白夜の兄貴分が帰って来るそうですよ?〜リメイク版〜   作:☆シュレリア☆

5 / 7
第5話になります!

まだまだ若干違うかな?程度の差しか無いので退屈かと思いますがご容赦くださいm(_ _)m

感想・評価お待ちしています!!!


第5話:初のギフトゲームと乱入者

「初のギフトゲームと乱入者」

 

午後5時・・・ギフトゲームの為にフォレス・ガロの本拠へ到着した一同は、その異様な光景に言葉を失った。

 

「ジャングル?」

 

疑問を口に出したのは耀。

 

「ガルドは虎なのだと言うし・・・おかしくは無いのでは無いかしら?」

 

「い、いえおかしいです。フォレス・ガロの本拠はもっと普通だった筈なのですが・・・」

 

「おーい、契約書類あったぞ〜」

 

疑問を口に出していると、黒夜が契約書類を持って帰ってきた。ゲームの内容は、指定武具を用いてガルド本人を打倒すること。

 

そのゲームの内容に、ジンが叫んだ。

 

「こ、これはマズいです!」

 

「そんなに難しいゲームなのか?」

 

「いえ、ゲーム自体は単純です。しかし、指定武具での打倒となると・・・恐らくギフトによる攻撃は一切通用しないと思います」

 

「だろうね・・・。これは午前のうちにレベルアップさせといて正解だったかな。まずは作戦だけど、飛鳥と耀は例の姿にはならずに行動。敵を警戒しながら指定武具を捜索。この時現れた敵は薙ぎ倒しちゃってOKだ。んで、ラグスはジンの護衛ね」

 

「わかったわ」

 

「んで、指定武具が見つかり次第ガルド本人を探すわけだけど、これは耀が動物の力で事前に探し出した方が良いだろう。んで、戦闘になる少し前に例の力を解放。後は適当に料理できるでしょ」

 

意外と大雑把な指示の出し方に、十六夜が笑いを堪えていたがガルド程度が相手ならこれくらいが丁度いいのだろう。

飛鳥たちは頷き合うと、耀を先頭に飛鳥、ジン、ラグスの順番で慎重に進んで行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ゲームが始まってから1時間が経過した頃、飛鳥達は森の真ん中で話し合っていた。

 

「これだけ探しても無いとなると、指定武具は建物の中にあるのかしら?」

 

「もしかしたら、ガルド自身が守っているのかもしれませんね」

 

「確かに・・・なら、春日部さん!」

 

「ガルドなら、もう見つけてる」

 

そう言いながら木から飛び降りた耀は、一番大きな建物の二階を指差した。

 

「流石ね。なら、一度ガルドの元へ行ってみましょう」

 

頷いた3人は、最初と同じ順番で館の中へと入って行った。

そして二階にある部屋の前まで移動すると、飛鳥と耀は今日目覚めたばかりの力を解放する。修行の成果もあって、今では数秒でその姿になれるようになっており、戦闘態勢を取るとゆっくりと扉を開いていった。

 

扉が開ききると、そこで待っていたのは・・・。

 

「Guuu・・・GIYAaaaaAAAAAA!!!」

 

言葉を失った白いワータイガーだった。

 

「ラグスさんはジン君をお願い!春日部さん!」

 

「うん!私がガルドを抑えてるから、その隙に奥の剣を拾って!」

 

2人はお互いに指示を出し合うと、瞬時に行動に移す。

まずは耀がグリフォンの風でガルドの注意を引き、剣から遠ざかるように誘導した。その隙に飛鳥は最短距離で剣まで飛び、それを引き抜くと振り返りながら飛び退いた。

これは修行中に黒夜が後ろを取られた時に取っていた行動の1つで、こうすることで仮に後ろから攻撃されていても躱しながら振り向くことが出来ると言っていた。

 

幸いガルドは耀がしっかりと押さえていてくれたようで、心配はいらなかったのだがまだ気配を察知する術を持たない飛鳥にとってはこういった細かい動きが重要なのだと今日一日だけでも身に染み付いていたのだった。

 

