インフィニット・ストラトス―黒き叡智―   作:竜華零

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第65話:「その天才、神域」

それはまるで、心臓が鼓動を打つかのような感覚だった。

バグンッ・・・その場にいる全員の耳に、胸に、心に響くようなそれは。

人生で最初の鼓動に似ていると、何故かそう思える物だった。

 

 

「何だ・・・?」

 

 

戦場の最も深い位置で『アラクネ』隊を率いて戦闘を継続していたジーナ・ワトソンは、怪訝そうな表情を浮かべて手を止めた。

本来ならそれは致命的な隙にすらなったはずだが、幸運と言うべきなのかそれとも他の何かなのか、彼女の周囲を取り囲む無人機もまた動きを止めていた。

 

 

まるで呆然と立ち尽くすように、目前とその場に留まりながら一点を見つている。

その一点とは、あの巨大艦『大綿津見神(おおわたつみ)』。

多層障壁を破られたばかりとは言え、その威容は未だ健在だった。

そして・・・。

 

 

『うわっ・・・な、何だコイツ、急に・・・!』

「・・・! どうしたぁ!?」

『わ、わかりません。敵機が・・・○×△◆!?』

「・・・っ!?」

 

 

部下と通信を繋いだ直後、耳元で響いた残響音にジーナは顔を顰める。

サンセー内で部下のシグナルが消失し、戦場の一部で爆発と轟音が響く。

まさか、とジーナは顔を青くする。

それが意味する所は一つであり、戦士としての彼女の勘が行動を促した。

 

 

機体を翻して、死角から自分に飛びつこうとしていた無人機をかわす。

その直後、無人機が眩い輝きを放ち―――――爆発した。

自爆である。

ジーナは呻きながら、爆縮―――ISコアの自爆は、戦術核にも匹敵する―――によって生じる2度の逆方向から成る衝撃を堪える。

 

 

「ぜ・・・全機、よけろおおおおおおぉぉぉっっ!!」

 

 

そして同様のことが、戦場の各地点で起こっていた。

ジーナのように回避し続ける者もいれば、複数の無人機に組みつかれて爆発に巻き込まれる者もいた。

しかし最も悲惨だったのは、海上の艦艇部隊である。

 

 

上空から近付いて来る無人機はともかく、海中から艦底部に取りつかれてはどうすることもできない。

これまでの激戦を乗り越えて来た空母が、巡洋艦が、駆逐艦が、護衛艦が、瞬く間に艦底部に穴を開けられて沈められていく。

乗員たちは艦を捨てて、夜の冷たい海の中に投げ出されていく・・・。

 

 

「あれは・・・」

 

 

上空で管制を行っている暁陽(あさひ)は、無人機の自爆作戦による阿鼻叫喚の状況を見つめつつも、巨大艦の異変にも気が付いていた。

まるで笑うかのように、縦に大きく外壁を割って穴を開きつつあるそれは・・・。

 

 

・・・まるで、この世の何もかもを嘲笑っているかのようだった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

Side 篠ノ之 箒

 

―――――「黒い」。

ただ黒い、いや、暗い色合い・・・どちらかと言えば、闇色と言った方が良いくらいだ。

見ているだけで、見つめ続けるだけで、どこか不安になるような色だった。

 

 

「教官! 皆・・・下がれっ!!」

 

 

私が呆然とそれを見つめ続けていると、不意に私の脇を誰かが通り過ぎた。

そいつは私の前に立っていた千冬さんよりも前に立つと、片手を掲げて力を行使する。

ラウラがAICの結界を張ると同時に、正面から凄まじいエネルギーの圧力がかかった。

 

 

それは私達を狙ったと言うよりは、360度全体に放った結果当たってしまった、というような物だった。

しかしそれでも、襲いかかってくるエネルギーは凄まじい威力を持っていた。

これまで受けて来た相手のどんな攻撃よりも荒々しく、それでいて精密だった。

 

 

「ぐ、く・・・っ・・・」

 

 

ラウラはそれでも、数十秒間以上はそれに耐え続けた。

背後に固まった私や一夏、鈴達を守るようにAICの壁を展開して耐える。

AICの結界の外では、壁が、床が、天井が・・・全てが吹き飛ばされている状況を見れば、ラウラの咄嗟の判断に救われたことになる。

 

 

「・・・ぐぉあぁっ!?」

「「「ラウラッ!?」」」

 

 

しかしそれも数十秒、それだけの時間を持つ答えた後にラウラは後方に吹き飛ばされた。

AICを砕かれた勢いのままに私達の頭上を飛ばされ、後方の壁の向こう側に消えて姿が見えなくなる。

そちらに気を取られた一瞬、エネルギーの風が止まる。

 

 

「・・・うん? 誰か吹っ飛んだ? ・・・ああ、何だゴミか。じゃあ良いや」

「・・・っ」

 

 

その言葉に、刀を握る力を強める。

そして、再び見つめる・・・何よりも深い闇色の鎧に身を包んだその人を。

右手に黒い箱(ブラック・ボックス)のような物を掲げ、顔にいつもの笑みを張りつかせた女を。

 

