インフィニット・ストラトス―黒き叡智―   作:竜華零

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第46話:「国際連合安全保障理事会決議」

Side 山田 真耶

 

あのニュースから4日、少ないながらも仕事をしつつ(休校中でもやることはあるんです)、ちょくちょくニュースをチェックしています。

後は自前の情報網(コネクション)から情報を得たりしつつ、織斑先生からの連絡を待ちます。

 

 

「いやぁ、面倒くさいことになったねぇ」

「そうですねぇ、どうしてこんなことになってしまったのか・・・」

 

 

オニール先生やヒルダ先生など、欧米出身の教師の方々が本国に引き揚げてしまって。

今の職員室には、日本人職員の方しかいません。

清掃とか施設の管理人さんは臨時の方を雇って代用できるんですが、事務処理の仕事は私達でやらないといけないんです。

まだ廃校が決まったわけでは無いので、機密保持規則は生きてますからね。

 

 

私の向かい側に座って面倒くさそうに書類を片付けている方も、日本人です。

立川(たちかわ)水奏(みなと)先生、ここの卒業生の方で教師1年目の若い方です。

茶髪の腰まであるロングヘアーで、前髪を眉毛の辺りで切り揃えてます。

ものぐさな性格ですけど、やるときはちゃんとやると先生方に評価されてます。

・・・あれ? これって評価って言うのかな?

 

 

『4日前に突如として世界に流れた国際IS委員会と国際的テロリスト集団『亡国機業(ファントム・タスク)』の癒着の件に関して、関係各所の調整は難航しており・・・』

 

 

つけっぱなしの職員室のテレビからは、ニュースが流れ続けてる。

ニュース専用のチャンネル設定だから、延々と同じ話ばかりが流れてるわけですけど。

 

 

「これ本当なんですかねぇ、山田先生」

「さぁ・・・国際IS委員会の施設に査察が入るって話だけど・・・」

「その場合、私らも罪に問われたりするんですかねぇ」

 

 

一応、ここは委員会の管轄下だから。

もしかしたら、査察とか強制捜査くらいなら入るかもしれません。

うーん・・・責任取らされるのは嫌だなぁ。

 

 

『また、議長国アメリカの呼びかけで2日前から開催されている『亡国機業(ファントム・タスク)』への一連のテロ行為に対する制裁措置に関する国連安保理の議論は、中露両国が欧米主導の決議案に反対するかどうかに焦点が絞られており・・・』

 

 

続けて聞こえてきたニュースは、また面白く無い情報を教えてくれる。

そして国際IS委員会のスキャンダルとは別に、『亡国機業(ファントム・タスク)』への制裁措置に関しての国際的な議論が、ここ数日でいきなり吹き出した。

 

 

もちろん、『亡国機業(ファントム・タスク)』の活動は人的被害が少ないと言うだけで、ISをテロに使用すると言う時点で各国の安全保障を著しく阻害しているって理屈はわかる。

だけど今まで、公然と制裁措置を取るって話は不思議と出なかったのに・・・どうして今になって。

まるで、何か都合の悪い物を消したがってるみたいな・・・。

 

 

 

 

 

Side セシリア・オルコット

 

国際IS委員会のスキャンダルが発表されて以降、英国もかなりの混乱に見舞われましたわ。

何しろIS関係者は大なり小なり委員会の影響下にありますし、軍だけでなく主要な政治家や官僚の大多数がこの問題とは無関係ではありませんから。

 

 

そしてそれは、我がオルコット家と言えども例外ではありません。

何しろ、当主である私自身が最新鋭ISの操縦者にして代表候補生なのですから。

マスコミやパパラッチに関しては、おそらく我が国が世界一でしょうしね。

 

 

「それでは、そちらも自由には動けませんか?」

『我々は軍でも秘匿された部隊だ、だからお前よりはマシだが・・・』

「申し訳ありませんわね、貴族なもので」

 

 

そしてスキャンダルから4日後の早朝―――日本は、夕方くらいでしょうか―――私はオルコット本邸の執務室で、ISを使った専用チャネルでドイツのラウラさんと話しています。

内容はお互いの状況と、学園での別れ際に皆で取り決めたこと。

すなわち、一夏さん達の捜索。

 

 

