インフィニット・ストラトス―黒き叡智―   作:竜華零

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第45話:「その真実、虚偽」

 

Side 篠ノ之 楓

 

あれから、5日ほどが経過しました。

あの衝撃の目覚めから、私の生活は一変しました。

うん、本当に変わっちゃったよね。

 

 

明けても覚めても、亡国機業(ファントム・タスク)の施設にいる子供達の相手をさせられる毎日。

男の子にはスカートをめくられるし、対抗してパンツルックにしたら胸触られるし。

その度に箒姉さんがキレてるけど、子供達のスペックがやけに高くてどうにもならないし。

女の子は女の子で元気だし、大人しい子もいるけど・・・。

 

 

「楓さま、本を読んでください」

「あ、うん・・・」

 

 

それが、今私の膝に座って本を読んでとせがんでる女の子。

この大部屋にはいろいろな玩具とか遊具があるのに、決まって1人で隅の方で本を読んでるの。

まぁ、大人しいから疲れなくて良いんだけど。

 

 

でもこの子、本当にくーちゃんさんにそっくりなんだよね。

名前はクムリナちゃん、11歳。

髪型は違うけど、髪の色と肌の色、体格、瞳を閉じている所まで全部くーちゃんさんそっくり。

さっきの「楓さま」って呼びかけのアクセントまでおんなじで、その、戸惑う。

だけど本人が「くーちゃんって誰ですか?」って言うんだから、違うのかなぁ。

 

 

「・・・ってコレ、IS工学の物凄く難しい本だよクムリナちゃん」

「楓さまなら、わかりますでしょう」

「いや、そりゃわかるけど・・・」

 

 

そんな本をチョイスするって、コレ人に読んで貰う本じゃないよね。

少なくとも、周りで子供達がちゃんちゃんバラバラしてるような所で読む物じゃないし。

まぁ、良いけどね。

 

 

でもこうしてISの本を読んでると、いろいろ思い出しちゃう。

束お姉ちゃんのこととか。

IS学園のこととか。

・・・簪ちゃんと本音ちゃん、心配してるかな。

鈴さん達はどうなったんだろう、学園の人達は・・・私のこと、嫌いになったみたいだけど。

私、もう学校に行けないのかな・・・。

 

 

「・・・」

 

 

・・・あの時、あの黒い無人機。

今もまだ治りきってないけど、箒姉さんや皆に怪我をさせたあのIS。

あのISに使われていた技術は、全部私も知ってる技術だった。

と言うより、私が知っている技術の発展版だった。

 

 

そんなことができるのは、この世に1人しかいない。

膝の上のくーちゃんさんそっくりな女の子を見ながら、想う。

・・・束お姉ちゃんに、会いたい。

会いたいよ、束お姉ちゃん。

今、どこにいるの・・・?

 

 

「・・・楓さま?」

「あ、ううん。ごめんね」

 

 

不思議そうに私を見上げてくるくー・・・じゃない、クムリナちゃん。

外見がくーちゃんさんそっくりだからアレだけど、妹とか出来てたらこんな感じなのかな。

私、末っ子だから。

実はちょっとだけ憧れてたんだよね、お姉ちゃんって立場。

 

 

「クムリナちゃんは、ISが好き?」

「はい、好きです」

「どうして?」

「ISは、救世主ですから」

 

 

救世主・・・って言う表現は、初めて聞いたかも。

パチクリとしていると、クムリナちゃんはにっこりと微笑んだ。

 

 

「神がこの世に遣わした、変革の証・・・これを救世主と呼ばずして、何と呼びましょう」

 

 

く、クムリナちゃんは、意外と夢見る乙女だったのかもしれない。

流石の私も、そこまで思ったことは無かったなー。

でも・・・スコールさん達は、そんなISを無くそうとしてるんだよね。

 

 

・・・何でだろ?

 

 

 

 

 

Side 織斑 一夏

 

「おいワンサマー、何サボってんだよー」

「そーだそーだ、もっと遊べよ」

「サボってねーよ、休憩だよ。あと俺はイチカであってワンサマーじゃねぇ」

 

 

ほれ、あっちで遊んでこーいと手をヒラヒラさせて、支給された缶コーヒーを飲む。

最初こそ意地張って口をつけなかったんだが、3日くらい前から普通に食べて飲んでる。

いや、何か段々バカらしくなってきて・・・。

 

 

・・・それにしても、複雑だよな。

大部屋のいろいろな場所で遊び回ってる―――拳銃の組み立て競争とか―――子供達を見て、なんともいえない気分になる。

あのオータムの話だと、ここにいる奴らは「いるはずの無い子供」ばかりなんだそうだ。

 

 

『別にドイツに限らず、試験管ベビーの人造兵士研究ってのはどこの国でもあんだよ。でも10年前までのタイプはほとんどがISに適応できなかったから、廃棄されたんだ。ここにいるのは、私らが拾ったその一部だよ』

 

 

ラウラも、軍事研究所で生まれた遺伝子強化兵士だった。

ただラウラの場合はISに適応できただけで、ラウラの成功の裏には何倍もの失敗―――嫌な言葉だ―――がいて、ここにいる子供達みたいなのが何百、何千といたらしい。

 

