そこは荒れ果てた荒野だった、空は常に暗く所々が赤黒く濁り、日が差す気配がまったくなかった。
あたりを見渡したとしても歪に曲がった枯れ木や濁りきった水たまりくらいしか見えず、生き物の姿などまったくなくとても生き物が生きていける大地などではなかった。
こんな所で生きていけるもの等、真っ当な生き物等ではないだろう、そうここはこの世ならざる生命が生きる場所、弱肉強食の掟に従い際限のない修羅道を貪る場所、悪魔が住まう呪われた世界、魔界である。
その魔界を一台の大きなバイクが走っていた。
赤いライトを光らせ闇の中を流星のように切り裂きながら走るバイクの上には銀髪の美丈夫が跨っていた、赤いコートを纏い、背中には禍々しい髑髏の意匠が施された大剣リベリオンを背負い、腰のホルスターには常人では到底扱えない巨大な白と黒の二丁拳銃エボニー・アイボリーを吊り下げ、首には銀のアクセサリーを掛け、その目に恐れなど微塵もなく、口元に薄い笑みを浮かべながらまるで挑むかのように魔界を進んでいた。
彼の名はダンテ、2000年前魔界を裏切り人間に味方し、魔帝ムンドゥスを倒し人間界に平和をもたらし、後に伝説の魔剣士と言われた悪魔スパーダとその彼を愛した人間の女性エヴァとの間に生まれた半人半魔の最強の悪魔狩人である。
彼はとある国際複合企業の社長の陰謀により復活した魔界の覇王アルゴサクスザケイオスとそこから現れた純粋なる絶望の存在であるザ・ディスペアエンボディードを倒し、その後魔界を一人彷徨っていた。
突然彼はバイクを止めコートのポケットから一冊の古く所々がボロボロになった分厚い手帳を取り出しページをめくりある個所を読んでいた。
「親父の残した記録が正しければこの辺のはずなだがなぁー・・・ったく小難しい言い回しや暗号を使うなっての、俺は考古学者や文学者じゃねえんだぞ」
顔をしかめながら手帳から顔を上げ彼は眼前の光景を見る。
そこはいままでの荒野とはうって変って広大な森に裾野を覆われ、見上げても山頂がまったく見えない、巨大な山がそびえ立っていた、。
だが、その光景を見て感動する者等誰もいないだろう、木々は所々が怪しく蠢き辺りには禍々しい霧が立ち込め、空には異形の姿をした悪魔や怪鳥が飛び交い、あちこちから無数のうめき声や咆哮があがりつづけている。
「ハッなかなか面白そうじゃねえか、それじゃ山頂まで愉快なサイクリングといくか」
地獄のような光景にも不敵な表情をまったく変えずダンテはバイクのアクセルを全開にして突撃する。
そこへあたりの森から様々な異形が飛び出し、空中から怪鳥や悪魔が襲いかかってくる。
「早速かよ、まっ、そうこないとな、さあショータイムだっ」
というが早いか背中のリベリオンを抜き放ち閃光の如く振り回しながら、群がる悪魔を切り伏せ、空からおそってくる怪鳥には、「Come on babes! Let's rock!」という言葉と共に黒白の双銃エボニー・アイボリーが放つ退魔の弾丸を怒涛の如く打ち込んでいく、そのありさまは正に一方的な蹂躙劇に他ならない。
「Hey! What's upこんなもんかよ、もう少しガッツを見せろよDon't you something?」
もっとも本人は至って余裕な態度であったが。
悪魔の屍の山を築きながらダンテはバイクを山頂に向けて走らせ続けていると突如として悪魔の襲撃が終わった。
「"・・・Humphどうやらゴールのようだな」ダンテはバイクを止め山頂部を歩き始めた。
山頂近辺は鋭い岩が立ち並びさながら岩でできた剣の山のようでありあちこちには悪魔や魔獣の骨や砕け散った鎧や魔剣が散乱しておりその中にはあきらかに高位の悪魔と思しきものもあった、それはとりもなおさずこの山の主が強大な力を持っているという証である。
「ha・・・この気配、どうやらおでましのようだな」
と山の頂に顔を向けるとそこには、巨大な狼の姿をした魔獣がいた、全身があらゆる鋼を通さない漆黒の剛毛で覆われ、所々から鋭いエッジが突き出ており四肢にはいかなる名剣よりも鋭い爪を持ち、その口腔にはいかなる魔槍よりも鋭利な牙が並び尻尾は長大かつしなやかで所々からスパイクを生やしその先端は槍のように鋭い、目は紅く鋭く輝き圧倒的な威厳と威圧感を放っていた。
おもむろに口を開き深く重い声でダンテに問いかけた。
「我が名は獣皇フェンリル我が領域を荒らす者よ貴様は何者だ名乗れ」
常人ではいや悪魔でも気死しかねない威圧感の中でもダンテは飄々とした態度を崩さず
