この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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お待たせしました!


第五十二話

「……ねぇダクネス、ヒデオは一体どうしたのかしら。いつもなら、今のカズマの状況に嫉妬して血涙を流して悔しがるはずなのに」

 

 

 増援が来たことで安心したらしいアクアは、こめっこを背中に庇うようにして仁王立ちしてくれているダクネスに語りかけた。

 どうやら俺に聞こえないようにしているみたいだが、このとおりバッチリ聞こえている。

 ちなみにめぐみんはダクネスの後ろでこめっこにお説教をしているが、当のこめっこは何処吹く風だ。かわいい。

 

 二人は会話が俺に聞こえてるとも知らず、好き放題言い始めた。

 

 

「なんでも、シルビアには性的な興奮を覚えないとか言っていたぞ。見境がないと思っていたが、案外分別があったんだな」

 

「もしかして、頭を打って正気じゃ無くなってるんじゃ……。強めの回復魔法かけてあげた方がいいかしら?」

 

 

 声音から真面目に心配してくれているのがわかるが、生憎ながら俺は平常だ。そしてこの会話は聞こえている。アクアは後で泣かす。

 

 

「いや、仮にそうだとしても別段治す必要もないんじゃないか? 治してもメリットはないように思える」

 

「それもそうね」

 

 

 よし、ララティーナも泣かそう。

 

 

 さて、そんな事はさておき。

 カズマというあまり人質として役に立ちそうにない人質を取られている。

 人質が居る以上行動は制限されてくるが、それでも出来ることはいくつかある。

 

 その1 シルビアの要求を大人しく呑む。

 いくらリザレクションで生き返るとはいえ、死なないには越したことがない。

 幸いシルビアはカズマを気に入っていて、後々の安全面も考えて用済みになって殺される可能性も低い。

 しかし、要求がとんでもないものだったら取り返しがつかなくなるかもしれない。無し。

 

 その2 紅魔族が来るまで粘る。

 いくら魔王軍幹部と言えど、大人数の紅魔族に囲まれてはどうしようも出来ないだろう。

 だが、やけを起こされてカズマが死ぬ可能性もある。これも無し。

 

 その3 人質交換。

 カズマの代わりに俺が人質に立候補し、カズマを解放してもらう。そして俺はロープで縛られるが、持ち前のステータスで難なく脱出する。理論上完璧な作戦に思えるが、そもそもこんな怪しい策に応じてくれる筈がない。

 これも無し。

 

 その4 いっそカズマを見捨てる。

 おおカズマよ。捕まってしまうとは情けない。罰として、一旦死んで貰おう。

 かなり効率のいい作戦だが、倫理的にアウト。

 これも無し。

 

 

 ……なるほどなるほど。よくわかった。カズマが手遅れだということが。

 

 

「万策尽きた。つーかなんで捕まってんのアイツ。全く、肝心なところで役に立たねぇなぁ」

 

「おいヒデオ。普通に聞こえてるからな。それにお前も人の事言えんぞ。いつも肝心なところでヘマしやがって」

 

 

 カズマがそう言い返してきたが、反論しようにも図星すぎて何も言えない。

 

 雑魚には完勝してるのに、ボスクラスになると今のところ5戦4敗、いや、ウィズの不戦敗を含めると6戦5敗になるか。バニルから勝ち取った勝利も、バニルの『人は殺さない』縛りと、ダクネスに憑依していたおかげだ。

 ということは実質全敗か? 流石にやばいな。

 

 自分の強さが実はそこまででないことに俺が焦燥していることも知らず、シルビアは呑気に。

 

 

「敵の私が言うのもなんだけど、あなた達、緊張感無いわね……」

 

 

 そう呟いた。

 バニルの時もダクネスが人質に取られたみたいなもんだったし、今更このくらいで動じろという方が無理がある。

 

 それはそれとして、カズマは今の状況をどう思っているのか。

 

 

「なぁカズマ、死にたくは無いだろ?」

 

「そんなん当たり前だろ。何言ってんだ頭大丈夫か?」

 

「ぶっ殺すぞ」

 

「おっと、数秒前の自分の発言を思い出してみやがれ」

 

「はぁ? 何言ってんだ。お前が死にたくないことと、俺がお前を殺した……殺そうとする事は別だろ」

 

 

 全く、これだからカズマは。

 味方には攻撃してはいけないなんて暗黙の了解なんて、俺がぶっ壊してやる。

 

 

「お前今殺したいって言ったろ」

 

「言ってない」

 

 

 仲間を殺したいなんてあるわけないじゃないか。ただ時折殺意が湧くだけだ。

 

 ひとまず、カズマの生死は置いておいて、シルビアの要求を聞くべく、今度はシルビアの方に目を向ける。

 

 

「……さて、シルビア。今更だがお前の要求はなんだ」

 

「そうね。ひとまずは身の安全。そして、紅魔の里のどこかにあるという対魔術師用の兵器の奪取。あと、これもどこかにあるらしい、『世界を滅ぼしかねない兵器』も出来れば欲しいわね」

 

 

 なるほど、全くわからん。

 

 そもそもなんでそんな物騒なもんがこんな辺鄙な里に……いや、ここは紅魔の里だった。アクセルの住人に頭のおかしい子と言わしめるめぐみんが育った里だった。

 聞くところによると生きたグリフォンをそのまま石化魔法で石像にしたらしいし、魔王軍の拠点ですら観光地にしようとする豪快な一族だ。

 危なっかしい兵器の一つや二つあったっておかしくないし、なんかカッコイイ! って理由で里に置いていても不思議ではない。

 

 

「……だそうだ。めぐみんとねりまきちゃんは何か知ってるか?」

 

 

 ひとまず知らないことを祈りながらめぐみんとねりまきちゃんに尋ねるが、十中八九知っているだろう。

 

 マズイぞ。これはマズイ。シルビアの話が本当だとすると、カズマの命を見捨てる必要が出てくる。

 対魔術師用の兵器とやらは魔法使い以外で何とかできそうだが、『世界を滅ぼしかねない兵器』とやらは名前からしてやばそうだ。デストロイヤーみたいなもんか?

 

 

「当然知っていますが……。『世界を滅ぼしかねない兵器』の事も知っていたとは意外ですね。あれは私達ですらどこにあるのか知らないというのに」

 

「そうなの? ならいいわ。とりあえず、対魔術師用の兵器を明け渡してもらえるかしら。あなた達紅魔族ならあの封印を解くことが出来るでしょう?」

 

 

 なるほど。危なかっしい方の兵器は行方不明で、対魔術師用の兵器は場所が割れてるのか。

 こっちだけなら何とかなりそうだ。それに、封印されているなら時間稼ぎもしやすいだろう。

 紅魔族でも封印を解けないなんて事が無い限り、カズマは安全なはずだ。

 

 

「生憎ながら、あの封印は私達ですら解くことが出来ません。強力に改造した『結界殺し』ですらなんの効果もありませんでした」

 

 

 あれっ、おかしいな。聞き間違いか?

