仮面ライダーアスカロン   作:貧弱モノサシ

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仮面ライダーっぽくなくなってしまった感あるけど今日も私は元気です


第1話「間違った力・後編」

「六護!」

 

「ん?」

 

「これちょっと前に流行ってた……」

 

少女は六護に「都市伝説!仮面ライダーの全貌」という見出しの本を1冊渡す

 

「仮面ライダーなぁ……」

 

「目撃情報や証言、証拠写真は今までの都市伝説の中でも最多って言われてたね」

 

「でも仮面ライダーって何が目的なのかまったく分からないんだろ?何かと戦ってるって証言もあれば人を襲ったなんてのもあるし」

 

六護にとっては得体の知れない物で、正直聞いていると不安を覚えてしまうのが仮面ライダーだった、仮面ライダーは複数人居ると聞いているが、それも本当かわからない

 

「あー……お腹空いた……」

 

「なにか食べるか?俺も腹減った」

 

「うんっ」

 

家を出てから4時間経過、そろそろ昼時だ。

適当なカフェを見つけてそこに入る、カフェは広いとはいえないものの、薄暗く優しい木製の雰囲気は心を落ち着かせた。

 

「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」

 

迎えてくれたのは恐らくアルバイトの女性、六護と同い年くらいだろうか

 

「ご注文は?」

 

「何がいい?」

 

「チャーハン!」

 

「じゃあチャーハンを2つ」

 

かしこまりました、と告げた店員は小走りで店の奥に消えてゆく。

六護はカバンを肩にかけたままでは辛かったのか、「荷物をお預かりします」と大きく書かれたカゴにカバンを入れた

 

「外食続きだな、最近は」

 

「だね、でも楽しいからいいの」

 

「そう言ってくれると俺の財布も救われるよ」

 

カゴに置かれたカバンを見て自らの肩を回していた六護は不意に気付く、カバンがいつもより重かったような気がするのだ

 

 

しばらく経つと熱いチャーハンがテーブルに置かれる、少女は「いただきます」と言っているのでもう食べ始めているようだ

 

「しかしカフェでチャーハンって似合うか似合わないかで言えば似合わんな……」

 

口に水を含んで周囲を見渡す六護、レジの方へ首を回すとピタリとその動きを止め、視線もある一方で固まる

 

「あれ……」

 

「お客様?どうかなされましたか?」

 

「いや……なんでもないです、ただあれが気になっただけで」

 

六護が指をさしたのはレジの横にある棚、その中に飾ってあるベルトのような物とサイコロのような黒いキューブだ。

ただのベルトにしては前面の装飾が大きい、その上あの黒いキューブがぴったりとはまりそうなくぼみまである

 

「なんですかあれ?」

 

「ただの飾りですよ、店主が持ってきたんです」

 

「へぇ……」

 

何に使うか……その用途に惹かれた訳ではなかった、ただ六護はあのベルトを見たどころか「持っていた」記憶があるのだ、ただそれがいつなのかも、今も持っているのかも覚えていないのだが

 

「……よろしければベルトと一緒にあるキューブをお譲りしましょうか?私が作ったものでよければ、ですが」

 

「作った?」

 

アルバイトの女性は言葉の代わりに笑顔を作るのみだった、その顔は可愛らしいものでもあったが、「それ以上聞くな」という意味でもあるのだろう───

 

