白夜の兄貴分が帰って来るそうですよ?〜リメイク版〜 作:☆シュレリア☆
今回からリメイク前とはそこそこ違って来ると思います。
それと、あんまりご意見をいただけなかったのでひとまず同時進行による連載はしないことにしました。
まずはこちらの作品をしっかりと完結させたいと思います!
「祭りへの招待状」
黒夜とラグスが付き合い始め、さらにレティシアとの仲も深まり始めたあの日から4日が経過していた。
この4日間は特に大きな騒ぎも無く、問題児組は集中して修行に打ち込む事が出来ていた。本来ならば、こういった時間に小さなゲームで少しでもお金を稼がなければノーネームの資金はすぐにでも無くなってしまう筈なのだが、そこは3人の代わりに黒夜達がやってくれていた。
もともと黒夜はレティシアを買った時の残りで金貨400枚近くが残っており、しばらくは余裕があるのだがそれに加えてラグスとレティシアの特訓のために中層付近のゲームに参加させていたためみるみる増えていったのである。
黒ウサギには、元々のお金は黒夜様の物だから自分のために使ってほしいと言われていたため、食費に回す分以外は殆ど手を付けていなかった。代わりにゲームで手に入れた資金は全てコミュニティの金庫へ入れているので、現在のノーネームの資金は一週間前の役30倍ほどに膨れ上がっている。
今日も白夜叉の紹介で5桁のゲームに幾つか参加し、その全てで一位と二位を独占して来たところだった。特訓であるため、ラグスとレティシアはそれぞれギフトを制限しての参加だったのだが2人はそれを守った上で結果を残している。
3人は1度白夜叉の所へ寄ると、少しお茶をしてからノーネームの本拠へと戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3人が帰ると、なにか大事な要件があるとの事ですぐに会議室へと通された。黒夜は要件について心当たりがあったため気軽に会議に参加する。
「えっと、それでは会議を始めます」
そう言いながら切り出したのは我らがリーダー・ジン=ラッセル。
その顔つきは最初の頃に比べると随分と頼もしくなっており、黒夜もうんうんと頷きながら彼の進行を見守りながら数日前の事を思い出した。
〜回想〜
ジンはガルドとのゲームが終わった次の日。黒夜の部屋を訪ねていた。
「改まってどうした?」
「その・・・ですね。僕も、鍛えてもらう事は出来ないでしょうか?」
ジンはまっすぐ黒夜の目を見ながらそう切り出した。黒夜は少し驚いたが、まずは理由を聞くことにした。
「黒夜さんのお陰で、レティシアさんも取り戻す事が出来ましたし十六夜さん達も着実に強くなっていると黒ウサギが言っていました。それに比べて、僕はただ皆さんに甘えているだけなんです。ゲームによっては、リーダーである僕の敗北がそのままゲームの敗北になることだってあります。その時になって僕の力不足で皆さんに迷惑を掛けるのが嫌なんです。だから僕は強くなりたい・・・いざという時に、せめて時間を稼げる程度の力は身につけておきたいんです!・・・ダメでしょうか?」
最後は若干弱々しく聞いてきたが、黒夜はジンを結構見直していた。彼は11歳にしては物事をしっかりと見極めることの出来る頭があったため、黒夜はどちらかと言えばゲームメイカーとして成長さえしてくれれば今は良いかなと思っていたのだが、本人は更に先の事を考えていたようだ。
「話はわかった。だが、ジンは今現在の能力が余りにも低すぎる。それこそ。召喚されたばかりの飛鳥にも殴り合いでは勝てない程に・・・。それは理解してるね?」
「もちろんです」
「なら、君はこれから物凄く辛い修行をしていかないといけない事も分かるよね?」
「覚悟は・・・できてるつもりです」
ジンは若干頭不安そうだったものの、言葉の通り彼なりに覚悟は出来ているのだろう。目は逸らさずにしっかりと頷いて見せた。
「わかった・・・。なら、君には新しいギフトをあげよう。これを使いこなせるようになれば、飛鳥や耀となら互角に戦える・・・とまではいかないが少なくともいい勝負ができるくらいにはなる筈だ。その代わり、あいつら以上のスパルタで行くから覚悟しろよ?」
