かかってこい。
冴島さんが叫んだ時、ふたりが同時に動き出した。
素早さでいえば椛さんの方が速い。
その速さを活かし、椛さんは切りかかる。
だが・・・、
「甘いわ!切りかかろうとしてんのが見えとる!」
やはり、野生の塊みたいな男。
すんでのところで避ける。
そしてそのままの流れで回り込む。
「くっ!」
ガッ!
しかし相手も負けじと後ろ蹴りを入れる。
勝負はまだまだ平行線。
(あやや、どう見ても格上の相手に勝負を挑んでるじゃないですか椛は。これで負けたら尻尾モフモフの刑ですねぇ。・・・しかし、あのワインレッドの男、暫くしたら行動を起こすに違いないでしょう。出撃の準備を整えておきましょうか。)
・・・ん?冴島さんが俺に目で何かを指示してる・・・?
(先いけや。ここは俺に任しとき。)
クイクイッ
「・・・ええ。任せましたよ。冴島さん!」
「お、おい!秋山!冴島はどうするんだ!?」
ナズーリンちゃんが聞いてくる。
「任せろ、とあの人は言ってるよ。安心して、あの人強いから。俺達は先に行こう。ナズーリンちゃん、案内頼むよ!」
「あ、ああ。」
タタタタタタッ・・・
ー山の開けた場所ー
「・・・秋山さん。」
「・・・?早苗さん。どうしたんだ?」
「嫌な予感がします。・・・出来るだけ全力ダッシュで行ける所まで行けましょう。・・・彼女は『速い』です。」
速い・・・?椛さんの攻撃も速かったが・・・。その事を言ってる様子じゃないし・・・。
ッ!!?
ビュオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!
「なんだっ!?」
「追いつかれましたか・・・。」
「遅いですよぉ。そんな速さじゃ、幻想郷1高速の私に勝てっこありませんよ。あやや、名乗りが遅れましたね。私は射命丸文。侵入者を撤退、もしくは抹殺の為にあなた方の所に来ました。・・・あなたが噂の外来人ですね。」
「おや?俺は有名人なのかな?」
「ええ、まあ。ところでお連れのあの方は置いてきて大丈夫なんですか?」
「なぁに、冴島さんはあの程度の奴じゃ負けやしないよ。苦戦するかすらも怪しんじゃないかな?」
すると、射命丸は微笑む。
「あやや、やはりそうですか。椛程度では勝てやしませんよね。」
「それじゃ、手下の元に行かないのかい?」
「勿論行きますよ。・・・あの方はあなた方が抵抗するか、抹殺するかしてから始末しますから。」
「おいおい、俺は外来人だよ?周りの人らも殺しちゃまずいんじゃないの?」
射命丸の微笑みが黒い笑みに変わる。
「・・・私たちのテリトリーに入ったのはあなた方です。それで殺されても文句は言われる筋合いはありませんので。」
「それも、俺達はこの子の探し物を手伝ってるだけだ。」
「そ、そうだ。それで君たちの手下に話をしたんだが、聞く耳持たずでな・・・。」
少しびっくりした顔を射命丸はする。
「あやや、そういう事だったんですか。でしたら、この子の身柄をこちらに。私達はこの子とともに探し物を探す、あなた方は黙って帰る。これでいかがですか?悪くは無いと・・・」
「ほんとに?身柄を拘束して殺すんじゃないの?」
「えっ・・・?」
紗奈が怯える。
「ああ、紗奈ちゃん気にしないで。しっかり守ったげるから。」
「・・・。どういう事かしら?」
「天狗って仲間以外には意外と排他的らしいじゃない。そんな組織の者が見ず知らずの者に手を貸すこと自体変だと思ってね。一応、早苗さんという知り合いもいるみたいだけど、俺がいるせいで不安要素は取り除けてないみたいだしね。」
「勝手な想像ね。」
そうは言いつつ口調が変わっている。
「というか元より、最近『悪魔の妹』だっけ?それのせいで疑心暗鬼になってるみたいじゃん。黒幕からのスパイかもしれない。気にしすぎかもしんないけど仲間意識の強いこの組織じゃあ充分考えれる事だもんね。」
「・・・なかなか、鋭いじゃない。・・・しかし、だからどうしたというのでしょうか?私たちの目的は変わりません。あなた方の撤退もしくは抹殺。この指令を遂行するだけです。」
「・・・分かったよ。出来れば穏便に済ませたかったけど。ま、いいか。・・・来なよ。」
黙って臨戦態勢を取る。
すると早苗さんがさけんだ。
「ダメです!流石にあなたがどれだけ強くても人間が、天狗それも烏天狗に敵うわけが・・・!」
「そうですよ。人間のあなたが妖怪にかなうなど。これは余裕ではありません。警告、常識を教えただけです。・・・元よりあなたは外来人の身。彼女達に手を貸すこともないのでは?無関係なのでしょう?(ニヤッ」
すると秋山がやれやれと言った感じにため息をつく。
「排他的、とは言ったけどここまでとはね。人間はアンタら天狗と違って困ってる人に手を差し伸べる余裕があるからね。こんな人の話をろくに聞けないんじゃあねぇ。天狗天狗って昔は恐れられてたみたいだけど、ホントは大したことないんじゃない?」
「おい!さっきの早苗の言葉は冗談じゃない!敵うわけがない!」
ナズーリンちゃんも言う。
コケにされたのか射命丸が笑っているものの奥に怒りを含めている。
「おやおや、言ってくれるじゃないの人間。私からも言ったげる。やっても勝てない。簡単にわかるわ。」
「それは分かるさ。オーラが違うしね。それは真っ向勝負の話でしょ?しかも幻想郷の中だけの話。外来人相手にはどうかわからないよ?」
敢えて、バカにしたような口調で話す。
「・・・あまり調子に乗るなよ、弱小種族が。」
「さっきあんたの手下はその弱小種族にちぎっては投げちぎっては投げみたいに負けたんだよ?」
「・・・良いじゃない。その一連の発言。後になって後悔はなしよ。・・・跡形もなく殺してあげるわ!」
ー VS 射命丸 文 ー
「あなたにこの疾風が見切れるかしら?」
ゴオオオオオオ・・・
ヒュンッ!!!!!!!!!!