 

私の実姉、篠ノ之束を。

 

 

全体的に、黒い装甲だ。

私達のように肌の露出は多くない、どちらかと言うと全身装甲(フルスキン)に近い。

手足と胴体は完全に黒い厚みのある、それでいてシャープな印象を受ける細い装甲で覆われている。

ただ鎧の隙間から覗いている白い胸元が、奇妙なコントラストを生み出している。

そして鎧の背中に流れる長い艶やかな髪に、黒い鎧の中で浮き上がる白い顔・・・。

 

 

「・・・・・・『黄泉津大神(イザナミ)』」

「イザ、ナミ・・・?」

 

 

苦々しげに呟く千冬さんの告げた名前を、楓がオウム返しのように告げる。

イザナミ、確か日本神話の地母神だったはずだが・・・。

それが、あの人の身に着けている物・・・あの人のISの、名前なのか。

 

 

くーはどこに消えたのか、姿が見えない。

ただ妙に、あの人が右手に持っている黒い箱が気にかかる。

アレを見ていると、何故か落ち着かない気分になってしまう。

あれは、何だ・・・?

 

 

「<女王の心臓(ハート・オブ・ザ・クィーン)>・・・?」

「そうだよ、楓ちゃん。よくわかったねぇ、偉い偉い」

 

 

・・・あれが、そうなのか。

あの人の言葉に目を見開き、つい見入ってしまう。

それは見た目には、ただの箱のようにも見えるが・・・表面に、複雑な幾何学模様が浮かび上がっている。

それに気付いたのか、あの人は私ににっこりと笑いかけると・・・。

 

 

「束!!」

 

 

千冬さんの制止の声を無視して、真上へと飛び立ってしまった。

上を見れば、いつのまにか天井が開いていた。

遥か上の方に、暗い星空が見える。

 

 

あの人は何のモーションも起こさず、一瞬で音速の壁を突き破ったようだった。

千冬さんが舌打ちして後を追い、私達もラウラのことを気にしつつも後に続く。

刀を握る手に、力を込めて。

 

 

 

 

 

Side 更識 楯無

 

『こ、こちら中国東海艦隊所属、『済南』! か、艦が横転し・・・うわ、うわあああぁっ!?』

『ロシア太平洋艦隊第31保障船舶旅団『ウラジミール・コレチツキー』、甲板の上半分を吹き飛ばされた! 航行できない!!』

『アメリカ第195戦闘攻撃飛行隊、自分以外の機が敵の自爆に巻き込まれた・・・畜生、何が起こっていやがるんだ!? 誰か応答してく―――――』

 

 

ISのオープン・チャネルを錯綜する通信に、呆然とする。

状況は最悪だった、さっきまであった高揚感は一瞬にして潰えたと言って良いわ。

簪ちゃんとファイルスさんの起こした奇跡は、無かったことにされてしまった。

 

 

対艦ミサイルの攻撃がわずかながら成功した時には、確かにあった勝利への実感。

仮初でも良い、それでも士気を保つためには必要なことだった。

それが今、脆くも崩れ去ろうとしている・・・。

 

 

「楯無姉さん・・・っ」

「簪ちゃん・・・」

 

 

その時、『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に抱えられた簪ちゃんが戻って来た。

「塔」を破壊した立役者だけど、今は褒めてあげる気にならない。

それ程までに、状況は悪かった。

 

 

それまで辛うじて持ちこたえていた戦線は崩壊しつつあるし、そもそも数万機いる無人機が手当たり次第に周囲を巻き込みながら自爆しているんだから、混乱しないわけが無い。

ましてや、相手の方が数が多いとなれば・・・援軍の欧州軍を含めたとしても、劣勢が。

 

 

『アレは・・・!』

 

 

ファイルスさんの言葉に顔を上げれば、パックリと口みたいに割れた巨大艦の中から誰かが出て来た。

真っ黒な闇色のISを纏っているらしいその人は、手に何かを持っている。

・・・ISの遠距離望遠を使って、それが誰か特定する。

誰かなんて考えるまでも無い、それは・・・。

 

 

「篠ノ之、博士・・・?」

 

 

簪ちゃんが震える声で呟く、もしかしたら屋敷でのことを思い出してるのかもしれない。

夜の海、艦艇が赤々と燃えて夜空を照らしている地獄のような空間で・・・闇色のISを纏った篠ノ之博士が右手を高々と掲げる。

その右手には、黒い箱のような物を・・・アレは!

