連載予定、「オレ、アインスです」とは別世界。

意外と少ない緑色のツインテイルズが登場!
そいつは三日三晩幼馴染を語り尽し、紅茶を好み、ヒーローをこよなく愛する()だった!?

「双閃烈火! テイルレッド!」
「双海天武! テイルブルー!」
「双雷砲電! テイルイエロー!」

「双森万象! テイルグリーン!」



ご要望があれば書き足したい

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回転右腕の息抜き

取り敢えず簡単に初戦闘戦を描いていく所存



2016/09/08/17:50
追筆、修正完了


『烈火の種火と森羅の苗木』前編

 私と彼女は、いつでも一緒だった。

 互いの家柄故か、同世代の友達と言うものが少なかった私たちの間に、遠慮と言う言葉はなかった。

 

 お互いにアニメや特撮のヒーローたちが大好きで、子供ながらのヒーローの真似とか私たちが悪漢に襲われたときにどう(かっこよく)対処できるか、など。数え切れないほど、それこそ、日が暮れても話し合っていた。

 

 しかし、時の流れは残酷。

 父が死別してから、彼女とは疎遠となってしまった。

 子供らしい、ずっと一緒という約束(願い)は儚く破れ、泣き別れとなってしまったのだった。

 

 もう一度、あの子に会いたい。

 会って、私が束ねたツインテールで喜ぶ姿がみたい。嬉しそうに周囲に見せびらかす彼女を見たい。満面の笑みで、ありがとうと言ってくれる彼女に、もう一度──

 

 

 

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 箱盾森海(はこだてしんかい)。それが少年の名。

 項後(うなじ)が完全に隠れるぐらいのモスグリーンの髪に、先祖返りと親族に言われた金色の双眸。勉学はそこそこ。身体能力は常人よりも少し上。特技趣味は料理。イン○ル入ってる。

 他人からすれば(多分)誰からも羨む様な彼だが……それ全てを打ち消すような要素が存在する*1

 

 ──特撮ヒーロー好き。(過去にいた)幼馴染万歳。紅茶狂い。

 

 まさかの三重苦に友人たちは揃って肩を落として語る。

「イケメンとも残念とも言えない。スゴく良い奴ではあるけども」

 

 そんな風に語られるようなってから暫く。とある場所にて森海と、赤髪の少年が対峙していた。

 その少し離れた間の位置には濃淡な紺色のツインテール少女が呆れた表情で二人の少年を眺めていた。

 

「ストロベリーツイン!」

 

 赤髪の少年が吼える。

 唐突に叫ばれた意味不明な単語に対し、森海は即座に応じた。

 

「初々しさの中に感じる熟練度。完熟したイチゴに相応しい甘酸っぱい雰囲気を漂わすツインテール!」

 

 森海の言葉に嬉しそうに頷く赤髪の少年。そして少女はついに空を仰ぎ現実逃避を始めた。

 この謎の『ツインテール問答』はしばらく続いた。

 

「イノセントツイン!」

「初級ながらも基本に忠実。忘れ去られた基本に基づいた初心を忘れない心。しかし始まりの一歩は王道と言わんばかりのツインテール!」

 

 目の前の問答に対し、傍観する紺髪の少女、津辺愛香(つべあいか)は思う。

 

 ……まさかこの世に総二と同調する人がいるとは……

 

 森海に対している赤髪の少年は、愛香の幼馴染みである観束総二(みつかそうじ)。高校生男子の性欲が全てツインテールに向けられているほどのツインテール好きで、今朝の入りたい部活のアンケートに『ツインテール部』なんて(慌てていて無意識に)書いたほどの人物だ。

 

 そんな愛香たちが森海と出会ったのは本当に偶然で、帰り際にて一人中庭で絵を描く森海を見掛けたのが事の始まり。目ざとい総二が、森海が描いていたのが女性のバストアップ絵(胸から上が描かれた絵)の見事なツインテールに気付き突撃。目が合った総二と森海が無言で握手など、何が起きたのかさっぱり分からずにいた愛香だった。

 

 ──(のち)に分かったことだが、森海は一つ上の学年で、今日に転校してきたそうだ。

 