「はい!」
〜回想終了〜
ジンはそれから黒夜が設定したメニューを泣き言一つ言わずにこの6日間こなしてきた。ハッキリ言ってしまえばオーバーワーク気味なのだが、彼は睡眠時間を削ってでも全てのメニューを必ずやり遂げていたため、大分筋肉や体力もつきギフトも多少は使いこなせるようになっている。
とは言えまだまだ飛鳥たちと一緒に組手を出来るレベルではないのでまだしばらくは個人メニューのままだが・・・。
そこまで考えに耽っていると、話は火竜誕生祭への招待状の話になっていた。
「本来であれば、北側へ行くには境界門を使うしかなく僕たちの財政では参加は不可能だったんですが・・・ラグスさんとレティシアさんが特訓のために参加していたゲームの賞金のお陰で今のノーネームの財政はそれなりに潤っています。本当は補修などに回したい所なんですが、朝方白夜叉様からの封書が届きその内容を確認した僕と黒ウサギは祭りへの参加を決めました」
ジンの説明に、飛鳥と耀は嬉しそうにしていたが、黒夜と十六夜は疑問を口にした。
「白夜叉からの封書にはなにが書かれてたんだ?」
「はい・・・。これは他言無用でお願いしたいのですが、火竜誕生祭にて魔王襲来の兆しあり。打倒魔王を掲げるコミュニティ・ノーネーム一同には、これに備えるために火竜誕生祭への参加を要請する・・・という物でした」
魔王襲来・・・十六夜はいよいよか・・・と腕を組みながら静かに呟いた。彼の性格上、「いいぜいいぜ、いいなぁオイ!面白くなって来たじゃねえか!」とか言いそうな物だったが、そこは黒夜との特訓で過信しすぎる所が無くなってきている証拠だった。
飛鳥と耀も、今までの特訓の成果を試せる良い機会だと思ったようで、気合が入っている。
「そのため、1度白夜叉様の所へ行き詳しい事情を聞いた上で最終的な決定をしたいと思います。皆さん今から大丈夫ですか?」
ジンが見回すと、全員真剣に頷いた。
一同は、30分で準備を整えるとサウザンドアイズへ出発するのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サウザンドアイズ支店ーーー。
店の前に到着すると、葵が出迎えてくれていた。
「お疲れ葵・・・。白はいるかな?」
「はい、オーナーは中でお待ちです。ご案内します」
葵は黒夜に笑顔で対応するすると、店の中へ案内してくれる。
「オーナー・・・ノーネームの方々がお越しになりました」
「入れ」
「失礼します」
中へ入ると、白夜叉は今までで最も真剣な顔で出迎えた。黒夜達はそれぞれ適当に座ると、葵が出してくれたお茶を一口啜りひと息ついた。
「ひと息ついた所で・・・さっそく話を始めようかの。封書でもう知っているとは思うが、今回は北側で開かれる火竜誕生祭で魔王が現れるとの預言があった。目的はわからんが、これは確定した未来じゃ」
「そもそも、火竜誕生祭ってのはどんな祭りなんだ?」
「これは北側のコミュニティ"サラマンドラ"の当主が急病で引退したしたのが切っ掛けでの・・・。それによって次の当主に末の娘のサンドラがなるのを祝うための祭りなんじゃ」
「サンドラが・・・!?」
白夜叉の説明に驚いたのはジンだった。
「なんだおチビ知り合いか?」
「え、えぇ・・・けどまだ彼女は11歳なのに」
「あら、ジン君だって11歳じゃない」
「サンドラには上に年の離れた姉と兄のがいるんです。てっきり僕は姉のサラ様が次の当主になると思っていたのですが・・・」
「まぁあやつらにも色々あったようでの・・・。それで、此度の祭りを共同で主催するために私が行くことになったのじゃ。その時に上から知らされたのがこの予言・・・。私が行く以上、問題は無いと思うんじゃが・・・ガルドの時のような事があってはわたし1人では対処しきれん可能性もある」
「それで俺たちに声を掛けたんだな。ちなみに、その魔王は何桁相当とかの情報はあるのか?」
「すまぬ兄上・・・正直この預言以上の情報はなに一つわかっていないんじゃ。私も出来る限りの対抗策は容易するつもりだが、もしもの時は・・・」
「白が謝る事じゃないよ。で・・・どうする?」