 

~~~

 

 

「またお越しくださいませ」

 

機嫌よく歩く少女と手を繋ぎながら店を出てゆく彼の手には何の装飾も施されていない真っ黒なキューブが握られていた。

キューブには失敗作と書かれた張り紙がついており、六護はその張り紙を剥がしてカバンに突っ込む

 

「いてっ」

 

カバンの中で指がなにかに当たったようだ、水筒か何かか、と思いカバンを覗く

 

「六護、盗んだの……?」

 

先程のカフェに飾っていたベルトと全く同じ者が当然のようにカバンの中にあった。六護はカバンが重かった理由が判明し少し安堵した後に慌てて少女に返事を返す

 

「いや、気づいたら入ってた。カバンが重かったのはカフェに入る前からだからカフェで盗んだものではないかな」

 

「じゃあどこで!?」

 

「どこでも盗んでないよ!?……あーそういえば、店員さんにこのベルトの使い方教えてもらった方がよかったかなぁ」

 

「そのキューブはめてみたら?」

 

「はめてみたいけど、これが何かのおもちゃだとしたら商店街のど真ん中ででかい音とか鳴るかもしれないんだ、俺は恥ずかしいから嫌だな」

 

質感やその重さは明らかにおもちゃのものではないと六護は気付いていたのだが、彼の頭の中では常に危険信号が発せられていた。できればこのベルトを早く捨ててしまいたい衝動に駆られていたのだ、しかし脳と体は「理由」を求めてその衝動を拒む。

そう、彼にはこのベルトを捨てる理由が無かった、ゆえに気のせいだと勘違いしてしまうのだ

 

「本当にどこかで見たことあるんだよな、このベルト」

 

「私も………あっ!」

 

「どうした?」

 

少女がなにかに気付いて近くの本屋に入り、雑誌を広げる

 

「これ!これ六護が持ってる奴だよ!」

 

「これは仮面ライダーの?」

 

カフェに入る前に少女が読んでいた雑誌に、そのベルトはあった。都市伝説「仮面ライダー」の証拠写真、仮面ライダーの写真をよく見てみると腰のあたりにベルトが巻かれている、六護の物と同じだ

 

「じゃあこれって……」

 

「仮面ライダーのベルトだよ!すごいすごい!」

 

「ちょっ、本屋では静かにな」

 

少女の興奮は収まらない、一旦店を出て水筒の水を飲ませると少し落ち着いたようだ

 

「しかし仮面ライダーのベルトなぁ、よくできてるよ」

 

「よくできてるじゃなくてきっと本物だよ」

 

「そんなまさか、まぁ俺が持ってても何の役にも立たないだろうしさっさと交番にでも───」

 

次の瞬間、六護の脚は少女にしっかりとホールドされていた

 

「わ……渡すの?本当に?」

 

「……ちょっとの間だけな」

 

「うんっ」

 

つくづくこの少女に甘い男である。

2人はその後、ベルトの事を忘れてずんずんと商店街をすすんでいく。

そして次第に違和感に気付き、理解した

 

「あれ……人がいない?」

 

「でもお店は開いてるよ?」

 

繋いでいた手を離して勝手に雑貨屋に入る少女、六護はその後をゆっくりと歩いて追いかけた。

が、おかしい、少女が入ったばかりなのに「いらっしゃいませ」の声もなく、それどころか少女の声もしない

 

「………」

 

扉を持ち、深呼吸をする──が、それは中断された

 

「いやあぁぁ!!六護ぉっ!」

 

少女が叫んだからだ

手は震えて扉を開けることができない、また本能が恐怖するのだ、だから──蹴破った

 

「おい!何してるんだよお前!」

 

少女の肩に噛み付いていた男を引き剥がす、反動で男と逆方向に吹き飛びかけた少女の身体を支えてその肩に視線を移すと、唾液と血が混ざりドロドロになった液体がべっとりとついていた

 

「大丈夫かっ!?」

 

「い、いたくない……」

 

次は男の方を見る、地面に顔を押し付けるように倒れている男の口からは血が溢れるように出ており、少女の肩についている血はこの男の物だと分かる

 

「どういうつもりだお前!正気じゃないぞいきなり噛み付くなんて!」

 

「六護帰ろう?肩きもちわるいよ……」

 

「ああ、警察に通報してからな」

 

六護は携帯を取り出し、番号を入力している途中で目を疑う。

 

「圏外?そんなわけ」

 

繋がらない、何をしてもだ

 

「とりあえず店から出よう、というより今日は帰った方がいいな。通報はこのあたりの人に任せるか」

 

「うん…」

 

店を出ようとしたその時だった

 

「六護!」

 

少女がまたもや叫ぶ。六護が振り返ると、思わずのけぞるほど異様な現象が起きていた。

男の血が一つの球体になるように集まっていたのだ。そしてそれは、男の血がついた少女も例外ではなかった

 

「引っ張られるっ……!」

 

「掴むぞ!」

 

少女の腕を掴むも謎の力の前では何の役にも立たずに少女は血の球体に取り込まれる、周囲の血とは違い、わざと苦しませるようにゆっくりと少女の身体を球体に埋めていった

 

「やだぁぁ……痛い……痛いぃぃ……!」

 

「こいつッ!」

 

球体に腕を突っ込む六護、少女はどこにいるかを探るが、突っ込んだ腕に走る痛みに耐えきれず腕を引き抜く

その腕は血だらけだった、あの球体の血ではなく、何かに切り裂かれたかのような傷から溢れ出る自らの血だ

 