「それにしても箱盾先輩がこんなにいい人だったなんて、思ってもみませんでしたよ!」

「観束一年生も中々分かる男じゃないか!」

 

 はーっはっはっは、と肩を組んで大いに笑う男二人(バカ二人)に思いっきり呆れてしまう愛香。

 

 ……まるで総二が増えたみたい。

 

 いや、もしそうだったなら心労とか色々絶えないんだろうな。と現実逃避気味な思考のまま、学校から帰宅する一行は帰りの道中に遭遇した総二の母、観束未春(みつかみはる)(いざな)われ、“喫茶アドレシェンツァ”へと向かうのだった。

 

 成り行きからアドレシェンツァへと共に足を運んだ森海。通知に気付き携帯を見れば、幼馴染みからヒーローショーに行くという報告のメールと、お付のメイドから同行するという報告と共に婚姻届が添付されたメールが来ていた。

 お返しにお気を付けて、とお断りしますをアスキーアート画像付きで送った。

 積極的なのは良いんだがなぁ……と迷走中の筆頭メイドを悩ましく思っているとテーブルに大盛りのカレーが置かれた。

 

「はいよ。愛香は大盛り、箱盾先輩もどうぞ」

「わっはー! きたきた!」

「すまないな、観束一年生」

「いえいえ。総二でいいですよ」

「ふむ……では総二と。私も森海(しんかい)で構わん」

 

 そんな風に互いに親交を深めていると、不意に森海の視界の奥にわざとらしく新聞で顔を隠す銀髪の白衣の女性が映る。

 ──そこで疑問が生じた。今現在、アドレシェンツァは開店していない休業状態だ。店長である総二の母は先程すれ違い、いない筈で……視界的に見えるはずの総二に問うことにした。

 

「総二よ。奥にいる女性は、“最初から居たか”?」

 

 森海の問い掛けに、二人は驚いていた──銀髪の女性を見て、驚いたのだ。

 その反応が示す事柄はただ一つ……現状森海を含む三人に気付かれない様に入り込んでいたと言うのだ。この女性はッ! 

 

「あの人、いつの間に!?」

「気配すら感じないなんて──ッ!?」

 

 愛香の言う気配は、意外に馬鹿にできないもの。いわゆる存在感を中心に、服のはためき、擦れる音、息遣い、通る空気の流れを人は無意識的に感知する。それを意識的にできるかどうかは別の話だが……

 さらに座るともなれば椅子の音、音もなく新聞を広げていることから、『まるで最初からそこにいたように存在している』のだ! 

 

「……って、森海先輩。シリアス顔してるとこ悪いですけど、新聞に穴開けてガン見してますよこっち」

「なんと古典的な……今日日あんな手法は見ないぞ」

 

 そんな女性は、穴を開けた新聞紙で森海たち……いや、正確には森海たち側のカウンターに移動した総二にのみ目をやりながらズンズンと迫る。

 女性は何事もなく、ただ一言……

 

「相席、よろしいですか?」

 

 どうもすみませーん、と誰も許可を出していないのに猫撫で声で総二の隣に座る銀髪の女性に、愛香の待ったが入る。

 

「──って、待て待て待て―ッ!」

「あ、お構いなくー」

「……何と豪胆な」

「いや森海先輩? 感心することじゃなくないですか?」

 

 森海のズレた反応はさて置き、女性は自らを『トゥアール』と名乗った。その後、唐突に言ったのは『ツインテールはお好きですか?』と。総二は大好きだと即答する。

 だが、今朝に起こってしまった高校デビュー事故……無意識にツインテール部と書いてしまい、さらに興奮するほどツインテール好きであることがクラスメイトと担任に大いにバレてしまったことを思い出し、次ぐ口を噤む(つぐむ)

 そんな総二の即答の返事に満足したのか、満面の笑顔で“赤いブレスレット”を差し出すトゥアール。

 

「ではこれを。これこそが貴方様に必要な物で──ああ、怖がらなくても大丈夫です! さぁ、さぁ! さぁッ!」

「流石に見過ごせんでな。止めさせてもらうぞ、トゥアール嬢」

 

