この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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タイトル詐欺


第三十三話

 

 

 

 〇月✕日。天気は快晴。心地よい気温。

 

 

 今日から観察日記、というか報告書をつけていこうと思う。

 観察対象はタナカヒデオ。17歳独身。職業は冒険者で、クラスはコンバットマスター。一見普通のヒューマンだが、尻尾が生えているところを見ると獣人の一種と思われる。本人曰く、サイヤ人という種族らしい。色々と調べてみたが、そんな種族が居るという記録はどこにもなかった。怪しい。

 現在はサトウカズマという男のパーティーで、4人の仲間達と共にアクセルの街外れの屋敷に住んでいる。

 

 街の方々からの評判を聞くと、『怒らせるとヤバイ』『尻尾が弱点』『巨乳が好き』『大食い』『ちくわ大明神』『空を飛ぶ』『アクセルでセクハラといえばヒデオかカズマ』『ジャイアントトードを素手で殴り殺せる』『虫が大嫌い』『強敵と戦うことに興奮を覚えるニュータイプの変態』『時々豹変したように頭がおかしくなる』『つよい』等、様々な評価をされていた。

 

 空を飛ぶのは私も直に見たが、何が起きていたのか全く理解出来なかった。

 

 これからも観察を続けるので、何かあったらここに書くようにしようと思う。

 

 

 

 〇月□日。天気は曇り。ジメジメする気温。

 

 

 信じられない事が起きた。

 なんと観察対象が単独で魔王軍幹部のバニルを撃破したのだ。この目で見たから間違いない。

 仲間の身体に憑依したバニルを容赦なく攻撃し、激闘の末撃破した。あの男には仲間に対する情というものがないのか?

 戦闘中に仲間もろとも消し飛ばす宣言をしていたし、本当の悪魔はこの男ではないのだろうか。

 

 しかし、彼の人間性はともかくとしても、魔王軍幹部を単独で撃破したのは事実。これからも観察を続ける必要がありそうだ。

 

 

 

 〇月▽日。天気は晴れ。そこそこ暖かい気温。

 

 

 バニル戦後にもっと観察する必要があると思い、尾行を始めた。それは良いのだが、この男、かなり追跡しにくい。

 まず歩く速度が早いし、急に角を曲がったかと思えばすぐに折り返して元の道に戻ったり、ふと思い立ったように空を飛び始めたりする。

 

 もっと尾行側の気持ちも考えて欲しい。

 

 尾行を始めてわかったことと言えば、チンピラに慕われているという事だ。『ヒデオさん、ちゃっす!』『お世話になってます!』『ヒデオさん!荷物お持ちしましょうか?』

 などと言われていた。終始鬱陶しそうにしていたが、そのチンピラ達に絡んで来た別のチンピラをボコボコにしていた所をみると嫌ってはいないのだろう。

 

 彼らとどういう経緯で仲良くなったのかも調べる必要がありそうだ。

 

 

 

 

 〇月△日。天気は快晴。少々肌寒い気温。

 

 

 今日は彼らのパーティーにクエストを依頼した。リザードランナーの群れをどうにかしてほしいとのクエストだ。

 表向きは魔王軍幹部討伐の実績を買っての依頼だが、実際は観察するための方便だ。

 

 それは良いのだが、なんと尾行がバレていた。

 

 この男は本当に何者なんだ?聞いてもサイヤ人としか答えてくれないし、何か言えない理由があるのだろうか。ますます怪しい。

 

 クエストの完了を報告された時に格好がやたらとボロボロで煤だらけだったので何があったか聞くと、危うく爆裂魔法が直撃するところだったそうだ。

 直撃していないとはいえ爆裂魔法に耐えるとは信じられない。この男は本当に人間なのだろうか。

 

 新しくわかったことといえば、パーティーメンバーが飼っている猫に懐かれているということだ。彼の尻尾を気に入っているらしいが、そんなに気持ちいいのだろうか。

 

 

 …触ってみたい。

 

 

 

 

 〇月〇日。天気は晴れ。普通の気温。

 

 

 

 またもや信じられない事が起こった。

 

 この男、殺し合ったはずの元魔王軍幹部バニルと楽しそうに談笑していた。

 もう敵対していないとはいえ、殺し合った相手と仲良くするなど正気の沙汰では無い。

 

 談笑した後に飛んでどこかに行ったかと思えば、数十分後に仲間のアークウィザードと裁判の時に出廷していたクリスという少女を背中に乗せどこかへ飛んで行った。

 

 その翌日の新聞で豊胸ポーションの生産中止が報道された。まさかあの男が…?

