インフィニット・ストラトス―黒き叡智―   作:竜華零

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第62話④:「シャルロット・『デュノア』」

Side シャルロット・D・コルデ

 

高速切替(ラピッドスイッチ)。

大容量の拡張領域(パススロット)を使って、戦闘と同時に武装の切替を行う技術。

僕の特技でもあり、そして一部では代名詞でもある。

 

 

正直に言って、自慢でもあった。

これがあるからこそ、世代遅れの機体でも何とかやって来れたと言う自負があったから。

ラウラとセシリア達と伍することが出来ているのは、この技術があるからだと。

 

 

「・・・っ!」

 

 

両腕に持った銃器を捨てて―――その銃器は外部からの衝撃でひしゃげてしまっている―――次の武装を呼び出す(コール)

軽機関銃を捨てて呼び出し(コール)したのはハンドガン、とりあえずはこれで牽制する。

 

 

でもその武装を手にした次の瞬間には、正確無比な射撃が僕の持つハンドガンを弾き飛ばした。

甲高い音を立てて、金属製の床の上を跳ねながら砕かれたハンドガンの破片が転がって行く。

もう何度目かわからない結果には、僕は無意識の内に奥歯を噛み締めていたことを感じた。

焦るのは良くない、だけど焦ってしまう気持ちは理解する。

 

 

「さぁ、あといくつ残っていますか? 10でしょうか、20でしょうか? まぁ、武装の貯蔵がいくらあろうと結果は変わりませんけど」

「・・・まぁ、まだもう少し、キミの目を楽しませることはできると思うよ」

「そうですか、それは良かった」

 

 

僕の前には、くーちゃんって言うあの銀髪の女の子がいる。

どうも箒や楓の知り合いで、篠ノ之博士の義娘らしい。

まぁ、プロフィールについては今は良いよ、問題は彼女の強さの方だから。

 

 

元々は別の機体だったはずの彼女のISは、何故か今は僕の『リヴァイヴ』と同じ形状になっている。

それこそ、見た目だけでなく武装からシステムまで何もかも。

だけど、機体の出力にいくらか差があると思う・・・たぶん、向こうは第4世代相当だね。

普通ならあり得ないんだけど、篠ノ之博士が相手ならそれでもう納得するしかない。

しかもくーちゃん自身が、僕以上の高速切替(ラピッドスイッチ)の使い手だったって言うのは・・・ね。

 

 

「・・・さて、どうした物かな」

 

 

くーちゃんが僕のハンドガンを撃ち落とした後、自分の持っているハンドガンを用済みとばかりに投げ捨てる様子を見ながら、僕は胸の内で深刻な溜息を吐いた。

これはまた、苦しい戦いになりそうだね・・・。

 

 

 

 

 

Side くーちゃん

 

やってみると、意外と面白くもなんとも無い。

そういうことは、人生においては良くある話です。

私が今やっていることも、それに該当します。

 

 

「高速切替(ラピッドスイッチ)・・・でしたか」

「うん? 何か言ったかな?」

「いえ・・・ただ、思ったよりも面白くない技術だと思いまして」

「・・・地味にキツいなぁ」

 

 

私が持つ重機関銃「デザート・フォックス」2丁による掃射を避けながらも、シャルロットという名前のパイロットが苦笑するのが見えます。

私が知っている限りの人間の中では、そこそこに礼儀を弁えている方ですね。

 

 

まぁ、いずれにしても邪魔なので排除しますが。

 

 

束さまには必要の無い人間、それだけで十分です。

それだけで、私の行動は決まる。

束さまに必要とされない人間は、存在している価値が無いのですから。

 

 

「そう言うわけですので、どうか安らかに旅立ってください」

 

 

重機関銃を捨て、連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」を召喚して持ちます。

即座にそれを構え、構えると同時に撃ちます。

『海宮(かいぐう)』によって照準を合わされた弾丸が飛び、私と同じように両手に銃器を構えたシャルロットのそれを砕き、弾き飛ばします。

驚愕と苦渋に染まる顔、それを見るのはもう何度目でしょうか。

 