 

それを、亡国機業(ファントム・タスク)が拾って育ててる。

それだけ聞くと、オータム達が凄く良いことしてるみたいに聞こえるけど。

でもこの子達は、近い内に機業の構成員としてテロとか紛争に投入される。

つまり、オータム達は後腐れの無い兵士を手に入れたいがために拾っただけ。

何だよそれって喰ってかかったら、オータムに鼻で笑われた。

 

 

『じゃー、どうすんだよ。戸籍もねぇ、親もいねぇ、そもそも存在しねぇ、そんなガキを育てるのにいくらかかると思ってんだ? 慈善事業でやってんじゃねーんだよ。何ならお前が引き取ってくれても良いんだぜ?』

 

 

ああ、引き取ってやるよ! ・・・って言うのは、簡単だ。

でも現実問題、俺にはそんな力は無い。

シャルロットの時と同じで、結局は何もできない。

それが、凄く悔しかった。

 

 

「おっ、お疲れ箒」

「・・・」

 

 

今日もボロボロにされた箒が、物凄く暗いオーラを発しながら俺の所にやってきた。

な、何だか、日に日に不機嫌になっていくんだが・・・。

箒ってすぐムキになるから、子供にからかわれやすいんだよな。

 

 

「・・・箒? どこに行くんだよ」

「・・・・・・」

 

 

箒はそのまま、大部屋の外に出て行った。

不機嫌なオーラは変わらず、ドスドスと。

 

 

「・・・トイレかな」

 

 

とりあえずそう結論付けて、俺は缶コーヒーを置いて立ち上がった。

さて、シッターの続きと行きますかね。

そういや、中学の頃に似たようなバイトしたよな。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 箒

 

・・・これでは、飼い殺しではないか!

別に子供の相手をするのは嫌いでは無い、だが子供の相手をするために虎穴に入ったわけではない。

ここに来たのは、楓のことが何かわかればと思ったからこそなのに・・・!

 

 

「・・・スコールめ」

 

 

スコールも、アレから私達の前に姿を現そうとはしない。

忙しいと言うのが理由だが、テロリストの忙しいという言葉ほど嫌なモノは無い。

最も、テロリストに頼らざるを得ない私はもっと惨めなナニカだろうがな。

 

 

けど、それで構わない。

 

 

楓さえ、妹さえ守れるのなら私はどんなに惨めになっても良い。

だからこそ、妹の身体に関する情報が得られないのは歯がゆい。

私はまだ、妹が石を投げられた時のことを覚えている。

私はまだ、楓が息をしていなかった時のことを覚えている。

だから、怖いんだ。

もう一度、あんなことになったらと思うと・・・。

 

 

「ふん、随分と良い姿になっているじゃないか」

「・・・マドカ」

 

 

お手洗いに行く途中で、マドカに出会った。

あの夜、私達を亡国機業へと誘った張本人だ。

人に「知りたくは無いか」と言っておきながら、結局は何も話さない女。

 

 

「その代わり、妹は助けてやったろう?」

 

 

・・・私の心でも読んだのか知らないが、マドカが嫌に勘に触る笑みを浮かべながらそう言った。

だが、楓の復調が亡国機業の技術に拠る所なのは確かだ。

 

 

「ふふ、良い顔だな、篠ノ之箒」

「・・・」

「それに比べて、お前の妹は随分とのんびり馬鹿を晒しているようだが」

「妹を侮辱するな!」

 

 

私がそう反応すると、マドカはさらに笑みを深めた。

顔が異常に千冬さんに似ているから、かなりやりにくい。

 

 

「いい加減に教えて貰おうか、あの人が・・・姉さんが楓に何をしたのか」

「ふふ・・・」

「答えろ!」

「大きな声を出すのは、不安だからか?」

「何・・・?」

 

 

こちらの心を見透かされたかのような気がして、心が揺れる。

 

 

「何も不安に思うことは無いだろうに。と言うより・・・本当は気付いているんじゃないのか、お前の妹に何が起きているのか。いや・・・何が起きたのか」

「・・・わかっていたら、ここには来ていない」

「いいや、わかっているさ。お前はただここに確認に・・・ああ、違うな」

「・・・?」

 

 

にぃ、と唇の両端を吊り上げて、マドカが笑んだ。

 

 

「お前はただ、否定してほしかっただけだ」

「・・・違う!」

 

 

ギィンッ!