「こんな危険なやつの中に置いておけるかよ……!」

 

傷跡を見て驚きはしたものの六護は怯まない、再度腕を入れ、痛みに耐えながら探り続ける。

何かに当たる感覚、それを掴んで体ごと後ろへ引っこ抜いた

 

「よし!」

 

腕には少女が抱かれている、不可思議な事に傷は無い、正確には今、全ての切り傷が塞がっている途中だった。これは人間の治癒能力ではないという事は人体の知識を学んでいない六護でもすぐに理解できているだろう。

少女に付着していた血は先程の用に少女の身体ごと連れていくことは無く、その血のみを引き寄せてゆく

 

「意識は無いか……」

 

一目散に店を離れる六護、少女を抱えている腕の傷はダムが崩れたかのように血が溢れ出ており痛々しい

 

「人…!おーい!こっちだ!誰か助けてく………れ………?」

 

人ではない

否、人の形をしたなにかである、そして脳に焼きついたその姿は

 

「仮面、ライダー?」

 

影や出血のせいでぼやけて見えているが間違いない、雑誌やテレビで散々報道されてきた仮面ライダーだ。特徴的な大剣、力強くつり上がった複眼、ベースカラーの赤、ヒーローと言うには理想的な姿をしていたが───

 

「がぁっ!」

 

近付くやいなや六護を蹴り飛ばしたのだ

 

「な、にを……」

 

仮面ライダーの返答はただ一言だった

 

『戦え』

 

そう言い六護のカバンを大剣で破壊する、破れたカバンから取り出されたベルトとキューブが無造作に六護の前に投げ捨てられる

 

『戦え』

 

「ぐっ……俺があんたに何かしたかは分からない……でも、話し合いもせず暴力に頼るなら言われなくても!」

 

重い頭を抑えて立ち上がる六護、仮面ライダーがやっているように見よう見まねでベルトを装着し、キューブをベルトにはめ込んだ

 

「……変身!」

 

<CUBE ON Change Skinner>

 

その体を包んだのは黒いスーツに深い青の装甲。つり上がり、細くなった複眼は目の位置に合わせて2つづつ、計4つの複眼が赤い光を放つ。

特徴的なのは右足のふくらはぎを銃身に見立て、足を囲む用に付いている大型のシリンダーと額から後頭部に向かい伸びている1本のブレードだろうか

 

『仮面ライダースキナーか』

 

「はぁ?」

 

『どうでもいい、始めるぞ』

 

大剣を振り落とそうとする仮面ライダー、回避を考えたがそうなると大剣の矛先は少女だ。

スキナーは大剣の側面を裏拳で殴り軌道を逸らす、よろめいた仮面ライダーに殴りかかるも片手で受け止められ、そのまま後方へ投げ飛ばされてしまう

 

「殴り合いじゃ勝てない!」

 

<S.DAGGER READY>

 

ベルトのホルダーからスキナーナイフに似た形のダガーを抜く、刀身には銃口があり、人差し指の位置には引き金もあった

 

「でぇぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

まずは少女を視界に入れつつ仮面ライダーからの攻撃を防御できる位置に誘導しなければならない、だがここでわざわざ距離を取ったところで少女が無防備になるだけだ、おそらくは斬り合いの中で少女から離れていくつもりなのだろう

 

「ぐっ!」

 

スキナーは戦闘前に負傷している、その上経験もスペックも馬力でさえも相手の方が格上だ。この状況でスキナーが勝っているものといえば

 

「ああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

気合の1点のみだった

 

『筋は通っているな貴様、本当に初戦闘か?』

 

「初めてだよこんなのは!いきなりあいつが血に取り込まれて!俺は訳の分からない場所で訳の分からないやつに剣を向けられて!二度と経験したくない!」

 

『貴様に2度目は無い』

 

<A.BLADE READY>

 

仮面ライダーの大剣が消滅し代わりに小振りの剣が出現する、大剣だとどうしても攻撃が単調になり、パターンを覚えてきているスキナーに側面を叩かれて受け流されてしまうからだ

 

「い゛っ…!」

 

『!』

 

仮面ライダーが放った突きがスキナーの肩を貫通する、しかしスキナーの動きは止まらない、だからどうしたと言わんばかりのスピードで仮面ライダーに近づきダガーを胸部に突き立てた

 

『ほぉ……』

 

ナイフの刃は胸に刺さることは無かった、仮面ライダーの手が刃を掴んでいるのだ。このまま力の強い仮面ライダーがダガーを押し返す──はずだった

 

「自分から掴むとは、よっぽど撃たれたいらしいな!」

 

スキナーは引き金を引く、何度も何度もだ。その度に爆発音が響くが、1発目以外に当たった感覚が無かった。発砲の際に出た煙が全て無くなった──そこに仮面ライダーの姿は無い

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

肩に刺さったままの剣を抜いてその場に膝から崩れる、出血多量が原因だろうか、彼の意識は朦朧としている。

霞む目で見えた人影は、気絶したままの少女とこちらに剣を向ける仮面ライダーだった

 

 

 