『だが・・・安保理の決議内容次第だが、我々も戦場に投入される可能性がある。その場合は、すまないが私達は力になれない』

「構いません・・・元々、各々の個人的なツテを頼ってのことなのですから。英独の情報網も完璧ではありませんし・・・」

 

 

現在、国連では常任理事国である我が英国も含めた15ヵ国が、『亡国機業(ファントム・タスク)』への軍事制裁の可否について話し合っていますわ。

特に国際IS委員会の立地国であるアメリカにとって、今回のスキャンダルは恥以外の何でもありません。

そして今月は幸い、アメリカが安保理の議長国ですし・・・制裁案が机上に乗るのが早かった。

 

 

焦点は、この時点での軍事制裁に正当性があるのかどうかですわ。

一連のテロが本当に『亡国機業(ファントム・タスク)』が行ったと言う法的に有効な証拠があるのか。

『亡国機業(ファントム・タスク)』は犯行声明を出すわけでは無いので、明確な関与を示す証拠を集めるのがなかなか難しいのです。

 

 

『他にも、「誰の土地でも無い」IS学園でのテロを「誰への脅威」と認定するのかも問題だが・・・』

「そもそもテロと言う行為が果たして、国連憲章下で定められた「自衛権の発動」の要件を満たしているのかどうかという議論も、未だに明確な解答はありませんものね・・・」

 

 

各国が持つ自衛権の発動には、敵対勢力の「武力攻撃」に晒される必要があります。

人的損害の極端に少ないテロを「武力攻撃」と認定し、さらに『亡国機業(ファントム・タスク)』を国家に匹敵する国際法上の主体として認定し、報復措置としての国連憲章第7章・・・すなわち多国籍軍が排除しなければならない国際社会の「共通の敵」と認められるか、どうか。

・・・自分で言っていてアレですが、いちいち面倒くさい手続きですわね。

 

 

いずれにせよ、もし英独もこの武力制裁に参加するのであれば。

相手がISを保有している以上、私達が遠征部隊に入る可能性は高いと言えます。

そしてそれは、同時に・・・。

 

 

『史上初めて、ISを持つ勢力同士が戦うことになるだろう』

「そうですわね・・・」

 

 

・・・ふと、今はどこにいるかもわからない友人の顔を思い出します。

ISは兵器では無いと言い、姉に憧れているのだと笑顔を浮かべていた友人の顔を。

彼女は今の状況に対して、何を想うのでしょうか・・・。

 

 

 

 

Side 凰 鈴音

 

言うまでも無いけれど、私の国は国連安保理の常任理事国。

拒否権を持つ5大国の一角、世界の安全保障に対して責任を持つ国よ。

私はそれを誇りに思っているし、ある意味で当然だと思ってる。

 

 

私達の国は、強いんだから・・・ってね。

まぁ、最近はちょっとそのせいでいろいろと面倒な問題が出て来てるけど。

ウチの国は多分、制裁決議が出ても軍隊は出さないと思うけど・・・。

 

 

「何と言うか・・・やる気出ないわよねぇ」

 

 

不謹慎なことを呟きながら、候補生養成所の訓練施設から外に出る。

着ている服はIS学園の服じゃ無くて、深い青色の中国人民解放軍空軍IS部隊の制服。

つまりは軍服、私はまだ未成年だから軍属扱いだけどね。

 

 

祖国と党と同胞を守るために戦う、それは私にとっては十分に戦う理由になる。

ここにはお父さんもお母さんもいるし、友達もたくさんいるから。

だけど・・・そんな私を、彼が見ていてくれないなら意味が無い。

まぁ、それは言い過ぎだろうけどね・・・何より本当に不謹慎だし。

 

 

「あー、晩御飯はまた激辛マーボーオンリーかしらね・・・・・・って、うん?」

 

 

ふと足を止める、軍靴が施設の砂利道を踏みしめる音が耳に届く。

ここは軍施設だから、もちろん私以外にもたくさん人が歩いてるんだけど・・・。

その中で、何だか視線を感じる。

 

 

見てみれば、隅の方で何人かの・・・たぶん年下の娘達が2、3人いて、気のせいで無ければ私のことを見てる気がする。

な、何かしら、私、何かしたっけ。

と言うかあんな娘達、見たこと無いんだけど・・・。

 

 

「・・・何か、用かしら?」

 

 

