白夜の兄貴分が帰って来るそうですよ?〜リメイク版〜 作:☆シュレリア☆
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白夜の兄「外道と再会」
箱庭の天幕を潜った黒夜たちは、現在六本傷が営業している喫茶店でお茶と軽食を楽しんでいた・・・という事はなく、ジンからコミュニティの現状について説明を受けていた。
「・・・と言うのが僕たちノーネームの現状です。多分、黒ウサギからは違った説明をされていると思いますが、僕たちが飛鳥さんや耀さん達を召喚した本当の理由は以上になります・・・騙すような形になってしまい、すみませんでした」
ジンは頭を下げながら謝罪した。話を聞いていた飛鳥達はと言うと、特に気にしたような様子はなく別にコミュニティのレベルなどどうでも良いのだろうことが伺える。
ひとまず空気を変えようと黒夜が声を掛けようとしたところで、招かれざる客が乱入してきた。
「おっと、誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ名無しの権兵衛のリーダー、ジン=ラッセル君じゃないか」
「ガルド=ガスパー・・・!」
一瞬怯えるような表情になったジンだったが、正面に座っていたラグスムエナがジンにウィンクを飛ばした事でなんとか冷静さを取り戻した。
「あら、悪徳コミュニティ"フォレス・ガロ"のリーダーのガルドさんでしたか。お噂はかねがね聞き及んでおりますよ」
「ラグスさん、それはどういうことかしら?」
「彼のコミュニティはですね、非合法な手段で他のコミュニティを吸収して大きくなったのですよ」
「なぁ!!?」
ラグスムエナの説明に、ガルドは大げさなほど驚いた。何故ならそれは、コミュニティでも幹部クラスしか知りえない情報だったからだ。
しかしそれだけでは飛鳥達には伝わらなかったようで、首を傾げてしまった。
「彼らはですね、吸収しようとしたコミュニティから人質を取って名と旗を賭けたゲームに強制的に参加させていたのですよ。しかも・・・その人質は既に殺しているんです」
これには流石の飛鳥たちも驚いて、汚物を見るような目でガルドを睨んだ。
ガルドはと言うと、なぜそこまで知られているのかと思いながらもなんとか虚勢を張りながら言葉を紡いだ。
「し、失礼ですがレディ・・・。別のコミュニティと勘違いをされているのでは?私のコミュニティは・・・」
「あくまで白を切りますか?ならもっと決定的な証言をしましょう。私は死神として死した魂を安全に天へ導く使命があります。そして、貴方方が殺した子供達の魂を導いたのは他でもないこの私です」
今度こそガルドは絶望に顔を歪ませた。まさかこんな下層で、しかも名無しの小僧と死神が一緒にお茶しているとは思わなかったのだろう。
ガルドは噛み合わない歯を無理やり噛み締めながら慌てて席を立ち上がった。逃げてどうこう出来るわけもなかったのだが、今はとにかくこの場から離れたかったのだ。
しかし・・・。
「待てよ・・・。俺たちの話はまだ終わっちゃいないぞ?」
「そうね・・・貴方は
飛鳥の命令と同時に、ガルドは意に反して先ほどまで座っていた椅子にドカッっと縛り付けられた。
「なぁ・・・!?」
(ほぉ・・・これが飛鳥のギフトか・・・見た感じは支配系のギフトのようだが・・・飛鳥もまた面白いギフトを持ってるんだな)
黒夜は飛鳥のギフトの効果を興味深そうに眺めると、ラグスに向き直った。
「さて、ラグス。こいつらはここら一帯を支配していると思って良いのか?」
「うん・・・いくつものコミュニティを吸収して・・・もう彼らに逆らえるコミュニティはこの近辺では・・・白夜叉様くらいだと思う」
「なるほどね・・・けど、そんな奴がうろついている場所で生活はしたくねえな・・・。というわけでだ、ガルド。俺たちノーネームとゲームをしよう。こちらのプレイヤーは飛鳥と耀とラグス・・・ジンもゲームマスターとして参加させるか。そっちはお前を含めてどれだけ人数を出そうが構わない。あとついでにラグスは鎌以外のギフトの使用を禁止する。賭けるものはそうだな・・・お前達が勝ったなら、俺たちは今後お前達がやったことに対して口出しと口外しない。逆に俺たちが勝ったらお前達フォレス・ガロの解散と、お前達が溜め込んでいた資産の半分をノーネームへ譲渡・・・こんなところか?ゲームの内容はハンデとしてお前らに一任する。この勝負・・・受けるか?受けないか?」