 総二の腕にブレスレットを嵌めようとするトゥアールの手をつかみ止めたのは森海。触れた瞬間にトゥアールは、おや? と何かに気付き、胸の谷間から少々メカニカルな眼鏡を取り出す。その際に愛香が修羅の形相になっていたが触れてはならないだろう。

 突如眼鏡を掛け、1フィートも無い距離で森海をじっと見つめて、トゥアールは言った。

 

「なるほど──シンカイさんは幼馴染のツインテールがお好きと」

「好きではない──(あぁい)しているのだ」

 

 真顔の即答であった。

 別に何処かの喧しい主任でもないし、金眼ではあるが元ゲシュタポ長官でもないが、そう勘違いされかねない程にガチトーンの発言だった。

 

 ──三人の通う何かとノリが良い学校、陽月学園は噂が広まるのも速く、総二と愛香にも森海の噂は届いていた。

 曰く『特撮ヒーロー好きの紅茶狂いで幼馴染大好き男』だと。名前を聞いた時に噂のイメージと釣り合わず首を傾げた総二と愛香だったが、今になって納得した。──(幼馴染ついては)噂はマジだったのだ。

 

「二日三日はぶっ通しでどれぐらい好きかを話せる自信があるくらいに愛している。それは何故かと言えば──」

「ああ、いえいえ。お構いなく。色んな意味で時間がありませんので、はい」

 

 この時ばかりはトゥアールの行動は英断であった。──何故なら後に似たような状況になり、その幼馴染が止めるまで約五時間ほど拘束され、危うく宗教洗脳のように『(幼馴染)万歳ッ! (幼馴染)万歳ッ!』と言っていただろうことがあり、『あの時は止めて良かったです』と暫く先の話でトゥアールは語っていた。

 話を遮られた森海は不満そうやら淋しそうやら複雑な顔をするが、そのまま話は進められる。

 

「ですが、しかし。時間がないのは本当です。このままでは、世界中から……『ツインテール』が()()()しまうのですッ!」

 

 傍から聞けば何言ってんだコイツみたいな目で見られかねない*2が、二人の男は違った。

 トゥアールの肩を掴み、驚愕と絶望の色に染まる表情で問い詰める総二と、腕を組み片手で顔を覆いながら困惑と憤怒の色を見せる森海。

 

「どういうことだよ……世界からツインテールが消えるってッッ!!」

「──あり得ない……目的がさっぱりだ。一体何が起ころうとしている……ッ!」

 

 割と本気な顔に傍にいる愛香は『そういえば同類の馬鹿だっけこの二人』と目の前の三人を訝しげな眼で見る。

 そして溜息一つ……その瞬間。

 

「スキありぃッ!」

 

 カション、と手錠の閉じるような音がした。

 一時の間を置いて、取り付けた本人を除いて悲鳴が上がる。

 

「スキありって……やっぱり悪徳商法じゃない! こうなったら証拠隠滅で腕輪とこいつを跡形もなく……ッ!」

「ヒィッ!? 発想がヤの付く自由業の方ですよこの人!」

「落ち着け津辺一年生」

「でもッ!」

「た、助か──「まずは解除させてから好きにしなさい」シンプル恐怖!!」

 

 愛香がブレスレットを引っ張るも、何故かびくともしない。下手すればブレスレットではなく総二の肩が比喩で無く外れてしまうだろう。

 

「あーもう、本当に時間が無いんですって……ばッ!!」

 

 トゥアールの言葉の後、三人の視界は光に包まれた。

 

 

 

 これが始まり。

 赤きツインテール、八百万のツインテールを守り。青きツインテール、赤きツインテールを守り、黄色きツインテール、仲間を支え、『深き緑のツインテール』、仲間を、世界を、何より大事な幼馴染のツインテールを守る為に戦う。

 

 ──そんな物語。

 

 

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 大型コンベンションセンター、マクシーム宙果(そらはて)

 連日賑わう場所に似つかわしくない喧騒が、そこにはあった。

 

