白夜の兄貴分が帰って来るそうですよ?〜リメイク版〜 作:☆シュレリア☆
今回もあんまり変わってないですね・・・(^^;;
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朝、目を覚ますと既にラグスムエナの姿は無かった。恐らく朝食の準備をしているのだろうと思い、黒夜は部屋を出て調理場へと歩いていく。
しかし、ここでふと疑問が過ぎった。
(そう言えば・・・昨日からラグスムエナ以外のメンバーを見ないな)
そう、黒夜がここへ来てからというもの、風呂場でも廊下でも誰とも出くわさなかったのである。
昨日の時点では黒夜に対して警戒しているからとも思えたのだが、今日になっても人影が全くない事を訝しんだ黒夜は悪いとは思いつつも本拠全体の気配を探ってみるのだった。
(これは・・・ラグスムエナ以外の気配が一つもない?3桁に本拠を構えているなら少なくとも幹部クラスはこの本拠にいて然るべきだ。それがいないとなると・・・)
黒夜は嫌な予感に少し早足でラグスムエナの所へと向かった。
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ラグスムエナは丁度朝食を作っている所だった。黒夜が来たことにも気づいていないようで、鼻歌を歌いながら上機嫌で作業を進めている。
黒夜は声をかけようと一歩踏み出した瞬間、信じられない言葉を聞いた。
「誰かのためにご飯を作るのも本当に久しぶりだから楽しいなぁ・・・リーダーたちが捜索に向かってから・・・2年。多分・・・もう」
そこまで言ってラグスムエナは哀しそうに俯いてしまう。黒夜は聞いてはいけない事を聞いてしまった罪悪感で引き返そうとも思ったが、昨夜彼女が自分の部屋を訪れた時の事を思い出して踏み止まった。
(そうか・・・あれは、疲れてしまったとかじゃなくて・・・寂しかったんだな)
「おはよう・・・ラグスムエナ」
ビクッ!
できるだけ優しく声をかけたつもりだったのだが、やはり驚かせてしまったようでラグスムエナは驚きのあまり手に持っていた食材を落としてしまった。
「こ、黒夜様・・・いつからそこに?」
「少し前から・・・」
「え・・・あ、じゃあ・・・」
「ごめん・・・聞いてた」
ラグスムエナは真っ青になりながら、その場にへたり込んでしまった。
クラスは慌てて駆け寄ると、小さく震えるラグスムエナを抱きしめて頭を撫でた。
「大丈夫・・・もう我慢しなくて良いんだ。寂しければ昨日みたいに一緒に寝てあげるし、悲しければこうやって抱きしめてやる。ずっと我慢してたんだろ?俺が受け止めてやるから、泣きたければ泣いて良いんだんだ」
「こ・・・くや・・・様、私・・・わ・・・た・・・し・・・・・っ!」
「今まで・・・辛かったよな・・・これからは俺が一緒にいてやるから・・・我慢するな」
「うっ・・・ひっく・・・・・うぅ、うぁぁ・・・ぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」
ラグスムエナは泣いた・・・。黒夜の胸に顔を埋め、足は投げ出し必死にしがみ付きながら・・・今までの悲しみを全て吐き出すようにして、ただただ大声で泣いた。
黒夜はそんな彼女を強く抱きしめながら、泣き止むまで頭を撫で続けるのだった・・・。
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ラグスムエナが泣き止んだのは1時間以上が経過してからだった。
今は随分と落ち着いたようで、真っ赤に充血してしまった目を擦りながら黒夜に謝っていた。
「あの・・・すみません。服が・・・」
ラグスムエナは大声で泣き叫んでしまったことと、黒夜の胸元を涙と鼻水でぐしょぐしょにしてしまったことで、恥ずかしさを必死に抑えながら頭を下げた。
「気にしなくていいよ。むしろ、昨日の時点で気づいてやれなくてすまなかった。もう大丈夫そうか?」
「は、はい。本当にすみません・・・すぐに朝食にしますので」
「今のラグスムエナに料理をさせるのはちょっと心配だなぁ・・・俺も手伝うよ」
「そんな!?黒夜様に料理をさせるわけには!」
「こう見えて昔は俺が白に作ってやってたんだぞ?任せとけって」
そう言いながら黒夜は次々に下ごしらえをこなしていく。ラグスムエナはあまりの手際の良さに一瞬見とれてしまうが、すぐに我に返って他の調理を進めていくのだった。
