この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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ネタを豊富に入れたい。


第三十話

 セクハラサイヤ人 ヒデオ

 

  VS

 

 魔王軍幹部 バニル in ドMクルセイダーダクネス

 

 

 戦闘が始まり何分経っただろうか。

 依然決着は着かないが、身体能力の差でヒデオが押している。

 

 

「ずぁっ!」

 

「ぐっ![あぁ…!イイぞヒデオ!もっと深く!もっと強く!]やかましい!黙っておれ!」

 

 

 ヒデオがバニルの剣戟を掻い潜り鳩尾に拳を叩き込み、それを喰らいダクネスが悦ぶ。

 

 うわぁ、あんなん食らったら内臓潰れる…。

 

 

「くっそやりづれぇ!ダクネス!お前もう黙れ!」

 

「[はぅっ!この快感に声を我慢しろと言うのか!貴様、どこまで…!]」

 

「あぁもうわかった!黙らなくていい!」

 

 

 そう叫びながらバニルの攻撃を避けるヒデオ。

 

 折角の魔王軍幹部との戦闘なのにあのドMのせいでなかなか戦闘に入り込めないでいる。

 

 さっきまでの緊張感は何処へ…。

 

 

「小僧、この程度か![そうだぞヒデオ!もっと私を楽しませろ!]」

 

「カズマ!俺帰りたくなってきた!」

 

 

 その気持ちは痛いほどわかる。

 

 

「我慢してくれ!魔王軍幹部を倒すまたとないチャンスなんだ!こいつを倒したら借金を帳消しに出来てお釣りも来る!」

 

「あぁ、もう…!くそっ!これでも喰らえ!」

 

 

 ヒデオが太陽拳の構えを取る。

 やってしまえ!

 

 

「太陽ーーーー」

 

「何をする気だ?[バニル!あれは目潰しだ!]なに!」

 

 

 おい待てドM!何を言ってるんだお前は…!

 

 ダクネスの言葉を聞き、瞬時に顔を隠すバニル。

 あのアホ…!

 

 

「ーー拳!」

 

 

 カッ!!

 

 眩い光が放たれるが、ダクネスのせいでバニルには効いていない。

 

 

「隙ありだ小僧![あぁ…すまんヒデオ!戦いが長引けばいいと思ってつい!]よくやった小娘![敵に褒められるこの背徳感…!堪らん!]…そ、そうか」

 

 

 一瞬の隙を突かれ一撃を貰うヒデオ。

 いやほんと、何してんのあの子。

 

 

「ぐっ…!おいダクネス!てめぇなにしやがんだゴラァ!」

 

「[あぁ…!普段優しいヒデオが私に怒っている…この調子で行けばもっとすごいことをしてくれそうだ…!]お主らも、大変であるな…」

 

 

 同情してくる地獄の公爵。いや、ほんと、うちの子がすいません…。

 

 

「カズマ…。もう戦いたくないと思ったのはこれが初めてだ…!帰りたい…!」

 

 

 ヒデオが泣きそうになりながらそう言ってくる。

 うん。俺も帰りたい。

 

 

「[さぁ!カメハメハを喰らわせてみろ!ほかの技でもいいぞ!]カメハメハ?どこかの大王みたいな名前であるな」

 

 

 カメハメハ大王。

 

 

「あぁわかったよ!そんなに欲しいなら望み通りぶち込んでやるよ!頼むから死ぬなよ!イクなよ!」

 

 

 願いが悲痛すぎる。

 これが終わったら飯奢って労ってやろう。

 

 

「[それは保証しかねる!さぁ来い!]ほほう。この小娘がそこまで期待する技、受けてやろう!」

 

 

 大剣を地面に突き刺し踏ん張る構えをとるダクネス(バニル入り)。

 心なしか顔がにやけている。

 あぁ、そういや何度もヒデオに頼み込んでたけど、結局断られてたもんな。

 

 

「か、め、は、め…!!!」

 

 

 おなじみの構えと掛け声で気を溜めるヒデオ。若干涙目になってるのは気のせいだろう。

 

 

「[ワクワク、ワクワク…!]期待の感情…。おっと、小僧の方はイラついておるな。頂こう」

 

「波ーーー!!!」

 

 

 ボゥッ!!