 舞台に欠かせない黒子と似て非なる全身ぴっちり黒スーツの集団と、日曜朝や地方のご当地番組でよく見るようなトカゲの怪人。

 そんな野外駐車場の中心に突如現れたその集団を、本来いるはずのない人間が草葉の陰から覗き見ていた。

 

 ここから車で十分以上掛かる距離に位置する喫茶アドレシェンツァにいたはずの四人。銀髪に白衣の女性……トゥアールと、総二、愛香、森海だ。

 

「ちょ、ちょっと! 何よアレ!? 着ぐるみ!?」

「──(いや)、それにしてはリアルすぎる」

「ちょ、認識阻害が働いているとはいえ静かに──」

 

 爬虫類特有の肌に、簡易的な鎧。おおよそ人間や偽物には到底見えない二足歩行のトカゲが、世紀末臭漂うトゲトゲ鎧を着ているともなれば、常人からして目の前の現実など、否定もしたくなると言うものだ。

 

 しかし、しかし。

 目の前の現象、存在は現実であるからして、違えようのない事実だ。

 

「……ば、化け物っ。()()()()()()だ……!」

 

 総二の声は震えていた。

 非日常。到底至れぬ幻想の権化──理外の怪物。

 その象徴であるトカゲ男が、ついに口を開く。

 

 

「者共、静まれェェェィッ!!」

 

 

 ──重く、強い声だ。

 森海の、トカゲ男の声を聴いた率直な感想だった。

 重低音の声質というわけではなく、熟練の戦士であるというような重く伸し掛かる言霊。リーダー核たる重みを帯びた()だ。

 

「(これ、は──)」

 

 (おそ)れ。恐怖──否、これは畏怖だ。

 鶴の一声とはこのこと……いや、鶴に例えるには烏滸(おこ)がましいだろう。それまでに、この声は()()のだ。

 

「これより『選定』を行う!」

 

 何が始まるのか。その場の全員が、恐怖に固まったまま固唾を飲んで言葉を待つ。

 

「大人しくしていれば恐怖もなく終わるだろう。我は武人であるが故に、無益な戦いは好まん。無辜の民に手を上げるなど言語道断だ」

 

 ──故に、求めるのはただ一つッ! 

 

 

 その声に、次の答えは(おおよ)そ考え付いただろう。

 国か。金か。人か地位、または名誉か。──この行為の何処から名誉に繋がるかは謎だが。

 

 しかし。だがしかしだ。

 こんな答えなど、誰が予想できたことか。

 

 

 

「ツ イ ン テ ー ル だ !」

 

 

 

『……は?』

 

()()が求めるのは()()()()()()だ。より洗練、より整っているのなら尚良しッ!」

「この世界、生きとし生けるもの……遍く全てのツインテールは我らの物だッ! クククククッ、フハハハハ! ハーッハッハッハッハッハァッ!」

 

 

 全ての現象(シリアス)が吹き飛んだ気がした。総二は盛大に吹き出し、愛香はある種の絶望とさっきまでのシリアスを真に受けていたことで両手で顔を覆い、森海は思わず真顔のまま固まっていた。

 その一方で、シリアスな顔を続けているのはトゥアールだけだった。

 

「ねぇ総二。あれ並行世界のアンタとかじゃない?」

「嫌 だ よ ! 俺だってせめてトカゲならドラゴンが良いわ!」

「いや、爬虫類の問題なのか? どちらにせよ、まぁ同類であることには──」

「そうね」

「認めたくなーい!」

「総二様、今は私のオパーイでお静まりを──」

殴っ血KILL(ぶっちぎる)

「……本当にツインテールの女性を集めているな」

 

 あスルー!? 鬼畜スルーなんですかぁあああ!? という声を無視しつつ連中の行動を観察する。選定とはいうものの、この場にいるツインテールの人間は少ない。大体がストレートだったりショートだったり。結っていてもポニーテールや編み込みだ。

 その光景に、トカゲ男が大袈裟に天を仰ぐ。

 

「なんと──なんと嘆かわしい! これほどまでにツインテールが少ないとは……ここまで文明が発達しておきながら、文化がまるで育っていない。これではまるで石器時代同然ッ! ──まぁ、それだけに貴重で純度の高いツインテールがいるかもしれないが、な」