朝食が完成する頃には、ラグスムエナもほぼ元どおりに戻ったようで今は昨日よりも小さいテーブルを挟んで食べていた。
これはラグスムエナの為を思ってのことであり、昨日のように大きなテーブルを挟んで離れた位置で食べるよりも出来るだけ近い距離で食べた方が彼女の寂しさもより和らぐと思ったのである。
その思惑は想像以上に効果が高かったようで、今のラグスムエナは夕食のときよりも良い笑顔をしている。
死神である彼女の寿命は永遠と言っても良いことから、たかが2年という時間は大した長さではないように思えるが、戻ってこない仲間達の心配やたった1人で過ごさなければ行けなかったこと、さらにはこれは黒夜の予測ではあるのだがラグスムエナ自身は実力は高いが年齢で言えば100年ちょっとくらいだろうことを考えると、そのたった2年という長さは彼女の心を磨耗させるには十分な時間だったのだろうと思う。
と・・・そんな事を考えていると、ラグスムエナが自分を見ていることに気がついた。
「どうした?」
「いえ・・・ずっと私の顔を見ていたのでどうしたのかなと」
むしろ見ていたのは自分の方だったようだ・・・。黒夜は何でもないように装うと、適当な理由でごまかした。
「いや、俺の料理はどうかなと思ってな。久しぶりに作ったからミスって無ければ良いんだが・・・」
「フフ・・・とても美味しいですよ。正直、私のより美味しいのでちょっと悔しいです」
「それなら良かった。知らない食材もあったから少し心配だったんだ」
黒夜は胸をなでおろす仕草を取ると、そう言えばと言葉を続けた。
「ラグスムエナは・・・ラグスムエナって長いな。ラグスと呼ぼう。ラグスは誰に対しても敬語なのか?」
「え・・・?そうですね・・・自分より立場が上の方には敬語を使っていましたね」
「ふーん・・・なら、俺に対して敬語使うの禁止ね。後、様付けも禁止」
「えぇ!?」
「もう必要ないだろ?お前は俺に隷属した身だけど、俺はお前の事をもう家族のように思ってる。だから敬語だと距離が開いてるような気がして嫌なんだよ」
「家族・・・///」
ラグスムエナは一瞬で顔を赤くしてしまったが、家族という言葉が嬉しかったのか次第に笑顔になっていった。
「そ、それじゃあ・・・恐れ多いのですが、こ・・・黒夜。これで、いい?」
「ふむ、急に辿々しくなったな。まぁそれも可愛いから良しとしよう。後は徐々に慣れていけばいい」
「う・・・うん。頑張って、みる///」
2人はその後も慣れるために色々と他愛の無い会話をしながら食事を終え、食器を片付けるとようやくノーネームへと出発するのだった・・・。
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2人は現在、ノーネームへ向かうためにラグスムエナが作り出した道を進んでいた。
これは死神特有のギフトで、箱庭各地の死した魂を回収する為に与えられた物で境界門のように一瞬で移動できるわけでは無いが、それでも移動時間を8割程度は短縮出来るので非常に便利なギフトである。
本来なら黒夜が力を使えば一瞬で移動できるのだが、今回は時間もあることだし折角だから少し散歩しながら行こうということになりラグスムエナのギフトを使用する事にしたのだった。
「それにしても・・・ふむ、3000年も経つと結構色々と変わるものだな・・・」
「そう・・・だね。100年でも、結構変わった部分は・・・あるし」
「あぁ・・・そう言えば、昨日言ってた外界からの召喚はいつ頃になるんだ?」
「お昼過ぎくらい・・・だね。今のペースだと、丁度同じくらいに着くかな?」
「なら、少しペースを上げよう。ちょっと驚かせてみたい」
黒夜はニヤニヤと笑いながら歩くペースを速めた。ラグスムエナは慌ててその後ろについて行くが、何故か嫌な予感がして冷や汗をかくのだった。
それから1時間後、2人は召喚地点と思われる湖の近くに到着していた。どうやら先客がいるようで、黒夜は間に合わなかったか?と思ったがその気配が月の兎の物だったので一安心した。
(というか、あれで隠れているつもりなのか?月の兎ってあんなにマヌケな種族ではなかった気がするんだが・・・)
黒夜は小声でラグスムエナに問いかけた。
(確か・・・月の兎のコミュニティは数年前に壊滅したと聞いた。彼女は、その生き残り・・・だと思う。それにしても・・・派手な格好・・・)