 

 

「オイオイオイ、なんの冗談だめぐみん。自分達ですら解除できないもんをどうやって施したんだよ」

 

「施したのは私達の祖先です。一応解除方法が書いていそうな文献とかもあるんですが、見たこともない文字でして。封印を解こうにもその文献の解読すらままならないんですよ」

 

 

 なんてこった。アイツ死ぬわ。

 

 

「……ひとまずその厄介な兵器が魔王軍に渡るのを阻止できている事に安堵というわけにもいかない。交渉材料を失ったも同然の俺達は、カズマの死を黙って見守る事しか出来ない」

 

 

 口走ってしまったものは仕方ないが、解除出来なくともシルビアはそれをさっきまで知らなかったんだ。もう少し時間稼ぎの余地があったろうに。

 もうどうすることも出来ない。

 カズマと協力してシルビアに芝居でも打たない限り、助ける事は叶わないだろう。

 

 カズマの命を半ば諦め、どうシルビアを倒そうかと考えていると、シルビアに抱えられているカズマが。

 

 

「お、おいちょっと待て。なんで俺が死ぬ事になってんの?」

 

 

 と、かなり焦った顔で問いかけてきた。普段のこいつならすぐ気付きそうなもんだが。

 いや、薄々感づいてはいるのだろう。本能がそれを許さないだけで。

 

 少々残酷だが、真実を告げなきゃならん。

 

 

「いいか、さっきまでは交渉材料として物騒な兵器が二つあった。シルビアはお前と引換にこの二つのどちらか或いは両方をゲットするつもりだったんだろう。だが、現実はそう甘くなかった。片方は行方不明で、もう片方は絶対に解けない封印を施されていると来た。無い物を要求なんてできない。するとどうだ。お前の価値は格段に薄くなる。で、次にシルビアが要求するのは恐らく自身の身の安全だ。収穫もなしに帰るわけには行かないから、お前が魔王城やらに連れてかれて結果死ぬって寸法だ。そんなカズマに俺が言えるのは、頭には気を付けろよ」

 

 

 助けるには、芝居を打つなりしてシルビアを騙す必要がある。

 カズマが察してくれなければそれまでだが、ゴキブリは死ぬ間際にIQが跳ね上がるらしいので、それに近しいカズマもそうなる筈。

 

 

「あのー……抵抗してくれないんですか……? ……頭?」

 

「死にたくなけりゃ頭を回せってこった。なんなら抵抗してもいいがお前は死ぬ」

 

 

 もういっそカズマを見捨てて後で生き返らせた方が早いんじゃないかという考えが脳裏を何度も過ぎるが、流石にそれはアウトだろう。

 裁判の時は本当にどうしようもなかったが、今回は頑張ればなんとかなる筈だ。というかこめっこがいるのに仲間を見捨てるなんて鬼畜の所業は出来ない。

 

 カズマを奪い返す為には色々と準備が必要だ。

 

 

「ふふふ、状況がよくわかってるみたいね。頭の回る子は好きよ?」

 

 

 カズマの頭をクルクルと指で撫でながら余裕の表情で笑うシルビア。このまま余裕をぶっこいて貰えるとありがたい。

 

 

「馬鹿じゃねぇんなら誰でもわかる。

 いくら俺でも仲間のカズマを連れて行かれたく無い」

 

「……そうねぇ。仮に邪魔でもしようものなら、この坊やの命は無いものと思いなさい」

 

 

 つつ、とカズマの首を細い指でなぞり、余裕を持った笑みでこちらを見てくるシルビア。

 俺はまだ全てを明かしていないというのに、その態度は舐め腐ってんじゃあないか?

 

 

「うかつに俺達が邪魔すれば、お前の宣言通りカズマは死ぬよな」

 

「えぇ。このボウヤを殺すのは惜しいけど、背に腹は変えられないもの」

 

「て言いながらも、お前はカズマを殺せないんだがな」

 

 

 俺がそう言うと、シルビアは面食らったような顔で。

 

 

「……どういうことかしら?」

 

 

 とぼけているのかはたまた本気でわかっていないのかはわからない表情で、はてと首を傾げた。

 

 

「あれ、とぼける気か?

 わかりやすいように言うと、今はカズマという盾があるから誰もお前に危害を加えようとはしていないが、もしカズマを殺してしまったらどうなる?

 せっかくの盾を失ったお前はどうなる?

 留守な頭をしてるんじゃないんだから、わかるよな? もう俺から言えることは無いぞ」

 

 

 カズマを殺せば盾がなくなり命が危うくなる。なので、シルビアはカズマを殺せない。

 シルビアがカズマを殺せないとわかれば、我慢する必要も無くなる。

 人質の意味が無いと悟れば、戦力を少しでも減らそうとするだろう。

 

 長々とした説明を終えると、俺が言わんとしていることを理解したのか、シルビアは少しだけ間を開けて。

 

 

「………そうね。あなたに足止めされている間に、やがて来た紅魔族たちの魔法の餌食になる、くらいかしら。けど、殺さなければいい話じゃない」

 

 

 当たり障りのない、なんとも平凡な意見を述べた。

 

 

「そうもいかないな。カズマが殺されないとわかった以上、俺達が我慢する理由はない。わかったか?」

 

「……なぁヒデオ。俺ってどうなるんだ? 何をすればいいんだ?」

 

 

 ようやくカズマが何かを察したのか、恐る恐るといった感じで尋ねてきた。

 

 

「どうなるかはお前次第だ。きちんと理解出来てるなら、言わなくてもわかるだろ」

 

 

 頭のいいカズマなら、この状況で出来る最善を既にわかっているはず。ヒントは既に散りばめた。

 

 俺に出来ることは、カズマの最善に対してこちらも最善を尽くすだけだ。

 

 

 それ以上は何も言わずに、大人しくカズマを見守っていると。

 

 

「……わかった。おいシルビア、共闘だ! 俺は死にたくないし、お前も死にたくない! ここは共通してる! ヒデオの事だから容赦なく俺ごと殺ろうとしてくるはずだ。荷物を抱えるより、少しでも戦力になるやつを抱えていた方がいいんじゃあないか?」

 

 

 なんと、カズマはシルビアに共闘を持ちかけた。敵の敵は味方理論だ。

 

 

「それはそうだけど、あなたを信用しろと? 会って数時間も立っていないのに、無条件に?」

 

 

 突然の提案に疑ってかかるシルビア。

 当然だ。いくらカズマが比較的友好とはいえ、本来人間と魔王軍は敵対関係にある。それに、会ってすぐの奴を信用なんて出来っこない。

 

 しかし、カズマもそれは見越していたのか、自らをシルビアにプレゼンし始めた。

 

 

「まぁ待て。無条件とは言わない。弱点でもなんでも教えてやるよ。まず、あいつらの中でまともに一対一でお前と真正面から戦えるのはヒデオだけだ。アイツは近距離中距離遠距離斬撃打撃爆撃何でもござれのバケモンだが、弱点もある。まず遠距離攻撃と中距離は後ろに建物とか人が居るとまず使ってこない。近距離は対処が難しいが……おっと、ひとまずここまでにしておくか。で、どうだ?」