 

・・・高速切替(ラピッドスイッチ)、戦闘と同時に行われる武装の高速切替。

扱うにはセンスとある種の才能が必要であり、有り体に言えば「合わせるのが上手い」人間に多いスキルです。

通常、候補生クラスで武装呼び出しに5秒、代表クラスで3秒、しかしシャルロットは2秒で行えるようですね。

ちなみに私は、1秒台で行うことができます。

 

 

「単純な速度の勝負と言うことになれば、貴女には勝ち目はありませんよ」

 

 

そもそも、身体の造りが違うのですから。

ただの人間とISコアの<女王>の分身である私とでは、そもそもISに対する理解度が違います。

束さまを除けば、私以上にISの力を引き出せる存在はいません。

 

 

「・・・それでも!」

 

 

私の言葉に反発・・・と言うよりもただ自分の都合を宣誓するように、シャルロットが飛び出します。

両手に近接ブレードを呼び出しながら、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を応用した独特の動きで迫って来ます。

 

 

私はそれに溜息を吐き、ショットガンを捨てて同じ近接ブレードを召喚します。

同じ武装をより速く召喚する、この作業を。

相手の心を完膚無きにまでヘシ折るための作業を続けながら。

私は、向かってきた相手を斬って捨てました。

 

 

 

 

 

Side ルナ・デュノア

 

フランス領ポリネシア―――――タヒチ。

フランスが領有する太平洋の島、そこの官民共用の国際空港の片隅で数機の軍用機が最後の燃料補給を受けている。

8機のラファール戦闘機の護衛を受けるそれは、「CN235-200」と呼ばれる軍用輸送機。

 

 

中には私を含めたフランスの『リヴァイヴ』隊のメンバーとその機体が詰め込まれていて、戦闘空域に近付けば着陸無しで空中から出撃する手筈になってる。

ただ、届けられる現場の情報はどうも芳しく無いみたいだけど。

 

 

『燃料補給を完了しました。当機はこれより離陸に入ります』

 

 

隊長の方が通信機越しにパイロットや管制官と何事か話した後、そんなアナウンスが入る。

壁際の狭いスペースに肩を立てながら嵌まり込むように座っていた私は、改めて自分を固定するベルトのチェックをする。

ISスーツの上に軍用のコートを着込んだだけの格好で、いつでも出れる、そんな状態。

 

 

本当は、もっと速く向かいたかった・・・実際、欧州の主要国の中でフランスは一番出遅れてる。

ドイツやイギリスは、1機だけとは言え先行させてるって聞いたし・・・。

ニューカレドニアが使えれば豪州軍と同じルートで行けたかもしれないけど、間の悪い事に数年前に住民投票で将来の独立と軍港の閉鎖が決まって、去年にフランス軍が撤退してしまった。

だから仏領ギアナとポリネシア経由での移動になって、時間がかかってしまった。

 

 

「・・・わかっていると思うが、もう一度作戦について説明する。我々は40分後―――――」

 

 

離陸して安定軌道に乗った直後、『リヴァイヴ』隊の隊長の方が私達に戦闘空域についてからの話をする。

私はそれを聞きながら、ウチの製品でひしめいてる機内の様子に感慨深い物を感じていた。

今ここにあるISを筆頭とするデュノア社の製品は、来年にはイタリア製に変わってる可能性が高い。

 

 

いや、厳密にはテンペスタ・デュノア社の製品に。

企業経営なんてそんな物なんて言われるとそれまでだけど、私としては感じ入ることもある。

オレンジ色に輝く自分の前髪を視界に収めながら、今度はまた別のことを考える。

 

 

「・・・シャル」

 

 