飛鳥はすぐには仕掛けることはせず、耀の動きに合わせて少しずつガルドの後ろへと回り込んでいく。

 

そして完全に真後ろへ回ったところで、ようやく飛鳥は仕留めにかかった。

 

()()()()()()!」

 

飛鳥が威光を発動すると、ガルドの身体が一瞬硬直する。それは黒夜の時と同様本当に僅かな時間だったが、ガルド相手ならば十分な隙にとなった。

飛鳥は予め腰ダメに構えていた剣を、一気に間合いを詰めながら突き出す。

 

剣はガルドの体に深々と突き刺さり、雄叫びと共にガルドは灰になって散っていった。

決着がついた事で、緊張の糸を切らせた飛鳥と耀はお互いにハイタッチを交わすとラグス達に向き直る。しかし、そこにはこちらに鎌を振りかぶりながら突っ込んでくるラグスの姿があった。

 

「「え!?」」

 

咄嗟に躱そうとした2人だったが、突然のことに体は硬直してしまい動けない。なぜ・・・と思いながらもキツく目を瞑った2人の耳に届いたのは、自分の身体が切り裂かれる音ではなく・・・甲高い金属音と、肉が裂ける嫌な音だった。

 

恐る恐る目を開くと、そこに映ったのは自分たちを庇うようにして折れた鎌を構えたラグスの姿。

その姿が崩れ落ちると、その向こうに大剣を振り下ろした格好の男がいた。

男は大剣を肩に担ぐと、嫌に耳障りな声で笑った。

 

「キヒャヒャ!まさかあそこから間に合わせるとはねぇ・・・腐っても死神の生き残りかぁ。だが、悲しいかな・・・テメェが犠牲になった所でこいつらの運命は変わらないんだよぉ!キヒャヒャ!」

 

「よ、よくもラグスさんを!!」

 

「許さない!!!」

 

飛鳥と耀は体を張って自分達を守ってくれたラグスを笑った男に、殺気と共に全力の一撃を放っていく。しかし男はそれを簡単に躱していき、軽快な動きで大剣を振るってきた。

 

「こ・・・のぉ!!」

 

「つ、強い!」

 

徐々に息が上がってきた飛鳥と耀は、それでも力を振り絞って攻撃を仕掛けていく。時間さえ稼げれば彼らが来てくれると信じて・・・。

 

「キヒャヒャ!!なかなかやるじゃねえかぁ?だが、それもお終いダァ!!!」

 

男は一旦後ろへ飛び退くと、大剣にドス黒いオーラを纏わせて振り下ろしてくる。

体力の限界がきていた飛鳥と耀は、ここまでかと諦めそうになってその一撃を睨みつけたが、その瞬間軌道がブレた。

 

「おぉ・・・ラァ!!」

 

声と共に大剣の腹に蹴りを放ったのは十六夜だった。だが若干違うのは、今の彼は髪が真っ白になっており瞳が紅く光っている所だった。

 

そして男の後ろには黒夜が冷たい・・・見ただけで生気を吸われてしまうと錯角する程に冷たい瞳で立っていた。

 

「2人とも無事か?」

 

「え、ええ・・・あ、でもラグスさんが!!!」

 

「ラグスなら治療の為に既に黒ウサギが運び出した」

 

「え!?」

 

慌てて後ろを確認すると、倒れていた筈のラグスの姿が確かになくなっていた。飛鳥と耀はホッと一息吐くと、なんとか立ち上がる。

 

「黒夜さん気をつけて・・・この男、強いわ」

 

「あぁ・・・不意打ちとは言えラグスを一撃だからな。だが、今の俺には関係ない」

 

「キヒャヒャ!え?マジで?お前本当にあの黒夜なのかぁ?聞いてねえぞオイィ!!?」

 

「黙れ・・・俺の女に傷を付けたんだ。チリ一つ残ると思うなよ」

 

黒夜はその言葉を最後に全員の視界から掻き消えた。飛鳥と耀は勿論、なんかパワーアップしている十六夜ですら辺りを見回して探す中、突然男がいた場所から破裂音がして慌てて振り向くと、そこには徐々に闇に飲み込まれて行く男の姿があった。

 

「ヒ、ヒィィヤァァァアアアアアアア!!?何だこれ!?何だこれぇぇぇぇええええええ!!?」

 

「まさか・・・食ってるのか?闇が・・・あの男を!!?」

 

十六夜が驚きの声を上げる間も、男は耳に残る嫌な音を鳴らしながら飲み込まれて行く・・・。

 

グチュッ・・・ビチャッ・・・ゴキャッ・・・グチャア・・・!

