冴島さんは八雲紫の式神、『八雲藍』と共に妖怪の山の頂上の神社にいる、二柱の神に話をしに行きます。今回はその道中です。
1章 虎と狐と狼と鴉
「よし、ここが妖怪の山の麓だ。わかっているとは思うが、ここを超えれば敵陣の中だ。用心するように。」
冴島は藍からの忠告を受け、頷く。
そして、頂上へと続く山道を眺め、呟いた。
「・・・この山に来るまでに3、4ヶ月くらい歩いた気がするのう。」
「それは触れてやるな。放置してたのもあるが、本当にストーリーが思い浮かばなかったらしいからな。」
ーー本当に申し訳ありませんでした。
「ほな、ここで止まっててもしゃあないし、用心しながら入らせてもらおか。」
「ああ。」
冴島と藍が妖怪の山へと1歩を踏み出す。
まだ勘づかれてはいないのか、誰も現れない。
と、言うよりかは『警戒されている様子すらない』。
「油断させるためか?」
「・・・いや、違うな。本当に我々が来ることを問題としていないんだろう。それを証拠に、ほら、前を見てみろ。」
冴島は言われるがまま前を見ると、過去に戦った
「・・・一応俺ら、敵対される覚悟でおったんやけどなぁ。」
「そうだな・・・。肩透かしを受けた気分だ。」
2人が呆れているとはつゆ知らず、椛は冴島の元へ駆け寄ってくる。
「冴島さん!お久しぶりです!」
「おう、元気しとったか?」
「はい!っと藍さんもご無沙汰しております。」
「ああ。・・・今の幻想郷の状態で、我々は警戒しなくて良いのか?」
すると、椛は頭をかきながら、微笑んで、
「前に冴島さんにコテンパンにされたあの後、文さんが冴島さんの事を天魔様に話したようで。結果的に冴島さんが妖怪の山を救ってくれたことも。その事を聞いた天馬様が、」
『冴島殿とその周辺の人々に対しては警戒をしなくて良い』
「って言うことになったんです。」
「そんな有難いことになっとんかいな。」
「・・・!?だったら椛。直ぐに天魔殿に会うことは不可能か?今回のそのことは礼をしておかなくてはならない。」
「・・・構わないとは思いますが、私程度のおつきじゃあ通してはくれないかもですね。外からの来客では鴉天狗が付いていても弾かれることもありますから。」
「ふむ・・・そうか。仕方ない。また日を改めるか。」
『ああいえいえ。どちらかと言うと向かって行って欲しいです。』
空から聞こえたその声。冴島はその声に聞き覚えがあった。
「速いのう。探知するのも向かってくるのも。」
「ええ。一昨日ぶり?でしょうかね。冴島さん。清く正しい射命丸でございます。・・・あれ?3、4ヶ月ぶり?はたまたそれ以上?」
「やめたれ。」
「ええまあそれは置いておいてですね。冴島さん、藍さん。天魔様の所へとご案内致します。」
文の指示に従い、全員で歩き出す。
「そういや、さっきも出てきとったけど、天魔様って何もんなんや?」
冴島は椛に聞く。
「簡潔に言うと、天狗の陣営のトップといったところでしょうか。私は哨戒の隊長ですから何度か拝見したことがありますが、ほとんどの白狼天狗は姿を見たことがないですね。鴉天狗の方たちはよくお話をすることがあるみたいですけど・・・。」
「鴉天狗はまあ幹部みたいなポジションですからね。白狼天狗はいっぱい居ますが、上の階級に行けば行くほど反比例的に数は少なくなります。」
「っちゅーことは天魔様ゆうのは1人しかおらんねやな。」
「だからこそ陣容外の者と顔を合わせることがまず珍しいのだが・・・。なにか理由でもあるのか?」
「そうですねぇ。この前の感謝を述べたいのと、ある種の警告を出したいみたいなんです。私がこの前、秋山さんに言ったこと、覚えてます?」
文が冴島の方を見て、訪ねる。
冴島は上を向き、秋山から受けた忠告を思い出す。
「たしか、山の神が俺らを狙っとるっちゅう・・・。」
その言葉に藍も頷き、神妙な顔つきになる。
「そこなんだ。天狗の陣営は我々に対して警戒をしないと伝えられた・・・。ではなぜ、面識もない山の神達が、冴島たちを狙っているんだ?」
藍は文に聞く。
しかし、文は困った顔で首を横に振る。
「その理由はまだ答えられないという訳です。私も知ってはいますが、こんな道端で話すと聞き耳を立てられる可能性があるので。そして、天魔様が「自分の部屋で警告した方が聞き耳を立てられない可能性が高い」と仰ったので、こういう形になったんです。」
「・・・なるほど。そこまで重要な警告なのだろう。真摯に受け止めて、行動するとしよう。」
そんなことを話しているうちに、天狗の陣営に着く。
集落があり、その奥に天魔の部屋と見られる大きな屋敷が建っている。
「目の前のでっかい建物が天魔様の部屋か?」
「ええ。・・・天魔様!!客人の御二方を連れて参りました!!」
『・・・文か。いいぞ、入れ。お客人もどうぞ。』
中から声が聞こえる。
文が扉を開け、天狗のふたりは頭を下げ、入室する。
冴島と藍も頭を下げつつ入る。