声にすらならない小さな声を、口の中だけで漏らす。

腹違いの妹、いわゆる異母妹。

正直浮気性のお父様は死ねばいいと思うし、お母様はもう少しヒステリーを治して欲しいと思う。

と言うか、男装させて学校に入れるって発想が理解できないし。

 

 

でもそれはまた後でどうにかするとして、今は代表候補生として隊長さんの話を頭に入れる。

シャルを助けに行くために、それから会社を救うために。

将来的には、私が社長でシャルが副社長になれたら良いなと思ってます。

シャルと会社経営・・・夢は広がる、だから終わらせない。

終わらせないために、私達は戦うのだから。

 

 

 

 

 

Side シャルロット・D・コルデ

 

デュノア社製の武装が悉く破壊されるって言うのは、それなりに感じる物がある。

そこまで好きだったわけでもないし、生産に携わったわけでも無いけど。

それでも指先に馴染んだ物を失くすって言うのは殊の外、ショックだった。

 

 

「・・・終わりですか?」

 

 

両手に近接ブレード「ブレッド・スライサー」を持ったくーちゃんが、静かな声で僕にそう問いかける。

同じく「ブレッド・スライサー」を持っている僕は、表面上はともかく心の中では溜息を吐きたくなるような状況だった。

持っている武装は同じだけど、向こうはこっちの武器を悉く同じ武器で破壊し尽くしたんだから。

 

 

僕の『リヴァイヴ』に登録されていた武装の数は27、そのほとんどが使用不能にされた。

しかも相手はわざわざ僕が呼び出し(コール)た物と同じ物を展開して、僕の武装を破壊したらそれを投げ捨てている。

これはもう、認めざるを得ない・・・どちらの高速切替(ラピッドスイッチ)が上なのか。

 

 

「・・・ここまで来て、闘志が揺らがないのは称賛に値しますが」

「それはどうも、ありがとう」

 

 

そう、だとしても僕は戦いを諦めるわけにはいかない。

だって、ここでやられるわけにはいかない。

篠ノ之博士と対峙すると決めたその瞬間から、自分よりも強大な敵と戦う覚悟はできていたのだから。

 

 

「では・・・」

「うん、やろうか」

 

 

不思議と敵意を感じない戦場で、僕はくーちゃんと向かい合う。

そして、むしろ自然ささえ滲ませて衝突する。

床を蹴って、中間地点で交錯する。

 

 

両手に持った近接ブレードの刃が、銀色の軌跡を視界に残しながら閃く。

刃を打ち合い、互いの急所へと放ち、防ぎ、火花と金属音を放ちながら逸らし合う。

剣を振るう、避ける、斬りかかる、身体を翻してかわし、緩急を織り交ぜて突く。

永遠に続くとすら思えた均衡は、開始と同じように唐突に崩れる。

 

 

「・・・っ!?」

 

 

声にならない悲鳴を上げたのは、僕。

僕の近接ブレードが、打ち合いに耐えきれずに根元から砕けた。

絶望的、そして宙に銀色の破片が舞う中で銀髪の女の子が僕の右側面の回り込む。

反応する、下からの蹴り上げをブレードの柄を投げ捨てて自由になって両掌で受け止める。

 

 

けれどISコアの出力が足りない、相手のパワーを殺しきれずに防御ごと蹴り上げられる。

衝撃に息を詰まらせながらも空中で反転、天井に脚部をぶつけて姿勢を整える。

踏み抜いた天井の破片が視界に入るのと同時に跳躍、下へと向けて足から落ちる。

重力と推力を合わせて、両足での蹴り。

 

 

「・・・これで」

 

 

それをかわされて、膝を曲げて床を蹴り砕いた衝撃を逃がす。

そしてバランスを整えて立ち上がった時には、すでにくーちゃんが身体を捻りながら拳を腰だめに構えている所だった。

―――――よけられない!!