 

 

 ペラペラペラペラと、好き放題に言ってくれるカズマだが、これがアイツなりの最善ならば、文句は言うまい。

 

 しかし、状況がイマイチ理解出来ていないダクネスが。

 

 

「お、おいカズマ! 正気か!? いくらクズでカスなお前でも、仲間を売るはずはないと思っていたのに! 見損なったぞ!」

 

 

 カズマの発言を荒々しい様子で責め立てた。

 しかし、そんな言葉は今のカズマを諌めるには至らない。

 

 

「勝手に見損なってろ! 俺は過去でも未来でもなく、今を生きるんだよ!」

 

 

 どうやら人間は追い詰められると名言を生み出すようだ。

 

 

「そうだぞダクネス。命の危機に瀕したカズマが、自分は助かろうと予想外のクズを披露してもなんらおかしくない。それに、お前だっていつも言ってるじゃねぇか。見捨てていって構わないって」

 

「ヒデオの言う通りだ。わかったら黙って引っ込んでろ」

 

「くっ……! 二人からの言葉責めとは……! 確かに見捨てられたらどんな気分なんだと妄想したことも多々ある! 実際にお前達にも言った! しかし、シチュエーションが……!」

 

 

 この変態は何を言っているのだろう。

 いや、正論を言っているのだが、なぜ途中で脱線して性癖をひけらかしているんだろう。

 

 

「いいから黙ってこめっことその他大勢を守ってろ」

 

「しかし……!」

 

「カズマの事は俺に任せとけ。あと、何が起きても動じずにどんと構えて守っていてくれ」

 

「ぐぬ……。なにか釈然としないが……わかった。お前を信じよう」

 

 

 これ以上余計な事を言われるとシルビアに感づかれてしまうかもしれないので、ダクネスに己の任務を再確認させ黙らせる。

 敵を欺くにはまず味方からだ。

 

 騙し合いの世界での一番の敵は騙す相手じゃない。自分の味方だ。

 

 

「……あなた、その体勢からでも私の援護はできる?」

 

 

 どうやら、シルビアはカズマの申し入れを受けるようだ。

 

 

「大丈夫だ。スティールで武器を奪えるし、目潰ししたり足場を悪くも出来る。遠距離攻撃も一応だが出来る」

 

「へぇ、たいしたものね。なら、背負った方がいいかしら?」

 

「おぉ、前も良く見えるし、手だって使えるな。充分だ」

 

 

 カズマに出来る攻撃手段を聞くと、シルビアはカズマを背に背負い直して体と体をロープで縛って固定する。

 恐らくカズマを砲台として役割付けたのだろう。

 

 

「さて……そろそろいいか?」

 

「えぇ。わざわざ待ってくれるなんて、優しいのね」

 

「カズマを連れて逃げればいいものを、わざわざ立ち向かってくる事に対しての礼だよ」

 

 

 そう言いながら、いつでもシルビアの背後、つまりカズマが居る方に高速移動できるように気を高める。

 瞬間移動は諸事情により出来ないが、気の解放による身体強化と舞空術とコンバットマスターのスキルの『脚力強化』を用いれば、10mもないこの距離においてはそれっぽく動ける。

 

 ………。

 

 

「立ち向かうというより邪魔者を排除すると言った方が正しいわね。いくら貴方が強いと言っても、こっちには貴方の仲間が居ることを忘れちゃだめよ?」

 

「そうだぞヒデオ。しっかり俺を殺さないように手加減……っ! シルビア、横に跳べ!」

 

「っ!?」

 

 

 突然カズマから指示を受けたシルビアは、戸惑いながらも咄嗟にそれに従って思いっきり右側に跳んだ。

 

 

「ちっ、今のを避けるか」

 

 

 カズマごと蹴り抜くつもりで高速移動の勢いを乗せて放ったのだが、間一髪で避けられてしまった。

 

 ほぼ初見に加え、カズマという荷物を抱えていてとてもハンデだ。

 それなのにこの反応は超人的な反射神経という他ない。

 

 シルビアに感心していると、危うく蹴りを喰らうところだったカズマが。

 

 

「おい、思いっきり俺を狙ってきてんじゃねぇか」

 

 

 などと、寝ぼけたことを言ってきた。

 

 

「戦闘において敵の弱点を突くのはお前がいつもやってる事だろ? 俺は悪くない」

 

「ちっ、それを言われちゃ何も言えない。シルビア、気を付けろよ! 今みたいな速度でバンバン攻撃してくるからなこいつ!」

 

「わかったわ!」

 

 

 どうやらシルビアはカズマの言う事を信用することにしたらしい。

 ひとまず、カズマが殺されにくくなったという点では好都合だ。

 

 

「……よし。第二ラウンドといこうか!」

 

 

 思いっきり地面を蹴り、シルビアに飛び掛った!

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 戦闘が開始してから数分後。

 

 

 カズマとヒデオの二人は、ヒートアップした戦いにのめり込んでいた。

 

 

「シルビア! ヒデオは尻尾を強く握られると何も出来なくなる! 攻撃をいなしつつ、尻尾を狙うんだ!」

 

「よくわからないけどわかったわ!」

 

「お前馬鹿じゃねーの!?」

 

 

 カズマは目潰しなど援護の構えを見せるだけでなく、あろう事かヒデオの最大の弱点を暴露した。

 

 これはひどい。

 

 

「それはこっちのセリフだよ馬鹿野郎! 裁判の時も思ったが、お前には倫理観ってもんが無いのか!」

 

「倫理で人が救えるか?」

 

「なに名言みたいに言ってんだ! 救えるよ! お前がもう少し倫理観を持っていれば俺はこんな命の危険を感じる必要はないんだよ! それにお前の場合は救おうとしてないだけだろ! もうちょい粘れよ! しつこく食い下がれよ!」

 

「俺がしつこく粘って食い下がるのは美女にセクハラする時だけだ。死ね!」

 

 

 シルビアをカズマごと始末するべく、一呼吸の間に詰め寄り、わざとカズマが捕まっている側に向けて蹴りを放つヒデオ。

 しかし、シルビアはこれを読んでいたのか、後ろにステップして回避。

 

 

「今死ねって言ったぞこいつ! パーティーのリーダーに対して死ねって言ったぞ!」

 

「言葉の綾だ」

 

「どこに綾があるんだよ! ……喰らえ、『狙撃』ッ!」

 

 

 ヒデオに悪態を吐きながら、カズマは人さし指と中指で銃口を模すと、指先から細い気功波を『狙撃』スキルで放つ。

 

 運がチートなカズマの使う狙撃スキルはほぼ百発百中。

 激しい上下運動をしながら迫ってくるカエルや、凄まじい脚力で飛び蹴りをかましてくるトカゲや、自分の身体を引きちぎって投げるスライムをことごとく撃ち落としてきた。

 

 自分に正面を向いていて、尚且つ真っ直ぐ向かってきている筋肉マンなど恐るるに足らず。

 

 親指くらいの太さの長いビームは、真っ直ぐとヒデオへと向かっていく。

 