(月の兎が壊滅?どんな化け物だよそれ。まぁ今は良いか・・・来るぞ)
黒夜が空を見上げたので、ラグスムエナもそれに倣うと丁度上空4000m辺りの場所に3つの光が現れ、中から3人の少年少女が吐き出された。
3人はそのまま湖に向かって落下していく。
「え・・・あれ大丈夫なの、かな?」
「一応下には緩急材があるが・・・一応助けるか」
黒夜はそう言うと、3人に向かって手を翳した。すると3人の体は急速な落下を止め、ゆっくりと地面に降ろされていく。
3人は何が起こったのか理解出来ないように周りを見回したが、やがてふざけた召喚のされ方に文句を言い始め、最終的に自己紹介に移っていた。
「ふむ・・・金髪が十六夜、黒髪が飛鳥、栗毛が耀か。全員人間だが・・・特に十六夜はかなり異質な存在だな」
「そう・・・だね。魂の色が見えないなんて初めて」
黒夜はラグスムエナの言葉にギフトを無効化しているのかと考えるが、答えは出なかったのでイタズラついでに試してみる事にした。
黒夜は右手を十六夜に向けると、真っ黒な球体を作り出し放った。それは音速を超える速度で十六夜に向かっていき、突然の攻撃に隣で見ていたラグスムエナが驚きの声を上げる。
「ちょ・・・なにを!?」
「まぁ見てなって」
黒い球体はみるみる十六夜に接近して行ったが、すぐに気づいた十六夜は飛鳥と耀を自分の後ろに回すと、獰猛な笑みと共に黒い球体を
「「「「なぁ!?」」」」
「ほぅ・・・」
これに驚いたのは黒夜と十六夜以外の3人と隠れていた兎。十六夜に殴られた球体は、霧散するように消え去ってしまったのだ。
黒夜は面白いオモチャを見つけたような顔で、驚きで固まっているラグスムエナの手を引きながら3人の元へ降りて行った。
「さっきのはあんたが?」
「あぁ・・・すまんな。新しく召喚された奴の力を見たくて一撃だけ放たせてもらった。しかし・・・ククッ・・・かなり手加減したとはいえまさか真正面から破られるとは思わなかったぞ?」
「へぇ?あれで手加減してたのか・・・あんた名前は?」
「ふむ、名乗りを上げるのは久しぶりだな。俺の名は黒夜・・・。その昔、数多の神々を敵に回し暴れまわった恐らく人類最強の男である!で、こっちが」
「黒夜の・・・か、家族のラグスムエナです。まだまだ若輩ではありますが死神を務めています」
「人類最強に死神だと?ヤハハ!いいぜいいぜ、いいなぁオイ!!来て早々面白いヤツらと会えたじゃねえか・・・。おい、俺と勝負しろ!」
十六夜は黒夜に向かって人差し指を向けながら宣戦布告した。十六夜にとっては自分の全力を出せる相手と出会えて嬉しくてしょうがないのだろう。
しかし黒夜の方はやれやれと肩を竦めるだけだった。
「悪いが今回はパスだ。流石になんの準備も無しに俺が暴れたらここら一帯が消し飛んじまう。そんなことしたら折角箱庭に帰って来たのにまた追放されちまう」
それに・・・そうなったらまたラグスを1人にしちまうしな・・・と、心の中で付け加えた。
「・・・ちっ・・・まぁ今回は我慢しとくか。けどいつか絶対に戦ってもらうぜ?」
「あぁ、その時はお前が死なない程度に遊んでやるよ」
黒夜の言い方にキレそうになる十六夜だったが、先ほどの一撃がどれくらい手加減したものなのか分からなかったため睨むだけで押しとどめた。
十六夜は未だに痺れが残る右腕の感覚を確かめながら考えた。
(さっきの一撃・・・どれだけ手加減してたのかはわからねぇが、もし半分も出してないなら・・・本当にただ遊ばれるだけになっちまうな)
十六夜がそんなことを考え冷や汗をかいている間も話は進んでいたようで、いつの間にか草むらに隠れていたヤツを黒夜が引き摺り出していた。
「ちょ・・・ちょっとお待ちを!?引き摺らないでください!!!」
「え、なに?その態度?隠れて俺たちを値踏みしてただけでも不愉快なのに・・・消されたいの?」
「す、すみません!!?というか、貴方方はいったい!?私が依頼したのはそちらのお三方だけの筈なのですが・・・」
「えっと、黒ウサギさん?もしかして何も聞いていないのですか?」
ラグスムエナの言葉にHAI?と首を傾げる黒ウサギ。どうやら本当に何も聞かされていないようだ。
「私は745外門に本拠を構える"魂を導く者"のメンバーラグスムエナと申します。この度、あるお方からの依頼で貴方方のコミュニティへ移籍させていただくことになりました。そしてこちらは白夜叉様の義兄である黒夜様です」