 

 

 今回の件も含め、まだまだ観察を続ける必要がありそうだ。

 

 

 

 

 日記はここで終わっている。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 す、すごいもの拾っちゃった…!

 

 これはヒデオさんに言うべきなのか、持ち主さんに届けるべきなのか、私が責任をもって処分するべきなのか…。

 人の日記勝手に見ちゃったけど、怒られないよね…?これは事故!そう、事故なの!

 けど一応誰にも言わないでおこう。

 

 日記を読んでいて思ったけど、ヒデオさんって私と違って交友が広いんだなぁ…。羨ましいや。

 

 いや、ないものをねだっても仕方ないわよ私!あるものを大切にすればいいんだから!

 今日はヒデオさんとクエストに行く約束してるし、無い物ねだりしてる暇なんてないわ!しっかりと活躍しないと!

 

 頑張ろう!私!

 

 …けど、私もちょむすけみたいにヒデオさんの尻尾をモフモフしてみたいなぁ。

 

 ちょむすけがちょっとだけ羨ましい。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 クエストの森。

 

 

 はい、また森です。虫が多いから嫌なんだけど、ゆんゆんと来れそうなのがこれくらいしか無かった。ウチのギルド品揃え悪すぎ。

 

 森に着いてからずっと無言で歩いてるのは良いんだが、ゆんゆんに尻尾をジロジロ見られてる気がする。気になるのか?

 それはともかく、今回のクエストは高級食材ソークロコダイル。通称『ワニノコ』。

 一体誰がこんな版権に引っかかりそうな名前広めたんだって思ったが、広めたのが黒髪黒目の強い奴と聞いて納得。

 

 なんでもこのワニはノコギリのような歯でなんでもギコギコ斬って捕食するそうだ。

 基本的に草食だが、肉も食える。森に住んでるだけあって草や木に擬態するのがかなり上手いらしい。

 しかし森には天敵もいないし主食も植物なので、あまり使う機会が無い。宝の持ち腐れとはこの事か。

 

 その肉はしっとり柔らかく程よい脂肪もあって大変美味しい上に、植物ばかり食べているせいかわからないが、何故か食物繊維とビタミンが豊富らしい。ベジタリアンの間ではこいつを肉とみなすか野菜とみなすかで議論が分かれるそうだ。

 骨は丈夫だが加工しやすく長持ちするので、建材として重宝されるらしい。ちなみに歯は最高級ノコギリとして一級の大工達が好んで使うらしい。皮はまぁ言わずもがな。

 

 奥へ奥へと進んでいると、ゆんゆんが話し掛けてきた。

 

 

「ヒデオさん。一つ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

「このくらいのクエストならヒデオさんの強さを以てすれば余裕だと思うんです…。誘ってくれたのは嬉しいですけど、わざわざ私を誘わなくても大丈夫だったんじゃ…」

 

 

 そう言ってくるゆんゆん。

 全くこの子はもう…。

 

 

「何だ、そんなことか。単純だぞ。1人だと寂しいからな。けど、野郎とふたりきりとかはゴメンだ。一緒に行くなら女の子の方がいい」

 

 

 ゆんゆんならそこそこ戦えるし安心。

 

 

「そ、そうなんですね…。私、女の子で良かったです」

 

「ははは。そう言ってくれるとありがたいな」

 

 

 そんなこんなで談笑しながら奥へ奥へと進んでいく。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「待ちやがれ!このワニ!」

 

「ひ、ヒデオさん!速いです!あのワニ速いです!それに、上手いこと擬態してて分かりづらいです!」

 

 

 ワニを発見したは良いが、目が合った途端逃げられた。臆病なのか?

 

 逃がす訳にはいかないので、ゆんゆんを背中に乗せ飛ぶ。

 

 

「ゆんゆん!そっから魔法で攻撃できるか?」

 

「擬態が上手くて狙いが定まりません!どうしましょう!」

 

 

 気の感知があるとはいえ、逃がすのはめんどくさい。絶対にここで倒す。

 

 

「いや、当てなくていい!えぇと、十四時の方角、10mくらいに攻撃してくれ!」

 

「はい!『ライトニング』!!」

 

 

 ゆんゆんがそう唱えると、雷が発射される。

 ピリッと来たがまぁ大丈夫だ。

 

 雷はワニの前に着弾し、ワニは足を止めた。今だ!