 

 

 

その時、極太のレーザーが篠ノ之博士に襲いかかった。

 

 

 

それはドイツの『ディッケ・マレーネ』、ドイツのルーデル代表達が100機近い無人機を薙ぎ倒した超兵器による容赦無い砲撃だった。

普通なら、あのタイミングで直撃すれば何もできずに消し飛ばされるしかない。

でも、この相手は普通じゃ無かった。

 

 

『・・・馬鹿な・・・!』

「さ、触っただけで・・・?」

 

 

ファイルスさんと簪ちゃんの戦慄に、私も奥歯を噛み締めることで応じる。

それだけ衝撃的な映像だった、何故なら・・・篠ノ之博士がしたことは、左手を軽く振っただけだったから。

まるで、耳元に飛ぶ羽虫を追い払うみたいな身ぶり。

 

 

それだけで、極太のドイツのレーザーが跡型も無く霧散してしまった。

一撃で数十機の新型ゴーレムを吹き飛ばす威力を持つ超兵器を、いともたやすくいなして見せた。

何が起こったのか、何をされたのか・・・まるでわからない、物理的に現出したレーザーをどうやったら予備動作無しに消し飛ばせると言うのかしら。

私達がそれに驚いた直後、博士の右手が輝いて・・・。

 

 

 

 

 

Side 織斑 千冬

 

「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!」

 

 

束が、笑っている。

哄笑と言っても良いレベルだ、嘲笑い、嘲弄し、見下して、笑っている。

闇色の鎧を纏って笑うその姿は、悪魔と言っても通用するだろう。

 

 

しかも眼下には、燃え盛る海が広がっているのだから。

艦艇が燃えていると言う次元では無い、文字通り海の表面が燃えているんだ。

艦艇から漏れた燃料が海面を覆い、燃え移った炎が広い範囲を燃えている。

そしてその中に、ボトボトと無人機や・・・戦闘機やヘリ、ISなどが操縦者ごと墜落して行く。

ぱっと見ただけでも、国連軍が一瞬で壊滅状態になったことは間違いが無かった。

 

 

「あははっ、あははははははっ、ほらぁ・・・何もできない! 束さんがちょっと本気になれば、誰も何もできない! 何年何十年準備したって・・・結局、束さんのお古なんだから!」

「束・・・」

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは・・・っ」

「束!!」

 

 

私が声を荒げると、ようやく束の笑い声は止まった。

束のIS、『白騎士(しろきし)』と対を成す闇色のIS『黄泉津大神(イザナミ)』を纏った束が、不思議そうな顔で私を見る。

あくまで純粋に、無垢な瞳で私を見る。

 

 

「どーしたの、ちーちゃん? そんなに怒って・・・お肌でも荒れちゃった? 束さんの乳液使う?」

「束、私は言ったはずだな・・・誰も殺すなと、それだけは約束しろと」

「ふん? 殺してなんていないよ? 束さんは飛行機を壊したり船を引っ繰り返したりしただけで・・・その結果、空から落ちたり海に落ちたりして死んじゃったとしても、それはその人が無能だったってだけでしょ? 束さんならどんな状況でも生き残れるもん」

「・・・・・・束」

 

 

ズレている、何がとは言えないが・・・何かが、ズレている。

それは出会った時から感じていたし、どうしようも無いとは思ってはいた。

だがどこかで、折り合えると信じてもいた。

 

 

「大体、束さんにしろゴーレムにしろ・・・攻撃されたから反撃しただけだよ。実際、攻撃されてないゴーレムは動いて無かったでしょ?」

「・・・それをわかる人間が、どこにいるんだ」

「え? 何で? 見たらわかるでしょ?」

 

 

本当に・・・心の底からわからないと言う顔で、束は言う。

束がそう言うなら、そうなのだろう・・・ゴーレムは、攻撃した者だけを襲ったのかもしれない。

だが、だがな束・・・いったい誰が、それに気付けるんだ。

気付かれない以上、それにどんな意味があると言うんだ。

 

 

「た・・・束、お姉ちゃん・・・?」

「あ、楓ちゃんだ~♪ やっほー、箒ちゃ~ん?」

「・・・」

 

 

その時、私や束に遅れながらガキ共もやってきた。

ラウラも・・・いるな、何とか無事だったようだ。

篠ノ之姉妹は私のすぐ近くまで飛ぶと、それぞれ束と対峙する。

姉は引き攣った顔で、妹は哀しみに歪んだ顔で。

それに束は、嬉しそうにニパッと笑う。

 

 

「束、お姉ちゃん・・・何を・・・何で、こんな」

「うん? 何が?」

 

 

篠ノ之妹の震える声に、束は不思議そうに首を傾げる。

本当に不思議そうな顔をしていて、それが篠ノ之姉の感情をさらに昂らせているようだ。

そんな2人を見つめながら、束は口を開いて・・・。

 

 

その時、束の肩を掴んだ者がいた。

 

 

どこから近付いたのかはわからないが、そいつはボロボロのISを纏っていた。

罅割れた金色の装甲を纏ったそいつは、長いブロンドの髪を舞わせながら束に接敵していた。

そいつを、私は良く知っている。

昔から、何かと私に絡んできたいた・・・反射的に、叫んだ。

 

 

「よせ、ジーナッ!!」

「捕まえたぜ・・・天才様よおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっっ!!」

 

 

束の肩を掴んだジーナは、額から血を流しながらも・・・。

・・・振り向いた束に向けて、拳を振り下ろした。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 束

 

―――――何だ、コイツ?