「え・・・えぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!??」
ラグスムエナの紹介によって、森中に黒ウサギの絶叫が響き渡るのだった。
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とりあえず・・・ということで、黒夜とラグスムエナについての詳しい説明と、十六夜達に箱庭についての説明によって2時間近くの時間が経過していた。
この時、黒夜の「3000年も封印されてる間にそんな面白い制度が出来てたのか」というギフトゲームに対する感想にラグスムエナ以外から驚きの声が上がったが、実はそれよりも以前からギフトゲーム自体は存在していたと知り黒夜も驚くことになるのはまた別の話。
現在は箱庭へ入るための天幕へ向かっているのだが、既に十六夜は「世界の果てを見てくるぜ!」と言って別行動していた。
少しすると、天幕の前に1人の少年の姿が見えてくる。黒ウサギはその少年へ向かって走り寄りながら声をかけた。
「ジンぼっちゃーん!新しい方々を連れて来ましたよー♪」
「おかえり黒ウサギ。そちらの4人が?」
「はいな♪」
クルリと振り返る黒ウサギ。
カチンと固まる黒ウサギ。
「あ、あれ?もう1人いませんでしたっけ?全身から『俺、問題児!』ってオーラを放った殿方が・・・」
「十六夜君なら『世界の果てを見てくるぜ!』と言って走って行ったわよ?あっちのほうに」
「どうして止めてくれなかったんですか!?」
「止めてくれるなよと言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「黒ウサギには言うなよと言われたから」
飛鳥と耀の見事?なコンビネーションに崩れ落ちる黒ウサギ。
しかしそれ以上に大きな反応をしたのはジンと呼ばれた少年のほうだった。
「た、大変です!世界の果てにはギフトゲーム用に野放しにされた幻獣が!!」
「幻獣?」
それに反応したのは耀だった。どこか他人には無関心そうだと黒夜は思っていたのだが、今の耀は瞳をキラキラと輝かせていてもし、尻尾があったなら忙しなくブンブン振っていた事だろう。
そんな彼女に、黒夜は説明してあげた。
「幻獣ってのはギフトをもった動物の総称だな。中には神格を持った奴もいるから本来、人間が太刀打ち出来るような相手じゃ無いんだが・・・まぁ十六夜なら返り討ちにするだろ。なんせ、手加減してたとは言え俺の一撃を防いだんだからな」
「なるほど・・・その幻獣とはお友達になれないかな?」
「お前のギフトが動物と意思疎通が出来る類の物なら、相手によっては可能だろうな。ただ、中には自己顕示欲の強い連中も多いから相手は選んだ方がいいな」
「そっか・・・ありがとう黒夜」
耀は幻獣と友達になれると聞いて嬉しそうにした。しかし呑気に話している黒夜達にジンは怒ったように声を上げた。
「ふざけてる場合じゃないですよ!?」
「うるせえな・・・オイ、黒ウサギ。とりあえずお前が十六夜を探しに行け。あとの案内はこのガキにしてもらうから」
「が、ガキ!?」
黒夜の言い方に更に顔を紅潮させるジンだったが、慌てて起き上がった黒ウサギに抑えられた。
「ジン坊ちゃん抑えてください!黒夜様は白夜叉様の義兄に当たるお方なのです!怒らせてはいけません・・・十六夜さんは私が連れもどしますから!」
黒ウサギの説明に今度は驚きで空いた口が塞がらなくなってしまったジン。正直哀れではあるが黒ウサギが跳んで行ってしまった以上、この場に彼を気遣う者は1人もいなかった。
「とりあえず、早く中へ入りましょう?お腹が空いてしまったし、どこかで軽くお茶でもどうかしら?」
「そうだな・・・おいジン」
黒夜はジンに手招きすると、恐る恐る近づいてきたジンに小声で話した。
(お前のコミュニティはかなり崖っぷちなんだろう?今回は俺とラグスが出してやるから飛鳥達の好きなもん頼ませてやれ。それと、俺はコミュニティの説明には手を貸さないからな)
(!?・・・すみません・・・お茶の席で、説明します)
(ん・・・よろしい)
話を終えると、黒夜はジンの頭をワシャワシャと撫で回して飛鳥達の所へ行ってしまった。
撫で回されたジンは、さっきとは打って変わって撫でられた頭を押さえながらどこか嬉しそうに笑みを浮かべているのだった。