 

 

 ヒデオの両手から放たれたかめはめ波は、瞬く間にダクネス(バニル入り)の体を飲み込んだ!

 

 

 

 太陽拳とは違う眩い光。さらに衝撃波が響き、土煙が巻き起こる。

 

 

 

 

 しばしの静寂。

 

 

 

 

 土煙が晴れると共に笑い声が聞こえてくる。

 

 

「フハハハハ!素晴らしい攻[くっ…!あぁ…!素晴らしい攻撃だ…!こんなものがこの世に存在したとは…!もうこれ無しでは生きていけないではないか!!どうしてくれるヒデオ!]…最大級の悦びの感情。小僧、同情するぞ」

 

 

 かめはめ波の直撃を喰らいながらも未だ健在のバニル。そして声だけでもかなり悦んでいるとわかるダクネス。

 そしてヒデオはと言うと…。

 

 

「俺はもう…戦わん…」

 

 

 セル編後の王子みたいな事を言いながら肩を落としていた。

 

 いや無理を承知で戦ってくださいマジで。

 あの子止めれるのあなたしか居ないんです。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 ヒデオが戦わない宣言をした後も戦闘は続いた。ダクネスの欲望も全開だった。

 

 

 その結果。

 

 

「やめろー!早まるなヒデオー!!」

 

「うるせぇカズマ!!もう俺はこの世界を滅ぼす!!魔王軍も人間側も関係ねぇ!俺こそが真の破壊神だ!!」

 

 

 もう色々と精神的に限界が来たヒデオは、辺り一帯を吹き飛ばしその後に世界を滅ぼすと言い始めた。

 

 今は数10m上空でジャイアントホーネット後に覚えたらしいギャリック砲の構えをしている。

 曰く、かめはめ波より基本威力が高いそうだ。

 

 というか悠長に解説してる暇はない。

 今は無理でもこいつなら将来的に世界を滅ぼせそうだから困る。どうにかして止めないと。

 

 考えていると、破壊神を名乗るヒデオにめぐみんが食ってかかった。

 

 

「なっ…!破壊神の座は譲りませんよヒデオ!!」

 

 

 違う。そうじゃない。

 そんな事を言って刺激するんじゃない。

 

 この事態の元凶のダクネスとバニル(主にダクネス)も、ヒデオを説得しにかかる。

 

 

「は、早まるな小僧!それをした後には何が残る!見通す悪魔の我輩が予言する!辞めるのが吉である![そうだヒデオ!考え直せ!わ、私でよければ何でも言うことを聞いてやるから!]」

 

「余計キレるからお前は黙っとけこのド変態が!!」

 

「[くぅっ…!こんな状況なのに容赦ないなカズマは!よく考えてから発言しろ!]」

 

「お前には言われたくねぇよ!!」

 

 

 誰のせいでこんな状況になってると思ってんだ!!

 

 

「もういい!お前に反省の色が見えないのはわかった!」

 

「あぁ!やめてヒデオ!やるならせめて私がいない時にして!」

 

 

 この状況で何を言ってんだこの駄女神は!

 

 この間にもヒデオは気を高め続けている。

 やばいやばいやばいやばい!

 

 

「カズマもろとも、経験値の糧となれーー!!」

 

「なんで俺!?」

 

 

 俺は何もやってないのに!

 

 

「ギャリック砲ーーー!!!!」

 

 

 ズォアッ!!!

 

 

 地面に向けて放たれた薄い紫色の光を発するそれは、真っ直ぐに落ちてきた。

 

 あ、終わった。

 

 

 が。

 

 

「[そうはさせんぞ!]なっ!この小娘、乗っ取られながらも体を動かせるか!」

 

 

 両手を光に向けて突き出したダクネスが、ヒデオのギャリック砲を受け止めた!