 ヒデオが向かってくるスピードと、こちらのビームが飛んで行くスピード。

 ヒデオの体感的にはかなり速い光線が目の前からやって来ている。

 この距離なら避ける事は難しいだろう。

 

 

「あぶねっ! しっかり脳天狙ってきてんじゃねぇか! 殺意に満ち溢れてるじゃねぇか!」

 

 

 しかし、それを間一髪で避けるヒデオ。

 

 そして。

 

 

「ちっ! なんて反射神経してやがんだ! 当たっとけよ!」

 

 

 本気で悔しがるカズマ。

 

 

「なに本気で悔しがってんだ! テメェがそのつもりならもう遠慮しねぇぞこの野郎が!」

 

「それはこっちのセリフだ! かかってこいやぁぁ!」

 

「ちょ、ちょっと! ボウヤ達仲間じゃなかったの!? もう少し葛藤とか逡巡とか……」

 

 

 自分の肩越しに殺し合いを始めようとする二人を何故か敵であるシルビアが諫めにかかる。

 

 しかし。

 

 

「「そいつを殺すのになんのためらいもない!」」

 

 

 二人は全く聞く耳を持たない。

 どちらかがついやりすぎ、片方もそれに合わせ、どのレベルまでやっていいのかわからなくなり、その結果全力で殺し合っている二人にシルビアの声など届くはずもない。

 

 

 そんな三人のやり取りを傍から見ながら、時折飛んでくる気功波をその身でしっかりと受けていたダクネスが、こめっこに説教を終えて同じようにやり取りを見ていためぐみんに問い掛けた。

 

 

「なぁめぐみん。あの二人はさっきなにやら考えがあるような雰囲気だったのが今は本気で殺しあっているように見えるのだが。あれも考えの内なのだろうか?」

 

「どうなんでしょうか。ヒデオとカズマが目論んでいたこと自体はわかっていますが……」

 

「めぐみんは気付いていたのか? カズマとヒデオはいったい何をするつもりなんだ?」

 

「詳しくは知りませんが、ヒデオがカズマに『合わせてやるから芝居しろ』みたいな事を伝えて、カズマもそれをわかった上で、シルビアと共闘の形をとったんだと思います。おそらく信用させて途中で裏切るとかそういう魂胆だったんでしょうけど、上手くいってないみたいですね」

 

「よく気付いたな。特にそれといったことは何も無かったように思えるが」

 

「やけに変な言葉を使ったり、変な言い回しがやたら目立っていましたから。わかり易すぎるとは思いましたが、シルビアは気付かなかったみたいですし大丈夫でしょう。それより今は、ヒデオが本当にカズマを殺してしまわないか心配です」

 

「流石に踏みとどまるだろうが、万が一という事もある。どうすべきか……」

 

 

 万一に備えて対策を練るダクネスとめぐみんだが、この二人に何が出来るでもなし。

 片や防御全振りの脳筋令嬢と、片や爆裂魔法全振りの爆裂娘である。

 攻撃が当たらないダクネスがあの間に割って入れば邪魔になるだけで、めぐみんが爆裂魔法を放とうものなら二人共死ぬ。

 

 ちなみに、端から戦力に数えられていないアクアは、こめっことちょむすけと共に隅っこで戯れていた。

 

 

「里の大人達は残党狩りに向かっているそうですし、増援はまだ来ないでしょう。となると……ねりまき、お願いできますか?」

 

「え、私? てっきりめぐみんが何とかすると思ってたんだけど……。ほら、学校で一番の成績だったし、送られてくる手紙にも『パーティーの最終兵器』とか『最後は皆頼ってくる』とか書いてたってこめっこちゃんが言ってたし」

 

 

 まさか自分に話を振られるとは思っていなかったねりまき。咄嗟に自分より適任のめぐみんがいるだろうと言うが、めぐみんは爆裂魔法しか使えない。

 

 

「……そう、その通りです。なので、最終兵器たる私はこんな所で出張るわけにはいかないのですよ」

 

 

 確かにめぐみんパーティーに於いて最終兵器的な位置付けだが、使ったら色々と終わるという意味合いが強い。物は言いようである。

 

 そんなめぐみんに突然重大な任務を押し付けられたねりまきは、どうしたものかと顔をしかめた。

 

 

「なんというか、めぐみんっぽくないね。

 こういうの買って出そうなのに。……ねぇ、本当に私でいいの?」

 

「この場に適切な遠距離攻撃が出来るのはあなたしか居ないんです。それに、あの二人の気を引くのが目的なので、わざわざ狙う必要も無いです」

 

「なんか釈然としないなぁ……。……まぁ後で聞くね。万が一当たっちゃったらごめんなさい! 『ライトニング』!」

 

 

 心にもやもやを抱えながらも、ねりまきはやけに仰々しい詠唱とともに、雷の中級魔法をヒデオとシルビアの中間地点目掛けて放つ。

 

 放たれた青い電撃は、不規則な軌道を描きながら狙い通りに進んで行き――

 

 

「あぎゃふっ!?」

 

「あぁっ! ヒデオさん! ごめんなさい!」

 

 

 ちょうどシルビアに突っ込んで行こうと前に出て来たヒデオに直撃した。

 普段は不意打ちは殺気やらなんやらを感じ取って避けるヒデオだが、これは完全に予想外のフレンドリーサンダーだった。

 

 当たっても致命傷にならない程度の威力だが、それでもヒデオをスタンさせるには充分だった。

 

 

「あばばばば」

 

「どど、どうしようめぐみん! ヒデオさん感電しちゃった!」

 

 

 雑魚モンスターなら即死する程度の電撃だが、運悪く解放した気と電撃が混ざり合って強化されている上に、舞空術で若干浮いているので、電気がどこにも流れて行かない。

 

 萬國驚天掌よろしく絶賛感電中である。

 

 

「痛っ! ……シルビア、それ以上近付くと俺達も巻き込まれるぞ」

 

「わかったわ。このまま待っておきましょうか。……それにしても、ライトニングってあんなに帯電したかしら?」

 

 

 ヒデオが巻き起こした現象に、シルビアははてと首を傾げた。

 電撃を受けて体が麻痺をする事は多々あるが、電撃を体に纏い続けるなど聞いたことがない。苦しんでいるようだし、もうこのまま逃げてしまおうかと思うシルビアだったが、ヒデオの抜け目なさを警戒し、敢えてこの場に留まった。

 

 

「大丈夫です。ただ麻痺しただけなら隙だらけで危なかったですが、今は帯電していてシルビアも迂闊に手を出せていません。これでヒデオは冷静になるでしょう。ナイスですねりまき」

 

「ナイスなの!?」

 

「くっ……! 羨ましいぞヒデオ! 電気責めとは……! ねりまき、私にもさっきの魔法を!」

 

「えぇっ!?」

 

 

 ダクネスの突然の要求に困惑するねりまき。

 無理もない。ついさっきまで綺麗な人だと思っていた女性が真面目な顔でおかしい事を言ってくるのだ。

 これで困惑しないのはもう手遅れなカズマ達か、ダクネスの同類くらいだろう。

 

