?こいつ。

 

 

 




今回こそは一万行くと思ったのに…


・アレクセイ・バーネス・アルダープ
欲の権化のデブ。性欲が強い
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