金属音を立てたのは、私の『紅椿(あかつばき)』の刀と奴の『サイレント・ゼフィルス』の銃剣が衝突したためだ。

私は両肩の『穿千(うがち)』を起動し、奴の周りには6基のビットが浮いている。

 

 

<警告、通路内でのIS展開は原則禁止されています>

 

 

しばらく睨み合っていると、天井のスピーカーからそんな音声が聞こえて来た。

マドカは鼻で笑ってそれを聞き流した後、ISを解除した。

・・・私も、『紅椿(あかつばき)』を待機状態に戻す。

 

 

く、下手な挑発だったのに、思わず手が出てしまった・・・ここは、敵の本拠だと言うのに。

私が自分の浅慮と手の早さを恥じていると、マドカが私の横を通り過ぎて。

・・・擦れ違いざま、一枚の紙を放り捨てて行った。

 

 

「何だ・・・?」

 

 

拾ってみると、それはどうやら・・・診断書のようだった。

マドカの、では無いようだった。

名前が違う、これは・・・楓の診断書だ。

 

 

「・・・っ」

 

 

顔を上げた時には、もうマドカは見えなかった。

・・・まさか、施しでも無いだろうが。

 

 

「こ、れは・・・」

 

 

・・・やはり、施しでは無い。

そこに書かれていた結果は、とてもではないが私の望んだモノでは無かった。

それを読み終えた時、私は・・・。

 

 

私はそれを、粉々に破り捨てた。

意味は無いとわかっていても、そうせざるを得なかった。

・・・楓を守る、何があっても。

私は、あの子の姉なのだから。

 

 

 

 

 

Side オータム

 

・・・ったく、スコールの奴も何を考えてんだか。

何も本拠地(ホーム)にまであんなガキ共を連れて来なくても良いだろうに。

まぁ、別に文句は無いんだけどよ。

 

 

「ま、ガキにはガキの相手させとくのがお似合いってもんだしな」

 

 

普段は年長のガキに面倒見させるんだが、アイツらのが年も近いし良い玩具になるだろ。

偏見で引くかと思ったが、割と肝の据わった奴らだよな。

何せこの本拠地(ホーム)にいるガキは、私らが世界中で拾ったガキの中でも選りすぐりの連中だからな。

 

 

脳にナノマシンを撃たれて反応速度が異常な奴とか、筋肉に機械仕込まれてジャンプ力が常人の3倍の奴とか、理由は知らないが両眼が見えない奴とか、脳に電極刺されて視覚聴覚が異常発達しちまった奴とか、触った相手の情報を電子化して読みとる奴とか。

・・・ま、どこの国もやってることは同じだぁな。

 

 

「結果として、私らみたいなのが出来あがるわけだけどよ」

 

 

そいで委員会の飼い犬やってりゃ、世話ないよな。

その意味じゃ、私もスコールも・・・あのエムでさえも大部屋のガキ共と何も変わらない。

戦うために生まれた、親無しの人間兵器だ。

 

 

「慣れちまえば、それはそれで気にならなくなってくるんだけどな」

 

 

たまにあの坊やみたいなクソがいるから、それだけは鬱陶しいけどな。

戦うために生まれた生命ーとか聞くと、青臭い正義論を振りかざす馬鹿。

そう言うの程、殺しやすい。

あのクソガキは殺すわけにゃいかねーから、キャンキャン言うのを放っとくのが面倒だが。

 

 

「スコール、私だ、入るぜ」

 

 

声をかけた上で、スコールの部屋に入る。

入り慣れた豪奢な部屋だ、私はいつでも好きな時に入れる。

こ、恋人・・・だからな。

 

 

「スコール?」

 

 

中に入っても返事が無いから、不思議に思ってそのまま奥の寝室と衣装部屋に進む。

スコールはここの責任者だからな、一番大きな部屋を好きに使ってる。

まー、3分の1くらいは私の部屋でもあるんだが。

 

 

「スコールー?」

「・・・うん? ああ、オータム。来てたのね」

「声かけたろうがよー」

「拗ねないの、ちょっと考え事をしていたのよ」

 

 

べ、別に拗ねてねーよ。

スコールは衣装部屋のでかい鏡の前で、着替えの最中らしかった。

私が来ても着替えの手を止めるでもなく、そのまま服を脱いで素っ裸になる。

いや、下着はつけてるけどな。

 

 

「・・・相変わらず、綺麗な身体だよな」

「ふふ、変な子ね、貴女も」

 

 

スコールが笑って振り向く、シルクの下着に覆われた身体が私の目に映る。

白い肌に、赤い色の高級下着・・・身体にかかる金色の髪がキラキラ光ってる。

そして、胸元には・・・。

 

 

私は吸い寄せられるようにスコールに近付いて、スコールの胸に顔を埋める形で抱きついた。

そして、そのまま胸元の「そこ」に唇を触れさせる。

私だけが知る・・・私しか知らない、スコールの秘密・・・。

 

 

「・・・もう、深いのかよ」

「そうね、三次移行(サード・シフト)して随分経つから・・・大分、根付いてしまっているわね」

「スコール、私は」

「大丈夫」

 

 

唇にそっと人差し指を押し当てられて、黙らされる。

スコールの微笑みに、私は目を奪われる。

それが、私のクソったれな人生で唯一見つけた、光だから。

私の、黄金の女王様。

 

 

「大丈夫・・・私は私、亡国機業(ファントム・タスク)のスコールのままよ」

「ああ・・・わかってる。そして私はオータム。お前のためにだけに訪れる秋(オータム)だ」

 

 

騙されていても良い、利用されているだけでも良い、捨てられても構わない。

だが、私がどんなクソったれな最期を迎えるにしても。

それは、スコールの役に立った後のことでありたい。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

・・・何か、箒姉さんが変です。

いや、だからどうってわけじゃないんだけど。

あんなことがあった後だし、仕方が無いと言えばそうなのかもしれないけども。

 