「ッ!!?」
スパッ
「ぐっ・・・、危ないねぇ。袖が切れたくらいでよかったよ。(・・・リアルカマイタチ・・・、風で斬れるなんて相当だぞ・・・。)」
ズシャアッ
「うわ木ぃ倒れたよ。」
こりゃ油断したらほんとに死ぬぞ・・・
「だから言ったじゃないですか・・・。『勝てっこない』って。」
「どうかな?さっきは偶然当たんなかったけど、風を可視化することくらいなら人間にも出来るんだよ?」
「何をバカな・・・。っ!!!」
「気付いたかい?君のさっきの1発で『砂埃』が起きてること。」
これで少しは風の動きが見やすくなる。
「・・・なにも、遠くから攻撃するだけが私の武器じゃありません。」
シュンッ
「っ!!?」
「遅い。」
ガッ!!
「ぬがっ!?」
もろに1発喰らっちまった。速さと重さがあいまった1発だ。早々何発も受けられない。
シュンッシュンッ!!!!!!!!!!
ゴオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
「加速はまだまだ止まりませんよ!!人間には見きれない速さ、いや、幻想郷では見切れる人はほぼいない速さで瞬殺してあげますよ!」
ピュンッ
「牽制のカマイタチ!甘いね!そんなものは・・・!」
「甘いですよ!」
「フェイクだと分かってるんだよ。」
ドガッ!!
そう言い放ち、カマイタチをジャンプして避け、その流れで飛び蹴りを射命丸に浴びせる。
「ッ・・・!なかなかやりますね。カマイタチをジャンプして避けるとは。風圧でそうそう飛べたもんじゃ無いんですけど。」
「この戦いはそう甘くないということさ。『俺にとっても、君にとっても』ね。」
「・・・その何でも達観している口調。気に入りませんね。相も変わらず。」
「褒め言葉どうも。」
・・・射命丸さんか。強さのベクトルは少し違うが、ああ言ったが勇儀さんよりは全然余裕だ。焦らなければ勝てる。
「ところで、貴方は気付かないんてますか?」
「何が。」
「先程からあなたが話している『私』は、」
ヒュンッ
消えたッ!?
「残像だということに。」
なっ!上っ!!?
ドゴォンッ!!!!!!!!!!
くっ!どぎつい一撃だっ!
なかなかの蹴りを喰らい、横に吹っ飛ぶ。
射命丸はホーミングで吹っ飛んだ俺を追い掛けてくる。
好都合だ。
「甘いよ!」
すぐさま体勢を立て直し、追撃しようとしている射命丸の手を掴み後ろに回す。
「んなっ!?」
いつもならここで逆サマソだが・・・。
素早さを重視のため、普通にタイキック的な蹴り。
ズゴォッ
「ぐうっ!!」
「まだまだ!」
その倒れかけた射命丸をスライディングからの蹴り上げで浮き上がらせ、エアストライクに入る。
そして、そのまま地面に叩きつけたッ!
ズドガァッ!!!!!!!!!!
「かっは・・・!?」
流石に耐えきれず、射命丸の体は叩きつけられたせいか再び宙に体が浮く。
「閃いたッ!!」
そこにフィニッシュのキックを入れ、思い切り近くの木にぶち当てた!