 

「ねりまき、ダクネスはほっといて大丈夫ですよ。後でヒデオに押し付けましょう。それよりも、未だ感電しているヒデオをそろそろどうにかしたいのですが、何かいい案はないですか?」

 

「うーん、ライトニングでこんなに帯電し続けるなんて初めてだからわからないけど、ヒデオさん今宙に浮いてるよね? それで電撃が外に逃げていかずに未だビリビリしてるんだと思う。だから、電撃が逃げる場所を作ってあげるのがいいのかな。それか、電撃が持続し続けるためのエネルギーを断てば……」

 

「なるほど。……ヒデオ! 地面に足を付けてください!」

 

 

 大声でそうヒデオに伝えるめぐみん。

 しかし、ビリビリビリビリと全身に電気が走っていて、ヒデオはめぐみんの忠告を聞ける状態ではない。

 

 

「(アィェエエ!? ナンデ!? 電撃ナンデ!? ……いや、ふざけてる場合じゃねぇ。めぐみんがなんか言ってる様な気がしたが、全く聞き取れなかったぞ。多分この電撃は俺達の気を引くためにねりまきちゃんが撃ったんだろうが、帯電してるのが謎だ。カズマの頭は冷えたみたいだな。気が落ち着いてる。後は、この状態を脱してカズマを助けるだけだが、どうしたもんか。つーかなんで帯電し続けてんだ? サイヤ人ってそんな体質だっけ? いや、確かに超サイヤ人2以降は気の周りにスパーク走ってるけど)」

 

 

 感電による痛みはコンバットマスターのスキルの『痛覚麻痺』で遮断して取り敢えず激痛からは逃れてはいるが、依然として体を動かせないヒデオ。このまま電撃を喰らい続けると身体機能に関わる重症になってしまうのだが、痛みを遮断してしまってはそれも悟れない。

 

 

 ヒデオの様子を見て、めぐみんは自分の言葉がヒデオに届いていないと悟った。

 

 

「……聞こえてないみたいですね」

 

 

 さて、どうしたものかとめぐみんが新たな策を練っていると、ダクネスがちょんちょん、とめぐみんの肩を叩いて。

 

 

「めぐみん、いい事を思い付いたんだが」

 

 

 自信満々にそう伝えた。

 すると、めぐみんは『またかコイツ』と言いたげな顔でダクネスを一瞥すると。

 

 

「大方『ヒデオを助ける為にヒデオの体に触れて電撃を逃がしてついでにわたしは電気責めを受ける。win-winだ』といったところでしょうか。それは最終手段ですのでまだ我慢してください。……ヒデオがいつも使っている気はスキルや魔法の効果を上昇させるんでしたね。恐らくそれでねりまきの電撃が強化されて、さらにそれを保つ為のエネルギーになっている可能性が高そうですね。なら、気を収めれば……」

 

 

 無視するでもなく突っ込むでもなく、熟練の内野手の様に右から左へとダクネスの発言を受け流した。

 ダクネスはボケを振った訳では無いが、これはキツイだろう。

 

 

「お、おい。軽く流すのはやめてくれ。せめて無視するか激しく罵倒するかにしてくれないか。調子が狂う」

 

「そういうのはヒデオに言って下さい」

 

 

 再びダクネスを軽くいなすと、めぐみんはとてとてとこめっこと戯れているアクアの方に駆け寄って行く。

 

 

「アクア、出番ですよ」

 

「なになに? 何をすればいいの? ヒデオとカズマは仲直りした?」

 

「仲直りさせるためにアクアの力が必要なんです」

 

「任せなさい! ……で、何をすればいいの?」

 

 

 頼られて嬉しいのか、自信満々に胸を張ってめぐみんに尋ねるアクア。

 そんなアクアにめぐみんは胸の大きさを羨みながらも、ハキハキと指示を出す。

 

 

「ヒデオにブレイクスペルを掛けてあげて下さい。そうすれば、二人は仲直りするはずです」

 

「よくわからないけどわかったわ! 『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

 

 めぐみんの指示を聞くと、有無を言わさずノータイムで解呪魔法をヒデオに放つアクア。

 

 この場面においてこの指示はほぼ満点の解答だ。

 これにより、ヒデオが今使っているスキルをはすべて強制解除される。

 舞空術が解除され地面に降り立ち、気の解放が解除されエネルギーの供給源がなくなれば、次第に感電は収まる。

 

 惜しむらくは――

 

 

「あっぎゃああぁああ!?!?!」

 

 

 ヒデオが『痛覚麻痺』を習得していると知らなかった事だろう。

 

 強制的に痛覚を戻され、積み重なった激痛がヒデオを襲った。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 ――目を覚ますと、例の場所に居た。

 

 そして、例の女神様も居た。

 

 

「……エリス様。お久しぶりです」

 

「田中ヒデオさん。また来てしまいましたね」

 

 

 エリス様は悲しいような、優しいような、呆れたような顔で、俺を見てくる。これで会うのは三度目になるが、相変わらずすっげぇ美人。胸がないのが惜しすぎる。

 

 

「私の胸がどうかしました?」

 

「どうもしてないです! 相変わらずの美貌に見とれてました! ……で、俺はまた死んだんですか?」

 

 

 怖っ、女神怖っ。

 

 

「そういうことにしておいてあげましょう。死んでるといえば死んでいますし、生きているといえば生きています。わかりやすく言うと、三途の川に片足を突っ込んだくらいでしょうか。ほら、身体が透けていますよね? それはまだ死にきっていない証拠です。あ、しちなみに本当に死んでしまった場合、死因はショック死になりそうですよ」

 

 

 なりそう、ということは本当にまだ死は確定していないのだろう。身体だって透けてるし、意識だって若干薄い。

 

 

「……急に言いようの無い激痛に襲われたのが最期の記憶なんですが、もしかしてそれですか?」

 

「はい。電撃により受けた身体のダメージによる痛みと、電撃そのものの痛みが合わさってすごいことに。それでも身体はまだまだピンピンしてますので、戻ろうと思えばいつでも戻れますよ」

 

「死んでなくて嬉しいような、痛さで死にかけた事が情けないような……」

 

「死んでないんですから大丈夫ですよ。生きていればいい事ありますよ! ……あ、そうだ。そろそろ意識が戻りそうなので伝えておきますが、尻尾には気を付けてくださいね」

 

「尻尾? 俺の尻尾ならいつも気をつけてますけど」

 

 

 未だに力が抜ける弱点を克服できていないのだ。気を付けない理由はない。

 

 

「それならいいです。くれぐれも、――われることのないように」

 

「え? エリス様――」

 

 

 今なんて言ったんですか。そう言おうとする前に、意識が遠のいていった。

 

 

 

 ――――――――

 

 

 

 意識が段々と戻ってきた。どうやらあまり時間は経っていないらしく、さっきとほとんど気の様子は変わっていない。

 

 

「……死んだのかしら」

 

「……どうだろうな。だが、今がチャンスだぞ」

 

「そうね」

 

 

 声の主はシルビアとカズマだろうか。

 ざり、ざり、とこちらに近づいてくる音が聞こえる。

 どうやら俺にとどめを刺すらしい。

 

 

「念のために頭を潰して確実な安心としておきましょうか」

 

 

 再びシルビアの足音がざり、ざり、と俺の方に近付いてくる。

 

 来やがれ。隙を見せたその瞬間が、お前達の最期だ。カズマよ。骨は拾ってやる。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!