「わ、わかった・・・受ける」
「よろしい・・・飛鳥」
黒夜が飛鳥に声をかけかけると、飛鳥は指を鳴らしてガルドを縛っていた力を解いた。
「ほら、さっさと帰れ」
「く、くそ!覚えてろよ!!」
ガルドはテンプレな捨て台詞を残しながら逃げ帰って行くのだった。
その後は十六夜と黒ウサギが合流するまで、のんびりとお茶を楽しむ四人だったのだが、ジンだけはその4人の頼もしさと言外にノーネームへ入ってくれるという意思表示に嬉しくてたまらなくなるのだった。
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ガルドが帰ってから数十分後、ようやく帰ってきた十六夜と黒ウサギにゲームの話しをすると何故か怒られてしまったが、ラグスが参加する事を聞いてまぁそれならと落ち着いてくれた。
現在は十六夜たちのギフト鑑定をするために"サウザンドアイズ"の支店へと向かっている途中だった。
黒夜はようやく愛しの義妹にあえるからか、必要以上にテンションが上がりまくっている。
そしてサウザンドアイズの店が見えてくると、黒夜は勢いのままに店内へと突っ込もうとしたのだが・・・。
「閉店ですのでお引き取りください」
それを暖簾を下ろしていた女性店員に止められた。
「あん?何様だよお前・・・」
「この店の店長です。今日はもう閉店ですのでお引き取りを・・・」
「そんなことはどうだって良い。俺と白の再会を邪魔するって言うなら・・・潰すぞ?」
その瞬間、黒夜を中心に圧し潰すような殺気の重圧が広がった。それは女性店員だけではなく、近くにいた十六夜たちや通行人まで巻き込んで意識を刈り取ろうとのしかかる。
耐えられたのは十六夜と黒ウサギに、一度黒夜の殺気を受けたことのあるラグスムエナだけだった。
そして黒夜が店員に手を出し伸ばした瞬間、店の中から慌てた様子で一人の少女が2人の間に滑り込んできた。
「待ってくれ
黒夜はその少女に見覚えはなかったのだが、あにうえという単語に殺気を収めて動きを止めた。
「お前・・・もしかして白か?」
「そ、そうじゃ。兄上の義妹の白夜叉じゃ。この者の無礼は私が詫びるから殺さんでくれ!」
白夜叉は必死に黒夜へしがみ付きながら懇願した。完全にキレていた黒夜だったが、白夜叉に懇願されては仕方ないと怒りを収め優しく彼女の白い髪を撫でる。
「わかったよ。今回は白に免じて許す。それにしても・・・久しぶりだな」
「うむ・・・久しぶりじゃ兄上。あの日から3000年・・・この日を待ちわびておったぞ」
お互いに抱擁を交わす2人に、十六夜達は呆然と眺める事しか出来ないのであった。
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しばらくして我に返った十六夜とラグスムエナが気を失った飛鳥達を起こすと、白夜叉が店員に事情を説明する事で店内に入ることができた。
その際に黒夜の事を聞いた店員は真っ青になりながら何度も謝っていたが、既に許していた黒夜はそんな彼女の頭を撫でながら落ち着かせた。
「さて、初めての者もおるし今一度名乗ろうかの。私の名は白夜叉。"サウザンドアイズ"では幹部を務めておる。そこの黒ウサギとは少々縁があっての・・・ちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女であると認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっておりますよ本当に」
白夜叉の自己紹介に、黒ウサギは投げやりな反応を返す。黒夜はその態度に白夜叉の被害にあったんだなと内心で少し同情した。
「ところで、その水樹はトリトニスの蛇神から貰ったものであろう?兄上が取ってきたのかの?」
「いや?こいつは十六夜が蛇神をぶちのめして貰ってきたんだよ」
「なんと!?試練ではなく直接倒したというんか!ではその小僧は神格持ちの神童か?」
「いや、こいつは神格は持ってないよ。ただ、普通の人間じゃないのは確かだな」
黒夜はクックと笑いながら十六夜をそのように称した。白夜叉でも十六夜の事が分からなかったことが面白いのだろう。
白夜叉はそうかと言いながら次の話に移った。
「まぁよい・・・そっちの3人は黒ウサギが呼び出したのだろうが、そっちのおんしはもともと箱庭の人間じゃな?」