 

「嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダァァァァアアアアアア!!!!!!」

 

その叫びを最後に、名も知らぬ大剣の男は完全に闇に飲み込まれて行った。

あまりの光景に、声を出すことすら出来ずにいた十六夜達だったが、闇が消えた後から何時もの目に戻った黒夜が現れた事で自分達が恐怖で固まっていたことに気づきゆっくりと力を抜いていく。

 

「今のは・・・なんだったんだ?」

 

最初に声を出したのはやはり十六夜だった。

 

「今のは闇夜の支配者の力の一部だ。捕まえた対象を徐々に取り込んでいくんだが、アレは飲み込んでいるように見えて食ってるからな。しっかりと痛みがある分相手に恐怖を与えることが出来る。あんまり人前で使うような物じゃ無いんだが・・・ちょっと頭に血が上りすぎた。嫌なもん見せたな」

 

そう言いながら黒夜は頭を下げた。

 

十六夜達は改めて黒夜の怖さを思い知ると同時に、頼もしさと絶対に怒らせては行けないと心に誓うのだった。

 

その後は黒夜はラグスが心配だと言って本拠へ帰り、飛鳥と耀は疲れ果てて寄り添うようにして眠ってしまった。

だが十六夜とジンにはもう一仕事残っており、そのためにフォレス・ガロに吸収されていたコミュニティの連中の前に立っていた。

 

十六夜達は不安そうにしている彼らに、名と旗印を返却していくことと合わせてジンの名前を売り出していた。

本当ならば一緒に黒夜の名前も出した方が手っ取り早く名前を広げられるのだが、それは黒夜に止められてしまっている。理由としては出したが最後、すぐにでも復讐を目論む連中がまとめて襲って来るからだという。

べつにその程度・・・と思った十六夜だったが、

 

『上層部から下層のコミュニティの半分以上を纏めて相手にできるか?』

 

と言われて軽く青ざめたのは他の連中には内緒だ。

そんなこんなで、結局本拠に帰ってきたのは夜の7時を回った頃だった。

 

十六夜は飛鳥達を助ける際に突然発動した力のせいで痛めた体をほぐすために風呂へ向かおうと思ったのだが、途中で黒ウサギに呼び止められ仕方なく付き合うことにしたのだが、黒ウサギの話は思った以上に深刻なものだった。

 

「ゲームが延期?」

 

「はい・・・このままでは中止の可能性もあるそうです」

 

2人が話しているのは昨日ジンとの約束の中に出てきた昔の仲間をかけたゲームのことであり、なんでも巨額の買い手が付いてしまったのだという。

十六夜は苛立たしげに椅子に体を放り投げた。

 

「ったく余計な真似をしてくれたな・・・白夜叉に言ってどうにかならねえのか?」

 

「無理でしょうね。彼らは商業コミュニティですから取引が決まってしまった以上、それを覆す事はないでしょう」

 

「だとよ・・・お前でもどうにもならないか?」

 

黒ウサギの説明に、十六夜は扉へと向かって声をかけた。黒ウサギは「え?」と驚きながら振り返ると、そこには黒夜が扉にもたれながら立っていた。

 

「ん〜・・・その取引額次第だな。その点については当事者に聞いてみよう」

 

黒夜はそう言いながら歩き出すと、窓を開けて外にいた人物を招き入れた。外にいた人物は、夜の暗さにも負けないほどに美しい金髪を靡かせながらもどこか気恥ずかしそうな表情を浮かべたまだ幼さの残る美少女だった。

 