 ヒデオが感電したと思ったらいつの間にか地面に倒れ伏していた……。何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった……。

 直流だとか交流だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

 

 ……この言い回しも飽きたな。

 

 

「ね、ねぇめぐみん。今ヒデオすっごい声あげて倒れなかった? もしかして私のせい? ち、違うわよね?」

 

「……」

 

「なんとか言ってよ! ねぇ、ねぇったら!」

 

 

 無言でそっぽを向くめぐみんの肩をぐわんぐわん揺らすアクアだが、めぐみんはそれに耐え続ける。

 何が起こったのか本当にわからないが、アクアの様子を見るにやばそうなんだが。

 敵感知からヒデオの敵意も消えたし、本当に死んだんじゃないか? だとしたら不味いぞ。

 

 ヒデオの協力が無いと今この人質状態から脱するのは厳しい。つまり俺は死ぬ。

 

 

「……死んだのかしら」

 

 

 電気が収まってからピクリとも動かないヒデオが気になるのか、シルビアは誰に言うでもなく呟いた。

 

 

「……どうだろうな。だが、今がチャンスだぞ」

 

 

 もし、あいつがまだ生きているならこの距離での会話は聞こえているはずだ。そうでなくても気配でわかるだろう。

 生きてさえいれば、トドメを刺しに行くシルビアに一撃をぶち込むことが出来るだろう。

 

 これはある意味賭けだ。

 仮にヒデオが本当に死んでいてトドメを刺されたならば、肉体の修復も必要なので蘇生に時間がかかるはずだ。そしてその間に俺は連れ去られ、ヒデオの言っていた通りになる。

 しかし、逆に生きているのなら、またとないチャンスだ。

 この距離でかつ油断した相手ならば、ヒデオにとってはカモでしかない。

 

 なに、俺は運がいいらしいからな。賭けには勝てるはずだ。

 つーかこういうとこで発揮して貰わねーと流石に詐欺だ。

 

 

「そうね。念のために頭を潰しておきましょうか」

 

 

 シルビアはそう返してくると、ツカツカとヒデオの方に歩いて行く。潰せるような武器は持っていないので、足で踏み潰すのだろう。

 

 やがてヒデオのそばまで行くと、一度立ち止まった。

 そして、抵抗する素振りを全く見せないアクア達を見据えて口を開いた。

 

 

「あらあなた達、抵抗しないのね? まぁ、懸命な判断よ。安心なさい。この厄介なボウヤにトドメを刺したら、あなた達には手を出さずに帰ってあげるから」

 

 

 その場合、俺はどうなるんだろうか。やっぱり魔王城に連れてかれたりするのだろうか。聞いた話ではサキュバス達がちょっかいかけに来るらしい。正直行きたい。

 

 性欲と正義の葛藤にさいなまれていると、アクアが騒ぐ声が聞こえてきた。

 

 

「ダクネス! どうして止めるの!? 早くヒデオを……むぐっ! んーんー!」

 

 

 見ると、今にもヒデオの元に駆け出しそうなアクアが、ダクネスに羽交い締めにされ口を塞がれていた。

 

 

「すまないアクア。ここに来る前にヒデオに言われたんだ。『アクアとこめっことめぐみんは絶対に守れ。イザとなったら他を見捨ててもいい。こめっこは言わずもがなだが、アクアとめぐみんは俺達の切札だ。絶対に前線に出させるな。それと、仮に俺やカズマが死んでも、アクアに敵の前では出来るだけ処置させるな』とな。だからここは我慢していてくれ。私だってシルビアの前に立ち塞がりに行きたいのを我慢してヒデオを信じているのだ」

 

 

 そうアクアにも自分にも言い聞かせる様に優しく言葉をかけるダクネス。

 あいつらがどんな話をして何を打ち合わせていたのかはわからないが、これで確信した。

 

 ヒデオは生きてる。あいつが守れる約束を守らないはずが無い。

 どうせ今も狸寝入りを決め込んで俺ごとシルビアを――

 

 

 ――俺ごと?

 

 

「じゃあね尻尾のボウヤ。なかなか楽しかったわよ」

 

 

 シルビアは俺の降って湧いた疑問も知らず、ヒデオにそう言葉をかけると、思いっきり顔面目掛けて足を振り下ろした。

 

 

 ――が、その足がヒデオの頭部を砕くことは無かった。

 

 

「……!? こ、この……! 離しなさい!」

 

 

 どうやら足を何かに掴まれたらしく、引き剥がそうと踏ん張るシルビア。

 しかし、なかなか剥がれない。

 このパターンは……!!

 

 

「離す? バカ言うな。折角しんどい思いして作ったチャンスだ。逃がすかよ」

 

 

 シルビアの足元から、何事も無かったかのようなヒデオの声が聞こえてきた。

 

 

「遅いんだよ。今までどこいってたんだ?」

 

「エリス様に会ってきた。それと、一つ疑問が晴れた。お前、股間にナニ付いてんじゃねぇか。そりゃあ俺が反応しないわけだ」

 

 

 ……は?

 

 

「あら、見たのね。そうよ。私は女でもあり、男でもある。さっきこのボウヤが堪能してた私の胸は後付けしたものよ。私はキメラの一種だから、色んな生物と混ざってるのよ」

 

「なるほど。つーことは、店に来た時の顔の変形はキメラの特性か」

 

「そういう事。骨格から変えたし、本来ならバレるはずがなかったんだけどっ!?」

 

「離せオカマ野郎! お、俺……男の胸で……うわぁぁあああ!!!」

 

 

 嘘だ! 嘘だと言ってよ! じゃないと、じゃないと俺は……!!

 

 

「よくも騙したァァァァ!! 騙してくれたなぁァァァ!!」

 

「や、やめなさい! 暴れないで! きゃっ!?」

 

「ぐぇっ!」

 

 

 突然ぐらりとバランスを崩し、俺を下敷きに倒れるシルビア。

 何事かと顔を上げると、黒い笑みを浮かべたヒデオが、シルビアの両足をしっかりと掴んでいた。

 

 ……こいつまさか。

 

 

 

「おいバカ! 俺はまだロープで縛られてんだよ! やめろ! やめてください!」

 

「悪いなカズマ。俺は今からお前ごとシルビアをジャイアントスイングするから、なんとか脱出してくれ」

 

「なんでだよ! 助けてくれるんじゃなかったのか!?」

 

「合わせるから芝居を打てとは伝えたが、助けるとは言ってない。勝手に助かれ。あばよ」

 

「ちょ、待っ」

 

 

 俺の制止など聞く耳を持たず、俺とシルビアをぐるぐるぐるぐると回し始めるヒデオ。

 

 そして――

 

 

「飛んでけオラァァァ!!」

 

 

 本当にぶん投げやがった!

