この素晴らしい世界に龍玉を!   作:ナリリン

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遅くなってすみません。


第五十八話

 

 

 

 なんやかんやあって油断したヒデオが彼方へ吹き飛ばされ、シルビアの狙いは紅魔族達へ。

 

 

「きゃあっ!」

 

「そけっと!」

 

 

 転んだそけっとに駆け寄ろうとするぶっころりー。しかし、それを制止するそけっと。

 

 

「ぶっころりー、私は置いてあなたは逃げて! あなたが死んでしまうとこの里の未来が……!」

 

「大切な人を見捨てる男が救える里なんてないさ! さぁ、手を取って!」

 

「……バカね。でも、そんなあなただから――」

 

 

 手を取り合う二人に、巨大な影が覆いかぶさる。

 

 

「あら、感動のシーンかしら」

 

 

 大猿シルビアだ。

 にたりと気味の悪い笑みを浮かべると、そのまま二人に光弾を向けた。

 

 

「盛り上がってるところ悪いけど、死んでもら――」

 

「『テレポート』」

 

 

 ぶっころりーのテレポート!

 ふたりはシルビアのまえからきえうせた!

 

 

「……は?」

 

 

 シルビアはぼうぜんとしている!

 

 

「――っらぁぁぁぁ!!!!」

 

「がッ!?」

 

 

 こめかみに鋭い衝撃を受け、ぐらりと揺れるシルビア。無論、やったのはヒデオである。シルビアにビンタで吹き飛ばされつつも、常軌を逸した執念とスピードで返ってきた。

 

 

「いったいわね! なにすんのよ!」

 

「そりゃこっちのセリフだ! 鼻血出たわ!」

 

「あれ喰らって鼻血で済むとか頭おかしいんじゃないかしら」

 

 

 アクアのヒールで傷こそ治っているが、ヒデオのこれは痩せ我慢である。

 

 

「おれ、つよい。おまえ、よわい。おけ?」

 

「殺す!!」

 

「死ね!!」

 

 

 ぶつかり合う閃光、爆音、衝撃。

 

 二匹の猿の戦闘が激しさを増していく――。

 

 

 

 ――――――――

 

 

 

 遡ること数分前。

 

 

「スーパーヒーロー受け身!!」

 

「そんな技はない」

 

 

 シルビアに吹き飛ばされたものの、ヒデオは上手いこと調整してなんとかカズマ達の元へ帰ってきた。

 ちなみにスーパーヒーロー受け身とはただの受け身である。

 

 

「いてて……カズマ、準備は終わったか?」

 

「めぐみんが余計な事言ったからゆんゆんが逃げた。まぁもう戻って来てるが」

 

「お前もう少しゆんゆんに優しくしてやれよ」

 

「私はだいぶ優しいと思いますが……」

 

「あのな、ゆんゆんのメンタルはどちらかと言えばクソ雑魚だ。お前みたいな毎日毎日他人への迷惑を考えずに爆裂魔法をぶっぱなす様な輩が言う程度の優しさなんてあってないようなもんだろ」

 

 

 そう言ってめぐみんを咎めるが、本人の前でそれを言うくらいには、ヒデオにはデリカシーがない。ついでにモラルもない。

 

 

「ヒデオ、その発言がいちばんゆんゆんを傷付けてるって自覚あります?」

 

「えっ……ごめんなゆんゆん」

 

 

 どうやら無自覚だったらしく、素直に頭を下げるヒデオ。この男、ゆんゆんとこめっことちょむすけには何故かクソ甘い。共通点は可愛い事と庇護欲をそそる所だ。

 

 

「謝らないでください! 私、気にしてないですから! めぐみんとヒデオさんはそういう人だってのはわかってますから!」

 

「「それは傷つく」」

 

「なんで!?」

 

 

 二人に振り回されたおかげ(?)か、完全に緊張はなくなり普段通りに接し始めるゆんゆん。他より付き合いが長く深い分だけあってか、ゆんゆんの扱いについて心得ている。

 

 

「よし、戯れもこの位にして。ゆんゆん、なんかゴチャゴチャ考えてるみたいだが、めぐみんに勝ちたきゃこれくらいやってのけろ。こいつは一発で成功させたぞ」

 

「……ふっ」

 

 

 ヒデオの発言に調子づき、勝ち誇った顔でゆんゆんを嘲笑うめぐみん。

 その態度がゆんゆんの闘志に火を付けた。

 