 

 

「終わりです」

 

 

エネルギーを込めたくーちゃんの拳が、紫電を放ちながら僕の腹部に吸い込まれる。

今度は受けることも、ましてや避けることもできずに・・・腹部に、一瞬で意識を持って行かれそうな程の重い衝撃が走った。

次の瞬間、視界が回転しながら高速で移動・・・つまり、殴り飛ばされた。

 

 

意識が失われそうになる中で、僕は歯を食いしばりながら耐えた。

だって、ここで負けるわけにはいかない。

勝てないまでも、負けるわけにはいかない・・・だって、僕は。

次の瞬間、身体ごと壁をブチ抜いて・・・・・・一瞬、思考が途絶えた。

 

 

 

 

 

Side くーちゃん

 

終わってみれば、特に感慨も無く面白くも無い。

そう言うこともまた、人生においても良くあることです。

だから私は、何かを感じることも無く構えを解きました。

 

 

「苦しませることはしません、私の趣味ではありませんから」

 

 

他の「私」もまた、箒さま達が連れて来た他の人間達を駆逐していることでしょう。

今は個別に独立して動いているために、他の「私」との連絡を絶っていますが。

いずれにせよ、別にジワジワと命を削るような真似は好みません。

 

 

まぁ、ただの人間にしては才能のある部類だったとは思いません。

高速切替(ラピッドスイッチ)に限らず、いろいろと器用な武装の使い方をしていたことは認めましょう。

ただ、私と・・・私を造った束さまには及ばなかったというだけの話です。

それは仕方のないことです、悔やむことはありませんよ。

 

 

 

「・・・まだ、だよ・・・!」

 

 

 

崩れた壁の向こうから聞こえて来た声は、掠れたような小さな声でしたが。

それでも私は驚きました、最後の一撃は『海宮(かいぐう)』の能力も使って絶対防御を抜いたはずですから。

意識があるなど、ましてや声をだすなど・・・。

 

 

「皆・・・きっと、同じ場所に向かってる・・・僕だけが・・・っ」

 

 

崩れた壁に手をかけて、オレンジ色の機体が立ち上がるのを見ました。

先程の一撃が軽かった? いえ、そんなはずは・・・では、何故?

何をもって、シャルロットは立ち上がるのでしょうか。

 

 

「僕だけがっ・・・こんな所で・・・っ!」

 

 

壁から手を離し、よろめきながらも立ち上がる。

その姿は非常に雄々しく、堂々とした物でした。

しかし、それでもダメージの深刻さは隠せてはいないようです。

 

 

私の最後の一撃によってエネルギー・シールドを貫通した攻撃の威力が、オレンジ色の機体の胸部と腹部の装甲を粉々に砕いていたからです。

今の私には、黒いISスーツと白い肌がしっかりと見えています。

次に同じだけの攻撃を放てば文字通り、命を奪える、でしょ・・・む?

 

 

「『Acceleration―・・・・・・une』ッ!!」

 

 

息を詰まらせながらシャルロットが宣言し、同時にオレンジ色の機体からオレンジ色に輝く光の粒子が溢れ出しました。

エネルギーの余波が風を生み出し、波打つように私の髪を揺らします。

なるほど、良くはわかりませんがそれが貴女の切り札と言うわけですね。

 

 

「ならば私も、これまでの例に従わねばなりませんね」

 

 

とん、足元を少しだけ強く 踏みます。

するとその次の瞬間、シャルロットさんと同じように私の機体からも黒い粒子のような輝きが溢れ出します。

シャルロットの顔に驚愕の色が浮かびますが、それもすぐに消えます。

まぁ、その切り替えの速さは流石と言うべきでしょうが。

 

 

現在、『海宮(かいぐう)』はナノマシンの補助を受けて相手の機体性能の全てをコピーしています。

武装だけでなく、システムまで。

なので私にも、『Acceleration』と言うシステムは使えるのですよ。

残念でしたね、シャルロット。

 

 

 

 

 

Side シャルロット・D・コルデ

 

速く、速く・・・もっと、速く!