声をかけたら、何でか「きゃーっ、声かけられちゃったー!」みたいな反応が返って来た。

いや、声に出してるわけじゃないけど、何かそんな感じ。

えーと・・・ここが学園なら「何よ」とか言うんだけど、そうもいかないのよね。

 

 

「あ、あのっ」

「・・・はい?」

 

 

しばらくどうした物かと考えてると、向こうから意を決したように話しかけて来た。

着ている服は私と似てるけど、ちょっと違う。

あ、この服・・・候補生養成所の訓練生の制服だ、私も着てた時期があったから。

 

 

「あ、あの、失礼かもしれないですけど・・・凰 鈴音先輩ですよね、『甲龍(シェンロン)』のパイロットの」

「え、ええ・・・そうだけど」

 

 

聞かれたから頷いてあげたんだけど、そしたら訓練生の娘達の顔が輝いた。

 

 

「えーと、何で私のことを知ってるのかしら?」

「えーっ、そりゃあ訓練生で凰先輩のことを知らない子はいないですよっ」

「たった1年で候補生の資格を取って、すぐに最新鋭の専用機も貰って・・・」

「単身、日本のIS学園に留学して・・・」

「しかも専用機を得てすぐに二次形態移行(セカンドシフト)を果たして・・・」

「「「私達、先輩みたいになりたいんですっ」」」

 

 

・・・・・・何コレ、この純粋な尊敬のオーラ。

でもそっか、外から見ると私ってそう言う風に見えちゃうんだ。

何と言うか、面映いと言うか。

 

 

私は本当は、そんな尊敬されちゃうようなできた人間じゃないけど。

好きな人1人も守れない、弱っちぃ奴だけど。

 

 

「・・・なれるわよ、きっとね」

 

 

でも自分に憧れてくれてる後輩の前でくらいは、格好をつけたいって思う。

もしかしたら、箒とかも・・・楓に対して、そう思ってたのかもしれないわね。

ううん・・・きっと、そうなんだろうなって、思った。

 

 

 

 

 

Side 織斑 千冬

 

南からトンボ帰りで、私は再びアラスカのエルメンドルフ空軍基地に戻ってきている。

ここはアメリカ太平洋軍指揮下のアラスカ軍第11空軍の基地でもあるから、以前に来た時もそれなりに賑やかだったが。

 

 

しかし今は、1週間前に比べて賑やかさが増している。

と言うのも、この基地の戦力が増強されている所でな、すでに私が来る直前にアラスカ州兵の2個航空団がこの基地に回されているはずだ。

さらに順次、南から空軍部隊がアラスカ各地の海空軍基地に派遣されてくるはずだ。

 

 

「まさか、米軍に世話になる日がくるとはな・・・」

 

 

まぁ、あながち縁が無いわけでも無い。

元々私は、『ブリュンヒルデ』の特権として非常時における自由行動権を持っていたしな。

輸送機から降り立って、寒冷仕様の戦闘機や爆撃機がひしめく中を歩く。

確か、ダニエルだかマッキンソーだか言う士官に連絡をしておいたはずだが・・・。

 

 

「いよぉ『ブリュンヒルデ』、エルメンドルフ基地にようこそってな!」

「・・・・・・イーリス」

 

 

ところが私を出迎えたのは、ダニエルでもマッキンソーでも無かった。

そこにいたのは、どこか野性的な雰囲気を持つ美人。

前にいた時はいなかったんだが・・・南から回ってきたのか。

 

 

確かに相手はISを持っているわけだから、IS部隊を増援として回してくるのは当然の選択だ。

正直、ジーナあたりを持ってくるかと思ったんだが。

私の前にいるのは、雪の中でも軍服の胸元を緩めて肌を見せている女、イーリス・コーリング。

一応、知り合いだ・・・アメリカの代表操縦者だしな、コイツは。

 

 

「何だよ何だよ、アメリカに来るなら私かナタルに声をかけてくれよな。お前は昔っから妙な所で水臭ぇよなぁ」

「・・・アメリカの代表者は、こんなのばっかりか」

「あ? 何か言ったか?」

「吹雪のせいだろう、私は何も言っていない」

「ふーん? あ、そうそう、ナタルがよろしくっつってたぜ。あとジーナの姐さんが民間人はスっこんでろって言ってたけど、コレは伝えて良かったんだっけな?」

 

 