誰だか見分けがつかないけれど、人の肩を勝手に掴んで不躾な奴だね。

はぁー、やだやだ、これだから文明を知らない奴は嫌いだよ。

 

 

<束さまに、触れるな>

 

 

右手に持ったままの<女王(クィーン)>が輝いて、それだけでそいつは離れる。

まぁ、そもそも何をしたかったのかさっぱりだけど。

<女王(くーちゃん)>が『黄泉津大神(イザナミ)』」の背後に特殊迷彩を施したソードビット『黄泉醜女(よもつしこめ)』6本が、ソイツざっくりしてくれる。

途中、紙みたいなシールドがあったみたいだけど・・・展開装甲だからねコレ。

 

 

「ジーナッ!!」

「え、何? ちーちゃんの知り合い、アレ?」

 

 

金色の欠片と赤い水を撒き散らしながら墜ちてくそれに、ちーちゃんがマジな顔で叫ぶ。

正直、束さんにとってはモブキャラだから・・・ごめん、気付かなかったよ。

次からは気を付けます、嘘だけどね。

 

 

「貴女って人は・・・!」

「おや? どしたの箒ちゃん、怖い顔してー・・・あ、もしかしてアノ日? ちゃんと当ててる?」

「違います!」

 

 

むぅ、姉の勘が外れるとはお姉ちゃんショックだよ。

そうやって妹の反抗期に黄昏ていると、指先でクルクルと<女王(くーちゃん)>を回している私をじっと見つめてる誰かがいた。

誰かって言うか、楓ちゃんなんだけど。

 

 

「・・・それが」

「何かな? 楓ちゃん」

「それが・・・<女王の心臓(ハート・オブ・ザ・クィーン)>・・・なの?」

「んーと、まぁ、そうだね。ちなみにくーちゃんの本体でもあるよ」

 

 

特に隠す必要も無いから、ちゃんと答えてあげる。

と言うか、お姉ちゃんが楓ちゃんに隠し事なんてするわけ無いじゃない。

言うのを忘れたりすることはあるけど。

 

 

どこか不安そうに、不信そうに束さんを見る楓ちゃんに、「?」と首を傾げて見せる。

安心させるように、にっこり笑顔で。

・・・楓ちゃんの表情が曇った、なんでさ。

 

 

「た、束お姉ちゃんは・・・宇宙に、行きたい・・・ん、だよね?」

「え、うん、そうだよ?」

 

 

何を聞くかと思えば、当たり前のことを聞くねこの子。

まぁ、楓ちゃんだから良いけど・・・そこ、根本的な目的を忘れちゃダメだよ?

後でくーちゃんと一緒に漢字の書き取りやらせるからね、ぷんぷん。

 

 

<え・・・わ、私もですか、束さま>

「当たり前だよ、連帯責任」

<はぅ・・・漢字は苦手なのに・・・>

 

 

右手の箱から漏れる光が、心なしかしょげてるみたいだった。

生体端末抜きでも、キャラは大して変化は無いからね。

おっと、今は楓ちゃんだねーっと。

 

 

「じ、じゃあ・・・何で、こんなことを・・・?」

「こんなこと?」

 

 

首を反対側に倒して傾げる、うん、楓ちゃんの言ってることの意味がわかんない。

お姉ちゃんがわかんないって、それはよっぽどのことだよ。

こんなことって、どんなこと?

 

 

「そう言えば、何で宇宙に行きたいのかって話はしたこと無かったよね」

「う、うん」

「そこは、一番最初に話すべき所じゃ無いのか・・・?」

 

 

箒ちゃんの突っ込みは無視する方向で。

束さんが宇宙に行きたい理由は、まぁ、いくつかあるよ。

この惑星に興味が無い、皆で楽しく過ごせる楽園が欲しい、それから楓ちゃんの小さい頃のお願いを聞いてあげるってのもあるよね。

後は、そうだねぇ・・・。

 

 

「この子を、宇宙に還してあげたくて」

 

 

この子、つまり<女王(くーちゃん)>を掲げながら言う。

束さんの娘、その子が故郷に帰りたいって言うから。

だから束さんは、宇宙を目指すんだよ・・・まぁ、趣味と実益も兼ねてるけどね。

 

 

「宇宙・・・って?」

「あー、そっか。そこから説明がいるのか・・・んー・・・えっと、いっくん、いっくん達ってISコアとか<女王(くーちゃん)>とかについて、どれくらい知ってるのかな?」

 

 

まぁ、面倒だけど仕方無いねぇ。

妹に懇切丁寧に教えてあげるのも、お姉ちゃんの役目だからね。

まずは、皆がどの程度の知識を持ってるか確認しないとねー。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 楓

 

ISコアは・・・<女王の心臓(ハート・オブ・ザ・クィーン)>を素にした特殊なレアメタル。

女性にしかその膨大なエネルギーを引き出せない、誰にも解明できなかった物質。

素になったその物質は、戦時中に日本で発見されて・・・「一(はじめ)」って人が研究した。

奥さんと研究してたけど死んじゃって、その娘「四春」と続けて。

 