そう念じながら、僕は動く。

高速切替(ラピッドスイッチ)にしろ何にしろ、僕が相手よりも1秒遅れていることはわかってる。

 

 

「・・・つぁっ!?」

 

 

今もまた、展開した武装を使うよりも速く、相手の攻撃が僕に届いている。

実体剣のブーメランのような武器を投げてみても、一瞬速く投げられた相手のブーメランに弾かれて明後日の方向へ飛ばされる。

機体の出力はむしろ相手の方が上なわけだから、同じことをしていたんじゃ勝てない。

 

 

だけど思考してから手にするまでの2秒、この2秒を自分の力で短縮するのは極めて難しい。

わかってはいても、どうしたって思考と動作を完全に同時に行うことはできない。

僕の努力云々の問題じゃ無くて、僕が人間であればあって当たり前のタイムラグなんだから。

 

 

「これ以上、時間をかけるわけには参りません」

「・・・『Acceleration―due』!」

 

 

第2段階、蓄積していたエネルギーを放出して機体の動作性能を無理矢理引き上げる。

普通なら、これで相手よりも速く動けるはずなんだけど。

 

 

「では、私も」

 

 

そう、相手も同じようにシステムの段階を進めてくる。

システムまでコピーできるなんて、反則にも程があるよ。

即座にくーちゃんが僕の側面に回り込んで、床を這うように放った拳を打ち上げてくる。

 

 

「ぐっ・・・!?」

 

 

右の脇腹に直撃、脇腹に当たったのに脳を揺らされるような衝撃を受ける。

折れそうになる膝を叱咤して堪える、だけどその代わりに動きが止まってしまう。

この段階でさっきみたいな重い追撃を受けると、それだけで敗北が確定してしまう。

僕も『リヴァイヴ』も、防御力に関してはもう無いに等しいんだから。

 

 

負ける・・・それは、ダメだ。

 

 

オレンジ色の輝きを引き裂きながら進む黒い光に、閉じそうになる目を必死で開ける。

負けられない、負けるわけにはいかない。

鈴もセシリアも、皆も・・・一夏や箒、ラウラだって、きっと先に進んでる。

だから、こんな所で僕だけが遅れを取るわけには・・・。

 

 

「では、今度こそ―――――」

 

 

僕だけが、こんな所で遅れを取るわけにはいかない!

遅れるなんて嫌だ、許しちゃいけない。

僕はまだ、一夏達に何も返せていないじゃないか・・・思い出せ!

速く、速く・・・!

 

 

「―――――さようなら、です」

 

 

・・・もっと、疾く!

アルデンヌを吹き抜ける、風のように。

優しく、そして力強い・・・。

 

 

<戦闘経験値、一定水準に到達>

 

 

・・・『疾風(ラファール)』のように!

 

 

<操縦者(パイロット)補助機能、制限(リミッター)解除>

 

 

 

 

 

Side くーちゃん

 

・・・何?

捉えかけた感触が腕に残らず、霞のように消えてしまいました。

私としても、戸惑う心はあります。

 

 

次の瞬間、背部で何かが爆発したかのような重い衝撃が走ります。

爆発と言うよりは、間違いなくショットガンの弾丸が炸裂した感触です。

シールド・エネルギーが多少減った程度ですから、問題はありません。

呆けたまま動きを止めていたことが、問題だったのでしょう。

たたらを踏みかけた足を止めて、素早く後ろを振り向きます。

 

 

「・・・」

 

 

そこには、セミオートショットガン「レシルムⅢ」を両手で構えたシャルロットがいました。

あれは確か、デュノア社の・・・専用機のための特注品でしたね。

なるほど、まだ武装を残していたと言うことでしょうか。

私がそう考えた後、シャルロットが次弾装填(リロード)、撃ちました。

たかが実弾、シールドを厚めに・・・何?