「敵の情報がないのは気がかりだが・・・今回のはいいチャンスじゃないか?俺たちは打倒魔王を掲げているわけだし、ここらで1度魔王を倒したって実績は作っておいて損はないだろ」
十六夜の言葉に、ジンを始めとした全員が頷いた。
「よし・・・白、その依頼正式に俺たちノーネームが承った。お前は安心して運営に勤しんでくれ」
「助かる・・・それでは今から北側へ向かうが良いかの?」
白夜叉は全員が頷くのを確認すると、柏手を打った。
「よし・・・これで北側に着いたぞ」
それに驚いたのは問題児3人。しかしそれも一瞬の事で、十六夜達は我先にと外へ駆け出して行き、その後を追うようにジンや黒ウサギ達が追いかけて行った。
黒夜もラグスとレティシアを連れて後を追おうと思ったのだが、すんでの所で白夜叉に止められた。
「すまぬが兄上にはもう少し話がある」
「なんだ?」
「例のの大剣の男についてじゃ。兄上は魔王達が手を組んで箱庭中で動いているのは知っておるか?」
「あぁ・・・もともと俺が帰って来れたのはそいつらから箱庭を守るためだからな」
「やはりそうじゃったか・・・。それでじゃ、あの大剣の男はその連中の仲間であったことが判明した。名はゲイン・・・北側出身の魔王で五桁では最上位だったようじゃ。やつが何故あのゲームに現れたのかは不明だが、今回も現れる可能性は高い・・・もし現れたら殺さずに捕まえて欲しいんじゃが・・・」
「OK・・・俺は今回そいつらに注意しながら動く事にする。預言の魔王に関してはラグスにレティシア・・・十六夜達が無理しないように気にしてやってくれ」
「うん!」
「あぁ!」
黒夜は2人の返事を聞くと、今度こそ2人の手を引きながら街へ繰り出して行くのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
side 十六夜&黒ウサギ
2人は現在、飛鳥たちと別れ露店を見て回っていた。
「へぇ・・・?流石に98000kmも離れると東側とは色々と違うんだな」
「そうですね・・・北側は雪国ですからそれに対応するためのギフトの開発などが盛んで、種族も火竜や鬼などが多く見られます」
「なるほどね・・・まっ、魔王が現れるまではのんびり観光でもしようぜ。箱庭に来てから修行続きだったからな・・・たまには体を休めるのも良いだろ」
十六夜はそう言いながら露店で買ったクレープを黒ウサギに一つ渡した。
「あ、ありがとうございます・・・確かにずっと休む暇もありませんでしたからね。黒ウサギも今日は目一杯羽を伸ばすのですよ♪」
ウサ耳をピョコピョコさせながら美味しそうにクレープを頬張る黒ウサギを見ながら、十六夜も自分のクレープに噛り付いた。直感で選んだ店だったのだが、当たりだったようでなかなかの味に十六夜もご満悦だった。
しばらく出展物を見ながら歩いていると、突然黒ウサギが足を止めたので十六夜はどうしたのかと振り向いた。
するとそこには、先ほどまでの笑顔が嘘のように暗い顔をしている黒ウサギがジッとこちらを見ていた。十六夜はどうしたものかと思いながらも、黒ウサギに声をかけた。
「どうしたんだよ?」
「・・・その・・・十六夜さんは、後悔していませんか?」
「は?」
突然のよくわからない質問に、十六夜は珍しくキョトンとしてしまった。しかし黒ウサギは十六夜の答えを待たずに言葉を続けていく・・・。
「黒ウサギは・・・皆さんがノーネームへ来てくれて本当に良かったと思っています。レティシア様も帰ってきましたし、子供たちも毎日お腹いっぱいご飯を食べることが出来て幸せそうにしています。ですが・・・十六夜さんたちはいつ危険に合うかわからない状況に毎日のよう辛い修行に明け暮れて・・・特に十六夜さんは快楽主義を自称していますから・・・今の状況は苦痛じゃないかと思ったんです」
黒ウサギはウサ耳をヘニョらせながら悲しそうに顔を俯かせた。十六夜はそんな彼女を見て目を見開くと、やれやれと思いながら柔らかい黒髪を撫でた。