 

「楓、身体の調子はどうだ? どこか苦しかったらすぐに言うんだぞ」

「楓、何か必要な物はあるか? 何かあれば必ず私に言うんだぞ」

「楓、髪が乱れているぞ、梳いてやるからこちらに来い」

「楓、着替えは・・・」

 

 

何、このベッタリ状態。

おはようからおやすみまで箒姉さんって、そりゃ私にとっては天国(ヘヴン)なんだけどさ。

でも何だろう、急にここまで献身的に尽くされると「え、私もうすぐ死ぬの?」みたいな気分になってくるから不思議だよね。

 

 

「ど、どうしたの箒姉さん、何か変だよ?」

「そ、そうか? 普段通りだと思うが・・・」

 

 

絶対に変だと思う。

な、何、箒姉さんにいったい何が。

夜、パジャマになってベッドに座って、箒姉さんに髪を梳かされながらちょっとソワソワする。

 

 

「だが楓、私から離れるなよ。ここは敵の本拠地なのだからな、何があるか・・・信用できたものではないのだからな」

「う、うん、そうだよね・・・ここ、危ない所なんだよね」

 

 

言われてみれば、ここは私達の家ってわけじゃ無いんだよね。

ここ数日何もないから、馴染んじゃってたけど。

ここは『亡国機業(ファントム・タスク)』のホーム、いつまた・・・。

・・・また、学園の時みたいなことになるかもしれな

 

 

「・・・大丈夫だ」

 

 

無意識の内に、身体が震えてた。

あの時のことを思い出して、意識がどこかに行ってしまいそうになる。

その時、箒姉さんが私の首と肩に手を回してぎゅっとしてくれた。

 

 

「大丈夫、私がいる。私がずっとお前を守る、傍にいる・・・ずっとだ」

「・・・姉さん」

「だから・・・・・・」

 

 

箒姉さんの言葉の最後の方は小さくて、よく聞き取れなかったけど。

でも私は、箒姉さんの温もりが嬉しくて、安心する。

箒姉さんが傍にいてくれるなら、どこにいても大丈夫だって思える。

 

 

・・・でも箒姉さん、最近一夏さんのこと放りっぱなしのような。

せっかく・・・いや、せっかくって言い方も変だけど、愛の逃避行っぽく見えなくも無いのに。

うーん・・・。

 

 

「・・・ところで楓、お前はさっきから何をしてるんだ?」

「え?」

 

 

そんな私の手元には、『黒叡(こくえい)』の半起動状態で展開している空中投影型キーボードとディスプレイがある。

いくつかのデータが映し出されていて、そこにはこの基地の見取り図とかも含まれる。

 

 

「これは・・・まさか、ここのデータか?」

「うん、この数日で基地内に『黒叡(こくえい)』のナノマシンを内緒で少しずつ散布しておいたんだ。ようやくメインサーバに接続できる穴を空けた所でさ」

「そ、それは・・・危険じゃないのか?」

「そうかもだけど・・・このまま何も知らないままじゃ、動きようが無いし・・・」

 

 

情報って言うのは、目に見えない財産。

それがあるのと無いとでは、動きが全然違ってくる。

それに、今の状況は私のせいだ。

 

 

だから、私が何かしないと。

じゃないと、私のために危険を犯してくれた箒姉さんと一夏さんに申し訳が立たないもん。

それにこう言うのは、私にしかできないことだから・・・。

 

 

 

 

 

Side スコール

 

・・・あら。

緩やかなまどろみの中から目覚めたのは、耳につけた金のイヤリングが明滅したから。

それに促されるようにして、私は身体を起こした。

 

 

いつの間にか、眠っていたようね。

ふと横を見れば、同じベッドでオータムが眠っていることを思い出したわ。

普段の粗野さからは想像もできない程にあどけないその寝顔に、少しだけ笑みを浮かべる。

それから、オータムの剥き出しの身体にそっとシーツをかけてあげる。

 

 

「おやすみなさい、私の愛しい凋落の兆し(オータム)・・・」

 

 

少しだけ汗に濡れた額にそっと口付けて、私は何一つ身に着けていない状態のままベッドから降りる。

そして耳のイヤリングに触れて、空中に半透明のディスプレイを浮かべる。

そこには、この施設のメインサーバに何者かが侵入したことが示されていたわ。

 

 

ただ、外からの侵入では無いわね。

コレは施設内からのハッキング・・・つまりIDを持っていない者の仕業ね。

何か重要なデータを奪ろうとしているのなら、対処が必要なのだけれど。

 

 

「・・・うふふ、悪い子がいるわね」

 

 

ハッキングを受けているのは、ISのデータや組織の構成員などランクの高い情報では無い。

この侵入者が欲しがっているのは、もっとランクの低い別の情報。

『オリジナル・コア』・・・<女王の心臓(ハート・オブ・ザ・クィーン)>の歴史に関する情報。

・・・どうやら、特にアテがあって情報を得ようとしているわけでは無いようね。

 

 

「ふふ・・・焦っちゃって、可愛いわね」

 

 