 

 

「むぐ・・・!」

 

 

先程はシールドを抜けなかったはずの弾丸が、今度はシールドを抜いてきました。

絶対防御こそ抜けない物の、それなりの衝撃を肩に受けます。

一歩だけよろめいて・・・シャルロットを睨みます。

 

 

「Shield Piercing Ballet・・・シールド貫通弾さ、特注品で数は少ないけどね」

 

 

淡々と説明するシャルロットに、私は軽い苛立ちを覚えます。

そんな私を見て、トン、トン・・・とシャルロットが軽く跳びながらリズムを刻み始めます。

それに対して私は、ゆらり、と身体を傾かせた後・・・。

 

 

動きました。

 

 

風を切る音、ISの補助を得て音速に近い速度で動きます。

両手に武装を展開し、1秒程度でその銃器を放とうとした所で。

引き金を引く直前、私が手にした銃器がシャルロットの近接戦用ナイフで弾き飛ばされました。

 

 

「・・・っ」

 

 

どう言うことです、展開は私の方が速いはずなのに。

まぐれ? しかしまぐれで私の・・・っ。

 

 

「な・・・」

 

 

気が付けば、私の眼前にサブマシンガン「フリッグ」の銃口がありました。

特殊加工された20mm弾が火を噴き、襲いかかりました。

急速に後退しながら顔の前で両腕を交差させ、弾丸を防ぎます。

弾丸事態に威力はありません、ありませんが・・・。

 

 

次の瞬間、側面からショットガンの一撃が頬を撃ちました。

 

 

舌を噛みそうな程の衝撃、心の中で舌打ちしながら両手に新しい銃器を展開して、直後には撃ちます。

しかしそれはむなしく空を切り、壁や床に銃弾が跳ねます。

これらの事象が意味していることは、一つ。

 

 

「私が、遅い・・・!?」

 

 

言葉にしてみても、理解ができません。

何故ですか、先程までは私の方が圧倒的に速かったはずです。

それが何故、こんな短時間で逆転されなければ・・・私の高速切替(ラピッドスイッチ)の1秒と言う速度を上回るなんて、人間だけで出来るはずが・・・。

 

 

「・・・まさか」

 

 

頭の片隅に浮かび上がった仮説に愕然としながらも、私は私を追撃してくるオレンジ色の機体・・・その残像を睨みつけます。

まさか、武装展開の動作を全て自分のISに・・・!?

 

 

「貴女・・・武装の選択と展開を、ISに任せて・・・!」

 

 

言いつつ、次の武装を展開する・・・この際、私の思考は「武装選択 → 展開」と言う作業を経ています。

しかしシャルロットは明らかに「武装選択」のステップを飛ばしています、いえ、出来るだろうことは知っています、知っていますが。

ISに武装選択を任せるなど、通常なら戦闘のパターン化を嫌ってやりません。

 

 

「・・・『ラファール・リヴァイヴ』」

 

 

武装を向けた先から姿を消して、気が付けば傍にいる。

そんな相手に、辛うじて意識だけが追いつきます。

 

 

「デュノア社自慢のISだよ、お買い求めは各支社の営業部まで」

 

 

・・・戯言を!

ほんの少し、動きが速くなった程度で・・・!

 

 

 

 

 

Side シャルロット・「デュノア」

 

・・・気付かれたかな。

まぁ、気付かれても対処できないって言うのがこの策の肝だけどね。

『リヴァイヴ』が事前に設定したポイントに自動で出現した武器を掴んで、跳躍しながら撃つ。

 

 

サブマシンガン「フリッグ」・・・フルオート・バージョン。

セレクター操作でフォアグリップ・マガジンから給弾、マガジンを撃ち切ってから特殊なダイヤ製の近接戦用のナイフを両手に握る。

もちろん、僕が選択した武装じゃ無い・・・『リヴァイヴ』があらかじめ展開しておいてくれた武装だ。

 

 

「このっ・・・鬱陶しい!」

 

