インフィニット・ストラトス―黒き叡智―   作:竜華零

28 / 79
第25話:「そのクラス、弾丸:前編」

Side 篠ノ之 箒

 

『キャノンボール・ファスト』までいよいよ数日と迫ったある日、私のクラスは高速機動演習のできる第6アリーナで実戦形式での講義を受けていた。

例年、1年生は参加しないイベントなのだが・・・今年は専用機持ち人数が多いため、1年生も参加してのイベントとなったらしい。

 

 

イベントはISによる高速レース、専用機組と訓練機組に種目が別れるが、基本的には内容は同じだ。

ただ、例によって妨害もアリなのでバトルもあり得る。

1年生の専用機持ちは10人、なかなか壮絶なレースになりそうだった。

 

 

「今年は異例の1年参加ではあるが・・・やる以上は結果を出すように。実戦形式のレースは、お前達にとっても良い経験になるだろうからな」

 

 

千冬さんは相変わらず厳しいが、気のせいか私や楓の方を見て言っていたような気がする。

まぁ、気のせいだろうが・・・。

 

 

「だからさー・・・箒姉さん? 聞いてる?」

「え・・・あ、ああ、すまない。ぼうっとしていた」

「もー・・・」

 

 

一夏と山田先生が高速機動の実演をしている間に、私は楓から『紅椿(あかつばき)』のシステム調整を受けていた。

中央タワーから高速で白と青の機体が飛翔する様子は、『紅椿(あかつばき)』のモニターで良く見える。

 

 

「だからさ、『紅椿(あかつばき)』は単体でもう高速機動ができるから、スラスターとか増設せずにこのままでイケるよって話」

「ああ・・・臨海学校の時のように展開装甲を設定すれば良いからな。ただ、それだとレースの途中でエネルギーが切れてしまうんだが・・・」

「うん、だからそこは・・・箒姉さんがマニュアル制御でエネルギー残量を計算しながら、要所要所で必要な展開装甲を操作するしか無いよね」

「やはり、そうなるか・・・」

 

 

『紅椿(あかつばき)』の展開装甲は多目的動力(マルチプル・エネルギー)が採用されている、だからこその万能性だが・・・燃費が悪過ぎる。

まったく、これだからあの人の作る機体は・・・。

 

 

「まぁ、束お姉ちゃんは『絢爛舞踏(けんらんぶとう)』を一種の永久機関として考えてたんだと思う」

「使えないのでは意味が無い・・・」

「そこは・・・箒姉さんの努力次第じゃないかなぁ」

 

 

困ったように首を傾げる楓を軽く睨むと、できもしない口笛を吹きながらディスプレイに目を戻した。

確かに『絢爛舞踏(けんらんぶとう)』が使えれば問題は解決だが、どうしてか使えない。

臨海学校の時に使えたのは、やはり楓の補助があったからか・・・?

 

 

「まぁ、レースの時には私はナノマシン散布すると思うから、何とかなるかもねー」

「いや、それはダメだろう。レースに出る以上は、楓も勝利を目指すべきだ」

「ふーん? まぁ、箒姉さんがそう言うなら・・・・・・おや?」

 

 

ふと楓が視線を動かしたので、私もそれを追いかける。

すると・・・。

 

 

「うわああああぁぁぁぁ~~~・・・!!」

 

 

・・・山田先生に撃墜されたらしい一夏が、派手な音を立ててコースアウト、地表に墜ちていた。

どうやら、一夏はまた負けたらしい。

 

 

「あー・・・もう、一夏さんってば、また・・・。ごめん箒姉さん、ちょっと行ってくる」

「ああ、わかった。私はエネルギー分配についてもう少し考えを詰めることにしよう」

「うん!」

 

 

一夏が・・・と言うより『白式(びゃくしき)』が心配になったのか、楓が『黒叡(こくえい)』を展開して一夏の撃墜ポイントへ向かう。

本来、『キャノンボール・ファスト』は整備課が出来る2年生からのレースだが、今年は1年も参加する。

私や一夏のように整備課のチームがついていない専用機持ちは、整備チームを持っている2年生に比べて不利とも言える。

 

 

だから、楓は私や一夏、それとシャルロットの機体調整でとても忙しそうだ。

4組の友人の機体調整も手伝っているらしいし・・・やれやれ。

少しは自分のことも、考えてくれると良いんだが・・・。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

「お、おおおぉおお織斑くんっ、大丈夫ですか!?」

「もふもがもーふ」

 

 

地面に突き刺さったままの一夏さんの所に行くと、増設ブースター装備の『リヴァイヴ』を装着した山田先生が物凄くアワアワしてた。

相も変わらず胸が大きく開いたISスーツだなぁ・・・と羨ま・・・思いつつ、傍に寄る。

 

 

「うわぁ・・・山田先生、ロケット燃料使ってる増設ブースターなんて古風ですね!」

「って、そこかよっ!!」

 

 

バコンッ、と地面から身体を引き抜いて、一夏さんがツッコミを入れて来る。

いや、だって一夏さんも通信越しに「大丈夫でーす」って言ってたじゃん。

 