それを私に聞いてどうする。

まぁ、いずれにせよ私は特性上、IS部隊と行動を共にしていた方が都合が良い。

その条件で、大統領に機業の本拠地の座標を教えてやったのだからな。

 

 

しきりに話しかけてくるイーリスの声を無視しつつ、私は北の空を見上げた。

その先にあるこの惑星(ほし)の極点に、想いを馳せる。

その先には、私の弟がいるはずだと願って。

 

 

 

 

 

Side 更識 楯無

 

ロシア連邦ムルマンスク州セヴェロモルスク、ロシア海軍北方艦隊の本拠地。

北極海最大の都市でもあり、ロシアの原子力潜水艦の基地でもある。

氷点下を遥かに下回る土地、だけどISのPICに守られている私はそれほど寒さを感じない。

 

 

セヴェロモルスクは閉鎖都市で、一般人はけして入れない。

だけど私はロシア代表だから、問題無く入ることができる(許可はいるけど)。

そしてもう1人、日露両国の国籍を保有する専用機持ちのパイロットも。

 

 

「ここが、ロシア北方艦隊の港・・・」

「フランスの元代表候補生としては珍しい? シャルロットちゃん」

「あ、はい・・・じゃなくて、す、すみません!」

「良いのよ、珍しいのは私も一緒だもの」

 

 

日本から持ってきた扇子をヒラヒラさせながら、シャルロットちゃんに笑いかける。

この1週間はモスクワ、サンクトペテルブルグ、そしてここムルマンスクとロシア国内を移動しっぱなしだったけど、常に2人一緒に行動してたわ。

 

 

シャルロットちゃんを1人にするわけにもいかないし、IS操縦者が2人いればそれだけで抑止力にもなるし交渉のカードにもなるから。

ロシア連邦保安庁のフェリックスおじ様の説得には時間がかかったけれど・・・最終的には、ロシアも北極海でアメリカ海軍に好きにさせるわけにはいかないと判断した。

 

 

「安保理の協議も大詰めだし・・・後は文面の調整だけね」

「いつも思うんですけど、あの作業に大半の時間を使ってますよね」

「あら、言葉は大事よ。どんな時でもね・・・」

 

 

その文言ひとつで、世界情勢が変わる。

安保理決議とは、そう言う物よ。

その意味では、どんな条約よりも重い意味を持っている。

 

 

「さぁ、行きましょうかシャルロットちゃん。ロシア海軍の将校と話し合わないと」

「あ、はい・・・ロシア軍かぁ」

 

 

ロシアの原子力潜水艦と砕氷船は、今回の作戦に不可欠だから。

ユーラシア同盟としても、『亡国機業(ファントム・タスク)』との関係は隠蔽したいでしょうし。

実は日本以外で一番更識家と関係があるのは、ロシアだからね。

日本の方は、簪ちゃんと虚ちゃんが頑張ってくれてると良いのだけど・・・。

 

 

さて、先代「更識楯無」が遣り残した仕事を片付けに行きましょうか。

そして一夏くん達を回収して、今後の策を練る。

その時にはおそらく彼らはもう、ISの秘密を半分くらい知っているはずだから。

 

 

 

 

 

Side くーちゃん

 

女神の歌が、聞こえます。

我が母にして救い主、光の全てを掲げる我が王。

私がこの世に存在を始めたその時から、私には女神の歌が聞こえています。

 

 

その歌声のままに、私は生きる。

その声に指すままに、私は動く。

我が命・・・我らが命の全てを、あの御方に捧げる。

あの御方が私を拾ってくださったあの日から、私はそう決めています。

 

 

「あの御方の望みは、我が望み・・・」

 

 

寒冷極まる北の極みに立ち、私は両岸を見渡す。

何も見えぬ両眼は、しかし全てを見ることを可能とします。

ISと言う眼を得た私にとっては、外界のことを知るなど造作もないことです。

 

 

「あの御方の宝は、我が宝・・・」

 

 

千冬さま、一夏さま。

そして箒さまと、楓さま。

この4名をお守りすることもまた、我が使命。

 

 

全ては、束さまのお望みのままに。

この世の全ては、束さまのために。

それ以外に。

 

 

「価値、無し」

 

 

問題は、箒さま達をお連れするタイミングですが。

正直な所、私は束さまの足元にも及びません。

及びようも無い程に、及ばない。

 

 