 

 

「もう一回だ!次は当てろ!」

 

「はい!『ライトニング』!」

 

 

 再度放たれた雷が今度はワニの身体に直撃した。雷に撃たれたワニは身体が痺れて動けないようだ。しめた。このまま捕獲しよう。

 

 

「ゆんゆん、捕獲するからスリープを」

 

「はい!『スリープ』!」

 

 

 ゆんゆんを降ろし、かけられたら眠ってしまう魔法をかけてもらった。これで当分起きないだろう。

 持ってきていたロープで縛り、身動きを取れなくしてから持って帰ろうとしたその時。

 

 

 ドスッ

 

 

 地面に矢が刺さった。角度的に見て前からだろう。気の感知の範囲を広げるが、何も引っかからない。

 ちっ、潜伏持ちか。

 

 とりあえずゆんゆんを背中に庇い、矢の方向を注視する。

 

 

「ゆんゆん、一応魔法使えるようにしといてくれ。人間の仕業だろうけど、敵対してるかもしれん」

 

「は、はい!」

 

 

 そう言われ身構えるゆんゆん。さて、どうするか。

 気円斬で木を斬り倒すことも考えたが、万が一人に当たって死んだら後味悪い。

 狙いがこのワニにしろ俺たちの身ぐるみにしろ、喧嘩売ってるなら買うまでだ。

 

 

「おい!目的はなんだ!1人でいいから出て来い!事と次第によってはこの辺り一帯ごと消し飛ばす!」

 

 

 もちろんただの脅し。こんなのが通用するかわからないが、念の為だ。

 

 数秒待つと、潜伏スキルを解除したのか気がポッと出て来た。多分これだけじゃないな。まだ居る。

 

 

「それは困ります!私達、そのワニを食糧にする為に来て、ちょうど倒れてたからトドメを刺そうと思って…!」

 

 

 そう言いながら出て来たのは10代後半くらいの冒険者の格好の女の子。怯えているように見える。

 しかし、女か。やりづらいな。

 

 

「悪いけど、こっちも仕事なんでね。このワニノコはあげる訳にはいかないな。苦労して捕まえたしな」

 

 

 そう言いながらも警戒は緩めない。

 

 

「そんな…!そのワニノコの肉が無いと、村で待ってる人達が…!」

 

 

 スンスンと鼻をすすりながらそう言う女の子。

 怪しいなぁ、と思っていると、ゆんゆんが。

 

 

「あ、あのヒデオさん…?ヒデオさんさえ良ければなんですけど、ワニノコ、あげちゃっても良いんじゃ…。泣いてますし…」

 

 

 何この子優しすぎない?初対面の人に高級食材あげるとかそうそう出来ないよ?

 しかし、ゆんゆんには悪いがここはキッパリと真実を告げよう。

 

 

「あいつの言ってる事が本当ならあげてもいいんだが、そうじゃないからな。よく考えてみろ。こんなへんぴな森にわざわざ村から狩りに来ると思うか?この辺りに村があるって話は聞いたことないし、そもそも森に来るより平原とかの方が食料になるモンスター居るし。それに、泣いてるって言うけどあれ嘘泣きだぞ」

 

「えっ…!」

 

 

 信じられない、とでも言いたげな顔で女の子を見るゆんゆん。うん。人を疑うことを覚えようね。

 

 

「そんな…!嘘泣きだなんて…!ひどい…!」

 

「そういうのいいから。泣けばいいって思ってる奴大嫌いなんだよ。それ以上嘘泣きしたらお前が女でも容赦なくボコボコにする」

 

 

 そう低めに脅す。

 

 

「ひ、ヒデオさん…!流石にそれは…」

 

 

 ゆんゆんがそう言ってくるが、嫌いなものは仕方ないじゃない。

 すると女は嘘泣きをやめ、自らの状況を説明しはじめた。

 

 

「泣いて同情を買おうとしたことは謝ります。けど、どうしてもそのワニノコがいるんです…!村の人たちの為に…!」

 

 

 だから胡散臭いんだよ。

 森の奥まで来れる実力があるならカエル狩りなりなんなりすればいいのに。

 

 

「その話が本当だとしても、俺らが協力する必要は無い。さっきも言ったが、食糧が欲しいなら草原に行け。いっぱい居るから。って事で、俺らはーーー」

 

 

 帰る。そう言おうとした時。

 

 

「な、なんでも言うこと聞きますから!」

 

 

 思わず言葉が止まる。

 今こいつ、なんつった?