少女の姿がハッキリ見えてくると、最初に声を上げたのは黒ウサギだった。

 

「れ、レティシア様!?」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身だ。モノに敬意を払っては月の兎の品位を疑われるぞ」

 

「そう言うな。黒ウサギにとってお前がそれだけ大事だという事だ。それで?お前はいったい幾らで売られるんだ?」

 

「貴方が黒夜殿だな・・・私も詳しい話はわからんが、少なくともサウザンドアイズ発行の金貨換算で数千枚らしい・・・」

 

「す、数千枚!!?」

 

レティシアの答えに、黒ウサギは顔を青くしてへたり込んだ。今のノーネームの全財産が金貨8枚程なのを考えれば仕方いことだろう・・・。だが黒夜は顎に手を当てて考え込んだ。

 

「それくらいなら・・・まぁなんとかなるか?」

 

「「「は?」」」

 

3人の声が重なった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!数千枚ですよ数千枚!!なんともなりませんよ!!!」

 

「いや、俺のギフトカードには当時俺が持っていた金もそのまま残っててな。ラグスの容体を確認した後に白の所で換金してもらったんだが、金貨で2400枚くらいになった。足りなければ俺の持つ武具を合わせればなんとかなるんじゃないかと思ってな」

 

「く、黒夜殿・・・そんな、私なんかのために良いのか?」

 

「問題ねえよ。金ならまた稼げばいい・・・。とりあえず、外にいる連中とっ捕まえてもっかい白の所行くぞ」

 

外にいる連中が分からなかった黒ウサギだったが、止める間もなく外に出て行ってしまった黒夜と十六夜を、黒ウサギとレティシアは慌てて追いかけるのだった。

 

外に出てみると、姿は見えないが上空から何者かの声が聞こえてきた。

 

「いたぞ!吸血鬼の娘だ!」

 

「他にもいるがどうする?」

 

「構わん!邪魔するようなら殺せ!」

 

言いたい放題言ってくる見えない連中に対して、黒ウサギが怒りのあまり前に出ようとするが、背後から自分以上の怒り・・・否、殺気を放つ黒夜に気づき慌てて振り返った。

そこには、表情こそいつも通りを装っているもののかなり本気で怒っている黒夜が目を瞑ったまま立っていた。

黒夜は小さく息を吐くと、十六夜へと視線を向ける。

 

「十六夜・・・あの時のあの力、今も出せるか?」

 

「あん?・・・これの事か?」

 

そう言うと、十六夜はまた白い髪と紅い瞳になる。黒夜は満足そうに頷くと、指示を出した。

 

「本当なら俺が死んだほうがマシだと思うほどの恐怖を叩き込んでやりたいところだが・・・さっきは俺がやっちまったからな・・・今回は練習がてらお前があいつら潰して来い。死なない程度にボコボコでな」

 

「ヤハハ!りょーかい!!」

 

黒夜の指示に、十六夜は見せ場が出来たと勢いよく見えない敵に突っ込んでいった。そして練習と称されたそれは一瞬で終了する。

 

十六夜が地面に降り立ち元の姿に戻ると、その後ろに兜を割られた兵士が次々と降り注いできた。

 

「ちぇ・・・これじゃ準備運動にもならねえな」

 

「ハハッ!いや、あの姿のお前が強すぎるんだよ。少なくともあの状態のお前なら日中の特訓の時に1人でも俺から一本取れたかもしれないぞ?」

 

「お、マジで?それに基礎を覚えたらどうよ?」

 

「そうだな・・・かも・・・じゃなく確実に一本取れてただろうな」

 

「っし!俄然燃えてきた!でもなんであの姿になれるようになったんだろうな?」

 

「さぁな・・・それは後で考えよう。今は交渉に向かうぞ」

 

黒夜の言葉に頷いた一行は、気を失った兵士を運びながらサウザンドアイズへと向かうのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サウザンドアイズ支店前。そこでは女性店員が待っていた。

 

「あ、黒夜様・・・お待ちしてました!中で白夜叉様と・・・変態がお待ちです」

 