 

「いや、そうだけど・・・」

「それより、何? 何でエネルギーをスラスターに全振りしてるの? そりゃ妨害されたら一発で負けるよー」

「うぐっ・・・これでも考え抜いた結果なんだよ!」

 

 

考え抜いて極端に走るって、それはそれで才能だよね。

一夏さんらしいと言えば、それまでだけど。

 

 

「ま、まぁまぁ。織斑くん、なかなかでしたよ?」

「ほ、本当ですか?」

「嘘です、山田先生はにこやかにそう言った」

「へぅ!?」

「モノローグ調で山田先生を混乱させんな、楓!」

 

 

なはははー。

まぁ、じゃあ『白式(びゃくしき)』のエネルギー分配の調整でもしようかな?

流石に全振りは効率悪いから、各部のスラスターに小型のジェネレーターを増設して・・・いや、それよりも『雪片(ゆきひら)』の展開装甲を推進に使うとか面白そうだよね・・・。

 

 

「楓さん? 楓さんもレースに出るんですから、ちゃんと練習しないとダメですよ?」

「はい? いやだなぁ、山田先生。嫌です」

「笑顔で拒否ですか・・・成績にも影響するんですから、ちゃんとしないとダメですよ」

「成績・・・赤点回避できれば、OK!」

「教師の前でそれ言っちゃダメだろ・・・」

 

 

一夏さん、ちょっと黙ってて。

 

 

「うーん、進路とかにも響きますし・・・」

 

 

進路、の所を少し強調して、山田先生は言う。

進路、進路・・・進路?

まだ1年生だもん、別に今から考えなくても良いじゃん。

 

 

「だから別に、『キャノンボール・ファスト』だって適当に・・・」

「ほう、随分と余裕があるのだな、篠ノ之妹」

「・・・!」

 

 

わ、私をそんな独特な呼称で呼ぶのは、1人しかいない。

と言うか私はISを装着してるのに、どうして後ろから首を掴まれてるんだろう。

どうして山田先生の顔が引きつってて、一夏さんが可哀想なモノを見る目で私を見ているんだろう。

 

 

「何、遠慮するな。私も教師だ、たまには生徒につきっきりと言うのも良いだろう」

「え、そ、そんなっ、謹んで遠慮したいって言うかその・・・!」

 

 

ちょ、一夏さん、その白いハンカチはどこから出したの!?

あ、待って待って千冬姉様待って、そんなことしたら私の腕が凄い事に・・・!

に・・・にゃああああああああああああああっっ!?

 

 

 

 

 

Side シャルロット・D・コルデ

 

アリーナの片隅から悲鳴が響き渡るのを聞きながら、僕は黙々と『リヴァイヴ』の調整をしてた。

楓には悪いけど、織斑先生のすることに口は出せないし。

それに、楓にとっても意識を変える良いきっかけになるかもしれないし・・・って。

 

 

「ラウラ? どうしてそんなに羨ましそうな顔をしているの?」

「な・・・馬鹿者ッ、そんな顔などしていない!」

「そ、そう? てっきり織斑先生にしごかれてる楓が羨ま・・・わ、わかったから、ナイフを抜こうとするのはやめてくれる?」

「ふん、わかれば良いんだ」

 

 

ブーツに仕込んでいたらしいナイフを戻しながら、ラウラが鼻を鳴らす。

ラウラとも同室になってそれなりの時間が経ったから、引き所は読めるようにはなった。

と言うか、そうじゃないと僕の身が危ないし。

 

 

「それよりも、さっさと量子変換(インストール)作業を終わらせるぞ」

「ああ、うん」

 

 

僕とラウラは『キャノンボール・ファスト』の高速レースには、増設スラスターで対応することにしてる。

通常でほぼ高機動戦仕様の第4世代型と違って、僕達は専用のスラスターが無いと高速機動はできない。

鈴とセシリアは、高速機動用の換装装備(パッケージ)があるからまだ良いだろうけど。

 

 

ISスーツのままヘッドギアを部分展開、スラスターを量子変換(インストール)する。

僕のはヘアバンドみたいなヘッドギアだけど、ラウラのはウサミミみたいな形で少し可愛い。

まぁ、お互いにこのあたりの作業は滞り無く・・・。

 

 

「ただいま戻りましたわ」

「あ、お帰り、セシリア」

 

 

ちょうどその時、第6アリーナを一周してきたらしいセシリアが戻ってくる。

セシリアの換装装備(パッケージ)は本来強襲用だから、高速機動戦とはまた運用方法が微妙に違う。

それでもタイムは上々だったのか、セシリアはどこか機嫌が良さそうだった。

ここの所あまり元気が無かったみたいだけど、これなら大丈夫かな・・・。

 

 

「こらっ、逃げるんじゃない!!」

「いやっ、いやああっ、いやああああああああああっ!!」

「人聞きの悪い悲鳴を上げるんじゃ無い! どうしてその逃げ足が練習で出せないんだ!?」

 