 

 なんでもするっつったよな?

 

 

「今、なんでもするって言った?」

 

 

 念の為もう一度聞き返す。ゆんゆんが有り得ないものを見る目で見てる気がするが気にしない。

 

 

「は、はい…。私の身体を好きにするなりなんなりと…」

 

 

 頬を赤らめながら恥ずかしそうに言う女。

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。

 

 では遠慮なく。

 

 

「じゃ、回れ右して仲間連れて帰ってくれ」

 

「えっ!?」

 

 

 そう驚く女。おいゆんゆん。お前もそんな顔でこっち見るな。俺にどんなイメージ持ってんだ。カズマなら間違いなくエロ方面にシフトするだろうけど。

 

 

「だから、早く帰れって。こちとらお前の体に興味ないし」

 

「な、なんで…!?好きに出来るんですよ!?」

 

 

 そう言われてもなぁ。

 仕方ない。現実を突きつけてやろう。

 

 

「なんでかってか?教えてやるよ。そこまで飢えてないし、第一お前貧乳じゃん」

 

 

 めぐみんやクリスほどではないが、この女も無い部類に入る。実を言うと巨乳が好きなだけで貧乳でもイケるが、言う必要は無い。

 俺がそう言い放つと、女はわなわなと肩を震わせはじめた。ついに本性が出るか?

 

 

「ひ、貧乳…!あなたも大きいのが好きなのね…!私が巨乳になれば好きに身体を弄りたくなるって事ですよね…。わかりました」

 

 

 一体何がわかったというのか。

 巨乳でも初対面の人に手を出すとか出来ないししたくない。

 

 

「こ、これさえ使えば私も巨乳になれるんですからね!見ててください!」

 

 

 そう言いながら取り出したのはどこか見覚えのあるポーション。トラウマ復活しそう。

 

 

「私は、貧乳をやめますッ!」

 

 

 そう叫びポーションを飲み干す女。

 意味無いんだよなぁ。

 

 

「…何も起きない」

 

 

 ほらな。やはりゼロには何をかけてもゼロ。

 

 

「言っとくけど、そのポーション貧乳には効果ないぞ。よしんば効果あっても数分で元に戻る」

 

「そんな…!」

 

「じゃ、俺達は行くわ」

 

 

 騙された、とばかりに落胆する女を放置し、ワニノコをロープで縛り、担いでその場を後にしようとした時。

 

 

「行かせません」

 

 

 女が前に立ちはだかってきた。しつこいなぁ。

 

 

「ああもうわかった。互いに腹割って話そう。お前らの目的はなんだ」

 

 

 めんどくさくなってきたので単刀直入に要件を聞く。最初からこれすれば良かったかな。

 

 

「あなた達の身ぐるみとそこのワニノコです」

 

 

 遂に本性を表したな。

 女の言葉に、仲間と思われる気が気の感知に引っかかり始めた。

 囲まれてるな。

 

 

「はいそうですか、ってあげるわけにも行かないんだよ。お前らは何なんだ?」

 

「ふっふっふっ。そこまで言うなら教えてあげます」

 

 

 女がそう言い指パッチンをすると、ガサガサと音を立て、仲間と思われる奴が数人出て来た。全員女か。

 

 最初に出てきた女を真ん中に、緩やかなV字を作り始めた。合計で9人。

 

 

「我ら!」

 

 

 真ん中の女がそう叫ぶと、皆服に手をかけ……。

 

 

「胸部外縁軌道強制縮小部隊!!」

 

 

 その言葉と共に、服を脱ぎ捨て盗賊の格好になった。全員まな板。

 その長い名前より貧乳盗賊団『ザ・ウォール』でいいんじゃないか?

 

 

「「「巨乳滅殺!!貧乳擁護!!」」」

 

 

 巨乳絶対殺すウーマン×9があらわれた!

 

 

 ヒデオとゆんゆんはどうする?