本来ならば彼女が幹部であるペルセウスのリーダーをこのように呼ぶのは厳罰対象スレスレであるのだが、その顔を見るに随分と嫌がらせを受けたようで疲れ切った笑みを浮かべていた。

黒夜はそんな彼女に近づくと、優しく頭を撫でてあげる。

 

「災難だったみたいだね・・・どこか触られたりしなかった?」

 

「肩に手を回されましたが・・・白夜叉様が庇ってくださったおかげでそれ以上はありませんでした」

 

「そっか・・・白は身内思いな所があるからね。むしろその変態良く生きてたね?」

 

「サウザンドアイズは同志殺しは重罪ですので・・・」

 

「なるほど・・・なら俺たちがそいつにはキツイお灸を据えてあげるよ。店員さんにも見せてあげるからおいで」

 

黒夜はそう言いながら女性店員の手を握って歩き出した。本来ならば十六夜はそんな光景を見れば少しからかってやろうと思う筈なのだが、今日だけはそれが自殺行為だとわかっていたため黒ウサギたちともども無言で付いて行くのだった。

 

だって・・・せっかく落ち着いてた黒夜様の殺気がまた漏れ始めてるんですもんとは黒ウサギ談。

 

白夜叉の部屋に入って早々、十六夜たちは悟った。

 

・・・あ、こいつ終わったな・・・・・と。

 

「うわぉ!ウサギじゃん!?なになにこんな下層にいるの?だったら僕のところに来なよ!三食首輪付きで毎日ベットの上で可愛がってやるからさぁ!!って、そっちの君も戻ってきたんだね。なに?やっぱり僕の所に来たくなったのかな?いやぁ・・・モテる男は辛いねぇ!」

 

「あ〜その・・・兄上。お手柔らかに頼みたいんじゃが・・・」

 

「ごめん却下♪今日はラグスが大怪我して気が立ってるんだよ・・・そこにこんな下衆をみたらガマン出来ないや♪」

 

これを聞いた十六夜や白夜叉たちは、できるだけペルセウスのリーダー・・・ルイオスから距離を取った。

 

「うん?なんだい君・・・あぁあの吸血鬼の元お仲間かなにか?なら残念だったね。アレは箱庭の外に売るからもう手に入らないよ」

 

「いくらだ?」

 

「あん?」

 

「だからいくらで売るんだと聞いてるんだよ」

 

黒夜の問いにルイオスは名無しのくせになに言ってんだと思いながらも一応答えた。

 

「金貨1200枚だよ。なに?まさか金で解決出来ると思ってたわけ?名無し風情が粋がるなよ?」

 

「そうだな・・・確かに俺はノーネームに所属してる身だが・・・貴様こそ頭に乗るなよ小僧・・・」

 

そう言って黒夜はギフトカードから金貨2000枚を出した。しかもご丁寧に100枚単位で綺麗に並べられたそれは、壮観の一言。ルイオスは驚きのあまり腰を抜かして後ずさった。

 

「サウザンドアイズ発行の金貨で2000枚・・・これでレティシアを買わせてもらう。異論は認めないぞ?お前は1度告知したゲームを金が理由で取り消したんだ。なら・・・この取引を断ることは出来ない筈だ」

 

「ふ、ふざけるな!どうせ偽物が混じってるに決まってる!2000枚だぞ!?名無し風情が用意出来るわけがない!」

 

「残念だがそれは紛れもなく全て本物じゃ。今日の夕方に私が直々に換金したものじゃからの」

 

「はぁ!?」

 

「そう言えば名乗ってなかったか?俺の名は黒夜・・・白夜叉の義兄にして今はノーネームの一員。以後よろしく?」

 

何を今更と思ったルイオスだったが、黒夜という名前に理解が追いつくと顔面を蒼白にして震えだした。

ルイオスとて英雄の末裔・・・。黒夜の名は父や祖父から嫌という程聞かされた伝説なのである。そんな超が何十個も付くような大物が今になって箱庭に帰ってきてしかも名無しの一員など信じられる訳もなかったが、白夜叉が真剣な顔で頷くのを見て嘘ではないと理解するしかなかった。