 

・・・楓、そんなに嫌なんだね、練習・・・。

 

 

「・・・あ、あれは何ですの?」

「気にするな、ただの馬鹿だ。まったく、教官の訓練を逃げ出すなど・・・」

「は、はぁ・・・」

 

 

当惑したセシリアに対して、ラウラはやっぱり羨ましそうだった。

ラウラって、本当に織斑先生が好きなんだね・・・。

 

 

 

 

 

Side 更識 楯無

 

「あはは、しごかれてるしごかれてるー」

「お嬢様、人に聞かれますよ」

「ごめんごめん。でもここには私と貴女の2人しかいないじゃない、虚ちゃん」

 

 

第6アリーナの中継室、機材に手を置きながらアリーナの出来事を見守る。

ここからはカメラを通じてアリーナ全体のことが見通せるから、一夏くんや箒ちゃん、他の専用機持ちの娘達の練習の様子も良くわかる。

 

 

候補生の娘達はやっぱり、基礎はできてるし応用力もある。

流石は国家代表の卵ね、安心して見ていられるわ。

でも、一夏くんと箒ちゃんはやっぱり動きに無駄が多いわね。

燃費が悪いなら悪いで、効率的に運用する方法を考えないと・・・まぁ、私が教えるけど。

問題は・・・。

 

 

「うーん、楓ちゃんは壊滅的ね」

 

 

第6アリーナの端の方を細々と駆けている漆黒のISを見て、私は首を傾げる。

スペック上は他の機体と遜色ないはずなんだけど、操縦者の技量が足りない。

ずっと整備ばかりしていて基本的な操縦技術は学ばなかったらしいから、仕方が無いのかもしれないけど。

 

 

・・・篠ノ之博士は、何を考えているのかしらね?

整備の人間として楓ちゃんを育てるのなら、専用機を与えるのは腑に落ちない。

単純に、妹を贔屓したかったって言うのもあるのかもしれないけど・・・。

 

 

「まぁ、楓ちゃんは織斑先生に任せるしかないか・・・」

 

 

私の言うことは聞いてくれないし、授業として織斑先生がしごく分には従ってくれてるみたいだし。

織斑先生が篠ノ之博士の親友って言うのも、効いているのかもしれない。

その意味では、織斑先生に頼んだ私の目は正しかったってわけね。

 

 

「・・・キャノンボール・ファストを1年生も参加できるようにしたのは、そのためですか?」

「うん? まぁ、実戦形式の訓練は積んで貰いたいしね」

 

 

でも私だけの意思じゃ無く、各国からの圧力があったのも確か。

要するに、各国は篠ノ之博士の第4世代機が見たいのよね。

それと、『黒叡(こくえい)』を。

他国のISを封殺できる可能性を持った機体と、その操縦者を。

 

 

「・・・それに・・・」

 

 

更識の家から入った情報では、あの連中もまた来る可能性もある。

誘いこむのも一つの手だけれど、これ以上の乱入・侵入を許せば学園の信用問題に関わるわね。

本当、今年は厄年だわね・・・私が生徒会長の時に限って。

・・・まぁ、半分くらい狙ってやってるんだけどね。

 

 

「おいたは、程ほどに」

「はぁーい」

 

 

虚ちゃんに笑顔を向けると、虚ちゃんは私にしか見せない微笑みで返してくれた。

 

 

「あ、そうそう。見て見てコレ、薫子から貰った簪ちゃんの写真なんだけどー」

「お嬢様、ほどほどになさらないとまた泣かれますよ」

「やん、虚ちゃんだって本音ちゃんの写真持ち歩いてる癖にー」

 

 

後生大事に、妹の写真を生徒手帳に挟んでる虚ちゃん。

うーん・・・可愛い♪

 

 

 

 

 

Side 織斑 千冬

 

まったく、篠ノ之妹は一夏よりも手がかかる・・・。

どうにか授業を終えて、職員室へ戻りながら溜息を吐く。

教室では山田先生がホームルームをしている頃だろう、本当に苦労をかける。

 

 

本当は私もいなければならないのだが、ここのところ忙しい。

私は私で、いろいろとやることが・・・。

 

 

「戦(ヤ)らないか、チフユ?」

 

 

・・・廊下の窓側に寄りかかるようにして腕を組んで立っていたのは、豪州人生徒の管理官。

サムズアップしてウインクをしているアイシャを見て、私はドッ・・・と疲れが増すのを感じた。

不揃いの緑色の髪に、空の色の鮮やかな瞳。

 

 

「やらないと何度言ったらわかるんだ、アイシャ?」

「えぇ―――、何でだよ、私はお前への負け星を取り返しに来たんだぞ!?」

「代表の仕事で来日したんだろうが!」

 

 

くそ、これだから私の現役時代の友人には会いたくないんだ。

どいつもこいつも勝負だ勝負だと・・・私は引退したんだぞ。

私と会話したいがために日本語を覚えた奴もいるくらいだ、このアイシャとかな。

 

 