まぁ、確かに気になるのもわかるわ。

少し情報を与えておいた方が、今後あの子達の動きもコントロールしやすいでしょう。

だけどそのまま見られると、いろいろと都合が悪いから。

ほんの少しだけ、改竄した情報を与える。

 

 

「・・・でも、楽しみね。自分達の姉の真実を知った時、どんな顔をするのか」

 

 

まぁ、おそらく私がそれを見ることは無いでしょうけど。

その時、ふと部屋の姿見の前を通った。

立ち止まって、何も身に纏っていない自分の身体を見ることになる。

 

 

薄く輝く金色の髪、造り込まれたようなスタイル、色素が抜けたような白い肌。

そっ・・・と、鏡の表面に手を添える。

鏡の中の私の視線は、私の胸・・・心臓のある位置を見ている。

 

 

「・・・私は、いつまで私でいられるのかしらね」

 

 

木の根のように広がる浮き出た管、日に日に強くなる左胸の異物感。

胸全体に広がっているそれを見ても、オータムは私を美しいと言うけれど。

・・・抑制剤も効き目が薄くなっているし、そろそろかしらね。

 

 

「さて、ISに殺されるのが先か、あの悪魔に殺されるのが先か・・・」

 

 

だけど、タダで死ぬつもりは無いわ。

せめて私の・・・私達のいない世界に。

一滴の希望を、遺して行く。

 

 

人間舐めるなよ、化物。

人は、人間は・・・人類は、貴女が思っているよりも。

しつこいわよ。

 

 

 

 

 

Side 織斑 一夏

 

―――――数十年前、第2次世界大戦の時代。

ちょうど、日本が戦局打開を懸けて原子爆弾の開発を模索していた時のこと。

関東・・・現在のIS学園があった海域で、ある特殊な物質が発見された。

 

 

「スコールの話のまんまだな」

「一夏、黙ってろ」

 

 

この特殊な物質は、原子爆弾など問題にならない程の強大なエネルギーを持った物質だった。

日本政府は発見者の国定研究員を主任とするチームを作り、その物質の兵器転用を模索する。

その研究員の名は「一(ハジメ)」、それ以外の情報はデータが空襲で失われ、不明である。

 

 

数カ月後に終戦を迎えた後も、研究チームはスポンサーを欧米政府に代えて研究を続けた。

研究の過程で、この物質の特性もいくつか判明していた。

日本から離れると力を減少させること、欠片を採取するとそれ自体がエネルギーを産むこと、そして・・・女性にしか、そのエネルギーを引き出せないこと。

 

 

「何か・・・ISみたいだな」

「素になったモノらしいからな」

 

 

世界で最初に物質のエネルギーを引き出すことに成功したのは、「一」の妻であったとされる。

ただ「一」の妻に関しての情報は、空襲で失われ存在しない。

研究を開始して十数年後、「一」の妻は娘の出産に耐えきれずに死去。

そこで研究は途絶えたかに思われたが、幸い娘に素養が「遺伝」。

 

 

「一」は娘を研究所に閉じ込め、20年間に渡り物質の研究を続けた。

娘の名は「四春(シシュン)」、後の「織斑四春」である。

しかしこの実験も、20年目に破綻することになる。

「一」の弟子であるはずの「織斑秋三」とその友人「篠ノ之柳韻」の2名によって、娘が解放されてしまったからである。

この2人を支援したのが日本の対暗部用暗部「更識楯無」であり、物質の完全破壊を試みたようである。

 

 

「・・・は?」

「・・・」

 

 

その「反乱」の過程で「一」は死亡、部下の欧米研究者たちは祖国に撤収した。

物質は破壊されたとされたが、実際には「篠ノ之柳韻」が実家に奉納し封印した。

この情報操作を行ったのは、「更識楯無」だと思われる。

「織斑秋三」は「織斑四春」を妻とし、妻の身体を慮って隠遁生活に入ることになる。

 

 

我々「亡国機業(ファントム・タスク)」はこの一連の「反乱」とは別の過程で生まれた遺物破壊者の団体であり、その目的は「一」の発見した物質が他に存在しないかの監視と破壊。

国家、思想、信仰、民族、何もかも問わない。

全ては、亡国の意思のままに。

50年間、現在の篠ノ之神社に奉納されたモノを監視し、情報を得た者を抹消して来た。

 

 

「え・・・ちょ、ちょっと待ってくれよ楓。ちょ・・・え? 今何か、聞き捨てならない名前がいくつかあったような気がするんだが」

「む・・・む」

 

 

しかし10年前、想定外の事態が発生した。

封印され、忘れられたはずの物質・・・解析も理解も不可能なはずの『オリジナル・コア』を、完全かつ完璧に解析し、理解してしまった人間が現れたのである。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 箒

 

その者の名を、篠ノ之束と言う。

どう言う理由かは不明だが、篠ノ之神社の娘は御神体として厳重に管理されていた『オリジナル・コア』に触れ、これを理解してしまった。

 

 

しかもそれを、詳細は不明だが株分けのような形で複製することにまで成功してしまった。

無限に近いエネルギーを発生させるそれらは後に「ISコア」と呼ばれ、現在で言うISを動かす不可欠の動力源となった。

またあり得ないことに、篠ノ之束はこのコアのエネルギーを最大限に活用する技術を次々実用化した。

我々の常識からは考えられない、異常な事態が10年前に起こったのである。

 