束さまは彼の組織を潰しておいてほしいとは申されましたが、箒さま達をお連れしろとは申しておりません。

おそらくは、束さまは箒さま達に自らご自分の所に来てほしいのではないでしょうか。

しかしそれは、私のような卑小な存在が考えて良いことではありません。

箒さま達の安全を確保しながら、彼の組織を壊滅させることを考えるべきでしょう。

 

 

「実働は多国籍軍が行うでしょう、さて・・・」

 

 

私が知る限りの文言では、最後通牒の期間は48時間。

海底の米ロの原子力潜水艦が受ける情報を拾っていれば、タイミングはわかるでしょう。

後は、箒さま達のお傍にいる「私」が何とかするはず。

私達は繋がっている、群にして一、一にして群・・・。

 

 

「・・・この感情は、何と呼べば良いのでしょうか」

 

 

箒さま達・・・中でも楓さまに会えると思った時、私の胸に奥が微かに震えるのを感じます。

私はこの感情を何と呼べば良いのかわかりませんが、しかしそれも構いません。

 

 

きっと楓さまはまた、以前のように私と共に束さまを支えてくださるでしょう。

また、お菓子作りなどをしてくださるかもしれません。

今度会う時には・・・。

 

 

「・・・少しは、まともな料理ができるようになっていれば良いのですが」

 

 

楓さまと、早く会いたい。

そう想う私は、少しは人間らしさを持っているのでしょうか。

 

 

 

 

 

Side 織斑 一夏

 

アレからさらに10日、ようやく落ち着いていろいろと考えられるようになってきた。

楓の身体も復調した感じだし、楓のおかげで断片的だった情報も徐々に形になってきた。

今の所、『亡国機業(ファントム・タスク)』側から俺達に何か要求されたりとかは無い。

ただひたすらに、この施設の子供達の相手をさせられるだけだ。

 

 

・・・でも、どうなんだろうな。

余計なことと言われればそれまで何だろうけど、あの子供達を放っておいて良いのかな。

だってここにいれば、いつかあの子達はテロリストにさせられるんだろ。

だったら、ここから連れ出した方が良いんじゃないかと思う自分がいる。

何かしたいと、何かできるはずだと信じたい自分がいるんだ。

 

 

「一夏さんは、優しいね」

 

 

朝食の時そんな話をすると、いつも決まって楓がそう言うんだ。

俺が、優しいって。

そう言って笑う楓は、箒がベッタリになるものわかるくらいに可愛いかったけど・・・。

 

 

でも俺は、優しくなんかない。

例え優しかったんだとしても、力が無い。

力が欲しい、IS学園に入ってから何度も思ったことだ。

皆を守れる、力が欲しいって。

 

 

「大丈夫、きっと『白式(びゃくしき)』がその力をくれるよ」

「いや、ISじゃ無理だと思うんだけど・・・」

「どうでも良いが、それは朝食の席でするような話か? いや、私も気になっていることであるから、良いのだがな」

 

 

ずずず・・・と味噌汁を啜りながら、箒が話に入ってくる。

これこそどうでも良いけど、何でここに味噌汁があるんだろうな。

まぁ、ここまで来れば誰も飯や飲み物に警戒しなくなってる。

でも不味いんだよ、五反田食堂の定食が懐かしいぜ・・・弾と蘭、元気かなぁ。

 

 

「まぁ、それはそれとして・・・そろそろ、良いと思うんだよ」

「・・・そうだな」

「うん」

 

 

俺の言葉に、楓と箒が頷く。

そろそろって言うのは、「そろそろ脱出について真剣に考えようぜ」って話だ。

でもまだ、アイツらが何で俺達をここに連れて来たのかってのがわかってないんだよな・・・。

まぁ、それでも一応考えておこうぜ。

俺が実際に口にしようとした、次の瞬間。

 

 

ズ、ズン・・・ッ!

 

 

遠くで、何か崩れるような音がした。

音だけじゃ無く、俺達の足元も・・・施設全体が、断続的に揺れる。

反射的にテーブルの端を掴んで、身体を支える。

気のせいか、天井からパラパラと砂みたいなのが落ちて来てる。

な、何だ・・・?