ちなみにアイシャと私は第2回モンド・グロッソの一回戦で当たった・・・結果はまぁ、察して貰えると思う。

それ以来、どうも懐かれたらしくてな・・・でも会う度に挑戦されるのは困る。

 

 

「いやいや待てって、今度の相棒(あいえす)はマジで凄いんだぜ?」

「だから何だ・・・」

「・・・戦(ヤ)りたくなるだろ?」

「人を戦闘狂みたいに言うな」

「え、違うのか?」

「違う!」

 

 

私はむしろ、平和主義者だ。

・・・何だ、その信じられないモノを見るような目は。

私は弟と不自由なく生活できれば、それで満足なんだよ。

まぁ、そこに篠ノ之姉妹を入れてやっても良いが・・・そこは、一夏の甲斐性次第だろう。

束は、死んでも家には入れない。

 

 

「だが、お前はお断りだ」

「おいおいおい、何だよ、傷付くなぁ」

「うるさい、仕事しろ社会人」

「日本人は働き過ぎだろ」

 

 

それは昔の話だ。

 

 

「・・・大体」

 

 

私にはもう、機体が無い。

厳密に言えば、使える状態に無い。

だが身体は、今でもあの感覚を覚えている。

かつて私の身体を守って、共に世界と戦った機体。

 

 

・・・『暮桜(くれざくら)』。

私の2番目の機体にして、私を初代『ブリュンヒルデ』の座に導いた日本製第一世代機。

我が、友。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

あぁ・・・癒される・・・。

大浴場の湯船の中に顎まで浸かって、私は「ほぅっ・・・」と息を吐く。

千冬姉様のしごきで身体の節々が痛いけど、お湯に浸かればそれも癒されるって物だよ・・・。

 

 

「くぅ~・・・傷に染み渡りますなぁ~」

「楓ちん、お婆ちゃんみたいー」

「しずめー」

「きゃ~」

 

 

クラスメートで同室でもはや心の友と書いて親友な本音ちゃんと、湯船の端っこでジャブジャブする。

すると大きな波が立って、横で静かに湯に浸かっていたラウラさんが迷惑そうに眉を潜める。

 

 

「おい、よせ」

「あ、ごめん」

「ふん・・・」

 

 

ラウラさんは臨海学校の時に着てた黒水着を着てる・・・何でお風呂で水着? って最初は思ったけど、ヨーロッパの公衆浴場では水着着用OKなんだって。

日本だとそんなことも無いけど・・・文化の差ってお風呂でも出るんだね。

 

 

「それにしても、本当にIS学園って人種のるつぼだよね~」

「ん~、そうだよね」

 

 

実際、隣にはドイツ人のラウラさんがいるわけだし。

それに、ちょっと視線を動かせば・・・。

 

 

「ちょ・・・鈴さん! 公衆の浴場で泳がないでくださいまし!」

「良いじゃない、固いわねぇ・・・と言うか水着なんて着ちゃって、セシリアのカッコつけー」

「なっ・・・!?」

 

 

英国人のセシリアさんと中国人の鈴さんもいるし、他にも金髪とか赤髪とか茶髪とか普通にいるし。

 

 

「うんうん、小盛り並盛り大盛り・・・いろいろだね~」

「あえて聞くけど、それは身長の話だよね? ね?」

「え~、そりゃあむがふぉっ!?」

 

 

背後からの一撃で湯船に沈む本音ちゃん、そこに立っていたのは・・・憤怒の感情に染まった鈴さん。

放った体勢のまま固定された手刀からは、気のせいか煙が出てる。

 

 

「胸が小さくて悪かったわね!!」

「言いきった!? 鈴さん凄いよ、現実と向き合ったよ!?」

「アンタも似たようなもんでしょうが!」

 

 

ぐっさ・・・っ!?

仲間からのまさかのボディーブローに、私は胸を押さえる。

・・・そして実際、そこはほぼ平らなわけで。

 

 

一部の身体的特徴で女性を区別する奴は、死ねば良いと思うよ。

 

 

・・・はっ、今誰かが私に乗り移ったような。

あ、とりあえずうつ伏せにお湯に沈んでる本音ちゃんを引っ繰り返さないと。

 

 

「まったく・・・またその話題か。だから共同浴場は苦手なのだ・・・」

 

 

とか何とか言いつつ湯船に入って来たのは、髪と身体を洗い終わった箒姉さんだった。

タオルを身体に巻いて隠しているけど、それでもその大きな大きな・・・。

・・・箒姉さん、隠し切れて無いよ。

 

 

「大体、胸など大きくても良いことなんて何も無いんだぞ。肩は凝るし服や下着のサイズは無いし、走ると痛いし寝る時は仰向けだと辛いし夏は蒸れるし、外に出れば視線が痛いし電車に乗れば・・・」

「もうやめたげて~、楓ちん達のライフはもうゼロだよ~」

「何・・・おい、楓? どうして鈴と2人でそんな隅で・・・戻って来い、おい!」

 

 

鈴さんと2人、鼻まで沈んでブクブクしてる私。

・・・ラウラさんも、こっち来て良いんだよ?