 

 いや、受け止めたと言うより抑えていると言う方が正しいか。

 

 凄まじいエネルギーを両腕だけで抑えているダクネスはとても辛そうだ。

 

 

「[くっ…!はぁ…はぁ…!さっきのカメハメハより何倍も強い!!素晴らしい、素晴らしいぞヒデオ!それに、私が止めないと行けないのに悦んでいるというか背徳感がさらに堪らん!くはぁっ!]…もはや何も言うまい。し、しかしこのままでは我輩もマズイ。頑張るのだ小娘!」

 

 

 否。めちゃくちゃ悦んでますね。

 この子、一回頭の病院に行ったほうがいいと思います。

 

 というか、この場合どっちを応援すればいいんだ?このままダクネスが耐えきれなかったら俺ら死ぬし、耐えたら多分負ける。

 

 …よし。

 

 

「頑張れダクネス!出来るだけギリギリで耐えてくれ!その方が後で楽だ!」

 

「[元よりそのつもりだ!こんな素晴らしい攻撃、すぐに終わらせては勿体ない!]」

 

 

 耐えるダクネス。

 

 

「しぃぃずめぇぇぇ!!!」

 

 

 ヒデオの渾身の叫びと共に、ダクネスを紫色の光が包み込み、衝撃波と爆風が俺達にも襲いかかった!

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 何分気絶して居ただろうか。

 周りを見ると、カズマ達が倒れているのが見えた。

 やり過ぎたな…。

 

 

「がっ…!こ、ここまで追い込まれるとは…!だが、まだだ、まだ終わらんよ!」

 

 

 未だダクネスの身体に憑依したバニルは健在の様で、ヨロヨロと立ち上がる。

 鎧は修理ができそうにないくらいボロボロだし、大剣も折れてしまっている。お札も消し飛んだようだ。

 

 幸いと言うべきか、ダクネス本体は気絶しているようだ。

 

 

「あれ喰らってまだ生きてんのかよ…。ダクネスもお前もバケモンだな」

 

 

 立ち上がりながらバニルにそう言う。

 

 

「フッ。一番のバケモノが何を言うか。威力は少し及ばないにしても速度と射程においては爆裂魔法より脅威な技をポンポンと放たれる身にもなってみろ」

 

「そうポンポンは撃てねぇよ。今日は撃てて後一発だ」

 

「そうか。ならまだ戦えるという事であるな」

 

 

 マジかコイツ。もうダクネスの身体限界だろ。

 

 

「その身体で戦えんのかお前。もう動くのがやっとだろ」

 

「フハハハハ!何を言っている!貴様と戦うのではない!貴様で戦うのだ!」

 

 

 そう叫びダクネスの顔から仮面を外し俺の方へ投げてくるバニル。

 良かった、ダクネスの顔には傷は付いてないな。嫁入り前の顔に傷付けたとか親父さんにぶっ殺される。

 

 

「フハハハハ!小僧!貴様の身体、貰い受ける!」

 

 

 かなりの速度を出して飛んできたバニル(本体)。

 

 

 それを……

 

 

「がっちりキャッチ!」

 

「なっ!」

 

「その程度の速度見切れねぇとでも思ったか!残念でした!」

 

 

 バニル(本体)をしっかりと両手で掴む。

 

 元はといえば、こいつがダクネスに憑依したからこんな面倒臭い事になったんだよな…。思い返したら無性に腹が立ってきた。

 自然と仮面を掴む両手に力が入る。

 

 

「こ、小僧!考え直せ!仮面を握り潰そうとしても無駄だ!ヒビが入る程度だ!我輩レベルの悪魔を滅するには、神々の力と爆裂魔法以外には無い!もう一つあるが、これは人間には不可能な方法だ!仲間のプリーストもアークウィザードも気絶してしまっている!貴様に我輩を倒す方法はない!諦めて仮面を離せ!」

 

「そのもう一つって、同じ魔族の力、だろ?つい最近使えるようになったんだよ。残念だったな!フハハハハ!ざまぁ!」

 

「なっ…!」

 

 

 そう叫び、バニルを遥か上空へぶん投げる。

 

 

「死ね!!魔閃光ーー!!!」

 

 

 ボッ!!