「ったく・・・馬鹿だなお前は・・・別に後悔もしてねえし苦痛にも感じてねえよ。むしろ俺はこんな面白い世界に呼んでくれた事に感謝してる。確かに修行はシンドイが、今の俺には黒夜を超えるって目標があるからな。そのために少しずつ強くなってると実感出来る今の状況はそう悪くねえさ。これは春日部やお嬢様も同じだと思うぜ?程度は違えど、あの2人も何かしら目標があるあるから頑張れてるんだ。これは俺たち個人の問題で、お前がいちいち気にすることじゃねえんだよ」
「十六夜さん・・・」
「ほら・・・今日は羽を伸ばすんだろ?だったらそんな辛気臭い顔してないで楽しめ!」
「はい・・・はい!」
黒ウサギはうっすらと眼に涙を浮かべながら元気よく頷いた。そして思う・・・。
(十六夜さんは・・・口は悪いですけどとっても優しい人ですよね。今は黒夜様の陰に隠れがちですが・・・きっと将来は有名になるに違いないのです♪そうすればきっと・・・十六夜さんに相応しい恋人なんかができたりして・・・)
チクっ・・・
そこまで考えて、一瞬胸に痛みが走った黒ウサギ・・・。
(え・・・?今の痛みは・・・)
そうして前を歩く十六夜の横顔を見つめてみる。するとそれに気づいた十六夜が振り返ったのでバッチリ目が合ってしまった。
「ん・・・どうした?」
「い、いえ!その・・・そう言えば十六夜さんは好きな人とかいるのかなぁとふと思いまして・・・」
(って私は一体何を聞いちゃってるのでございますか!?)
「あん・・・?また突然だな・・・まぁそうだな・・・ラグスとレティシアは既に黒夜の物だから除外するとしても・・・お嬢様も春日部も・・・なぁ?まぁなんだ・・・今の所、俺が誰かを好きになるとしたら・・・それはお前だろうな」
「な・・・黒ウサギ・・・ですか!?」
「あぁ・・・お前が一番俺の好みだからな・・・そう言うお前はどうなんだ?やっぱお前も黒夜みたいなのが好みなんじゃねえの?」
「わ、私は・・・」
黒ウサギは考え込んでしまった。十六夜としては軽いノリの話だと思って応えていたのだが、どうやら黒ウサギにとってはそうじゃなかったんだと今になって後悔する。十六夜は少し慌てて話題をそらそうとした。
「そういやーーー」
「わ、私は!十六夜さんが好きです!!」
「・・・・・・・・」
「あ、あれ・・・私今なんて・・・・・」
黒ウサギは自分の発言を思い返して真っ赤になった。本当は"十六夜さんの方が黒夜さんよりも好きですよ"とか言おうと思っていたのだが、どうやら緊張で端折りすぎてしまったらしい・・・。
十六夜は数瞬固まっていたかと思うと、顔だけではなく身体も黒ウサギへ向けて言葉を紡いだ。
「その・・・すまん。軽いノリだと思ってたんだが・・・さっきも言った通り、俺はまだ恋と呼べるほどの感情をお前に持っているとは言えない。だから時間をくれないか?ちゃんと・・・考えて答えを出すから」
今度は黒ウサギが固まってしまった。もしかしたらこれをネタにからかわれてしまうんじゃないかとも思っていたのだが、十六夜が予想以上に真剣な返答をくれた事に驚いたのだ。
「は・・・・・はぃ」
黒ウサギは蚊の鳴くような声でそれだけ言うのが精一杯だった。
十六夜も恥ずかしいのか若干頬を赤くしていて、気まずい雰囲気が流れるものの離れるような事はせずその後も2人で散策を続けるのだった・・・。
side out
side 飛鳥&耀&ジン
十六夜と黒ウサギがなにやら甘い雰囲気になっていた頃、こちらの3人もまた露店を見て回っていた。
「色々あるわね・・・春日部さんはなにかーーー」
「
飛鳥がなにか食べる?と言おうとして振り向くと、そこには既に両手に大量の食べ物を抱えた耀の姿があった。
「い、いつの間に・・・どれが美味しいの?」
「ん・・・ごくん・・・・・えっと、この焼売みたいな包み焼きが特に美味しい。食べる?」
「いただくわ・・・ん、確かに美味しいわね・・・中身はなにかしら?」
「これは・・・おそらく北側でのみ生息するスノーウルフという狼の肉ですね・・・。この時期は冬を越すために大量の餌を食べるので脂の乗った上質な食材になるんです」
「へぇ・・・」
「他にも北側ではこの時期が一番美味しい食材が多くあるので耀さんみたいに食べ歩きするのも良いかもしれませんね。僕のオススメとしてはモンスンと呼ばれる小さな像の肉料理です。昔一度だけ食べたんですが、凄く美味しかったですよ」