 

それが20年前に、「織斑秋三」って人と私達のパパが研究ごと潰して。

そして<女王>は、篠ノ之神社で御神体扱いで封印されてて・・・それを。

それを、束お姉ちゃんが手に入れた。

 

 

「ふむふむ、なるほどー。まぁ、基本的には間違っては無い・・・のかなぁ。どう思う、ちーちゃん?」

「・・・私に聞くな」

「またまたぁ、ちーちゃんだって関係大アリのくせにぃ」

「・・・どう言うことだよ?」

 

 

その言葉に驚いたのは、一夏さんだった。

まぁ、どこかで予想もしてたんだろうけど・・・。

 

 

「千冬姉が、どう関係するんだよ」

「お前は知らなくて良い」

「千冬姉!」

「いや単純な話でねいっくん、ちーちゃんはねぇ、いっくんのお母さんと同じ存在なんだよ」

「は?」

「束・・・」

「いやそんな怖い目で睨まれても・・・別に大した問題じゃないと思うけど」

 

 

きょとん、とした顔でとんでも無いことを言う束お姉ちゃん。

もう正直、何を言われても驚かないって思ってたけど・・・。

 

 

 

「ちーちゃんは、いっくんのお母さんのクローンなんだよ」

 

 

 

・・・思って、いたけど。

 

 

「・・・・・・は?」

「いや、束さん的には何で知らないのって話なんだけど・・・だってさ、おかしいとは思わなかったの? 年齢の差とか、過去の事件における時系列のズレとか・・・まぁ、いろいろ委員会のゴミ共が情報操作してたみたいだけど」

「え、いや・・・え、は?」

 

 

・・・ごめん、束お姉ちゃん。

聞いてるだけの私達も、話についていけないんだけど。

そう思って千冬姉様の顔を伺うと、そこには何も浮かんで無かった。

ただ、無表情だけがそこにあった。

 

 

「まぁ、クローンを娘って言い張れば姉と言えなくも無いけど・・・束さん的には、そんな細かい話はどうでも良いからね」

「・・・そんな適当に、人が墓場まで持って行こうと思っていた秘密をバラさないでくれるか」

「あ、ごめんね。えーと・・・そうそう、それでISコアなんだけど」

「いやいや待ってくれよ!? こんな気分でISコアの話とかされても頭に入って来ねぇって!?」

 

 

一夏さんの声に、千冬姉様は溜息を吐いて・・・束お姉ちゃんは、うーん、と首を傾げた。

前から思ってたけど、この2人は・・・2人にしか通じない話が多過ぎると思う。

特に千冬姉様は、何も言わない人だから。

 

 

「えー・・・じゃあ、どこから話そうかな。んーと、まずはいっくん達のお母さん・・・名前、何だっけ?」

「・・・織斑四春だ」

「そう、その人が、実父の研究材料として使い潰されそうになってた所からかなー」

 

 

そして束お姉ちゃんは、話だした。

懇切丁寧に、まるで先生みたいに。

20年前に、起こったことを。

 

 

 

 

 

Side 織斑 一夏

 

千冬姉が、俺の・・・俺達の母親のクローン?

正直、意味がわからない。

千冬姉は俺の姉貴で・・・親のいない俺を、ガキの頃から養ってくれてた・・・。

 

 

「例えばね、いっくん」

 

 

俺の内心が混乱しているのを知っているのか、束さんが困ったような顔で左手の人差し指を振って説明してくる。

いや、俺が混乱してるのはアンタのせいだよ・・・。

 

 

「大事な大事な実験をしなくちゃいけないんだけど、失敗する可能性が相当数あるとするじゃない? と言うかこの場合、過去にいっくんのお祖母ちゃんにあたる人は失敗して使い潰しちゃったわけ。となると、次にやる時はさぁ・・・・・・予備を作っておこう、って話になると思わない?」

 

 

まぁ、束さんは大概一回で済むからそんなの必要無いけどね、と言って笑った。

他は、全然笑わなかった。

俺の・・・祖母、か。

ちょっと実感無いけど・・・使い潰すっていう表現が、凄く嫌だった。

 

 

そして薄情なことを言えば、見たことも無い祖母よりも・・・千冬姉のことが気になった。

予備って言う言い方が、とんでも無く嫌だった。

千冬姉は、この世に一人しかいないのに。

 

 

「あ、ちなみにクローン技術も<女王>の中の情報から得た知識で組んだ技術でね。その研究者・・・えーと、誰だったっけ?」

「・・・(はじめ)だ」

「そう、それ。いっくんのお祖父ちゃんにあたる人なんだけど、その人はその技術を外国に売って研究資金にしてたらしいね。だからドイツの遺伝子強化体(アドヴァンスド)とかはその亜流? 派生・・・まぁ、そんな感じ。関係で言うと・・・はとこ、とかぐらいになるのかなぁ?」

 

 