 

 

「・・・楓、私から離れるなよ」

「う、うん・・・でもこんなにくっつく必要は無いと思うんだ」

 

 

箒が楓をしっかり抱きしめて守るのを横目に確認した直後、今度は照明が落ちた。

かと思えば、薄暗い赤の照明が明滅して部屋を照らす。

まるで、何かの警告音みたいなのが流れ始めて・・・。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

揺れる施設、明滅する視界、徐々に大きくなる爆音。

天井からはパラパラとセラミックか何かの欠片が落ちて来て、事態の深刻さを教えてくれる。

そして私は、箒姉さんに抱き締められてる、良しOK。

 

 

「な、何だ・・・? どうも、良く無いことが起きてる気がするんだが」

「やめてよ一夏さん、一夏さんがそう言うと大体本当のことになるんだから」

「だが、何かが起こったのは事実だろう。現に外が騒がしくなってきた」

「でもなぁ、まずは何が起こってるかわからないと・・・」

 

 

・・・まぁ、そうだよね、まずは情報を得ないとね。

マドカさんとかスコールさんに聞きに行っても、たぶん都合の悪い事は教えてくれないよね。

なら、ここは。

 

 

「ずばり、私の出番だよね!」

 

 

きゅぴーんっ、カットインが入るよ!(意味不明)。

箒姉さん達が心配そうな顔をしてるけど、でもこう言うのは私の仕事だよ。

何しろ、これくらいしかできないしねっ。

 

 

・・・落ち込んでないで、『黒叡(こくえい)』を慎重に限定起動。

前までだったら警告されたけど、今は何も言われない。

と言うことは、私達に構っていられない程に切羽詰まってるってことだよね。

 

 

「えーと・・・」

 

 

にゅるにゅるっと枝を伸ばして、施設のデータベースに根を張る。

・・・あ、つまりハッキングしてます。

犯罪だから、良い子は真似しちゃダメです・・・あれ?

 

 

とか何とか言ってる間に、ここ1週間で施設内に配置したナノマシンをコントロールして『黒叡(こくえい)』に情報を集めて、統合して検証して結論を得る。

うん、何だか久しぶりだけど・・・これが私だよね。

んー・・・。

 

 

「・・・攻撃、されてる?」

「何!?」

「えっと、施設の迎撃システムが動いてて・・・待って待って、外壁の衝撃パターンで何とか・・・あと、この深度が保障できる艦種は・・・」

 

 

えっと、ここはロモノソフ海嶺近郊の海中で、海底山脈の上・・・現在、深度500メートル。

データによると900メートル地点・・・つまり海底山脈のある場所まで潜航は可能。

そこに衝撃を与えられる何か・・・500ないし600ミリ相当の水雷タイプ兵装と想定して・・・。

あと、地域的な物も考えると・・・。

 

 

情報を分析して、『黒叡(こくえい)』が私にいくつかの回答を示してくれる。

推定、ロシア海軍ヤーセン級原子力潜水艦、アメリカ海軍バージニア級原子力潜水艦。

・・・ならびに。

 

 

「水中戦仕様の、IS部隊・・・!」

「本当か、楓」

「うん、こんな場所に安定的に攻撃を仕掛けられるのは他に無いと思う」

「マジか・・・一応、希望的観測で言ってみるんだが」

「私達を助けに来た・・・だと、良いよねぇ」

 

 

でも、何でいきなり攻撃なのかな・・・ってそうか、ここはテロリストの基地だった。

別に仲間ってわけじゃなし、見つかって軍隊に攻撃されて当然なんだ。

まさか、アメリカやロシアとかと仲間なわけないもんね。

 

 

「でも、これってある意味チャン・・・・・・ねぇ、箒姉さん、一夏さん」

「何だ」

「・・・これってさ、私達も捕まったりするのかな」

 

 

私の疑問に、一夏さんと箒さんの顔色が変わる。

今、思い出したんだけど・・・鬱になるんで、思い出したく無いんだけど・・・。

私達、たぶんお尋ね者だよね。

たぶんじゃなくても、委員会に指名手配されてるよね。

 

 

えっと、あれ・・・じゃあこれ、チャンスでも何でも無いんじゃ。

・・・ど、どうしよう・・・!?




新登場:
霊華@アカガミ様提案:立川水奏(先生)。
ありがとうございます。


次回、真実の一端が少女の目に晒される―――――。

ISとは、何か。
ISコアとは、何か。
少女は、自らの姉の造り出した物の姿を知り。

そして、世界の再構成を決意する。
少女には、姉と同じ血が流れているが故に。
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