 

 

「行かん、馬鹿が」

 

 

そうですか、少佐殿。

少佐殿の精神力は凄いですね・・・。

 

 

「ま・・・まぁ、とにかくだ!」

 

 

何かを取り繕うように、箒姉さんが大きな声を出した。

なぁに、箒姉さん・・・ぶくぶく、ぶくぶく。

 

 

「いよいよ『キャノンボール・ファスト』だ、皆、頑張ろう」

「・・・箒さん、誰も話を聞いていないようですわよ」

「何? あ、おい・・・ちょっ、楓に鈴! 息をしろ息を! 沈みかけてるぞ!?」

 

 

ぶくぶく、ぶくぶく・・・と沈みながら。

私は片手を上げて、箒姉さんに返事をした。

面倒だけど・・・了解(ログ)、箒姉さんがそう望むなら。

 

 

 

 

・・・そして、瞬く間に1週間が過ぎる。

いつか誰かが言ってたよね、時間の良い所は過ぎて行くことだって。

そして悪い所は・・・必ず、やってくること。

幸運なことも、そうでないことも・・・全て。

 

 

―――――平等に。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 箒

 

時間は瞬く間に過ぎて、『キャノンボール・ファスト』当日。

学校の外のアリーナと言うのは、初めてだな。

とは言え、雰囲気は学校のクラス対抗戦や個人トーナメントと同じだ。

 

 

つまりアリーナには人が詰めかけていて・・・歓声が、ピット・ルームにまで響いて来る。

そう言えば、蘭は来ているだろうか。

まぁ、チケットは渡してあるし、大丈夫だろう。

 

 

「はぁ・・・ふぅ」

 

 

浅く深呼吸をして、ISスーツに覆われた胸に手を置く。

試合前の緊張感が、そこ確かに存在している。

剣道の全国大会に出た時と同じ・・・いや、それ以上の緊張感が私を包んでいる。

何せ、専用機持ちとして大会に出るのはこれが初めてなのだから・・・。

 

 

「そういや、結局、鈴の換装装備(パッケージ)ってどんなのなんだ?」

「ん・・・まぁ、本番までのお楽しみよ。速度ではアンタにも負けないんだから」

「そっかー、楽しみだな!」

 

 

すぐ側では、一夏が鈴の換装装備(パッケージ)を気にしている。

少しは私のことも気にしてほしいと思いつつ、少し何かが引っかかった。

何と言うか・・・。

 

 

「鈴? どうした、元気が無いようだが・・・」

「ん? そんなこと無いわよ、いつも通り絶好調。今日は私が勝つんだから」

「そうか・・・?」

 

 

どことなく、鈴の表情が暗かったような気がしたのだが・・・。

周囲を見渡してみると鈴だけでなく、セシリアも口を開かず、しかも私達と視線を合わそうとしない。

・・・まぁ、試合前だから集中しているのかもしれないが。

ラウラが輪の中から外れているのはいつものことだから、気にすることも無いだろうが。

それでもやはり、何となく空気がピリピリしている気がする。

 

 

「皆、頑張ろうね!」

「ああ、そうだなシャルロット」

 

 

シャルロットだけはいつも通り、人当たりの良い笑顔で皆の健闘を祈ってくれている。

シャルロットの笑顔を見ると、不思議と私の心も和やかになる。

それはどうやら、鈴やセシリアも同じだったようで・・・。

 

 

「当然、全力で行くわよ」

「もちろん、やるからには勝利を目指しますわ」

「皆、やる気だなぁ・・・俺達も負けていられないな、箒!」

「そうだな・・・一夏」

 

 

やはり、気のせいだったか・・・?

そう思って、私はほっと胸を撫で下ろす。

勝手とは思うが、できればこのメンバーで嫌な雰囲気になりたくなかった。

何せ、『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』と共に戦った仲なのだから・・・。

 

 

「つまんねーな、コノヤロウ」

 

 

その時、あまり聞き慣れない声が響いた。

そこにいたのは、私達以外の1年生の専用機持ちで・・・。

 

 

「き、キミは・・・?」

「3組、エリス・シール」

「あ、ああ、この間の・・・」

 

 

一夏の言葉に淡々とした声を返す、3組の専用機持ち・・・エリス・シール。

130センチ程の小さな身長に、どこか嗜虐的な色を浮かべている青灰色の瞳の少女。

3組の転校生で・・・学園祭の時に会った・・・。

福音の、母国の・・・。

 

 

「福音を奏でたお前達に勝てるとは思わないけれど、精一杯頑張るよ」

「あ、ああ・・・福音? それって『銀の(シルバリオ)・・・」

「一夏!!」

「ごっ・・・あ、ああっ、そうだな、頑張ろうな!」

 

 

あ、危なかった・・・鈴が機転を聞かせて一夏の足を蹴らなければ、一夏は機密を口にしていただろう。

相手はアメリカの代表候補生、知っている可能性もあるが・・・だが、私達にも守秘義務がある。

そんな私達を嫌な色合いの瞳で見つめながら、エリスと言う候補生はニッコリと微笑んだ。

 