 

 

「お前後で覚えとけよ! うわぁぁあ!!」

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 カズマをシルビアごとぶん投げてやった。

 シルビア単体なら投げっぱなしでもいいのだが、今回はカズマを助ける必要がある。

 

 助けるとは言っていないが、助けないとも言っていない。

 

 結構な勢いで投げたので、シルビアとカズマはかなりの速度を出しながら、地上2mほどの高度を保ちながら飛んで行く。

 

 だが。

 

 

「追いつけない速度じゃあない!」

 

 

 即座に舞空術でシルビアの背中側に周り、平行に飛ぶ。

 

 気でナイフ大の大きさの刃を作り、カズマとシルビアを繋いでいるロープを焼き切っていく。

 

 

「熱いけど我慢しろよ」

 

「このボウヤ、本当に厄介ね! このっ!」

 

「あぶねっ」

 

 

 シルビアが体を捻って攻撃してくるが、ひらりと躱しなおもカズマを縛るロープを焼き切っていく。

 

 

「ちょこまかと……!」

 

 

 シルビアがなんとか妨害しようとしてくるが、空中を自在に飛ぶことの出来る俺には通用しない。

 そうこうしているうちに、カズマを縛っていたロープがすべて切れた。あとは力任せにカズマをシルビアから剥がすだけだ。

 

 

「フンッ!」

 

「離れた! お、おいヒデオ。離すなよ!?」

 

「この高さなら受け身取れば無傷だぞ」

 

「それでも怖いもんは怖いんだよ!」

 

 

 騒ぐカズマを無事手元に引き寄せ、小脇に抱えながらまだシルビアと平行に飛ぶ。

 こんだけ隙だらけなんだ。攻撃を加えさせてもらおう。

 

 

「まず脇腹に蹴りを……おいコラ! カズマを離しなさい!」

 

「逃がすもんですか! このボウヤを奪われたら流石にマズイもの!」

 

 

 身体のねじりの力を使って蹴りを見舞うつもりだったのだが、シルビアがカズマの腕を掴むせいで思うように動かない。

 

 

「いでででででっ! どっちか離して! 痛い痛い!」

 

「いいのかカズマ! 俺が離したら今度こそ助けられなくなるぞ!」

 

 

 当初の予定にはなかったものの、死にかけてまで得たチャンスだ。逃さない。

 

 

「ボウヤ! 私に着いてきてくれたらすんごい事してあげるわ! 私が嫌なら部下のサキュバス達に口聞きしてあげるから!」

 

「カズマ! 口車に乗るんじゃねぇぞ! よく考えろ! こいつはナニ付きだ! それに、魔王城のサキュバスなんて加減を知らないに決まってる! 死因が腹上死とかエリス様にとんでもない顔されるぞ!」

 

「その前に引き裂かれて死にそうなんですけど!」

 

 

 空中を飛ぶ俺に掴まりさらにシルビアがカズマに掴まっているので、カズマはロープのような扱いになっている。

 筋力値が高ければ我慢出来るのだろうが、カズマの筋力値はそこまで高くない。

 引き裂かれそうな感覚になるのも仕方ないだろう。

 

 

「おいシルビア! 離してやれ! 大丈夫、離してくれたら2秒くらいは何もしないから!」

 

「嫌よ! 2秒なんてあってないようなものじゃない!」

 

「じゃあわかった! こうしよう! 無事カズマを安全な場所にに届けるまで俺は何もしない!」

 

「本当でしょうね!?」

 

「俺は下らん嘘はつかねぇ!信じろ!」

 

「ええい……ままよ!」

 

 

 シルビアは俺の言葉を信用したのか、しぶしぶカズマの腕を解放した。

 下に引っ張られる感覚が弱くなり、再びカズマを手元に引き寄せる。

 

 

「離れた! ヒデオ、早く俺を安全な場所へ!」

 

「そうだな」

 

 

 急かすカズマを肩に担ぎ直し、距離を見計らう。

 すると、何かを察したカズマがジタバタ暴れ始めた。

 

 

「おいおい待て待て待て! この担ぎ方は嫌な予感しかしないぞ!」

 

「安全な場所に届けるとは言ったが、方法が安全とは言ってない」

 

「そんなこったろうと思ってたよ! お前には良心がねぇのか!」

 

「勿論あるが、使い所を決めるのは俺だ」

 

「なに『言ってやった』みたいな顔してんだ! やめて! マジやめて! 柔らかい身体ならまだしも、ダクネス鎧着てるじゃん! 痛いんだよアレ!」

 

「柔らかいもんならさっきシルビアのニセ乳を堪能してたろ。これでプラマイゼロだ」

 

「どっちもマイナスだよちくしょう!」

 

「はいはいわかったわかった。じゃあ、受け取れダクネス!!」

 

「えっ、ちょっぎゃあああ!!」

 

 

 例の如く、ダクネス目掛けてカズマをぶん投げる。大丈夫、多分死なない。

 

 

「……さて。無事カズマを安全な場所に届けた。もう攻撃してもいいよな?」

 

「……もう少し待ってもらえないかしら」

 

「ダメだ」

 

 

 マウントは俺が取っている。それに相手は男ときた。加減する必要はない。

 

 シルビアの腹に両手をかざし、気を溜めていく。

 貫通力を伴わない気の攻撃は相手を吹き飛ばす衝撃波としてしか使えないが、それでも高めればかなりの威力になる。

 何より――

 

 

 人の身体が抉れる所なんて、純真でかわいいこめっこに見せられるわけがない。

 

 

「ばっ!!」

 

 

 とてつもない衝撃波が、シルビアを地面に叩き落とした――!

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 気の塊の爆発により、シルビアが落下した地点は大きなクレータが出来、もくもくと土煙が立ち上っていた。

 クレーターを作った本人は、その傍に着地し、ただ黙って穴の底を見つめていた。

 

 すると、何が起きたのかと心配になったダクネスとカズマが、様子を見にヒデオの元までやって来る。

 

 

「早速だが一言だけ言わせてもらう。死んでしまえ」

 

 

 ヒデオからすれば人質を少々荒っぽい方法で仲間に届けただけなのだが、カズマからすればそこらの岩より堅いものにぶつけられかけた様なものだ。

 ダクネスのキャッチが上手くダメージは殆どなかったとは言え、それでも怖いものは怖い。

 怨みを込めた視線でヒデオを睨むカズマだが、ヒデオはそれをものともしない。

 

 

「大丈夫みたいだな。あ、シルビアはまだ生きてるぞ」

 

「なんで今のでとどめ刺さなかったんだ?」

 

「シルビアを一息で殺れるほどの気を溜める時間が無かったんだよ。半端にやってこめっこにグロテスクなシーンは見せたくないからな。つーかダクネス、こめっこは?」

 

 

 こめっこの護衛を任せたはずのダクネスが、何故かこめっこを放置して最前線に来ている事が気になったのか、ヒデオはダクネスに問い掛けた。

 