反射的に後ろにいるラウラを見る、ラウラの表情は変わらない。

自分の出生に関する問題は、すでに片付けている。

そう言っているような気がして、俺は視線を束さんに戻した。

 

 

「で、ちーちゃんの話。ちーちゃんは<女王>の宿主だったいっくんのお母さんの予備(クローン)として生まれた・・・たぶん、人間だと最初のクローン成功体なんじゃないかな。それから何年かして、確か20年前かな、いっくんのお父さんと私の父親? がいっくんのお母さんとちーちゃんを研究所から連れ出したわけ」

 

 

・・・エムが言っていた、「私達の姉の年齢はいくつだったかな」って。

今にして思えば、アイツはこのことを知ってたんだろうな・・・。

 

 

「パパとママは・・・」

「うん?」

「パパと、ママは・・・今、どこでどうしてるの・・・?」

「いないよ、死んじゃったもん。ちなみにいっくんとお父さんとお母さんも」

 

 

自分の親の話が出て来たからか、楓が震える声音で聞いた。

そして束さんの答えは簡潔だった、

簡潔であるが故に、場を凍りつかせるには十分だった。

 

 

「死んだとは・・・どう言うことだ!? 政府の保護プログラムで軟禁されてるはずじゃ・・・!?」

「んー、その情報は古いねぇ。ちなみにいっくんのお母さんは寿命が尽きて病死で、他の3人に関しては・・・・・・あー、まぁ、あんまり良い死に方はしてない、かな」

「姉さん!」

「あ、やっとお姉ちゃんって呼んでくれ」

「姉さんっ!!」

「国際IS委員会のゴミ共が殺したんだよ」

 

 

どこか不満そうに唇を尖らせて、激昂する箒にそう答える束さん。

 

 

「<女王>の情報が欲しかったんだろうねぇ・・・随分と無理なことしてたらしいよ。束さんが気付いた(きにした)時にはもう死んでた。と言うか箒ちゃん、IS学園の件でもわかると思うけど、日本政府は委員会に出せって言われれば何でも出すよ、自国民でも・・・ああ、自国民だからこそ、かな」

「・・・束、話が逸れているぞ」

「へ? あ、そだっけ・・・ああ、ちなみに私達の親のクローン作ろうとしてた研究所がいくつかあったけど、面倒になるの嫌だから全部跡型も無く消しといたよ、安心してね」

 

 

・・・もう、何を言われても驚かない、そんな気分だ。

すぐ傍から聞こえる啜り泣きの声は、たぶん楓だ。

箒の歯ぎしりの音が聞こえてくるようで、他の皆も良い気分にはなって無いだろう、俺もだ。

 

 

でも、俺は・・・千冬姉を見つめる。

千冬姉はまるで動じた様子も無い、無表情のままで・・・・・・だけど。

俺にはわかる程度に、どこか怖がっているように見えた。

 

 

「・・・千冬姉」

「何だ」

「・・・ごめん、呼んでみただけだ」

「・・・・・・そうか」

 

 

それだけで、良かった。

それだけで通じる、俺と千冬姉にはそれで十分だった。

俺にとって千冬姉は、どこまで言ったって「姉ちゃん」なんだから。

今はそれで良い、それが通じたのか千冬姉も幾分表情が柔らかくなった気がした。

 

 

「それじゃ本題、ISコア・・・<女王>について。これはね・・・」

 

 

束さんは右手の黒い箱を俺達に見せるように掲げると、可愛らしく首を傾げて見せて。

 

 

「女性の子宮に寄生する、宇宙から来た『寄生鉱物』だよ」

 

 

そう、言った。

もう、爆弾発言だらけだなこの人・・・。

 

 

 

 

 

Side 凰 鈴音

 

「それがいつの時代からそこにあったのかは、もう束さんでもわからないよ。調べようがないし・・・ただ、かなりの長期間に渡って日本近海の海底に沈んでたのは確かだよね。最初に見つけた研究者はよく見つけたもんだと束さんでも感心しちゃうよ」

 

 

・・・正直に言って、話が見えない部分が多々あるわけだけれど。

何故かと言うと、たぶん、一夏や箒達が持っている予備情報を私やセシリア達は持っていないから。

まぁ、今までの会話から大体の想像はできるけれど・・・確証が無い以上、憶測でしか無いわ。

 

 

「ああ、ちなみに楓ちゃん達が北極海あたりで得ただろう情報は、この部分が綺麗に削除されてたねぇ。発見された物質が、どうして女性にしかエネルギーを引き出せないのかって部分の情報はね」

「な、何で知って・・・」

「なはは、お姉ちゃんは可愛い妹のことは何でもお見通しなのさ」

 

 

ただそれを抜きしても、篠ノ之博士の言う「真実」とやらは衝撃的だわ。

篠ノ之博士は無茶苦茶な人だけど・・・嘘だけは吐いたことが無い、それが国際的な評価だから。

確証は無いけど、虚言だと吐いて捨てる程に信憑性を否定できない。

 

 