 

相手の銃口を斬り飛ばして、逆に相手が近接武装を持てば離れる。

つかず離れず、『リヴァイヴ』の展開した武装の順番に従って攻防を入れ替える。

残りの武装は、あと4つ・・・。

 

 

・・・砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)

求めるほどに遠く、諦めるには近く、その青色に呼ばれた足は疲労を忘れ、綾やかなる褐色の死へと進む・・・ってわけだけど、さっきまでは立場が逆だった。

足元を穿つ相手の銃弾をステップを踏んで避けながら、自動展開の武装を掴んで最適な行動を取る。

ワン・ステップをISに完全に任せてしまうことで、相手よりも素早く武装の切替(スイッチ)を行うことができる。

 

 

「・・・っ!?」

 

 

近付いた刹那、僕は急速に後退した。

理由は、相手がパイルバンカー・・・灰色の鱗殻(グレー・スケール)を構えたから。

案の定、それは僕の突きだしたダイヤ・ナイフを右腕の装甲ごと軽々と砕いた。

息を詰まらせて、右腕を吹き飛ばされる勢いのままに回転しながら後退する。

 

 

下がった先に『リヴァイヴ』が「フリッグ」を展開、回転しながら掴んで止まったら掃射、僕に近付いて来ようとしたくーちゃんを牽制する。

おかげでくーちゃんのパイルバンカーによる追撃を止めたけど、弾切れ。

4つの武装の内、一つは壊されて一つは弾切れ。

後退を止めて、立ち尽くしながらくーちゃんを見つめる。

 

 

「・・・どうやら、タネが切れたようですね?」

「・・・さぁ、どうかな」

 

 

残りの2つは、パイルバンカーとショットガン。

後者はもう、ほぼ効果が無いことを考えると・・・。

 

 

僕がそう考えていると、『リヴァイヴ』も同じ結果に行きついたらしい。

空気の抜けるような破裂音が響いて、シールドの中に仕込まれてた69口径のパイルバンカーが露出した。

第2世代型装備最高級の攻撃力を誇る僕の切り札、「盾殺し(シールド・ピアース)」。

 

 

「これで、トドメってことかな・・・?」

<・・・・・・>

 

 

小さな声で呟いてみるけど、『リヴァイヴ』のAIは何も答えてくれなかった。

まぁ、別に良いけどね・・・。

 

 

「一応、聞いて差し上げます・・・最後に言い残すことは?」

「そう、だね・・・」

 

 

目を閉じて、少しだけ考える。

言い残したいこと、割とたくさんあるんだろうなって思ってたんだけど。

でも、いざこうしてみると案外、何も無い物なんだね。

 

 

人生を振り返ってみれば・・・最初は、お母さんとの記憶ばかり。

それからは、お父さんと会社の記憶。

厳密に言えば、デュノア社の記憶の方が多くて濃密な気がする・・・年齢的な物も、あるんだろうけどね。

僕の持つ知識の大半は、結局はデュノア社の物だ。

そう言う意味では、母方の姓を名乗った所で・・・・・・僕は。

 

 

「・・・マスター登録、シャルロット・デュノア」

<認証、シャルロット・デュノア>

 

 

そう、結局の所・・・僕は、シャルロット・デュノアでしか無い。

そう決めつけて、重心を下げながらパイルバンカーを構えた腕を後ろに下げる。

生きて、帰ることが出来たのなら。

 

 

「行くよ・・・『リヴァイヴ』!」

<承認、シャルロット・デュノア>

「『Acceleration―trois』!!」

 

 

最終段階、コアに蓄積したエネルギーの全てを放出する。

オレンジ色の輝きが僕を包み込んで、くーちゃんが少し眩しそうな仕草をする。

その瞬間、僕は覚悟を決めた。

 

 

「はあああああああぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 

一直線に突撃、危険も顧みずに正面から突っ込む。

この軌道は、僕が選択したわけじゃない。

僕は・・・。

 

 

「正面からとは、愚かですね・・・!」

 

 

僕は、『リヴァイヴ』を信じてる!