 

「……!! か、必ずシルビアをぶった斬ります!! めぐみんの出番は無いくらいに刻んでやります!!」

 

「なにおう!」

 

 

 ギラギラと紅魔族特有の赤い瞳を輝かせ、めぐみんへの対抗心をそのままシルビアへの殺意へ変換するゆんゆん。多少強引ではあるが、ヒデオの狙い通りである。

 

 

「準備は整ったな。ヒデオ、詳細はこっちに任せろ。アクア、ヒデオにヒールしてやれ。回復は出来る時にしとこう」

 

「はーい。ヒデオ、手出して――うわ、ボロボロね。『ヒール』!」

 

「っ……!」

 

 

 心地良いはずのヒールに顔を歪めるヒデオ。アンデッド技の不死王の加護の後遺症で、ヒールが苦痛になってしまっている。

 

 

「痛いの?」

 

「……い、いや。そんな事はねぇ。あれだ。傷口消毒したら染みる的なアレだ。うん」

 

 

 染みる的なアレというのは間違っていないが、それが全身だ。並の痛みではない。無論これは痩せ我慢だ。

 

 

「うーん、まぁいいわ。けどヒデオ、もうあの技は使っちゃダメよ? わかった?」

 

 

 アクアの気遣いとは裏腹に、この後に待っているのは勿論。

 

 

「了解。不死王拳!!」

 

 

 お約束の展開である。

 

 

「あーーっ!!!」

 

「すまんなアクア。終わったらたっぷりと怒られてやる!! あばよっ!!」

 

 

 ぷんすこ憤慨するアクアを置いて、ヒデオはそのままシルビアの元へすっ飛んで行き――

 

 

「おっらぁぁぁぁ!!!」

 

 

 飛び蹴りをぶちかました――!!!

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「オラァァア!!!」

 

 

 鈍い打撃音が響き、ぐらりと巨体が揺れる。

 

 

「この! しつこい!」

 

 

 力任せに振り払われるが、俺は諦めない。何度でも繰り返す。

 

 

「オラァ!!!」

 

「だから! しつこい! わよ!」

 

「なんの!!」

 

 

 進行を塞がれるならば、別ルートから行くまで。回り込み、再び打撃を見舞う。

 

 

「何度やっても効かないわ!」

 

「それでも!!」

 

 

 何度弾き飛ばされても、諦めない。必ずその膝をあらぬ方向にへし折ってやると、確固たる決意でローキックを放つ。

 

 

「あぁもう!! 足ばっか狙わないでくれるかしら!? それと剣はどうしたの!?」

 

「自分よりでけぇ奴と戦う時は膝を狙うもんだ。剣はさっき返してきた」

 

 

 足を狙うのは時間稼ぎ兼体力温存だ。音速機動は体力の消費が激しいから、そう連発はできない。

 はたしてあの雑な作戦は成功するだろうか。ゆんゆんがぶった斬ってめぐみんと俺で消し飛ばす手筈だが、本当にこれで良かったのか? もっとやりようはあったんじゃないかと心の不安を消せないでいると。

 

 

「ヒデオ兄ちゃん、がんばってー!」

 

「あぁ! 愛してるぜこめっこ!!!!」

 

 

 こめっこが声援を送ってくれた。これは勝ったわ。

 

 

「あっ、スキあり」

 

「げぶっ!!」

 

 

 こめっこの可愛さに気を取られていると、全身に重い衝撃が襲いかかった。

 

 

「……おいおい、人を足蹴にすんじゃねぇよ。早くこのくせぇ足をどけろ」

 

「嫌よ。折角手に入れたチャンスですもの、逃がさないわよ? そもそもあなたを人と呼ぶのはいささか抵抗があるわ」

 

「こいつは一本取られ痛ぇ! 潰そうとするな! グロテスクな場面をこめっこに見せちまうだろうが!」

 

「こめっこ……あのおチビちゃんね。随分とご執心のようだけど、ロリコンなの?」

 

 

 む、失礼な。

 

 

「愛してる相手がロリなだけで俺はロリコンじゃない」

 

 

 いくら俺が世間から変態やセクハラサイヤ人と言われようともそれは違う。俺は断じてロリコンじゃない。

 

 

「それを世間ではロリコンと呼ぶのよ。まぁいいわ。良いこと聞いたしね。――まだ冷静を保ってるあなただけど、あのおチビちゃんを失ってしまったら、どうなるのかしらね?」

 

「何言ってんだお前?」

 

「あ、あれ?」

 

 

 こいつは何を言ってるんだ? 俺がこめっこを失う? アホか?