ジンの解説に、耀はまだ食べきっていないのに涎を垂らしていた。飛鳥はハンカチでそれを拭いてあげながらモンスンなる食材を扱っている店を探し始める。
しばらく歩いていると、ジンは少しずつ気になっていた事を2人に聞いてみる事にした。
「そう言えば・・・お二人は好きな人はいるんですか?」
「「!?・・・ゴフッ!・・・ケホッ!!」」
盛大に吹き出した。ジンは慌てて2人の背中をさすりながら謝った。
「す、すみません」
「ケホッ・・・い、良いのよ。けど・・・どうしてそんな事を聞くのかしら?」
「いえ・・・先日黒夜さんが婚約した時の言葉を思い出しまして。あれから皆さんの様子を少し眺めていたんですが、どうやら黒ウサギは十六夜さんが気になっているようでしたから・・・もしかしたら飛鳥さんや耀さんも・・・と思ったんです」
「ジン君もそういった事が気になる年頃なのね・・・まぁ、私はまだわからないわ。今は修行で手一杯だしね。・・・それに私・・・何人かの内の1人って耐えられないと思うしね?」
「私は・・・黒夜が気になってるくらいかな?でも飛鳥と同じで今は強くなりたいって気持ちが強いかも」
「そうでしたか・・・ぼくも今はコミュニティのために強くなる事に必死ですから当分はそっちが優先ですね・・・」
「ジンくん・・・どんどん強くなってるものね。今のジン君ならガルドも倒せるんじゃないかしら?」
「どうでしょう・・・正直目標は高いのですからね・・・ガルド程度に勝てても嬉しくありませんよ」
ジンの強気な発言に飛鳥と耀は顔を見合わせると、微笑みあってジンの手を両脇から握った。
「え?」
「フフ・・・頼もしい言葉だったけれど、まだ1人にするのは心配だから」
「今日はこれで回ろうか」
ジンは周りから向けられる生暖かい視線に一気に顔を赤くしたが、こうやって手を繋いで街を歩くというのも久しぶりの事だったので今日だけは・・・と思い、そのまま2人に連れられて歩き出すのだった・・・。
side out
side 黒夜&ラグス&レティシア
この3人は白夜叉と別れると、真っ先に空へ飛び上がっていた。本当ならせっかくなのだし二人とデートを楽しみたい所ではあったのだが、相手の情報がない以上少しでも多くの手を打っておく必要があると判断したためである。
3人は街で1番高い時計塔の上に降り立つと、ゆっくりと街を一望していった。
途中、黒夜は十六夜と黒ウサギを見つけたがなにやら良い雰囲気だったのでそっとしておく。
「今の所は特に変わった所はないね・・・」
「あぁ・・・ただ、あのステンドグラスは少し気になるな。似たようなのがあちこちにいくつも並んでる・・・ちょっと調べてみるか・・・」
黒夜はそう言うと、1番近くにあったステンドグラスへと近寄りそっと触れてみた・・・。
(あら・・・このステンドグラスを見に来るなんて・・・なかなか良い趣味の人間ね)
「!!?」
瞬間、頭の中に聞こえてきた声に黒夜はバッと手を離して辺りを見回した。
「黒夜・・・?」
「今のは・・・まさか、このステンドグラスから?」
声の正体が気になった黒夜は、もう一度ステンドグラスに触れてみる。すると、また先ほどと同じ声が聞こえてきた。
(まさか・・・私の声が聞こえているの?)
聞こえてきたのはまだ少女と言っても良いような可愛らしい声で、黒夜は半信半疑ながらも疑問を口にした。
「やっぱり・・・ステンドグラスから聞こえてたのか。お前・・・魔王なのか?」
(・・・そうだと言ったら?)
「悪いことは言わない・・・お前の望みが何かはわからないが、この祭りを襲うのはやめた方がいい」
(あら・・・優しいのね。けど・・・それは無理よ・・・私は、私達が死ぬ原因となった怠惰な太陽に復讐するまでは・・・それに、その願いのために命をかけてくれる仲間もいるの・・・そんな彼らを裏切る事なんてできないわ)
「・・・・・そうか・・・だが、俺たちもみすみすやられるわけにはいかないんでな。全力で抗わせてもらうよ・・・あぁそうだ、1つ面白い事を思いついた」
(面白い事・・・?)