 

「ダメだ……ツインテールが気になり過ぎて話が入ってこない」

「総二はいつもでは? 「ひでぇ」まぁ真面目な内容とは思えないな」

「い、いや、彼らにとってシリアスどうぜ──グェェェ……」

 

 締め上げられてモザイク級の何かを出さないかと懸念しつつ、意識を再びトカゲ男の方に向ける。

 

「──良いかッ! 隊長曰く、ここに極上のツインテールあると申されたのだ! 草の根を分けてでも探し出すのだッ!」

「モ、モケモケェ……?」

「だから、うさちゃんを抱いて泣きじゃくっている幼女はついでだ! そうッ! あくまでもついでなのだ!」

 

 マジこいつ何言ってんだ。

 

「モ、モケェ……」

「……我は武人。隊長から託された一番槍の役目を疎かにできん。──だが、だがな。我とて男児……武人である以前に、ただの男なのだ。……ぬいぐるみを持った幼女を見たいと思うのは、おかしいか?」

「モケ、モケモケェ!!」

 

 おかしいわ。速攻でおかしいわ。

 

「ククッ……分かる部下を持てて我は嬉しく感じるぞ」

 

 良い話風になっているが、言っていることは匿名掲示板で性癖暴露する変態が如し。

 真面目に頭がおかしいというべきか。アホが真面目の服を着ているというべきか。誰が姿勢と環境からくるぬいぐるみと幼女の黄金比など聞きたいものか。要らん情報ばかり入ってくる気がする。

 

「あれ、総二……あそこにいるの、生徒会長じゃない!?」

「なんだ「なんだとッ!?」ちょ、先輩!?」

 

 四人の視線の先。透明なバルーンが割れ、中から現れたのは黄金の髪を持つ少女。気丈にトカゲ男を睨む気品なツインテールの持ち主──新堂慧理那(しんどうえりな)だった。その姿に人一倍反応したのは意外にも森海だった。

 そして彼女は──

 

「ほう……ほうほう。これはなかなかの幼子……それにお嬢様か。それになかなかの……なるほど。貴様が究極のツインテールか!」

「究極……? 何の話かは存じ上げませんが、言葉が通じるのであれば重畳(ちょうじょう)。捕らえている人々を解放してくださいッ!」

 

 毅然と立ち向かう慧理那に対し、トカゲ男は──

 

「言葉が通じ、貴様の気持ちもわかる……だが 駄 目 だ な」

「ッ……何故ッ!?」

「我らに利点が一つもない。それが真理だ」

 

 ──何、悪いようにはせん。

 そう言って指を鳴らし、周囲の部下に用意させたのは……

 

「さ、撮影セット?」

「や、やたらファンシーね……」

 

 やや手作り感が強いが完成度の高い動物のぬいぐるみが数十体と白いレースにピンクのソファーとファンシー色の強い撮影セットが用意されたのだ。

 こちらはこちらで横の物言わぬ死体とは逆方向……物言わぬ修羅になり掛けている先輩は気にしない方がいいのだろう。多分。

 

「おお……おお! これが究極! これぞ至高……否、至高天のツインテール! さぁ、このうさちゃんを胸に抱き、好きにポーズをとってみるのだ」

 

 こ、こうですか? と困惑気味にファンシーソファーの上でうさぎのファンシー人形を抱き締めてポーズをとる。

 トカゲ男は奇声を上げてスイッチ式の旧型カメラで連写しまくる。

 こちら側でゴフッ、と鼻血と一緒に吐血した先輩は基本無視の方向で。

 

「んん~……見事な幼気(ようき)。実に良き一時(ひととき)であったぞ。では──」

 

そろそろ回収するとしよう。

 

 

 ──それはあまりにも唐突で。

 あまりにも無情に。あまりにも容易に。

 突如現れた機械の輪に放り込まれた慧理那が通り抜ける瞬間、それは起きた。

 

 ──()()()()()()()()()()のだ。

 一日を終えて髪を(ほど)くように。あまりにも自然に解かれた慧理那の髪に……()()()()()()()()()()()