 

 

「俺がこめっこを失うわけねぇだろ。頭沸いてんのか?」

 

「……なるほど。あまりの事態に絶望して、現実を受け入れられてないのね。いいわ、もう一度言ってあげる。耳かっぽじってよく聞きなさい」

 

「おう」

 

「今からお仲間達を殺すわ。おチビちゃんもついでにね」

 

 

 あーなるほど。つまりこいつは、戦闘員のカズマ達だけじゃ飽き足らず、こめっこの命も奪おうとしてるんだな。なるほど、なるほどなー。

 

 

「は?」

 

 

 ぷつんと何かが切れた。

 途端に湧き上がってきた力に任せシルビアの足をへし折って、拘束を引き剥がす。

 

 

「えっ」

 

「おれ おまえ ころす」

 

「させると思って? このまま爆発波で諸共焼き尽くしてやる!!」

 

 

 そう叫ぶと、シルビアの気が跳ね上がった。広範囲に攻撃するつもりか。

 こいつ、一度ならず二度までも禁忌を……。

 

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

「押し戻され……!?」

 

 

 万死に値する。

 

 スーパーな気を全開にすると力が漲り、なんでもできる気分になる。そのまますうっと息を深く吸い込み、腹に力を込め、解き放つ。

 

 

「オレはおこったぞーー!!! シルビアァァ!!!」

 

 

 これが、俺の超サイヤ人だ!!

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「カズマ! なんだかヒデオが荒々しいオーラを纏っているのだが、これを私にぶつけてくれないだろうか!?」

 

「何言ってんだこいつ。それより準備を急ぐぞ。ヒデオの理性が残ってるなら……まぁあの様子だと残ってるだろうな。その場合アイツは作戦を続行する可能性が高い。まぁ備えあれば憂いなしってやつだ。あの新形態は確かに強いが、無敵ってわけじゃないからな」

 

 

 カズマの心配は完全に杞憂だが、ヒデオが作戦を続行するというのは正解だ。無論、そちらの方がこめっこに危険が及ばないという理由からではあるが。

 

 

「ねぇめぐみん、ヒデオさんの新形態ってなにかしら?」

 

「恐らくですが、前に言ってたナントカサイヤ人かと。確か怒りによって変身するとかなんとか」

 

「前から思ってたけど、ヒデオさんって本当に人間なの?」

 

「まだ人の形を保ってるのでかろうじて人間だとは思いますが。ほら、怒っても緑色になったり巨人になったりしてないですし」

 

 

 ある意味では超サイヤ人も最強のアヴェンジャーとなるのかもしれないが、怒りの理由が理由なので格好よくはない。

 

 

「ヒデオ兄ちゃんかっこいー!」

 

「……ゆんゆん、私達にもそういうのないんですか? スーパー紅魔族的な」

 

「ないと思うけど……」

 

 

 紅魔族には数々の伝承(デタラメ)があるが、流石にスーパー紅魔族とやらはない様子。今後増えるかもしれない。

 

 

「二人とも、お喋りはそこまでだ。そろそろ作戦開始といこうじゃないか。めぐみんはもう充分気を蓄えてるから、俺の気を全部ゆんゆんに渡す。脅すわけじゃないけど、一度きりしかチャンスはないから一発で決めてくれ」

 

「はい!!」

 

 

 景気よく返事をしたのは意外にもゆんゆんだった。いつもとは違い、自信と活気に満ちている。

 

 

「ゆんゆん、やけに張り切ってますね。頭でも打ちましたか?」

 

「打ってないわよ! ……ヒデオさんがちゃんと私を見ててくれて、頼ってくれた事が嬉しいの」

 

 

 ゆんゆんからすれば、ヒデオはとても強くて優しいので、本当はしたくないけど気を使ってくれて自分と冒険しているのだと思っていた。しかし、今日の件でそうではない事が判明した。ゆんゆんにとって、張り切る理由はただそれだけで充分だ。

 

 

「そうですか。負けませんよ?」

 

「望むところよ!」

 

「よし、二人とも準備は終わったみたいだな。作戦開始だ!」

 

 

 超サイヤ人を援護するというなんとも珍妙な作戦が始まった――。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 ヒデオが超サイヤ人になってからは、当然シルビアは手も足も出なかった。