 

そこで我々「亡国企業(ファントム・タスク)」は、『オリジナル・コア』と篠ノ之束の破壊と排除を決断した。

世界の安定と平和のために必要と考え、世界各国の協力を得てあらゆる手段を講じた。

結果は、現在『白騎士事件』として知られている通りである。

これが、我々が篠ノ之束とその協力者、織斑千冬に敗北した最初の瞬間であった。

よもや織斑と篠ノ之の家からあのような異端が生まれ出ようとは・・・否、織斑四春の娘ならばそれも頷けよう、だが。

 

 

篠ノ之束、アレはいったい何者なのか。

篠ノ之束の目的は不明であり、我々は一刻も早くそれを知る必要があるだろう―――――。

 

 

・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

 

 

「・・・えと、とりあえず・・・これで全部、みたいなんだけど」

 

 

夜、私と楓の部屋で。

一夏も交えた3人で、楓が機業のメインサーバから拾ってきた情報を聞いた。

楓が拾って来たのは昔の報告書(レポート)のようで、断片的に情報を繋げたような形だった。

しかしこれだけでも、私達の驚愕を誘うのには十分だった。

 

 

「・・・箒、楓、念のため聞くけど」

「・・・何だ」

「う、うん」

「・・・知ってたか?」

 

 

知っていたか、と言うのは・・・おそらく、私達の親世代の話だろうか。

私の場合、篠ノ之柳韻・・・篠ノ之神社の神主であり道場主。

厳格で強く、でも優しくて、私にとっては理想の男性像でもある。

そして、織斑秋三。

 

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 

沈黙が、場を支配する。

秋三と言うのは、一夏の父親だろうか。

私が出会った時には、すでに一夏の両親は蒸発していた。

だから実際、名字以外にそうだと言う判断材料が無い。

そしてそれに関しては、口にしてはいけないような気がした。

 

 

「・・・箒姉さん、パパとママって今どこにいるのかな・・・?」

「さぁ・・・あの日、政府の保護プログラムで母さん共々引き離されて、それきりだ。手紙も出させて貰えなかったから・・・」

「千冬姉は、何か知ってんのかな・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 

一夏の言葉に、私と楓は再び沈黙する。

千冬さんと、そしてあの人・・・姉さん。

おそらくこの2人は、全てを知っているのだと思う。

この報告書(レポート)の内容を完全に信じるなら、だが。

 

 

「えと、エンジニアの立場、というか・・・ハッカーというか、情報屋的な立場から言わせてもらうと・・・ね? この情報だけで全部を判断しちゃうのは早計、だと思う。私が拾ってきた情報だから、強くは言えないんだけど・・・」

「と言うと?」

「えと、あらゆる角度から見た方が、客観的に事実を俯瞰できると言うか。その、つまりね」

 

 

楓は酷く言いにくそうにしていたが、私は何となく、次に楓が何を言いたいのかわかっていた。

私は、この子の姉だからな。

この子の言いそうなことぐらい、わかる。

 

 

 

「束お姉ちゃん達に、会いに行かない?」

 

 

 

ああ・・・やはり。

その時、私は胸の奥に何か・・・不思議な気持ちを感じた。

それはとても、不思議な感情だった。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

束お姉ちゃん・・・束お姉ちゃんなら、たぶん全部を知ってる。

私や箒姉さんがお願いすれば、全部教えてくれると思う。

束お姉ちゃんは何でも知ってるし、何でもできるから。

 

 

「あ、も、もちろん、ち・・・千冬姉様でも良いんだけど・・・それか、私達のパパとママとか」

「・・・私達の両親は、居場所がわからない。連絡方法も無い・・・」

「千冬姉は・・・たぶん、学園にいるのかな」

 

 

あうぅ・・・そうなんだよね、私達の味方してくれて事情を知ってそうな人って括りだと、束お姉ちゃんが実は一番、機動力があるんだよね。

何せ、ラボごと移動してる毎日を送ってるわけだから・・・。

 

 

「でも束さんへの連絡方法、あるのか?」

「まぁ・・・」

「あると言えば、一番はたぶん私の『黒叡(こくえい)』なんだけど」

 

 

束お姉ちゃんにメール出せるし、学園の時はそれが原因で捕まったっぽいけど。

でも、一番確実な連絡方法だと思う。

だけど、問題があって・・・。

 

 

「・・・この施設の中からは、外に連絡が取れないの」

 

 

どうやら壁とかの素材が特殊な造りになっているらしくて、外部と電子的な連絡が取れない。

スコールさんとかは、たぶん例外扱いになってるんだろうけど。

束お姉ちゃんに連絡を取るには、とにかくここから出るか、あるいは・・・。

 

 

「もう何日か貰えれば、私がナノマシンでシステムに穴を空けられると思う」

「楓、あまり無理は・・・」

「だ、大丈夫、できるよ。だからやらせて、箒姉さん」

 

 

心配する箒姉さんに、そう言う。

だって、これくらいできないとダメだから・・・。

 