同じようにパイルバンカーを構えるくーちゃんを見据えながら、格段に耐久力の落ち込んだ機体で。

・・・飛び込む!

 

 

そして、2つのパイルバンカーが衝突した。

 

 

一撃目、特殊火薬が炸裂する音が響いて・・・衝撃が、肩を震わせる。

リボルバー機能によって、すかざす二撃目に入る。

鈍い音が響いて、リボルバーが回転し・・・炸裂する。

ぎり・・・音が出るほどに奥歯を噛み締めたのは僕だ。

このままだと、強度で劣る僕が負けるのは目に見えてる・・・っ。

 

 

「・・・良く頑張ったと、褒めて差し上げましょう」

「・・・っ」

「しかし、所詮はにんげ―――――!?」

 

 

くーちゃんが、引き攣ったように息を吸う。

原因は2つのパイルバンカーが衝突を続けてるポイントよりも、わずかに下。

地面に突き立つように出現した、一丁のショットガンだった。

 

 

もし僕が何らかの予備動作(予備思考)をしていれば、くーちゃんは対応できたと思う。

でもできなかった、何故なら僕自身は何もしてなかったから。

これは『リヴァイヴ』が自分で思考して判断した―――――結果だ!

 

 

「あ・・・あり得ない、ISコアが独自に意思をもって行動するなんて・・・!」

「く・・・!」

 

 

歯を噛み締めながら、くーちゃんの驚愕の声を耳に収めながら。

僕は、前に踏み込んでいる左足を持ち上げて・・・。

 

 

引き金を、セミオートショットガン「レシルムⅢ」の引き金を・・・・・・踏み抜いた。

 

 

直後、天井に向けて突き立てられた銃口に火が噴く。

それはくーちゃんのパイルバンカーの側面を撃ち抜いて、その腕を跳ね上げさせた。

リボルバーの回転する音、僕は膝を曲げて相手のパイルバンカーを潜り抜けるように進む。

ヘッドギアが衝撃に耐えられずに吹き飛ぶ感触に顔を歪めながら・・・僕は。

 

 

「つ、ぅ・・・おおおおあああああああぁぁぁぁっっ!!」

 

 

僕と『リヴァイヴ』は、相手のISの腹部にパイルバンカーを、押しつけた。

そして、炸裂する。

視界に、オレンジの粒子を残しながら―――――。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

オレンジ色のエネルギーの残滓が雪のように降り注ぐ中で、歩みを再開する存在がいる。

その者は後ろに斃れた漆黒の塊を置いて、溜息を吐きながら自分の身体を見つめる。

右腕から腹部にかけて装甲の剥がれたその姿は、とても「無事」だとは言い切れない。

 

 

しかしふと、その罅割れた装甲に覆われた腕に誰かが手を重ねる幻が一瞬だけ少女と重なって見える。

オレンジ色の機体を纏った少女は気付かなかったが、その幻は少女に良く似た金色の髪の女性の姿をしていた。

その柔和な微笑は、どこか少女に似ている。

 

 

「さぁ、行こう『リヴァイヴ』。皆、きっと先に行ってるよ」

 

 

―――――シャルロット・デュノア、搭乗IS『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅢ』。

ISコア瞬間最大稼働率、97.4%。




シャルロットさんのガンコレクション案
FURCLUM様提案。
・D-SS M18A3 レシルムⅢ
・SMG-M20A1 フリッグ
ありがとうございます。

シャルロット・デュノア:
・・・うん、まぁ、こんな物かな。

篠ノ之 楓:
相変わらず、いっぱい銃出すね、凄いね。

シャルロット・デュノア:
まぁね、それがとりえだから・・・でも、褒めてくれてありがとう。

篠ノ之 楓:
いやいや。
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