 

ルイオスはなんとか震える身体を動かし正座すると、改めて黒夜に向き直った。顔はいたって笑顔なのだが、何故かルイオスには笑っているようには思えない。

ここはさっさと取引を受けて退散するべきだと考えた。

 

「し、白夜叉様の義兄様とは知らず無礼を働いたことをお詫び致します。きゅ・・・レティシア殿は貴方方にお譲りしますが、私どもも彼女は大金をはたいて来ていただいたのです。なので・・・」

 

「あぁ、金はちゃんと払うよ。この2000枚は今この時より君の物だ。そしてレティシアは俺の物・・・それで良いよね?」

 

「は、はい!ありがとうございます!!」

 

ルイオスはなんとか平穏に終われたことにホッとし、自身のカードに金貨を収納しその場を立とうとしたが、それを黒夜に止められた。

 

「さて・・・次の話に移ろうか」

 

「え・・・はい?」

 

「わからないか?君は今日、部下にどこを襲わせた?」

 

ルイオスはこの時点で気絶してしまった方が楽だったのかもしれない。しかしこんなでもある程度鍛えられていた精神はギリギリの所で踏み止まってしまったのだ。

その様子を見ていた黒ウサギと白夜叉はルイオスに哀れみの視線を向けていたが、十六夜と女性店員は楽しそうに眺めていた。

 

「先ほど俺のコミュニティは君の部下による襲撃を受けた。まぁ被害は無かったし、逆にうちの十六夜の練習台になってくれたから多少は大目に見よう。だが君は俺たちが来るやいなやいきなり黒ウサギにセクハラ発言。その前にはそこの女性店員さんにもセクハラを働いたそうだね?彼女は俺のお気に入りの店員さんなんだ。とても良くしてくれるからね・・・。だから、その分を纏めてちょっとお返しさせてもらうよ?」

 

「ひぃっ!?」

 

ルイオスは逃げ出した・・・何をされるのかは分からなかったがここにいては危険だと直感が告げたのだ。

しかし走った所で黒夜から逃げられる筈もなく、一瞬で捕まったルイオスは部屋の前まで連れ戻されるとへたり込んだ。

 

黒夜はルイオスの前にしゃがみこむと、目を覗き込む。

 

「じゃあ・・・お仕置きの時間だ」

 

そしてルイオスの自我がギリギリ壊れない程度に本気で殺気を叩き込んだ。

黒夜の能力と言うべきか、彼は殺気だけで相手にリアルな幻を見せる事が出来る。これはラグスの時や店員の時でも分かる通り、周囲にも被害が出るのだが今回は白夜叉がそれを抑えてくれた事で十六夜達は無事だった。

 

そして直で殺気をぶつけられたルイオスは・・・。

 

「あ、ぎゃぁぁぁああああああ!!!!???腕ガァああああ!!あ、足がァァァァアアアアアア!!!??イタイイタイイタイイタイイタイイタイィィィィイイイイイ!!!!!???ああああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああああああああああああ!!!!!????」

 

絶叫していた。一体どんな幻を見ているのかは本人にしかわからないが、正直近所迷惑でしかない声量で泣き叫んでいた。言葉かから察するに、少なくとも腕や足は無くなっていると錯覚しているようだが勿論実際にはちゃんと付いているし、痛みなど感じている筈もない。

 

ルイオスはその後もしばらく腹がぁとか僕の○✖️△がぁとか叫んでいたが、最終的に失禁するとそのまま気を失い大人しくなった・・・。

 

その一部始終を見ていた十六夜達はと言うと、呑気にお茶を啜っていた。どうやら途中で飽きてしまったようで、ガルドとのゲームの後に出てきた男について話しているようだ。

 

「ふむ・・・大剣に黒いオーラを使う特徴的な笑い方の男・・・か」

 

「ごめんな白・・・俺が後先考えずに食っちまったばかりに」

 

「いや1人心当たりがあるから兄上は気にせんで良いよ。それにわたしは兄上のそんな所も好いておるでの・・・じゃが、もし私の予想が正しければ今後も似たような連中に襲われる可能性がある。飛鳥たちの強化は急務になるかもしれんのぅ・・・」