 

 

「この、この、偉そうに!!」

 

「偉くはないけど、俺は強いぞ。フンッ!!!」

 

「がっ……!!」

 

 

 体躯の差を余裕で覆すパワー。

 

 

「ちくしょう……! あんたさえ、あんたさえいなければぁぁ!!」

 

「ごめんな、強くてさ」

 

「ムカつく!!」

 

 

 攻撃が掠りすらしないスピード。

 

 

「カメハメ波ーーッ!!」

 

「喝ッ!!」

 

「気合でかき消した!?」

 

 

 質も量も遠く及ばないエネルギー。

 

 

「さて、次はどうする?」

 

 

 そんな数々の理不尽とも言えるスペックに、大猿なだけのシルビアが勝てる筈もなかった。

 

 

「……そんな隠し玉を持っているとはね」

 

「俺もまさかこんな所でなれるとは思ってなかったよ」

 

 

 ヒデオが超サイヤ人になれたのはこめっことアクア、ウィズのお陰である。

 まずウィズの『不死王の加護』が生者にはダメージを与える性質により、不死王拳を使う度にヒデオは死にかけた。そしてそれをアクアのハイスペックヒールで回復し、そこにサイヤ人の性質が合わさる。

 さらに、こめっこ限定のある意味で純粋なロリコンと化したヒデオの本能は、こめっこに危機が及ぶことを決して許さなかった。その結果、シルビアの放った超爆発波がこれに抵触するとして、強制的にその力を目覚めさせたのだ。

 

 

「さて、お前の負けは決まった様なもんだが……言い残すことはあるか?」

 

 

 超サイヤ人になったとはいえ、ヒデオは混血のサイヤ人である。大猿の時もそうだった様に、純粋種より理性を保つのは容易く、怒り狂うという事態にはなっていない。地球人の甘さ故にシルビアはまだ生きているし、この油断とも取れる態度もサイヤ人の性質故と言えるだろう。なので――

 

 

「生憎と、負けた時の言い訳なんて気の利いたモノは考えてなかったわ。その代わり――」

 

「その代わり?」

 

「あなたにどうやって吠え面かかすかは考えてたわ」

 

 

 敵の最後っ屁に痛い目を見るのも、サイヤ人らしい。

 

 シルビアは気を爆発的に上げ、先程と同じ構えを見せた。

 

 

「……ん、中々の気だ。なにやるんだ?」

 

 

 それでも、ヒデオは余裕を崩さない。超サイヤ人の影響か、怒り狂わずとも舐めプの精神が出て来ている。これはサイヤ人である以上仕方ない。

 

 

「その余裕もこれまでよ! ここら一帯、私とともに塵と化してやるわ!! 逃げられるものなら逃げてみなさい! そんな沢山抱えて逃げられるならね!」

 

 

 先程の感覚で、シルビアはヒデオが壁になっても後ろのカズマ達が焼け死ぬ威力を算出した。今回ばかりはヒデオだけしか耐えられない。

 

 しかし、シルビアはここでひとつ誤算をした。ある事を頭に入れていなかったのである。

 

 ヒデオが何故――

 

 

「あ?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

「あっ」

 

 

 今更気付いてももう遅い。

 

 ズドンと重い音を立て、シルビアの腹部に地上最強の拳がねじ込まれる。

 

 たった一撃でシルビアの背中は折れ、文字通り浮き足立つ。それでも怒り心頭のヒデオは許さない。

 

 

「邪ッ!!!」

 

 

 一度ならず二度までも禁忌を犯したのだ。許す道理はもうない。

 尻尾を掴み取り、怪力無双でちぎれんばかりにぶん回し――

 

 

「こいつで終いだ!!!」

 

 

 回転の勢いをそのままに、高く高くシルビアを投げ飛ばす。

 

 

「早く体勢を戻さないと……!!」

 

 

 慣れない大猿の体のせいか、うまく推力に抵抗できず、シルビアの動きはぎこちない。今まで飛ばなかったのはこれが理由である。

 

 

「隙だらけだぜ。やっちまえゆんゆん!!」

 

「はい!!」

 

 

 ゆんゆんは魔力と気を携えた愛用のダガーとワンドに流し込み、剣と矛を創り上げた。

 断つ剣と穿つ矛。このふたつが合わさって出来るひと振りの破壊力はまさに――

 

 

「『ライト・オブ・フルセイバー』ッ!!!」

 

 

 最強である。

 