 

 

 残る全ての気を注ぎ、バニルを塵にした。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 ヒデオがバニルを消し飛ばし、丸三日が経った。

 

 今朝やっとダクネスが起きた。ヒデオと一悶着ありかけたが、そこはまぁまぁと諌めた。

 

 そう言えばギルドから呼び出しがあったな。恐らく報酬の件だろう。

 

 

 仲間達を連れギルドに向かう。

歩いていると、ふとダクネスが言葉を漏らす。

 

 

「今回はめぐみんの方が大した活躍も無かったな」

 

「なっ…!仕返しのつもりですかダクネス!今回はヒデオに譲っただけです!あんな悪魔如き、爆裂魔法で簡単に塵に出来ました!」

 

「塵にしてないじゃないか。私の身を挺してこその勝利だったな。あぁ、思い出しただけでも鳥肌が…!」

 

「ぐぬぬ…!」

 

 

 めぐみんの悔しそうな顔を見てあの時の攻防を思い出したのか身を震わせるダクネス。

 そんなダクネスに隣を歩いていたヒデオが物申す。

 

 

「憑依相手がお前じゃなけりゃアクアの退魔魔法で一発だったのによ。魔王軍幹部と戦えたのは楽しかったが、水を差すどころかぶっかけてきやがって」

 

「そ、それは申し訳ないと思っている!その代わりと言ってはなんだが、わ、私の身体を」

 

「いらない」

 

 

 ヒデオに即答され、複雑な表情を浮かべながらも身をよじるダクネス。

 もう俺は何も言わんぞ。

 

 

 そんな感じで喋りながら歩いていると、いつの間にかギルドに着いた。

 

 ドアを開けて入ると、冒険者達がワッと盛り上がった。どうやら俺達の活躍(主にヒデオ)は知れ渡っているらしい。

 

 

「カズマ、良かったな!これで借金生活から脱出できるな!」

 

「なんか奢れよ!」

 

 

 そんな感じで表現は違えど口々に祝ってくる。こういうのがあると幹部を倒したんだなって実感が湧く。

 

 

「お待ちしておりました。サトウカズマ様御一行殿」

 

 

 受付嬢とギルドの職員が総出で出迎えてくれた。

 

 

「この度は魔王軍幹部バニル討伐、おめでとうございます。早速報酬をお渡ししたいと思います。領主様の屋敷の修理代金と、借金を差し引いて占めて5千万エリスになります。どうぞお確かめください」

 

 

 深々と頭を下げ賞金を渡してくる受付嬢。

 

 受け取ろうとするが、なかなか離してくれない。

 このっ!このっ!

 

 

「ふ、ふぅ…。ありがとうございます。よし…これで借金生活から一転、小金持ちになったぞ…!」

 

 

 ようやく借金生活から抜け出せた。やっと、やっとスタートラインだ…!

 

 この日は気分が良かったので、ギルドで宴を開いた。

 俺の奢りで。

 

 

 ちなみに報酬を分ける時に少々揉めたが、MVPのヒデオがきっちり均等に分けると言い出してくれたので事なきを得た。

 

 優しいね。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 賞金を受け取った翌日、ウィズの店に皆で謝罪に行く事になった。

 

 どうやら友人のバニルを倒した件についてらしい。

 

 俺は行かなくていいと言ったが、カズマ達、主にダクネスが行くと言って聞かなかった。

 

 いや、嫌な奴だったから行かなくていいとかじゃないんだよ。

 

 だってよ…。

 

 

「へいらっしゃい!おや、尻尾付きの小僧。イラついておるな。頂こう!」

 

 

 普通に生きてるもんな、こいつ。

 

 あの時確かに完全に消し飛ばしたが、翌日になると全く同じ気がひょっこり現れた。

 なんでもありかこの悪魔。

 

 殺気を込めた視線で睨みつけているが、そんなのは意に介さないとばかりにカズマの方に向き直る。

 

 

「冒険者の小僧。お主、手に入れた賞金を元手に何か商売を始めるそうだな?見通す悪魔の名において予言しよう。その商売、我輩と協力するのが吉である!」

 

 

 胡散臭い言葉と気味の悪い笑みを添えて。

 

 

 こいつ、いつかもう一回ぶっ殺してやる!

 

 




このペースで行くとすぐにストックがつきそう。感想待ってます!


・バニル
地獄の公爵にして魔王軍幹部。大抵のことは出来る。人をからかうのを生きがいにしている。残機がなくならない限り復活可能。


・ギャリック砲
威力がかめはめ波より数倍高い。かめはめ波基準でいうとビームが細く薄紫色。不死王拳との相性は悪いので強化できない。


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