 

「アクアとめぐみんに任せて来た。別に『言ったことも守れないのかこの雌豚が!』と口汚く罵ってくれても構わんのだぞ? 寧ろそれを期待してこちらに来たのもある」

 

「なるほど、それで充分だ。近くに敵も来てないしな」

 

「むぅ……」

 

 

 ヒデオの反応が思っていたより芳しく無かったのか、少しだけ不満そうにダクネスはヒデオを見つめた。

 

 

「なんでむくれてんだよ」

 

「めぐみんに、『そう言うのはヒデオに言ってください』と言われたから、てっきりヒデオが私の欲求不満を満たしてくれると期待していたのだが……」

 

「あのロリっ子なんてことを言いやがるんだ」

 

「そ、そんなに私の相手をするのは嫌か……?」

 

「うん」

 

「くっ……! こんな雑な責めでも少し悦んでしまう自分の性癖が憎らしい……! もっとだ! 」

 

 

 まだ足りないとおかわりを要求するダクネスだが、ヒデオは当然のようにそれを無視し、少し離れたところでクレーターの底を覗き込んでいるカズマを制止した。

 

 

「あ、おいカズマ。あんまり俺から離れんなよ。シルビアが何処にいるか正確な位置がまだわかってねーんだからな」

 

「気の感知で何とか出来るんじゃないのか? というか俺は敵感知あるから大丈夫だ」

 

「そうか。なら警戒しといてくれ。気の感知は発動してるが、細かい位置まではわかってない」

 

「ん? いつもは後ろから悪戯しようとしたらすぐ気付くのにか?」

 

「今は紅魔の里周辺まで範囲を広げてるからな。範囲を広げると多くを感じとれるが、その分明確な座標とかはわからない。だから、今みたいな時は気の感知はあくまで参考にするだけだ。肉眼で見るのが一番だからな」

 

 

 現在、ヒデオの気の感知の熟練度での最大距離は100kmで、最大範囲は半径25km。

 地図のように縮尺の増減で精度が変わる。

 範囲を広げるほど誤差は大きくなる。

 現在は紅魔の里とその周辺を半径15km程度に拡大していて、誤差は平均1~2m。

 更に、対象の気が大きければ大きい程その周りのそれより小さな気が感じ取りにくくなるという性質を持っている。

 

 その説明を受けたカズマは、もっともな意見を口にした。

 

 

「それなら範囲狭めればいいじゃねぇか」

 

「こめっこが居るのにそんな危なっかしいことができるか。仮にシルビアと交戦中でもこめっこに危機が迫ればそっちを優先するぞ俺は」

 

 

 一体なにがヒデオをここまで駆り立てるんだろう。一度頭の病院に掛かった方がいいんじゃないのかとヒデオを心配するカズマだったが、この世界の精神科となると宗教関連になり、アクアがでしゃばってくる事を察し、それ以上は何も考えなかった。

 

 そんなカズマの心配など全く知らないヒデオは、シルビアの気の動きを感じると二人に警告した。

 

 

「……ダクネス。来てるから構えろ。カズマ、俺の前だよな?」

 

「あぁ、ちょうどヒデオの真ん前だ」

 

 

 まだもくもくと粉塵と土煙が舞っているので姿は視認出来ていない三人だが、カズマの敵感知にもヒデオの気の感知にも、しっかりとシルビアの動きは察知出来ている。余程のことが無い限り迎撃は容易い布陣だ。

 三人ともそう考えながらも、決して油断はしない。

 

 ゆらゆらと土煙が揺れ、シルビアの接近を知らせて来る。

 どんな手を使って来るかは知らないが、とりあえずは蹴りを見舞おうと、ヒデオは半身に構え両足に力を込める。

 

 すると。

 

 

「ヒデオ、カズマ! 下だ! 地面が!」

 

「「!」」

 

 

 ダクネスの叫びに釣られ咄嗟に視線を下に向けると、地面がぼこぼこと隆起し始めていた。

 

 

「任せろ!」

 

 

 それに対し地面を踏み砕こうとするヒデオだったが、それはカズマに制止された。

 

 

「違う! そっちじゃない! 反応は前から来てる!」

 

 

 カズマが見る先には、シルビアであろう黒い影が土煙に映されていた。

 

 常人なら地面の囮に釣られ、まんまとシルビアに一杯食わされていただろう。しかし、サイヤ人を常人と呼ぶのは無理がある。

 

 ヒデオは流れるように崩れた体勢を回し蹴りの型に持ってゆき、影めがけて思いっきり飛び回し蹴りを見舞った。

 

 

「シッ!」

 

「あっ!?」

 

「!?」

 

 

 ヒデオが蹴ると同時にシルビアが素っ頓狂な声を上げたが、ヒデオの蹴りは土煙を晴らしただけで、シルビアに掠りもしなかった。

 しかし、シルビアがヒデオの蹴りを避けたわけではない。

 

 クレーターの斜面が崩れ、シルビアは足を滑らせたのだ。そして前のめりに倒れ、ヒデオは飛び回し蹴りの慣性に従って回転しながら落ちた。ただそれだけの事。

 

 魔王軍幹部だって足元が悪ければ滑らせもするし、滑り落ちまいと腕を前に伸ばしたりもする。何か掴めるものがあったから、それを全力で掴んだりもするだろう。

 

 

「……なにかしら、このモフモフ」

 

 

 ただ、手を伸ばした先にあったのがヒデオの尻尾だっただけだ。

 

 

「……ヤバイ」

 

「あら? なんで厄介なボウヤが……なるほど。弱点ってこういう事ね」

 

 

 自分が持っているモフモフの先で何故か倒れているヒデオに疑問を持ったシルビアだったが、即座に状況を理解し、今一度ヒデオの尻尾をしっかりと握り直した。

 尻尾を強く握られたヒデオは当然力が抜け、へなと地面に崩れ落ちる。

 

 そんなヒデオの様子を見て、カズマが焦った様子で問い詰めた。

 

 

「オイオイオイ。なんの冗談だよヒデオ。お前、尻尾には気を付けてるっていつも言ってたじゃねぇか! なんでそんな簡単に掴まれてんだ!」

 

「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! 俺はシルビアに飛び回し蹴りを放ったと思ったらいつの間にか尻尾を掴まれていた……。何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……。超能力だとか催眠術だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 

「私は少し離れたところで見ていたからわかるが、前のめりにこけたシルビアの右腕の傍に運悪くヒデオの尻尾があっただけだ。回し蹴りが仇になったな」

 

 

 意識しての攻撃ならば、ヒデオは野生の勘で察知しこの事態を防ぐことも出来ただろう。しかし、今回のこれは完全に事故だ。どうしようもできない。

 

 

「ダクネス、カズマ。恥をしのんで言う」

 

 

 本来なら逆の立場だが、今回ばかりは致し方ない。ヒデオは悔しさと自分の情けなさに歯噛みし、心底嫌そうな顔で。

 

 

「助けて欲しいです……!」

 

 

 そう、二人に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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