この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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短めですね!


第三十九話

 

 ハンスを倒した後、アルカンレティアのギルドにて。

 ギルドの職員に冒険者カードを突きつけるめぐみん。

 

 

「ですから、私とそこにいるヒデオが協力して魔王軍幹部のハンスを倒したのです!ほら

 、冒険者カードにも記されているでしょう!」

 

 

 もはやテンプレと言うべきか。

 今回は俺にも原因があるけど、うちのパーティーの連中は一仕事したら一つ問題ごとを抱えてくる。

 今はそれの後処理的な感じだ。

 

 

「確かに記入されていますね。…ですが源泉を蒸発させられては温泉を中心としているこの街の経済が回らなくなってしまうんですが…」

 

「それは悪い事をしたと謝ったでしょう!コラテラル・ダメージというやつです!致し方ない犠牲なのです!それに、お湯が湧かなくなるよりマシではないですか!私が魔法を撃ちおろしていれば今頃あの辺りにはクレーターしか残っていませんよ!!」

 

 

 ギルドの職員にそう詰め寄るめぐみん。

 源泉をまるごと蒸発させてしまうなんて、俺はなんて恐ろしい魔法を作り出してしまったんだ。

 詰め寄ってきためぐみんに臆することなく、ギルドの職員はハッキリと言う。

 

 

「確かにその主張も一理あります。よしんば源泉のお湯が蒸発しただけなら私共も我慢しましょう。実際魔王軍の脅威から救って頂いたわけですし、壊れてさえいなければまた湧き出ます。しかし、ただのお湯しか湧き出なくされては流石に…」

 

「それはアクアのせいです!!」

 

 

 何でもかんでも自分のせいにされては困ると、めぐみんはアクアにも責任を押し付けた。まぁ実際アクアの仕業なので何も言えないが。

 

 

「仕方ないじゃない!ほとんど蒸発しちゃって浄化しにくかったし、汚染濃度も濃かったから全力でやらないとだめだと思ったのよー!!」

 

 

 報われない努力があることを証明してしまったアクアが泣きながらそう言う。

 普段なら慰めるなりなんなりをしようと考えて実際はやらないところだが、今はそれよりもっと懸念すべき事がある。

 

 

「泣くなアクア。過ぎたことは仕方ない。…それで、被害額はどのくらいになるんでしょうか」

 

 

 アクアの全力の浄化魔法により消えそうになったウィズを看病しているカズマとダクネスに代わりそう聞く。

 財源そのものを台無しにしたんだ。ちょっとやそっとの金額じゃないだろう。下手したらまた借金を背負うことになる。

 

 

「えぇと…ざっと、このくらいですね」

 

 

 困り顔のギルドの職員が提示した金額は…。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 所変わって帰りの馬車。

 ウィズが復活してくれればテレポートで帰れるのだが、生憎まだのびている。

 

 それはさておき。

 幸か不幸か、被害額はハンスをぶっ倒した賞金でギリギリ賄える範囲だった。

 

 

「まぁ不幸中の幸いってやつか」

 

「借金を背負わなくてすんだのは良かったけど、旅行に来てまでこんな事に巻き込まれるってどんだけだよ。まだ屋敷にいた方がいい思い出来たんじゃないかって思うなぁ。まぁ巨乳のお姉さんと混浴できたのは良かったが…」

 

 

 頭を抱えながら項垂れるカズマがそうごちる。

 確かにもっと、こう、ありとあらゆる混浴に入ったりしたかったなぁ。

 

 

「俺はあの人ともう一回会ってみてぇな。かなり気がデカかったし、胸もデカかったし。色々と話を聞きたいなぁ」

 

 

 ちよむすけを撫でながらそう呟くと、めぐみんとダクネスがジト目で睨んできた。

 

 

「…なんだ?俺達が巨乳のお姉さんと混浴した事に不満でもあるのか?」

 

「いえ。ただ、よく女性の前でそんな話が出来るな、と」

 

「新手のセクハラかと思ったぞ」

 