だとしても・・・『甲龍(シェンロン)』。

そのコアが、私の子宮に寄生する・・・と言うのは、ちょっと、いやかなり。

嫌な冗談(しんじつ)だと、そう思わざるを得ないわね。

セシリアやシャルロットを見ても、表情は変えて無いから感情を読みとるのは難しいけど・・・。

 

 

「それを私達の両親が奪って、封じて・・・祀った。これを束さんが見つけたのは運命みたいな物だよね、束さんは運命なんて物を信じて無いけど」

「ふん、何が運命だ。お前はただ、「0と1」以外で構成されていたそれに興味を持っただけだろうが」

「むふふ、流石ちーちゃん、束さんのこと良く分かってるね・・・まぁ、<女王>が女性の子宮を目指すのは、一種の胎内回帰願望なんだろうと束さんは読んでるね。女性の神秘と宇宙、なかなか探求するに足る比較対象だよね・・・」

 

 

コアが子宮を目指す、と言うのはわからないけど、たぶん事実なんだと思う。

だけどそれなら、ますます持ってわからないことがある。

それは以前からいろいろな場所で交わされていた議論、決着を見ない永遠の謎。

 

 

男性の一夏はどうして、ISに乗れるの?

 

 

ISが女性にしか扱えない、ISコアが女性の子宮を好む「寄生鉱物(イキモノ)」だって言うのなら。

男の一夏がISに乗れる理由が、わからないじゃない。

ISコアが最終的に女性の子宮を目指すなら・・・一夏は?

 

 

「いっくんだけが例外なんだよねぇ・・・解剖したらわかるかもしれないけど」

「いやいやいや、嫌ですよ!」

「だよねー、まぁ、たぶんだけど・・・母親の遺伝子の影響なんじゃない? 何せいっくんのお母さんはお祖母ちゃんのお腹から産まれた段階で、もう<女王>を宿してたらしいし。胎内で移動するってなかなかにグロい話だけど、生んだ直後にお祖母ちゃんは死んだわけだし。私の父親が緋宵(あけよい)でいっくんのお母さんのお腹をかっさばいて抉りだしたって言う話も聞くしね・・・子供を産む機能が良く残ってたもんだよ、おかげでいっくんが産まれたわけだけど」

 

 

・・・聞けば聞くほど、鬱になるような話ばっかね。

だけど過去の話は、まぁ、何となくだけどわかった、わかったけど・・・。

それで現実の今が、どうにかなるわけじゃない。

 

 

圧倒的に、絶望的に、どうしようも無い程に。

私達の戦力も消耗している、こんな状態で。

それだけ劣勢だと言う、この状況は変わらないってことがね。

 

 

 

 

 

Side 篠ノ之 束

 

うーん、何だか皆の視線が痛い気がする。

ちーちゃんは昔からだし、箒ちゃんはツンデレだから仕方無いけど・・・いっくんと楓ちゃんが束さんを見る目が固い気がする。

 

 

束さんの予定では、両親のことで落ち込んだ楓ちゃんと今夜は一緒に寝ようってはずだったんだけど。

なし崩し的に楓ちゃんがいれば箒ちゃんも巻き込めるし・・・ちーちゃんもいっくんと寝れるしで束さんウッハウハなはずだったのに・・・どうしてこうなった。

 

 

<束さま、箒さまと楓さまは反抗期で・・・>

「マジでか」

 

 

まぁ、それは後でどうとでも出来るよね。

なんたって束さんはお姉ちゃんだから、寛容な精神でもって妹達の自立心を尊重してあげないと。

問題はちーちゃん、どーも超キレちゃってるみたいだし。

 

 

・・・うふふ、でもねちーちゃん、束さんはちゃんとわかってるんだよ?

ちーちゃんがどうして、今このタイミングで束さんに勝負を仕掛けて来ているのか。

身体のこともあるんだろうけど、それ以上に束さんが<女王(くーちゃん)>を使うこのタイミングならば。

 

 

「ねぇ、ちーちゃん。ちーちゃんって死ぬ気だよね? 母親の・・・織斑四春と遺伝子的な同位体である自分なら、自分の子宮に<女王(くーちゃん)>を抱え込めるから。そして抱え込んで、自分ごと<女王(くーちゃん)>を消滅させようとしてる・・・」

「な・・・千冬姉!?」

「・・・・・・」

 

 

まぁ、方法としては束さんから<女王(くーちゃん)>を強奪・・・自分の子宮を核に起動させた後、いっくんの『零落白夜』と箒ちゃんの"緋宵(あけよい)"で自分ごと斬る・・・って、所かな。

でも残念、そんなんじゃもう<女王(くーちゃん)>は消せないんだよね。

 

 

・・・さて、それでもってちーちゃんがどうして自分を犠牲にしてまでこの世界を守ろうとしているのかはわからないけど―――世界の可能性? 笑っちゃうよ―――いずれにしても。

守るべき世界とやらが存在しているから、そんなことを考えちゃうんだよねぇ?