 

「一応、体力さえ付ければ互角にやり合える算段は付いてるんだ。後は本人達次第だな」

 

「そうじゃな・・・む、静かになったようじゃの?」

 

白夜叉の言葉に、そう言えば・・・と黒夜達もルイオスを思い出して目を向ける。そこには相変わらず情けない格好で気絶しているルイオスの姿が。

 

「はぁ・・・面倒だし兵士と一緒にペルセウスの本拠前に捨てとくわ。今日はありがとな白」

 

「良いよ。約束通り来てくれたしの・・・今後も暇なときは来てくれよ?」

 

「わかってるって。んじゃ、お邪魔しました〜」

 

「お、お邪魔しましたのですよ」

 

「また来るぜ」

 

「店の前までお送りします」

 

こうして一同はサウザンドアイズを後にした。

店を出る時・・・。

 

「あ、あの・・・黒夜様」

 

「ん?どしたの?」

 

「あの・・・まだ、名乗っていなかったと思いまして。私の名前は葵と申します。今後は・・・」

 

「ん、わかったよ葵。また遊びに来るからね」

 

葵は名前で呼んでもらえた事と、頭を撫でられた嬉しさで顔を真っ赤にしてしまうが、黒夜が行ってしまったことで今度は哀しそうに店の中へと戻って行くのだった・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして次の日・・・。

 

「と言うわけで、今日からレティシアが仲間に加わりました。一応所有権は俺にあるんだけど、彼女にはメイドをやってもらうから皆何かあったらレティシアに言ってね♪」

 

「な、何を言ってるんですか黒夜様!?」

 

「「「イエーイ!」」」

 

「十六夜さん達も乗らないでください!!」

 

「黒ウサギ・・・そう怒るな。これは私から言いだした事なんだ」

 

顔を真っ赤にしてハリセンを振るう黒ウサギに、レティシアが声をかけた。ちなみに服装は既に純白のメイド服姿である。黒ウサギは涙目になりながらレティシアへ目を向けた。

 

「どういうことでしょうか?」

 

「正直、今の私では主達の足手まといにしかならないからな。黒夜にはラグスという戦力もある。ならば私は主達の身の回りの世話をしようと思ったのだ。勿論ゲームにも参加はするつもりだがな」

 

「まぁ一つ・・・レティシアを強化する方法があるにはあるんだけどな・・・」

 

「む・・・そうなのか?」

 

レティシアの問いかけに、黒夜は頬を掻きながら視線を逸らした。

 

「俺の眷属になれば・・・本来のとまでは行かないが、それに近い所までは戻せる筈だ。ただ、その儀式の内容が・・・接吻しないといけないんだよ」

 

黒夜の説明に、一瞬瞳を輝かせたレティシアだったが、その方法に顔を真っ赤にせざるおえなかった。

レティシアも何千年と生きてきたのだが、その人生が人生だったために恋愛などしたことはなく、実はファーストキスもまだだったりするのである。

 

レティシアは少し考え込むと、意を決した様に頭を上げた。

 

「せ、接吻するだけでコミュニティの力になれるなら安いものだ・・・。黒夜の事は嫌いではないしな!うん・・・どんとこい・・・だ!」

 

若干キャラが崩壊していた・・・。

 

だが黒夜はレティシアが良いのならと、意外とあっさり彼女に近づいて・・・その唇を奪っていた。

 

「んぅ!?・・・ちゅ・・・・・ぷはっ・・・!い、イキナリは卑怯だぞ!?」

 

「いや、覚悟が鈍る前に奪っちゃった方が良いかと思って。だけどこれでレティシアは俺の眷属になった。ギフトカード見てみな」

 

黒夜に促され、レティシアは自身のギフトカードを取り出した。十六夜や黒ウサギも気になってそれを覗き込む。

そこには・・・。

 

もともとのギフトの他に、"夜の寵愛を受けし者"と"夜の伴侶"の二つが追加されているのであった・・・。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。