 

「よろしく、『おにぃちゃん』達?」

 

 

子供のような笑顔のはずなのに、どうしてか胸がザワめいた。

そう、あえて言うのなら・・・嫌な胸騒ぎ、と言うのだろうか。

 

 

 

 

 

Side 更識 簪

 

何度も深呼吸を繰り返して、自分に「落ち着け」と言い聞かせる。

だ、大丈夫・・・大丈夫、ちゃんと、出来る。

カタカタと震える身体が、凄く、嫌だった。

 

 

姉さんだったら、平然として・・・参加、してるはずなのに。

それなのに、私は・・・は、初めて、IS学園のイベントに参加するからって、震えが止まらない。

怖くて、仕方が無い。

 

 

「は、ぁ・・・」

 

 

ISスーツが、嫌にキツい気がする。

サイズはぴったりのはずなのに・・・凄く、苦しい。

でも、落ち着かないと・・・。

 

 

失敗したら、どうしよう。

 

 

ちゃんとできなかったら、どうしよう。

皆に失望されたら、どうしよう。

笑われたら、やっぱり私は、『打鉄弐式(うちがねにしき)』はダメだって、言われたら・・・。

ど、どうしよう・・・もし、もし、私のせいで。

 

 

楓や本音までバカにされたら、どうしよう。

 

 

も、もし・・・楓や本音に、迷惑をかけたら・・・もし。

ふ、2人に嫌われたら、どうしよ、ぅ・・・。

頭の中がグルグルして、気分が悪くなってくる。

どうしよう、どうし、よ・・・。

 

 

「簪ちゃん?」

「・・・」

「かーんーざーしーちゃん?」

 

 

ムニ。

・・・気が付いたら、楓にほっぺを引っ張られてた。

何、してるの・・・?

 

 

「いや、簪ちゃんの顔が真っ青だったから・・・そして、ほっぺが予想外に柔らかかったから」

「そう・・・」

「簪ちゃん、大丈夫?」

 

 

それは最初に聞くべきことだと思う、楓。

それに、大丈夫か聞くなら離して・・・。

 

 

「うーん・・・」

「・・・何?」

「・・・てやっ」

 

 

ぎゅむっ。

何の脈絡も無く、楓が私に抱き付いて来た。

ISスーツ越しに、楓の身体の熱が伝わってくる。

 

 

「・・・っ、な、なな・・・?」

「どう?」

「ど、どうっ・・・て?」

「んーとね、私ね、お姉ちゃんとIS弄る時は凄く緊張するんだよね」

 

 

・・・?

いきなり、何の話・・・。

 

 

「だって束お姉ちゃん、凄いから。私なんていらないんじゃないかって思うと苦しくて・・・緊張しちゃうんだよね。でもそういう時は、束お姉ちゃんがこうして抱き締めてくれてね、それが凄く落ち着くんだー」

「そ、そうなんだ・・・」

「うん、だから簪ちゃんも」

 

 

簪ちゃんも、これで大丈夫。

そう言って間近で笑う楓の顔に、私は見惚れる。

ぴったりとくっついた楓の身体は、ともて温かくて柔らかくて・・・凄く。

凄く、ドキドキしたけど・・・でも、凄く、大丈夫に、なって。

 

 

「・・・ありがとう」

「うん」

 

 

にこっ、と笑う楓が、眩しい。

私には無い物を持ってる楓が・・・とても、眩しい。

 

 

「ほらそこ! 試合前の注意事項の確認をするぞ!」

「わたっ・・・は、はーいっ!」

 

 

織斑先生がピットに入ってきて、楓は慌てて私から離れる。

それが少し寂しい、そう思ってしまう自分が意外だった。

楓・・・私の、大切なお友達。

だから、楓にはずっと、笑ってて・・・・・・。

 

 

「更識」

 

 

そっ・・・と、私のすぐ後ろで誰かが囁く。

それは日本の代表候補生・・・白のISスーツに身を包んだ立道の声。

 

 

「わかっていますね」

 

 

それだけ言って、立道は私から離れる。

取り残された私は、温かくなった心がまた急速に冷めて行くのを感じた。

・・・わかって、いる。

 

 

それは、日本のIS特務機関からの秘匿命令。

たぶん日本だけじゃなく・・・他の国の候補生にも、同じような命令が届いてる。

だから・・・わかって、る。

わかって・・・る。

 

 

 

 

―――――わかってる、はず、なのに―――――。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

うっわー、流石にドキドキしてきたかも。

千冬姉様に『キャノンボール・ファスト』のルール説明―――妨害アリの超高速レース―――を受けた後、山田先生とオニール先生に連れられて、アリーナのスタートポイントまで進む。

 

 

「はーい、じゃあ、先生達について来てくださいねー」

「頼むから、面倒事はよしてくれよー?」

 

 

3組の担任さんは初めて見たけど、どことなくおっとりした赤毛の女の人だった。

もしかしたら、始業式とかでチラっと見たかもしれない。

先生の指示に従って外に出て、『黒叡(こくえい)』を展開する。

 

 

スタートポイントは、本当にサーキットみたいな形になってた。

市のアリーナは高機動戦闘仕様にセッティングされていて、私達は誘導に従って自分のスタート位置に立つ。

周囲には満員のお客さん、そう言えば・・・私、こう言うのって初めてだ。

どうしよう、さっき簪ちゃんにあんなこと言った癖に、私自身が緊張して来た・・・!