「今更だろ。それに、自意識過剰すぎないか?ダクネスの場合はこっちが反応にドン引くだろうし、めぐみんに至っては胸があれだし年下だからセクハラする気にはなれん。カズマはどうか知らんが。この中だとセクハラするならウィズかなぁ。反応可愛いし」

 

「「なっ…!!」」

 

 

 俺の返答に憤慨する二人。なんか前もこんなやり取りしたような気がする。

 まぁそれは置いといて、そんなこんなで雑談しながらアクセルへと帰る俺達。

 

 お姉さんの胸とめぐみんの胸を比較して鼻で笑ったのがバレてめぐみんに馬車から落とされそうになったのは別の話。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 馬車に揺られて数日。ようやくアクセルの街に帰ってきた。

 

 

「あー…やっと帰ってきた…」

 

「お疲れ様です皆さん…。連れて行ってくれてありがとうございました」

 

 

 死にそうな顔でそう呟くカズマの隣でウィズがそう深々と頭を下げてくる。もう殆ど回復したみたいだな。

 

 

「いいってことよ。どれ、送ってやる。カズマ、俺の荷物もって先帰っててくれ」

 

「了解」

 

「じゃ、行くぞ」

 

 

 ウィズの返答を待たずに手を取り瞬間移動でバニルの気がする所に行く。

 

 シュンッ

 

 

「よし、着いたぞ」

 

「えっ、早…」

 

 

 瞬間移動のあまりの瞬間さに驚くウィズは置いといて、辺りを見回す。読み通りというかなんというか、着いたのはウィズの家だった。

 急に現れた俺達にバニルは特に驚かず、何事も無かったかのように質問してきた。

 

 

「む?そこのバカ店主は何故元気がないのだ?」

 

「アクアの浄化魔法の流れ弾食らってたからなぁ。今はだいぶマシになった方だぞ」

 

 

 不死者であるリッチーが生死の境をさ迷うっ言うのもなんか変だが、本当に危なかった。ダクネスとカズマが居なけりゃ今頃消えてたぞ。

 

 

「…読めたぞ。大方強敵に遭遇し、あの忌々しいプリーストの頑張りが空回りして危うく借金を背負いそうになったと見える!フハハ!」

 

 

 正解だから何も言い返せない…。

 というかこいつ旅行行く前にこの未来見えてただろ。

 

 

「お、憤りの悪感情…。頂こう。ところで尻尾付きの小僧。見通す悪魔の名において予言してやろう。なにやらまた問題事が転がり込んで来る。というかもう来ているだろうな」

 

「マジか。いい加減休みたいんだが…。慰安旅行に行ったはずなのに疲れを持ち帰ってくるってなんなの?」

 

「…落胆の悪感情。頂こう。あ、ついでにもう一つ予言しておいてやろう。たった今転がり込んだ騒動により、お主は重大な選択を迫られるであろう」

 

 

 そう言うバニルは悪魔と呼ぶにふさわしい、気持ちの悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 バニルの意味深な予言を特に間に受けず聞き流し、二人に挨拶をして店を後にした今は特に寄り道もせずに屋敷に帰っている。

 瞬間移動で帰ろうとも思ったが、普通に歩くより疲れるのでやめた。

 トボトボと一人寂しく歩いていると、目の前に誰かが飛び出してきた。

 

 

「タナカヒデオ!ここで会ったが百年目!大人しく身ぐるみを剥がれて貰うわ!」

 

「んー!んー!」

 

「セナと…誰だ?」

 

 

 飛び出してきたのは謎の貧乳とそいつに捉えられ猿轡をされたセナ。

 

 

「忘れた…!?仲間達全員の身ぐるみを剥いでおいてよく言えるわね!」

 

「貧乳…身ぐるみ…。あぁ、貧乳盗賊団か。何の用だ?俺疲れてるから早く帰りたいんだけど」

 

「用…?用と言われれば特にはないわ。ただ見かけたから身ぐるみ剥いでやろうと思っただけ」

 

 

 何という理不尽。俺は見かけられただけで身ぐるみを剥がれてしまうのか。ゲリラ過ぎんだろ。

 