黒夜は1度ニヤリと笑うと、とんでもない提案を口にした。
「あぁ、もしもうちの連中に勝てたら・・・その時はお前の願いを俺が叶えてやる。そのかわり・・・お前たちが負けたら・・・・・俺の娘になってもらう」
(は・・・はぁ!?)
先ほどまで静かに話していた声も流石にこの提案には驚いたようで、変な声を出してしまう。側で聞いているだけだったラグスとレティシアも一瞬驚いたように目を見開いたが、まぁ黒夜だし・・・という理由でそれ以上は口出ししなかった。
しかし提案された方はそうもいかない・・・声は無理矢理冷静さを取り戻すと、内心の動揺を悟られないように出来る限り気丈に振る舞った。
(・・・ふん・・・ただの人間が随分と上から言ってくれるわね・・・?私はあの白夜叉を相手にしようとしてるのよ?いったいどうやって力を貸してくれるというのかしら?)
「なるほど・・・確かにあいつは太陽主権をいくつももってるからな・・・普通の方法では復讐なんか出来るはずがないか」
(そうよ・・・私だって白夜叉に対して有効な手段があるからこそ今回の計画を立てたのよ?)
「ふむ・・・そうだな・・・白を倒すとかってのは俺には出来ないが、あいつを恥ずかしがらせたりおちょくったりする事なら幾らでもできるぞ?なんせ白とは数千年の付き合いだ・・・あいつの恥ずかしい話のネタなんかには事欠かないからな」
(ちょっと待って・・・数千年・・・・・?)
声は先ほどと同じで驚きが混じっていたが、それ以上に信じられないという感情が表に出ていた・・・。
声にとって人間の寿命などせいぜい60年前後だったことから、目の前の人間は自分が思っている以上に危険な存在なのではないかと危機感を覚えたのだ。
「そう言えば名乗っていなかったな・・・俺の名は黒夜・・・白夜叉の義兄をやらせてもらってる。限度はあるが、俺と組めばいくらでも白を弄べるぞ?」
(貴方が・・・白夜叉の義兄だったのね・・・話には聞いていたけど、本当にいるとは思っていなかったわ)
「聞いていた・・・?」
(そうね・・・きっと私は負けてしまうでしょう・・・でも、ゲームを止めるつもりはないの・・・だから、貴方たちが勝ったときには私が知っている事を話してあげるわ)
声はそれだけ言うと、今はこれ以上話す気は無いというように黙ってしまった。
黒夜は1つ息を吐くと、ラグスとレティシアの方へ振り返る。
「黒夜・・・どうする、の?」
「話と・・・そしてこのステンドグラスを見る限りでは、あの声の主は黒死病に関係する魔王で間違い無いと思うぞ?・・・ゲームが始まれば、かなりの犠牲者が出るかもしれない」
「わかってる・・・黒死病に関しては俺がなんとかする。話をしていて思ったんだが、あの子はまだ魔王になって日が浅いと思うんだ・・・いろいろ喋りすぎてたからね。だとしたら、十六夜たちにとって丁度いい相手とも言える・・・特に飛鳥と耀があの子達を相手にどこまで戦えるか・・・あの子には悪いけれど試金石になってもらうとしよう。ステンドグラスの位置は上から見たときに大体は把握したから、ひとまず俺たちも祭りを見て回ろうか?」
「黒夜が・・・そう言うなら・・・(私もデートしたいし!)」
「最悪の場合は黒夜が出れば済む事だしな・・・(良かった・・・少しは一緒に見て回れそうだ)」
黒夜の提案に、ラグスとレティシアは内心で物凄く喜んだ。2人ともせっかくの初恋なのだ・・・やはり祭りを一緒に見て回りたかったのだろう。
黒夜はそんな2人の様子に微笑むと、もう一度だけ声が聞こえたステンドグラスの方を振り返り・・・そして2人を連れて歩き出した・・・。
(待ってろよ・・・俺は1度口にした事は絶対に実行するんだ。お前はもう・・・俺の娘になるって決まってるんだから・・・必ず魔王の・・・いや、それ以外の全てからも救い出してやるからな!)
夕暮れに染まる空を見上げながら、黒夜は1人・・・決意を新たにするのだった・・・。