 

 

「う、うー・・・?」

 

 

こう、胸の奥がモゾモゾするって言うの?

何か、嫌な感じ・・・皆が、私を見てる気がする。

ほ、箒姉さん・・・は、ダメだ、もう自分のスタート地点についてる。

簪ちゃんも、ダメ。

ど、どうしようどうする、どうすれば。

 

 

内心でアワアワしつつ、私が最終的に頼ったのは・・・やっぱり、束お姉ちゃん。

厳密には、その思い出。

高速機動用のハイパーセンサー・バイザーを用意しながら、視線指定(アイ・タッチ)でディスプレイの端のフォルダを開く。

 

 

『女の子は、お料理の一つも覚えないといけないんだよー』

 

 

ガクリ、再生された音声に力が抜ける。

いつの間に仕込まれたんだろ、こんな音声。

ともかく、開いたフォルダには束お姉ちゃんの所にいた頃から撮り溜めてる写真が入ってる。

 

 

束お姉ちゃんに頬ずりされながら、完成した『黒叡(こくえい)』をバックに撮った写真。

束お姉ちゃんに抱き締められた私の横には、くーちゃんさんもいる。

向こうにいた頃は、束お姉ちゃんのカメラロボで良く撮影されてた。

何でも、千冬姉様の真似をしてるんだって。

 

 

「束お姉ちゃん・・・」

『何かな、楓ちゃん?』

 

 

今度は録音じゃなくて、私の幻聴。

でも、束お姉ちゃんが見ていてくれるような、そんな気持ちになれる。

だから・・・。

 

 

『それでは、1年生専用機持ち組レース・・・』

 

 

見世物にされてるみたいで、ちょっと気分悪いけど。

でも、『黒叡(こくえい)』は束お姉ちゃんと作った機体。

スペックだけなら、それなり。

と言うか、私が他より早くなる必要は無いよね。

他が、私より遅くなれば良いんだから。

 

 

それに、こんなイベント・・・ようは、徒競争じゃない。

運動会、一回も出れたこと無いけど・・・。

後で千冬姉様に叱られるのも嫌だし、箒姉さんや簪ちゃんもいるし。

少しは、頑張ってみようかな。

そう思って、眼前のシグナル・ランプを見つめる。

そして・・・・・・。

 

 

『・・・・・・スタートッ!!』

 

 

キャノンボール・ファスト、開始――――――。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

キャノンボール・ファストは、海に面した市の特別アリーナで行われている。

隔離された人工島に所在するIS学園と異なり、臨海地区の特別アリーナは陸上から直接アクセスすることが可能である。

とは言え立地場所は埋め立て地であり、ほぼ3方向を海に囲まれている。

 

 

特別アリーナから見て南へ数キロの海上に、そのISは浮遊していた。

陽光に煌めくそれは金色の装甲、操縦者の趣味で施されたカラーリングが美しく輝く。

現在はコアが封印されている『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の姉妹機で・・・こちらは、純正のアメリカ製第3世代IS、『金の福音(ゴールド・ゴスペル)』。

操縦者は腕を組み、目を閉じて何かを待っているようでもある。

 

 

『・・・来たわ、ジーナ』

「・・・あいよ」

 

 

南(コッチ)に来たか―――そう思い、口元に笑みを浮かべるジーナ。

通信で繋がっているスペインのアデリタからの情報は、彼女としては手柄を他の国に取られなくて済むと言うことを意味していた。

なお西は豪州の2人組、東はイタリアのレディア、そして陸側の北は学園の実戦部隊が配備されている。

侵入者があるなら完全に海に面した南側からと踏んでいたが、勘は当たったようだ。

 

 

(何せこの学園は、毎月のように侵入されてるからな)

 

 

それはそのまま責任者の千冬の失点に繋がる、それを自分がカバーしてやるのだ。

何とも言えない心地良さを感じながら組んでいた腕を解き、機体の視覚補足拡大映像(ズーム・ビュー)に映る「敵」機を確認する。

 

 

深い蒼のIS・・・イギリスから強奪された機体を。

操縦者不明、『サイレント・ゼフィルス』。

超音速で飛行してくるそれは、隠れる気が無いのかステルス機能を使用していない。

ただの馬鹿か、それともよほどの自信家か・・・。

 

 

「接近してくる所属不明機、停止しろ。さもないと撃墜する」

 

 