 

「だが、あの人に連絡を取ったとしても・・・・・・」

「・・・何だよ、箒」

「いや・・・そうだな、今はそれが最善・・・だな。すまない、気にしないでくれ」

「ん? またアレか? 束さん嫌い病か?」

「妙な名前をつけるな」

 

 

箒姉さんが良い顔をしないのは、たぶん束お姉ちゃんが苦手だからって理由だけじゃ無いと思う。

もっと他の・・・もっと、気になること。

学園に来た、黒い無人機・・・とか。

 

 

「まぁ・・・とにかく、もう少し良く考えてみようぜ。正直、俺も混乱してるし」

「そう、だな。そうしよう、私も考えたい」

「うん・・・そうだね」

 

 

でも、怖い。

学園での出来事が、頭から離れなくて・・・怖い。

もし、エンジニアとしての私の・・・私の悪い方の想像が当たってたら・・・?

 

 

・・・大丈夫、ぜったい大丈夫だよ、私。

束お姉ちゃんはきっと、私達と宇宙に行きたいだけなんだから。

きっと、そう。

 

 

 

 

 

―――――本当に・・・?

 

 

 

 

 

Side 織斑 千冬

 

「・・・随分と、変わり果てた姿になったモノだな」

 

 

コッ・・・ッ、と、靴の音を響かせて立ち止まる。

スーツの上に黒のコートを羽織って、ワシントンの夜の空気から身体を守る。

そんな私の目の前には、12月のワシントンではあり得ないような格好をした男がいる。

 

 

裸・・・そう、全裸だ、他には何もない。

髪の所々が禿げ落ち、目は落ち窪んで、剥き出しの身体は骨が浮き出る程に青白く痩せ衰えている。

年の頃は80代、こんな場所で1人でいれば裏路地のチンピラに絡まれる所だが、それも無い。

誰も近付きたく無い、そんな状態の老人だ。

 

 

「・・・国際IS委員会、常任委員長」

 

 

それが、2週間前までのこの男の肩書きだったはずだ。

世界のISを条約で縛り、ISに関わる利益を賄賂やインサイダーと言う方法で吸い上げて来た男。

かつて・・・私と一夏の父親が止めた研究の欧米人研究者だった男。

 

 

コイツだけじゃない、委員会のメンバー21人は全員が何らかの形であの研究に関わっていた。

逆に言えば、だからこそ委員会のメンバーに選ばれたのだと言える。

だがそれは、現段階では何の意味も成さない情報だ。

 

 

「何があった」

 

 

問いかけるが、老人は何も答えない。

たった2週間でここまで凋落した老人は、私を見ること無く虚空を見つめ続けている。

まるで、何も感じていないかのように。

 

 

「・・・束、篠ノ之束に何かされたのか?」

「・・・タ、バ、ネ・・・」

 

 

驚いたことに、束の名前には反応した。

したが、しかし・・・。

 

 

「ヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!?」

 

 

身体を丸めて奇声を発し、異常なレベルで身体を揺すり出した。

あまりの状態に、伸ばしかけた手を宙に彷徨わせるほどだ。

・・・だが、どうやら束に何かされたのは確からしい。

 

 

何しろ、ブツブツと何か言いながら文字通り頭を抱えているのだから。

苦労して見つけ出しただんだが、これでは話も聞けやしない。

他のメンバーを探しても良いが、委員長がこの様では期待薄だな・・・。

 

 

「・・・その方にお話をしようとしても、無駄かと思われます」

「誰だ!」

 

 

委員長のなれの果てから眼を背けて、背後を振り向く。

すると、路地裏の陰から誰かが歩いて来るのが見えた。

今まで、気配は無かったが・・・。

 

 

「お初にお目にかかります、千冬さま」

「・・・何者だ、お前は」

「はい、私、束さまの養女で『くーちゃん』と呼ばれてございます。どうぞ親愛と愛着を込めてそのまま『くーちゃん』とお呼びください」

 

 

・・・殺して良いか。

 

 

「それはもちろん、束さまの親友である千冬さまが死ねとお命じになるのであれば、不肖この『くーちゃん』めは即座に自身を廃棄致します」

「そうか、とりあえず次に私を束の親友と呼んだら私が手ずから殺してやろう」

「畏まりました」

 

 

その小娘は、酷く変わった風貌をしたガキだった。

三つ編みにされた長い銀髪に、閉ざされた瞳、月明かりに輝かく妖精のような容姿。

しかも言うに事欠いて束の養女だと言う、あの馬鹿、処女の癖に養女なぞ取ったのか。

束とはまったく似ても似つかない・・・どちらかと言えばラウラに近いな。

最も、ラウラはもう少し人間味があるが・・・。

 

 

「・・・コイツは、お前が?」

「ええ、その方『も』不肖ながら私が、束さまに代わってご教育させて頂きました」

「教育・・・か。小娘の分際で大きく出たな」

「恐れ入ります」

 

 

まぁ、後ろの老害がどうなろうが究極的にはどうでも良い。

問題は・・・。

 

 