「はい・・・お初にお目にかかります。第745外門に本拠を構える"魂を導く者"のラグスムエナと申します。この度は黒夜・・・様の案内などを務めるために行動を共にしておりました」
「魂を導く者じゃと?確かあのコミュニティは既に・・・」
「白はラグスの仲間がどうなったか知ってるのか?」
黒夜の問いに、白夜叉は険しい顔で頷いた。
「魂を導く者のメンバーは、数人を残して全滅したと聞いておる。生き残ったメンバーも魔王に囚われているということしか分かっておらんのじゃ」
白夜叉の言葉に、ラグスムエナは瞳を輝かせた。生き残りがいたことが余程嬉しかったのだろう・・・次第に目から涙が零れ落ち、黒夜に抱き締められると堰を切ったように泣き出してしまった。
「そやつには情報が回っておらんかったようじゃな・・・今までさぞ心細かったろうに。詳しい話は泣き止んでからにするとして、今日はなんの用で来たんじゃ?」
「あ、はい!今日はギフト鑑定をお願いしに来ました」
「鑑定じゃと!?専門外も良いところなのじゃが・・・。そうじゃな、それならば私と1つゲームをしよう。それに勝てれば良い物をやる」
「へぇ?そいつはいい。黒夜にはお預けくらってたからな・・・あんたが相手してくれるなら願ったりかなったりだ」
「ククッ・・・そう慌てるでない。まずは場所を移そうかの」
白夜叉がそう言った瞬間、世界が一変した。いくつもの世界が流れていく中辿り着いたのは、雪原と太陽が水平に回る世界。
十六夜たちはその光景に息を飲んで理解した。
目の前にいる少女もまた、黒夜と同じく化け物なのだと・・・。
「さて、このまま私が相手をしてやっても良いのだが・・・今回はあやつの相手をしてもらおうかの」
そう言いながら白夜叉が山脈の方を指差すと、そこから一頭の獣が空を駆けながらこちらに近ずいてくるのが見えた。
それにいち早く反応したのは耀・・・。
「まさか・・・グリフォン!?」
「いかにも、あやつこそ獣の王にして鳥の王。ギフトゲームを代表する幻獣じゃ!」
グリフォンが白夜叉の隣へ降り立つと、同時に十六夜たちの前に"契約書類"が現れた。その内容は・・・。
「グリフォンの背に跨り湖畔を一周する・・・か」
「して・・・誰がやる?」
白夜叉の問いに、またしても耀がシュバッっと手を上げて答えた。
「私・・・やる!」
その瞳は「絶対に譲らない」と雄弁に語っていた。それを見た十六夜と明日はやれやれと肩を竦ませた。
「ったく・・・今回は譲ってやるよ」
「そうね・・・春日部さん頑張って」
「うん・・・頑張る」
耀は意気揚々とグリフォンへと向かって歩き出した。
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結果は耀の勝利で終わった。ゲーム終了直後に耀でがグリフォンの背から落下するというアクシデントはあったものの、なんと耀自信がグリフォンのギフトを操り無事に着地したことで事無きを得る。
その頃にはラグスムエナも泣き止んでおり、そこからは耀のギフトについて色々と考察が飛び交い白夜叉が本気で欲しがっていたが黒夜が止めた。
「まぁ・・・なんじゃ。見事ゲームをクリアしたおんしらには報酬を与えねばならんの。ちと高価な物なんじゃが・・・復興の前祝いとしてはちょうど良いじゃろう」
そう言って白夜叉が柏手を2つ打つと、十六夜達の目の前に一枚のカードが現れた。
そこに書かれていたのは・・・。
十六夜のギフトカードには"正体不明"と"解析不能"の2つ。
飛鳥のギフトカードには"威光"と"神子"の2つ。
耀のギフトカードには"生命の目録"と"ノーフォーマー"と"神獣の加護"の3つ。
が記されていた。
「ギフトカード!!」
「なにそれお中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「暑中見舞い?」
「えっと・・・じゃあ残暑見舞い?」
「違いますよ!って、黒夜様とラグスムエナさんは知ってるでしょう!?」
「いや、ここは乗っておくべきかと思って」
黒夜は笑いながら乗ってくれたラグスムエナの頭を撫で始めた。
「く・・・ククッ・・・そ、それは正式名称をラプラスの紙片と言っての。全知の一端じゃ。それを見れば、自身のギフトがどういったものか多少はわかるじゃろう」