 

「な、ああ……!」

 

 これに明確に反応したのは慧理那に対し反応が強かった森海だ。

 

「シン……?」

「誇りを持っていた……」

 

 (うつむ)き語り出す森海。

 

「ちょ、先輩?」

()()()のツインテールは、私の誇りだったんだ……」

「あのー……昔語りはせめて半期終わってからで……」

 

 ほか三人の言葉を流し、ぽつりぽつりと語り始める森海。俯くその顔に表情は見えない。

 

「あるヒーローアニメのヒロインの摸倣(もほう)……それが最初の『束ね』だ」

「変な単語が生まれてる……!」

()()()はありがとう、と。周囲に見せびらかすほどに喜んでくれた」

 

 可愛いですねぇ。愛香もそうだったなぁ。ちょ!? という声も聞こえるが流す。

 

「我ながら不格好で、結った本人は不満だったというのに……その笑顔で。その笑顔だけで達成感が湧いた」

「その『ありがとう』が、何よりの宝物だったのだ」

 

 過去、少年こと箱盾森海は、いわゆる万能の天才だった。人ならぬその才覚に、諦観に満ちた容相(ようそう)故に(うと)まれた。唯一受け入れられたのは両親と、ある旧家だった。

 

「それが、これは何だ──!」

「その髪が解かれたというのに、()()()()()()()のは何故だ……!」

 

 今森海の内にあるのは目の前の喪失に対し得た後悔と絶望では無い。大切な思い出があったその髪に、何も感慨もなく『解いた』という事実のみ。その事に、自分自身への絶望を帯びた憤怒が襲う。

 まさに血気の表情……悔み、怒り、疑問を全て噛み潰さんとし、血が滲み出さんほどに食いしばる森海に、トゥアールは告げた。

 

「あれが、フェチ(好みや萌え)を食らい、糧とし……心を食い荒らし心を無に返す。それが、『エレメリアン』です」

 

 

<>

 

 

 誰かの『好き』が消えるのは、こんなにも()()()なのか。

 

 観束総二の、自身に感じた感情は、単純に恐れと怒り。

 好きの反対は嫌いではなく無関心、とはよく聞くが、ここまで明確なのか。

 

 ツインテールは生き甲斐だ。そう断言するほどに総二はツインテールが大好きだ。無自覚ながら性欲発散は幼馴染みのツインテールを愛でて行うぐらいには。

 

 自身が高貴なツインテールと称した新堂慧理那のツインテールは、無情に解かれた。

 普段なら悲しく思うだろう。もったいないと思うだろう。

 

 ──何も感じなかったのだ。

 

 これがそうなのか。これが、ツインテールが消えるということか。

 そんなこと、こんなこと……

 

「許せるもんかよ……!」

「そーじ……」

 

 これまでにないほど握った拳に力が入る。

 あまりに無慈悲。あまりに暴利。涙する先輩の感情にも共感できるからこそ、胸の内の熱が留まることを知らない。

 

「ツインテールでも何でも、心込めて束ねるんだ。それを奪うんだって言うんなら──」

 

──俺は、絶対に許さないッ! 

 

「……その心意気、確かに。総二様の腕に付けたそのリングは、エレメリアンに対する唯一無二の対抗手段。いわゆる変身ブレスレットです」

「……この後に及んでおもちゃ出すとかふざけてんのかフザケンナこんちきしょぉぉぉッ!」

「ウゴゲッ!? い、いや、真面目! 大真面目ですって! だからパロスペシャルはやめ肩の可動範囲が広くなるぅぅうううう!!」

「待て待て。信憑性は兎も角として、現状……前に進む手段はそれしかないのだろう」

「うぐ、うぐぐぐぐ……」

「ほらほら、ナチュラル外道鬼畜先輩の言う通りですよ! これに懲りたら──」

「おっと、トゥアール嬢。肩に虫がー」

「ほぎゃああ! 肩が、肩がカポンと外れた音したんですけど!? 肩パンどころじゃないですよこれぇ!?」

 

 肩肘張ってした決意がやや緩みかけたが問題は無いだろう。程よく緊張がほぐれたはずだ。

 