「ならば教えて貰おうか、一夏と篠ノ之姉妹を亡国機業の手に渡したのは何故か」

「束さまの深いお考えは、私にもわかりかねます。ですが、私は束さまよりかの組織を潰せとのご命令を承っております。その件に関しまして、千冬さまにお渡しする物がございます」

「・・・何だ」

 

 

くーちゃんとか言う小娘は、眼を閉じていながらも正確に私の所に歩いて来た。

そしてそのまま、臣下が主君にするかのように跪き。

小さな銀色の箱を、私に差し出した。

カチリッ、と音を立てて開いたそれには、座標らしき物が書かれたメモと・・・銃型注射器。

 

 

「どうぞ、束さまよりの贈り物です」

「・・・そうか」

 

 

一瞬、殴り飛ばしたい衝動に駆られたが・・・それは、束本人にとっておくことにした。

衝動を堪えて、私はくーちゃんとやらからそれを受け取った。

結局の所、束の良いようにされているのが気に入らないが・・・な。

 

 

「一応、聞いておこうか・・・お前達は、どうやって連中を潰すつもりなんだ?」

「それは・・・明日になれば、わかるかと思います」

 

 

穢れなど何一つ知らない、そんな風なくーちゃんとやらの笑みに、何故か不快さを感じる。

コイツは、束の悪い所ばかりを受け継いでいるようだ。

明日か・・・いったい、何を仕掛けたのやら。

 

 

だがそれでも、私は一夏を助けに行く。

そして二度と離さない、この手で守り育てる。

アイツは、私のたった1人の家族なのだから。

 

 

 

 

 

Side 山田 真耶

 

「ふわぁ・・・別にもう早起きの必要は無いのに、これも職業病って言うのかなぁ」

 

 

休校になったIS学園の職員寮で、それでもいつも通りの時間に起きる私。

こう言うのも、貧乏性って言うのかなぁ・・・あふっ。

欠伸を噛み殺しながらベッドから出て、着替えの前に洗面所に言って顔を洗います。

 

 

大人の女性に必要な諸々―――何してるのって? 聞いちゃダメですよ、めっ―――をしてから、ベッドルーム兼リビングルームな部屋に戻る。

トーストなんか焼きながら、着替えようと服をポイっとしつつテレビをつける。

さーて、今日の星占いはーっと・・・と?

 

 

『本日未明、国際新聞編集者協会を通じてある情報が加盟120カ国の主要報道機関に対して、ある情報がもたらされました』

「国際新聞編集者協会・・・聞いたこと無いなぁ」

 

 

たぶん、ジャーナリストとかの国際機関だろうけど。

何か最近、いろいろトラウマになっててこう言う「緊急ニュース!」的なの嫌いなんですよね。

うう、チャンネル変えようかな・・・。

 

 

『情報元は不明とのことですが、情報によりますと・・・』

「・・・」

 

 

チャンネルを変えようとリモコンを手に取ったんだけど、続きが気になって止まる私。

・・・これも、貧乏性って言うのかな、ホントに。

実は私、クイズ番組とか好きなんですよね。CMとか挟まれるとヤキモキしたりして。

 

 

『世界のIS運用に対し責任を持つ国際機関、国際IS委員会が国際的テロリスト集団、通称『亡国機業(ファントム・タスク)』と癒着関係にあるとのリーク情報があり、現在各国は情報の精査を行っている状態で・・・』

「へー、国際IS委員会と亡国機業(ファントム・タスク)が癒着してたんだ。悪いことをする人もいるものだよねー」

 

 

まぁ、割と良くある話だよねー・・・・・・って。

え、ええええええええええええええええええええええええええっっ!?

 

 

「国際IS委員会が、亡国機業(ファントム・タスク)と繋がってたぁっ!?」

 

 

ちょちょちょ、大ニュースじゃないですか!?

と言うか、私達IS関係者が当事者じゃないですか!

私達は、委員会の管轄下で動いているんですから。

 

 

え、じゃあ、一連のテロの主犯は委員会だったりするんでしょうか。

ど、どうして委員会が自分達の学園にテロをやらせるんですか、意味がわかりませんよ。

そもそもそんな荒唐無稽なこと・・・。

 

 

「・・・織斑先生・・・!」

 

 

織斑先生だけが、そんなことを言っていた。

もしかしたら、私達が知らない何かを知っていたのかもしれない。

でも、だけど・・・織斑先生は、ここにはいないですし・・・私達、どうしたら。

 

 

いったい、これから私達・・・ううん、そもそもこの世界は。

どうなって、しまうんでしょうか・・・。




何が真実か、何が虚偽か。
それを計る物は存在しない、それは時に容易に姿を変えてしまう物だから。
しかし僅かな真実の欠片を辿り、少女達は確かな真実へと向かい、事実へと到達する。

虚偽の真実と確実な事実、少女が欲するのは、どちらだろうか。

次回、「インフィニット・ストラトス―黒き叡智―」。
運命の三姉妹の心が交錯する瞬間のために、様々な思惑が交錯する。
世界を襲うは、変革と破壊。
無限の成層圏の彼方に、答えはあるのか。


篠ノ之 楓:
「また見てね!(きらーん)」
*アニメのキャッチコピー的な・・・!
(何をやってるんでしょうね私は)
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