ークライマックスヒート「スターブレイカー」を習得しましたー
「流石に・・・、これは効きますね・・・。」
ドサッ・・・
メキメキメキ・・・バターンッ
お、おいおい、叩きつけた衝撃で木が折れたぞ。
「あ、文さん!大丈夫ですか!?」
「あ・・・、さ、早苗さん・・・。私の心配は無用です。」
「あー、ごめんね?やりすぎちゃったみたいで。」
「いえいえ・・・。それより、ここはもうお通り下さい・・・。負けた私はもう何も言いません。・・・しかしお気をつけください。・・・ここの山の神は『あなた達』を狙っています・・・。」
「・・・!?諏訪子様と・・・、神奈子様が・・・?」
「文さん・・・だっけ?一ついい?」
「ハイなんでしょう・・・?」
少しだけ気になることを問う。
重要じゃないが俺には重要だ。
「その山の神は勇儀さんより強いの?」
「・・・へっ?ゆ、勇儀・・・さん!?まーまままままままままさかあああああああああああ秋山さささささささんん・・・!?そそそそそそそそののの口振りりりりからららら察するととととと・・・!?」
「うん。あの星熊勇儀と戦ったよ。」
すると文の顔がわかりやすく青ざめる。
さっきまでこの子死にかけてたよな・・・?
(ややややややややややややってしまったあああああああああああ!!!!!!!!!!上からの指令とはいえ、元上司の友人を殺そうとしてしまったああああああああ!!!!!!!!!!よりにもよって鬼のぉおおおぉおおおおおおお!!!!!!!!!!こここここ、こんなとこ本人にみらららられでもももしたらららららあああああ・・・!!?)
「よう秋山!それに文、早苗も!ナズーリンもいるじゃないか!」
おや勇儀さん、なぜこんな所に?
「終わった・・・。」
「わかりやすく白く燃え尽きたな・・・。」
ナズーリンちゃんは呆れていた。
ー冴島sideー
「どうした?それで終わりかいな?」
「そんな訳ありません。これからですよ。」
とは言ったものの椛は内心かなり焦っている。
闘ううちに、というか最初から分かっていた。
この男に『敵いっこない』。勝てるわけがない。
(一先ず、文さんが来るまで耐えましょ・・・)
「ギブアップなら今やで。」
「(ッ!?)な、何を突然・・・!!」
「お前の上司はここに来えへんちゅう事や。今頃秋山に負けとる。」
「そんな馬鹿な!文さんが人間風情に・・・!?」
「その人間風情にも飛び抜けておかしい奴はおるっちゅう事や。・・・それに嬢ちゃん。・・・相手を見極める力は持った方がええ・・・。自分の身の為やし、・・・上司の為になる。」
「・・・・・・。」
負けた。力量でも、そして、それ以外の何か重要なもので負けた。
・・・そのなにか重要なものはわからない。
「・・・探さなければなりませんね・・・。」
「・・・っ!?おい!後ろから何か来とるぞ!」
「なっ!!?」
こいつ・・・!悪魔の・・・!?
ズッドオオオオオンッ
「キヒヒヒヒヒ・・・。コワレチャッタァ・・・?」
「おい。勝手に死んだことにすなや。」
「・・・はっ!?」
「危ない所やったのう。・・・そういや、まだ名乗ってへんかったな。・・・冴島大河や。」
「あ、ありがとうございます・・・。い、犬走椛です。じゃ、じゃなくて!冴島さん!あいつは・・・!」
「ああ、分かっとる。」
・・・アレが慧音の言うとった『悪魔の妹』やな。
・・・兄弟にも匹敵する殺気を振りまいとる。
否応なしに殺しにかかってきそうやないか・・・。
「・・・椛、やったか。」
「は、はい。(は、早く下ろしてほしいなぁ・・・。この担ぎ方ちょっと恥ずかしいんだけど・・・。)」
すっ
「え・・・、」
ザッザッザッ
「さ、冴島さん!?な、何を!?」
「・・・巻き込まれん所に隠れときや。変なとこおって巻き込まれても知らんで。」
それを言った時の、冴島さんの目はまるで、獲物を目にした虎のようだった。・・・これには従うしかない。そう出なきゃ自分が危ない。
「ええ・・・。(一先ず、文さん達のところへ!・・・恐らくあの別の外来人もいるはず!」
トトトトトトトッ
「ヒャハハハハハハハ!!!!!!!!!!マッテヨ!アソボウヨ!!」
すかさず悪魔の妹は椛を追おうとする。
ガシィッ
ズガァッ!!
その手をすかさず掴み、地面に叩きつける。
「待てや。お前の相手は俺や。」
「・・・ナニオマエ・・・?ワタシノジャマスルノ・・・?ジャマスルヤツ・・・!!!コロスコロスコロス!!コワスコワスコワス!!!!!ヒャーハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!ネエオジサン・・・!!!!!!!!!!『カンタンニコワレナイデヨ・・・?』」
ズアッ!!!!!!!!!!
ー VS 悪魔の妹 ー
to be continued…
冴島さん
一難去って
また一難
秋山