オープン・チャネルでの警告、この時点ですでにジーナは戦闘態勢を取っている。

高速移動している以上、相手の出方を見てから行動を決めていたのでは遅い。

さらに言えば相手は無視して接近を続け、すでに臨海地区の領域に踏み込んでいる。

有り体に言えば・・・「判決、死刑」、である。

 

 

「『金の鐘(ゴールド・ベル)』・・・!」

 

 

機体の両側に広がった翼のようなスラスターの一部が開き、その砲門から金色の羽根を射出する。

合計15、威嚇射撃の意味も込めての出力である。

それは高速で放たれ、「敵」機に向かう。

 

 

「ひゅう・・・」

 

 

中距離用のアサルトライフルを呼び出し(コール)しつつ、ジーナが口笛を吹く。

『サイレント・ゼフィルス』は機体を捻るようにしながら直進、金の羽根の群れを潜り抜けて来たのである。しかも無傷で。

 

 

「はっ・・・!」

 

 

息を吐くように笑いながら、アサルトライフルの引き金を引く。

全自動射撃の実体弾が、オレンジ色の軌跡を見せながら深い蒼の機体を襲う。

しかし、それすらも無傷でかわしてくる。

そして・・・。

 

 

「おっとぉっ!」

 

 

いつの間に射出されていたのか、上下左右からビットによるビーム射撃がジーナに加えられる。

ジーナは機体を下降させつつ左右に振り、掠りもせずにビームを回避して行く。

ビームを回避しつつライフル射撃を途切れさせないあたりは、流石は国家代表と言った所であろうか。

 

 

不意にライフルを捨て、腰の後ろから超近接用ナイフを2本抜く。

『サイレント・ゼフィルス』が弾幕を潜り抜けて、ジーナの目の前に迫っていた。

それは想像以上の速さだったが、想定外の速さでは無かった。

だからジーナは対応する、だが。

 

 

「お・・・っ」

 

 

次の瞬間、『サイレント・ゼフィルス』が視界から消える。

目前での瞬時移動、ある特殊なスラスター制御によって可能となる動きだと頭が告げる。

そしてそこから、機体側面に蹴りの衝撃。

それに気を取られた刹那、切っ先にビームの刃がついた銃剣による斬撃がジーナを襲う。

今度は正面、ジーナと『サイレント・ゼフィルス』が交錯する。

 

 

・・・・・・そして、擦れ違うように離れた。

 

 

ジーナの目の前には突き出された自分の腕と、刃の部分がぽっきり折れたナイフ。

振り向いた時には、身を潜めているアデリタの射撃を回避しながらアリーナに向かう『サイレント・ゼフィルス』の姿が見えた・・・。

 

 

 

 

 

「・・・あり得ない」

 

 

そう呟いたのは、ジーナでは無くアデリタの方だった。

肩にライフルをマウントした特殊な『リヴァイヴ』に身を包んだ彼女は、桟橋と水面の間に寝そべるように身体を固定している。

まるで狙撃兵が砂漠でそうするように、ステルスで隠れながら水面の上に寝そべるように浮いている。

 

 

そのライフルの先からは煙が出ており、射撃の直後であることがわかる。

だが射撃は功を奏さず、敵はアリーナへ向かった。

今すぐに追撃が必要だ、だが一瞬だけ。

 

 

「あり得ない・・・」

 

 

一瞬だけ、呆然とした時間があった。

それは、「敵」機を逃したショックでは無い。

それ以上に、「敵」機の動きの方が問題だった。

 

 

側面からの蹴りと、正面からの斬撃。

 

 

アレは・・・あの動きは、かつて至近距離で見たことがあった。

アデリタだけでは無く、IS乗り全員を魅了さえした動き。

世界の全てが、見惚れた動きだった。

あの動きは―――――。

 

 

「・・・アレ、は」

『・・・おい、アデリタ』

「わかってる・・・けど、どうしましょうか」

『しゃーねーだろ・・・正直に言うしかねぇよ、チフユに』

 

 

ジーナとアデリタの・・・モンド・グロッソ経験者の声は、少し震えていた。

 

 

『しくじりました・・・ってな』

 

 

―――――あの動きは、織斑千冬の動きだった。

 




篠ノ之 楓:
ばびゅんっと行っちゃうよー!

セシリア・オルコット:
楓さん、淑女がそんな風に声を張り上げる物ではありませんわ。

篠ノ之 楓:
ふぇ? セシリアさんだ。後書きでセシリアさんとって珍しいよね。

セシリア・オルコット:
まぁ、そうですわね。そもそも高貴な私が後書きなどに登場するなど・・・。

篠ノ之 楓:
前々から気になってたんだけど、セシリアさんの家って何なの?

セシリア・オルコット:
は? 貴族だと申し上げたと思いますけど。

篠ノ之 楓:
いや、イギリスの貴族にもいろいろあるじゃん。どんな感じの家柄なの?

セシリア・オルコット:
そ、それは・・・(目を逸らし)。

篠ノ之 楓:
それは?(首傾げ)。

セシリア・オルコット:
それは・・・・・・まだ、語られるべき時ではありませんわ。

篠ノ之 楓:
逃げた!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。