 

「な……!?」

 

 

 痛みを感じる暇すらなく、気が付けば尻尾諸共胴体を真っ二つにされていた。

 魔術師殺しの魔法耐性などお構い無しに、シルビアの上と下を泣き別れにしたのだ。それ程までに理不尽で不条理な一撃。喰らった側はたまったものではない。

 

 

「ゆんゆんが覚醒したぞー!!」

 

「あれがゆんゆんに秘められていた力か……!」

 

「うっうっ……あんな立派になって……!」

 

 

 いつの間にか戻って来ていた紅魔族達が、ゆんゆんの新技にやいのやいのと騒ぎたてる。

 

 しかし、まだまだこんなものでは無い。

 

 

「めぐみん、今よ!」

 

「言われなくても!〈束ねるは焰のゆらめき、燃え滾る紅蓮の爆炎〉……ゆんゆん、先程の魔法、私のライバルを名乗るに相応しい一撃でした」

 

「え、めぐみん今私を褒めた? ねぇ褒めた?」

 

 

 珍しく褒められたゆんゆんは、によによとした顔でめぐみんにそう尋ねた。

 

 

「う、うるさいですよ! 黙って見ててください! これが、超エクスプロージョンバージョン2。またの名を――!!!」

 

 

 若干頬を赤く染めながら、紅に輝く瞳で獲物を見据え、天に刻んだ魔方陣より解き放つ。

 

 

「『エクスプロージョン・ストライク』!!!」

 

 

 立ち上る爆炎ではなく、真下に高密度の爆裂弾を放つ。万象一切を灰燼と為す太陽の如き一撃は、容赦無くシルビアを叩き潰さんとする。

 どこぞの敗北者の息子の奥義とは大違いである。

 

 

「く……! こんなもの!! こんな……!! うわぁぁぁ!!」

 

 

 元気玉に叩き落とされるフリーザよろしく落下していくシルビア。

 じきに地面と激突し、爆発に巻き込まれて死ぬだろう。万全の状態ならば欠片ほど耐える可能性もあっただろうが、今は尻尾を切られて人型に戻っている最中であり、全身から力が抜けている。これだけでもシルビアは死ぬのだが、作戦はまだ終わっていない。

 

 

「はぁぁぁぁぁ! こいつでトドメだ!!」

 

 

 オーバーキルをするにしても程があると非難されるかもしれない。しかし、ヒデオからすればシルビアはそれだけの事をしでかしたのだ。万死に値する。

 

 

「ヒートドームアタック!!!」

 

 

 一気に放出された莫大なエネルギーは、光の帯となって爆裂魔法にぶつかる。互いに高い推進力と熱量を持っていて、凄まじい勢いでシルビアの命を削っていく。

 

 トランクスがセルを完全に消し去った事で定評のあるこの技は、超サイヤ人(覚醒)状態でのみ許される、ヒデオの上必殺技である。

 

 

「――――!!!」

 

 

 声にならない悲鳴を響かせるシルビア。それでもサイヤ人とグロウキメラのバケモノ耐久のせいで死ぬに死ねず、まさに生き地獄である。

 

 

「ヒデオ、早くそこをどいて下さい! いくらあなたでも直撃すれば死にますよ!?」

 

 

 シルビアを両側から削り殺すという作戦だが、ヒデオが死ぬという欠点がある。めぐみんは爆裂魔法を引っ込めることが出来ない上、ヒデオのヒートドームに負けるとも思っていないからこそのこの発言である。確かに()()()()のヒデオならば押し返せずに消し炭になる可能性が高い。しかし。

 

 めぐみんはまだ超サイヤ人を、覚醒したヒデオのフルパワーを、知らない。

 

 

「押し返せるとでも思ってんのかめぐみん!! 舐めんな!! 俺は穏やかな心(ロリコン)を持ちながら、激しい怒り(ロリコン)によって目覚めた伝説の戦士(ロリコン)……。超サイヤ人、タナカヒデオだァァァァ!!!!」

 

 

 渾身の口上を上げ、フルパワーで爆裂弾を押し返す。

 

 超加速して天に昇る光の帯は、やがて臨界点を迎え――

 

 

「ち、ちくしょおおおぉぉぉ!!!」

 

 

 シルビアの断末魔と共に、大空で炸裂した――!!!

 

 

「けっ、きたねぇ花火だ」

 

 

 




結構書いたする気がするのは消しまくったせいだろうか

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