 

 

 たたかう◀

 にげる

 ヒンヌー教に入信

 

 

 たたかう

 にげる◀

 ヒンヌー教に入信

 

 

 ヒデオはにげるを選択した!

 

 しかし、にげられない!

 

 巨乳絶対殺すウーマン×9がおそいかかってきた!

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「あーもうちょこまかと鬱陶しい!!」

 

 

  ワニノコを守りながら戦っているので、どうしても攻めあぐねる。さらに相手が女ということもある。やりにくいったらありゃしない。それに、殺さないように加減しないといけないからろくに技が使えない。

 あーもう!

 どう対処するか考えていると、奴らはまたあの技の陣形になった。

 

 

「今度こそ何か盗ってやるわ!行くわよ皆!」

 

「「「『スティール』!!」」」

 

 

 9人同時にスティール。先程は運良く何も盗られなかったが、今回はそうはいかないだろう。

 とりあえず自分のことは後回しにし、ゆんゆんが無事か確かめる。

 

 

「ゆんゆん!何か違和感はないか!?」

 

「えーっと…。大丈夫です!何も盗られてないです!ヒデオさんは…あ、あれ。ヒデオさん、上半身裸になっちゃってます!」

 

「なにィ!」

 

 

 見てみると、たしかに上半身裸だ。他に違和感はないので、上着とインナーだけを盗られたか。ちなみに剣はワニノコの隣に寝かせている。

 

 

「やったわ!上着を盗った!」

 

「こっちはインナーよ!ってなにこれ重っ!」

 

「ふふふ。観念なさい!上半身裸でまともに戦える…と……ゴクリ」

 

 

 はじめに俺たちに絡んで来たリーダー格っぽい女が、何故かつばを飲み込み俺の身体を舐め回すように見始めた。ゆんゆんも顔を手で隠しながらもチラチラ見てくる。いやん。

 

 

「隊長!あの男、めちゃくちゃいい身体してます!!」

 

「顔は中の中の上くらいだけど体は一級品ね!」

 

「触りたい…!」

 

 

 等と、口々に言ってくる。

 褒められて悪い気はしない。

 

 だが、一発は一発だ。上着を盗ったやつとインナーを盗ったやつには報復する。

 その二人に一瞬で近づき、手をかざし気合いを入れる。

 

 

「はっ!」

 

「「!?」」

 

 

 秘技、服剥ぎ。

 都合よく服だけ溶かす系の気功波だ。

 俺と同じくほぼ上半身裸にした。

 

 

「…くっ!装備が…!隊長!こいつ、ジワジワと嬲ってくるつもりです!」

 

「的確に倒れない程度を攻めてきます!」

 

 

 ダクネスが居たらまず私にもやってくれと言ってくるだろう。

 

 

「ここで負けるわけにはいかない!行くわよみんな!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 

 突っ込んでくる盗賊達。そのセリフだけ聞いたら主人公だな。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「「「「調子乗ってまじすいませんでした」」」」

 

 

 土下座しながらヒデオさんにそう言う盗賊達。

 ヒデオさんは何度も何度もしつこく向かってくる盗賊達に嫌気がさしたのか、容赦なく相手の装備をぜんぶ剥きました。

 辛うじて下着は残ってるけど、それでも外でする格好じゃない。

 ヒデオさんは盗賊達がもう敵対しないだろうと思ったのか、ワニノコのロープを掴み、私に帰還を促した。

 

 

「よし。じゃあ帰るかゆんゆん」

 

「は、はい」

 

 

 戸惑いながらも、ヒデオさんの後に着いていく。あの人達、あんな格好で大丈夫なのかな…?

 気になって後ろを振り返ると。

 

 

「覚えときなさいよ!タナカヒデオ!あんたの顔と名前、覚えたからね!」

 

 

 隊長と呼ばれていた女の人がそう叫んでいた。あれ、なんでフルネームを…?

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 クエストに行った翌日。

 

 

「タナカ殿。私の日記を知りませんか?数日前に無くなってしまい…」

 

「知らん。なんの日記だ?」

 

「タナカ殿のことを観察した日記なのですが…」

 

「お前よく本人の前で言えるな」

 

 

 最近尾行されてたのはこれが理由か。

 

 拾ったのがまともな奴なら良いんだが…。

 

ま、いっか。

 

 

 

 

 

 




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