だったらそれを無くしてしまえば良いんだよね、とっても簡単な理屈だよ。

 

 

「ふむふむ、皆の言いたいことはわかったよ」

 

 

ちなみにここで言う「皆」は、ちーちゃんといっくん、箒ちゃんと楓ちゃんの4人だね。

他? 知るかそんなもの、消えてよ。

そう、消えれば良い。

そうすればちーちゃん達は、束さんと一緒に行ってくれるんだから。

後腐れ無く、未練なく、後ろ髪を引いてくる余計な物を一切合財、全部全部全部!

 

 

消えてしまえば良い。

 

 

こんな息苦しい世界なんて、いらないよ。

消えちゃえば良いんだ。

束さんが欲しいのは・・・私が欲しいのは、たった一つ。

「あの言葉」だけを求めて、束さんは進むんだから。

それを聞くまでは、束さんは全部をやめるわけにはいかない・・・約束したんだから。

 

 

「そう言う「遊び」なら、束さんは得意だよ?」

「遊びだと・・・束、お前、何を」

 

 

くるり、とその場で一回転・・・束さんの手の動きに合わせるように無数のディスプレイが展開されて、同時に全ての準備は終わる。

ゴーレムⅤの残機数は11345機、その内の5000機を世界各地に派遣するよ。

 

 

対象は国連加盟国193ヵ国を始めとする主権国家、非認定独立国家、自由連合国、マルタ騎士団を始めとする主権保有組織・・・その首都、及び地方主都、本部、合計目標は499か所。

その全てを、更地にしてあげる。

立つ鳥は後を濁さないからね・・・束さんの技術で発展した都市は、その機能を全部消し去らないと。

さぁ・・・お掃除の時間だね。

 

 

 

 

 

Side 五反田 蘭

 

その日は、いつもと何も変わらない一日だった。

学校の通達で外には出れなかったけど、兄貴と一緒にウチの手伝いをして、ご飯を食べて、お風呂に入って髪を乾かしながら明日は学校かなぁと思ったりしてた。

 

 

そう、何も変わらない一日だって思ってた。

実際、お風呂上がりに頭にタオルを巻いてベッドの上で携帯端末を開いて。

別に何を考えたわけでも無く、単にいつもみたいに動画でも見て暇を潰そうとしただけ。

だけどそれが、非日常への入り口だった。

 

 

「・・・・・・何コレ」

 

 

今時珍しくも無い、どこにでもあるような動画サイト。

私の携帯端末の画面には、同じような動画が同日付でいくつも投稿されてた。

いつもはニュース系の動画は見ないんだけど、あんまりネットの反応が凄いから気になって見てみた。

そしたら、そこに映ってたのはSFだった。

 

 

SFと思えるくらいにリアルな、そう言う・・・言ってしまえば、「戦争」の動画だった。

それくらいなら、今までだって普通にあるんだけど・・・問題は、コレ。

ひょっとして、日本の動画なんじゃないの?

 

 

「・・・動画に混ざってる声、どう考えても日本語だよね・・・?」

 

 

国際ニュースとかだったら英語とかの声が混ざると思うけど、この動画から聞こえるのは明らかに日本語だった。

いくつかの動画だと、日本語の標識も・・・種子島?

この動画の投稿者は、たぶん一般人。

 

 

何と言うか画質悪いから、ハンディカメラとかで撮ってるのか・・・でも、携帯端末で撮ってるのもある、こっちは綺麗な画質だ。

動画の種類にもよるけど・・・移ってるのは、まぁ、同じかな。

 

 

「・・・・・・」

 

 

明らかに日本の物じゃない軍艦が海峡を通る動画、明らかに日本の物じゃない戦闘機が島のすぐ傍を飛んでる動画、港や空港に人が押しかけてる動画、それに・・・コレ、ISだよね。

明らかに日本の物じゃないISが飛んでて、その内の一方が道路とか自衛隊の基地とかを攻撃してる動画・・・中には、それに巻き込まれてる動画まである。

何コレ、何でこんな動画が蔓延して・・・。

 

 

不意に、部屋の電気が切れた。

いきなりのことで驚いて悲鳴を上げる、視界の中はまさに真っ暗だった。

な、何? ブレーカーでも落ちた? 停電?

 

 

「蘭! 大丈夫か!?」

「お兄ちゃ・・・・・・お兄、どうしたのコレ、停電?」

「わっかんね、でも周りの家も電気消えてるから、ブレーカーじゃねぇだろ」

 

 

懐中電灯片手に様子を見に来てくれたお兄にほっとしつつ―――子供の頃の呼び方しそうになった―――私は未だ動画を映し続ける携帯端末の画面を見た。

いろいろな光が明滅するその画像を見ながら、何だか私は凄く嫌な予感がしてた。

いったい、何が起こってるの・・・?




<フ○イト・ゼロ風次回予告>

米国大統領「予備のフットボールを、キミの側に置いておく」

千冬「束・・・お前は、狂っている」

楓「こんなの嫌だよ、もうやめてよ・・・」

束「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!」

箒「その性根・・・・・・私が、叩き直してやるっ!!」

次回、「その少女、涙」
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