「くっ……変身方法としてエロゲ方式の一心同体(意味深)をお教えした上で総二様の童貞をぺろっといく作戦ががががが」

治療(アームロック)中にそうほざく余裕あるのなら大丈夫ね」

「顔色が大丈夫ではないが」

「愛香、それ以上いけない」

 

 肩をさすりながら説明を続けようとするトゥアール。その脇でやや満足げな幼馴染と先輩んことはこの際後回しでいいだろう。

 

「肩こりまで治ってる当たり性質悪いですよぉ……コホン。ともかく、変身方法はただ一つ。心の中で強く念じるのです。『変身したい』と!」

 

 総二は目を閉じ、立ち上がる。

 その際、森海から呼び止められる。

 

「──私は()()()の件で腹に据えている。飛び入り参加は許せ」

「……先輩なら、来そうな気がするなぁ」

 

 来る気満々の先輩と、心配そうにこちらを見つめてくる幼馴染に、総二はじゃあ、

「──行ってくる」

 

 言葉と共にサムズアップし、茂みを飛び出した。その姿を熱気と輝きが周囲を照らし、輝きの中へ消えた。

 輝きの中から現れて歩みを進めるのは、()()()()()()()の少女。

 

 

「「……ん?」」

 

 

 一方。回収したツインテールの光(?)を、トカゲ男は空に透かし吟味していた。

 

「ふむふむ。この目に狂いはなかったな。なかなかの属性力(エレメーラ)だ……さて、他のツインテールも──むっ!?」

「待ち、やがれぇぇぇぇッ!!」

 

 トカゲ男の前に、赤い閃光が着弾する。

 立ち上がる土煙の中から現れたのは、()()()

 

「もう、これ以上──」

 

 砂塵が燃える。不思議と熱を感じない炎の塵が舞い上がり、その場を赤く染め上げる。

 その中心に立つのは、鋼鉄の黒と、純真なる白を従え、烈火の如き装甲を身に纏う()()()戦士。

 

 

 ──これは、それは、まさしく灯火だったのだ。ここから始まる、『一対二束(ツインテール)の伝説』の種火だった。

 

 

「お前らの、好きにはさせねぇッ!」

 

 マフラーのようにたなびく一対の赤髪がうねる炎を思わせる。

 そんな髪の持ち主は、滾る情熱をその身に宿し、己が手に顕現させる『種火の戦士』……

 

「く、おお……なんという強大な幼気! それに先程の少女とは比べ物にならないほどのツインテールの属性力(エレメーラ)!! その名を聞かせよ、赤き戦士よ!」

 

 

 ……なんで女になってるかわからない。しかもなんで小っちゃくなってるんだ。

 視界端に映る赤いツインテールは見事なものだとか、股間にあるはずのものがなくなって重心が不安定だとか。

 今そんなことは()()()()()()! 

 

 

「俺は、俺は──!」

 

 

 名乗りあげる! 車の窓ガラスに映るこの姿を見て思い浮かんだその名を! 

 それは俺の大好きなものを守る名前だ! これは俺が大切だと思うものを守る名前だ! 

 

 

「双 閃 烈 火 ! テ イ ル レ ッ ド !」

 

 燃え上がる始まりの灯火が産声を上げる。

 

 

 ──これは、己が萌えと変態性を以て、割とマジ重だったりする脚本に立ち向かう物語に、日曜朝の真面目さと燃えを付け加えた、とある並行世界のお話し。

*1
まぁそこがいい、という剛の者もいるらしいが

*2
事実愛香はそういう目で見ていた




キャラデータ1:テイルレッド

テイルレッドは火の力を持つツインテールの戦士だぞ!
ツインテールへの愛情と炎の剣、ブレイザーブレイドでアルティメギルをやっつけるぞ!

必殺技のグランドブレイザーで敵を真っ二つだ!

テイルレッドはツインテールが大好きな少年、観束総二が変身した姿だ! ツインテールがものすごく大好き少年なんだ!


※名乗り上げ部分のイメージ:BFTのビルドバーニングガンダム登場シーン

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