「へぇ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ」
十六夜の言葉に白夜叉と黒夜の2人はカードを覗き込んだ。
「正体不明に・・・」
「解析不能じゃと!?ありえん!!」
「ま、鑑定は出来なかったってことだろ?俺としてはそっちの方がありがたいさ。・・・それより、黒夜とラグスのカードも見せてくれよ」
十六夜の提案に、ラグスはともかく黒夜は少し困ったような表情になったが、白夜叉が心配はいらんと一枚のカードを黒夜に渡した。
「これ、俺のギフトカードじゃないか。白が預かっててくれたのか?」
「うむ・・・いつ帰ってきても良いようにと思ってな」
「そっかぁ・・・ありがとな白〜♪」
偉いぞ〜といった感じで白夜叉の頭を撫でる黒夜だったが、十六夜が待ちきれないとばかりに急かして来るので仕方なくカードを渡した。
「どれどれ?」
黒夜のカードは真っ黒で、白い文字で"黒の王盤" "不老不死" "神殺し" "闇夜の支配者" "主催者権限" "白夜の守護者" "死神・ラグスムエナ"etcetc・・・武具やらなにやら何百ものギフトが羅列されていた。
そしてラグスムエナのカードは黒夜のと同じくらいには黒いカードにこちらも白い文字で"死神" "魂を狩る者" "ルート" "断罪の死鎌" "夜に仕えし者"の他にも幾つかの鎌の名前が書かれていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そして訪れる静寂・・・・・。
「ん?どうした?」
「いや・・・多すぎるだろ!ってかなんだ神殺しって!?しかも不老不死!?チートにも程があるぞ!!」
「しかもラグスさんってギフト扱いなのね・・・」
「なんか・・・ズルい」
三者三様の感想に黒夜は頭を掻きながら答えた。
「俺がもともと持ってたのはその武具の中にある雷切と童子切の二振りだけだったんだがな・・・その後不老不死になっちまって白夜叉と出逢って・・・2人で旅するうちにどんどん新しいギフトが増えてったんだよ。かれこれ数億年は旅してたからな。神殺しは1番最近手に入れたギフトだ。つっても3000年前の話だが」
十六夜たちはもう呆然とするしかなかった。かなり長生きしているんだろうとは思っていたが、まさか数億年も生きているとは思っておらず、白夜叉とラグスムエナ以外は黒夜の底の知れなさに若干恐怖を覚えるのだった。
それから、今日はもう遅い時間だからという事で黒夜たちはノーネームの本拠へと帰ることになった。
再会してから2時間ほどしか経っていなかったため、黒夜も行ってしまうことに白夜叉が駄々を捏ねたが明日も来ることを約束する事でなんとか納得してもらった。
帰り際、白夜叉は十六夜たちにノーネームが現在どういう状況なのか知っているのか聞いてきた。
「名や旗印が奪われたのは聞いたわよ?」
「ではそれを取り戻すために魔王と戦うことも?」
「聞いた・・・」
「そうか・・・兄上やラグスがいるから大丈夫だとは思うが・・・飛鳥に耀よ。私はおんしら2人は少し心配じゃ。所持しているギフトは問題ないが、いかんせん経験が少なすぎる。恐らく自身のギフトについてもあまり分かっておらんじゃろう?魔王と戦う前に、出来るだけ多くのゲームに参加して自身のギフトについて知っておく事じゃ。最悪兄上に練習台になってもらうくらいはした方が良いじゃろう」
白夜叉の深妙な物言いに、プライドの高い飛鳥は一瞬顔を顰めたが、事実・・・黒夜はおろか現状では十六夜にも全く敵わないだろうと思い直した飛鳥と耀は素直に頷いた。
「ご忠告ありがとう。その時は黒夜さん・・・お願いできるかしら?」
「お願いできる?」
「構わないよ。なんなら明日のゲームの前に少し試してみよう。特に飛鳥のあの力がどの程度の相手にまで通じるのかは早めに調べた方がいい」
飛鳥と耀はそれに大きく頷く。
「あと、その時は十六夜とラグスの相手もしてやる。今のお前たちの全力も見ておきたいからな」
「良いのか?さっきは準備がどうの言ってたが・・・」
「あぁ・・・ギフトカードがその準備だったんだよ。これが無いとゲーム盤を出せないからな」
なるほど・・・と頷いた十六夜。ラグスも今の自分が黒夜相手にどこまで戦えるのか気になっているようで、割とやる気を出していた。
一同は白夜叉に別れを告げると、今度こそノーネームの本拠へとラグスのルート(湖に行く時に使っていた道)で帰るのだった。