 

「なるほど。お前がまた服を剥がれたいってのはよくわかった。あと、なんでセナが居るんだ?」

 

「なんかアンタの後に付いていってたし、巨乳だったからこれはもう捕らえるしかないと」

 

 

 また観察されてたのか俺は。考え事してたから気付かなかった。

 

 

「巨乳だから捕らえられるとか俺の知り合いの女性が二人を除いて危ういんだが。やっぱここで始末しておこう」

 

 

 そう言いながらザッ、と一歩踏み出す。

 すると、まな板さんは目に見えて狼狽えだした。

 

 

「え、ちょっと待ってよ!お話しましょう!えーっと…そうだ!この女の胸がどうなってもいいのか!」

 

「いいよ。揉むなり吸うなり挟むなり好きにしろ」

 

「んー!?んんん!!」

 

 

 まな板さんの脅しもセナの必死の叫びも気にせず前に踏み出す。

 

 

「ええい!ままよ!」

 

「んっ!」

 

 

 俺が脅しに屈しないのを見て躊躇いながらもセナの胸を鷲掴むまな板さん。

 羨ましさを感じながらセナの胸を揉むのを見ていると、やがて手を離したまな板さんがワナワナと震えだした。

 

 

「あ、あわわあ、ああ…」

 

「どうした?」

 

「これが…巨乳…!?こんなの、私達貧乳が敵う訳がない…!」

 

「そうか、よかったな。じゃあ」

 

 

 心底どうでもいい事だったので、放置してその場を後にする。

 セナが睨んできたが、まな板さんがあの様子だとすぐに解放されるだろう。

 

 

「んー!んー!!」

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「ただいまー」

 

「あ、ヒデオ。おかえりなさい。遅かったわね」

 

「ちょっと変なやつに絡まれてな」

 

 

 そう返すと、ふーんとだけ言い興味なさげにソファに寝転がるアクア。だらけきってるな…。

 ふと周りを見回すと、奥の方でカズマとゆんゆんが正座させられてるのが見えた。そのそばにはめぐみんとダクネス、またカズマが何かやらかしたのか?

 

 

「おいお前らどうしたんだよ。カズマが何かやらかしたたのか?それと、なんでゆんゆんも正座させられてるんだ?」

 

「あ、ヒデオ。おかえりなさい。今回はゆんゆんがやらかしたと言いますか…」

 

 

 若干言いにくそうに答えるめぐみん。

 見ると、ゆんゆんは顔を真っ赤にして俯いているし、カズマは恨みを込めた視線で二人を睨んでいた。なんだこいつら。

 

 

「おお、いい所に来た。お前もゆんゆんを叱ってやってくれ」

 

「叱る?何でだ」

 

 

 叱るならゆんゆんより、普段の素行がアレなコイツらを叱りたい。

 

 

「まぁ端的に言うと、その…だな。自分の身体を大切にしない発言をしたものでな。女の子がこんな発言は…」

 

「お前それ他人にとやかく言えねぇだろ。思いっきりブーメラン突き刺さってるぞ」

 

「ゴホンゴホン!!ま、まぁそれはいいじゃないか。とにかく、年端もいかない女の子があの様な発言を、しかもこの男に…」

 

 

 めぐみんといいダクネスといい、さっきから誤魔化して話しているのが鼻につく。

 

 

「あやふやにされてちゃ何もわかんねぇぞ。事実を言え」

 

「…わかりました。教えましょう。ここにいるゆんゆんは、なんとこのカズマに…!」

 

「わー!!やめてよめぐみん!!わかったから、私が悪かったから!!」

 

 

 目に涙を溜め顔をトマトのように真っ赤にしながらめぐみんの口を必死に塞ごうとするが、正座のせいで足が痺れてうまく動けないようだ。

 

 

「いや、言います!ゆんゆんは、カズマに対して子供が欲しい!と言い放ったのです!!」

 

「……は?」

 

 




オリジナル長編?べ、別にすぐやるとは言ってないし!!

あ、感想、評価、その他諸々待ってます!

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