~~~

 

「─さ──おきゃ───ま」

 

 

 

「お客様!」

 

「六護?」

 

六護はカフェにいた、皿が届けられたところだが、しばらく頭が回らず自分が何をしていたのか思い出せない

 

「どこだっけここ……?」

 

「はい、カフェ・シードでございます!」

 

「あ、はい」

 

「六護しばらくボーッとしてたよ?大丈夫?」

 

「つ、疲れてるんだよ多分、俺なら大丈夫だから食おうぜ」

 

誤魔化すようにチャーハンを口に含む六護、途中までガツガツと食べていたが半分ほど食べると手を止めてしまった

 

(なんだこのイメージ)

 

彼の頭の中に浮かぶのは血の塊、球体になってゆくそれは少女を取り込もうとしていた

 

「俺、やっぱりもう食べれないや」

 

「どうしたの?」

 

「急に吐き気がしてさ……この後、家に帰ってもいいか?風邪ひいたかもしれない」

 

「う、うん、大丈夫だよ!」

 

まっさらな嘘だ、徐々に復元されてゆく記憶の断片から読み取ったのはこのあとの展開の1部、絶対に少女をあの雑貨屋に近づけてはならないと感じたゆえの行動であった。

1人ならあの雑貨屋まで行き何が起きたのかを確かめに行ける、彼はそう考えていた

 

「よろしければ、この女の子を少しの間お預かりいたしましょうか?」

 

六護にそう告げたのはアルバイトの女性、考えを読まれたかのような発言に少々警戒する

 

「なんで預かってもらう必要があるんですか?」

 

「落し物を探しに行きたそうな顔をしていたからです、この女の子は連れていきたくないのでしょう?」

 

「六護、落し物したの?」

 

「あ、ああ……そうなんだよ、財布を落としてしまったんだ」

 

女性は勝手に六護のカバンを開き、ベルトとキューブを六護に手渡す

 

「行ってらっしゃいませ」

 

「……」

 

最後まで警戒していたが危険性は無いように感じる、彼はそんな屁理屈で少女を任せるような男ではないがどういう訳かあのアルバイトだけは信用できたようだ、何度も会い、何度も少女を預けているような……そんな気がしている。

 

 

──そして蹴破ったはずの雑貨屋の扉は、依然としてその役目を果たしていた

 

 

 

~~~

 

 

「マスク01アスカロン、スキナーはどうだ」

 

「強かったよ、初戦にしてはかなり強い」

 

「下手な冗談だな、初戦ではないだろう?スキナーが何度お前と戦ったと思ってるんだ」

 

「2桁はいってるな、そろそろ変身を解くぞ」

 

仮面ライダーはキューブを外して変身を解く、燃えるように赤いキューブには「Ascalon」の文字が刻まれていたのだった




仮面ライダーアスカロンは主人公ではないパターン
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