(あれが、天魔様かいな・・・。パッと見の見た目はただの少女やけど、文や椛とはまたちごうた強者のオーラを出しとる・・・。俺が敵うかどうか怪しいレベルやな・・・。敵に回さん方がええな・・・。)
「・・・幻想郷には敵に回していいやつの方が少ないぞ。」
「・・・ま、せやろな。」
「・・・ようこそおいでくださいました、御二方。」
「ああ、天魔殿。・・・我々を敵視しないとの情報を彼女から頂きまして。その事のお礼を申し上げにまいりました。」
藍が頭を下げる。
それに対し、天魔も深く頭を下げた。
「いえ、御礼を申し上げさせて頂きたいのはこちら側です。本当にありがとうございました、冴島殿。そして、八雲殿。」
藍が顔を上げ、神妙な顔つきになる。
「・・・ところで天魔殿。我々に警告したいこととは・・・?」
「ええ・・・。御二方は、『この山の神が、あなたがたを狙っている』ということはご存知ですね?」
「ああ。この山のてっぺんにある神社の神が俺らを狙っとるっちゅう話や。」
「・・・はい、確かにそのことです。山の神は『貴方達が異変の原因』だとして、狙っております。それも、命を取りに。」
天魔から告げられた事実。
山の神は、冴島たちの命を狙っていた。
俺らが異変の原因やと思っとんのか・・・。あん時、早苗がおったけど、誤解は解けへんかったっちゅうことか・・・。
「そんとき、その神社の巫女もおったんやけど、そいつはどうなってるんや?」
「東風谷殿の事ですか・・・?最近、彼女は見てませんが・・・。ここら辺に降りてくるのもここ三日間ではないですね。」
天魔が首をかしげつつ話す。
早苗が行方不明やと?・・・もっと雲行きが怪しくなってきたのう。
なんか、面倒な陰謀がありそうやな・・・。
「・・・天馬様。ひとつよろしいでしょうか?」
「文、どうかしたか?」
「最近、ここらで『霊媒系の術』が見受けられたそうです。霊を取り付かせて、とりつかせた相手を思いのままに操るという魔術だそうです。・・・が、妖怪の山にはそのような技を使う者はおりません。」
「・・・なるほど。洩矢様は『祟り』だから霊媒とはまた違う・・・。しかし、その二柱のどちらかがそれを使ったというのならば・・・。まさか・・・ッ!」
天魔が文から聞いた情報を元に、有りうるひとつの結論を出した。
「御二方。今から神社にいる二柱の神に会うのであれば、戦闘は必死だと思っておいてください。・・・いま、二柱は『正気である可能性が低い』でしょう。」
「・・・!?」
「なっ!?神であるあの2人が!?」
「・・・ええ。神をも操ってしまう。そんな規模の異変であるかもしれない。これは予測の域を出ませんが、可能性は大きいでしょう。」
「ああ。分かったで。」
「・・・ご忠告感謝致します、天魔殿。私たちは、そろそろ向かいたいと思います。」
「・・・ええ。お気をつけて・・・。」
冴島と藍は天魔からの警告に感謝し、頭を下げ、天魔の部屋を出る
「・・・何も無ければいいが・・・。あの二人ならば大丈夫だろう。椛、文、二人を連れてきてくれて、ご苦労だった。」
「いえ!これも当然の務めです!!」
「いえいえ、これも仕事のひとつですから。」
「ああ。・・・それで、追加で悪いのだが・・・、文。椛。2人であの二人に同行してくれ。特に椛、お前がレーダーになってやってくれ。『今の妖怪の山は不安定』だ。・・・2人におそいかかる敵を探知してやってくれ。」
「・・・分かりました!」
「承知しました。・・・椛!行きますよ!!!」
「はいっ!文さん!!」
2人が、冴島と藍のあとを追うように出発する。
天魔はそれを、親のような目線で見つめていた。
「・・・・・・・・・やれやれ、・・・耐えれたか・・・。」
天魔はさっきまでの可憐な声ではなく、掠れた声で、薄く喋る。そして、力なく前に倒れた。
「・・・が・・・、い、いつから、気付いていた・・・?」
天魔の背後から、突然、謎の女性が現れる。紫のスキマではなく、どす黒いオーラをまとった女が、1人、そこに立っていた。
『・・・もちろん、最初からに決まっているだろう。』
「・・・彼女たちに勘づかれなくて助かった・・・。だが・・・、お前はいつから・・・『霊まで操れるように・・・ッ!?』」
『・・・何、私は神だよ?・・・できないことの方が少ないもんさ。』
「・・・背後にいたことに気づかなかったなど、天魔失格かもな・・・ッ。がふっ・・・。」
『・・・安心しな。命までは取らないさ。・・・しばらく、寝とくんだね。』
to be continued…
秋山の情報通り、山の神は冴島たちを狙っていた。
しかも、なんと『命まで狙っていた』のだ。
勘づいた天魔は冴島たちにいち早く伝えたが、それもすでに2柱に見抜かれていた。天魔が瀕死の今、正気を持たぬ二柱に話をつけるべく、冴島たちは、山の頂上へと向かうのだった・・・。
ー次回予告ー
2章 「霊媒系の魔術」