「ご丁寧にどうも針狼さん俺の名前はダンテ、スパーダの息子と言えばわかるか」
そんな挑発ともとれる不遜な態度のダンテの様子にも大して気分を害する訳でもなくフェンリルは口角を少し上げた。
「おまえがあのスパーダの息子か・・・フフ確かにやつの面影が見てとれるな、しかし随分とふざけた態度の男だ、そこは似ても似つかんな」
と面白げな表情を浮かべていた。
ダンテは意外な顔をしていた今まで自分や父の名を聞いて怒りを露わにしない悪魔には殆ど会わなかったからである、ましてこれ程の力と気位を持つ悪魔である、本来なら先ほどの挑発と名前ですぐに飛び掛かってきてもよいはずである。
(親父と昔なにか有ったようだな)
するとフェンリルの鼻が動き匂いを嗅ぎ、目を細めながらダンテを見る。
ダンテは首を竦めて
「オイオイ体臭がきついって言いたいのかい、それなら風呂でも用意してくれよ、できればとびっきりの美女のお手伝いつきでな」
「たわけ貴様からかつての宿敵ヘルヴェルクの匂いがしたのでな、奴と戦ったのか」
「あの骸骨じいさんと狼コンビの事か親父の因縁のおかげで何度も戦ったが俺が倒しちまったぜ、随分ヒヤっとさせられたがな」
ダンテは苦笑しながら答えた。
「当然だ、しかしそうかいったかスパーダといい奴といい誰彼も先に逝きおりおって」
フェンリルの目には悪魔らしかぬ郷愁が浮かんでいた。
「まっ昔の思い出は古いアルバムにでも突っ込んでおいて、早速だが本題に入りたい」
「フンまったくその辺はスパーダとはまったく似とらんな、それで本題とはなんだ」
するとダンデは表情を引き締め。
「あんたの時空を越える力が借りたい、ルシアの奴に帰ってくると約束しちまったんでね」
するとフェンリルは目を鋭くしさらに威圧感のある声で。
「その事を知っているとはな、スパーダの記録でも見たか、だが我が力を欲するならばわかっているだろうな」
「ああ戦って力を示せってことだろ、いいぜかかってきな棘狼、いや針狼だったかな」
「この後に及んでほざきおるかまあそれもそれで面白い、・・・・行くぞ!」
「C'mon!」
というが早いか一人と一匹の魔獣の姿が爆音とともに一瞬で掻き消えさらに周囲の岩柱が砕け散っていた、誰がわかろうか、それらは彼らの戦いによって巻き起こされる衝撃波によるものであるとは、リベリオンの剣閃とエボニー・アイボリーの銃撃がフェンリルの爪牙と刃が火花を散らしあたりを鮮烈に輝かせる、常人の目では否、達人域の人物であっても閃光と暴風以外なにもわからないだろう。
「Ha ha ha...Ha-ha!最高だぜ獣皇の名前も間違いじゃねえって事かハイになりすぎて狂っちまいそうだぜ」
ダンテは高揚した声をあげるとそこにフェンリルの牙がせまってきていた「死ね」
だが牙がダンテを貫こうとした時ダンテの姿が消え次の瞬間にはフェンリルの頭上に現れていた「die」という声とともにダンテはリベリオンをフェンリルの額に振り下ろすが「グッ」フェンリルの尾によるムチのような一撃によってダンテは吹き飛ばされていた、。
岩柱をいくつも壊しながらダンテは岩肌に叩き付けられる。
そこにフェンリルの巨体が迫る
「砕け散るがいい」
とダンテに己の全質量を叩きつけんばかりの突進を見舞うがそこから返ってきた手応えは異様であった(衝撃が吸収される・・だとまさか)ダンテの口元に浮かんだ笑みに気付いた時にはダンテの渾身の切り上げがフェンリルの巨体を宙に飛ばしていた。
ダンテはそこに追撃を加えん銃撃を見舞うがフェンリルの表皮を傷付ける事はできなかった。
「こうるさいわ」
そこにフェンリルの口の中の空間が歪みその歪んだ空間をダンテに向けて打ち出した。
「チッ」とダンテは舌打ちしながらうちだされた歪曲空間の砲弾を回避した。
砲弾は岩山を粉砕し続けながら飛び轟音とともに大爆発を起こし巨大なクレーターを作った。
ひとしきり距離を置き両者は対峙し互いを睨みあいながら口を開いた。
「ハッハァーこれ程とはな悪魔にしておくのがもったいないぜ」
「スパーダの血族たる事だけはあるここまで競り合うのはここ2000年なかったぞ」
「穴倉生活が長すぎた、だけだったんじゃねえのか」
「フンまあ否定はせんがな・・・しかし貴様はまだ全力ではないだろう、そろそろ力をだしてみたらどうだ」
「それはあんたもそうだろう後で負け惜しみを聞く気はないぜ」
「ククク・・・・気付いておったかではゆくぞ、あっさり終わってくれるなよ」
フェンリルは目を見開き全身に極大の魔力をみなぎらせ
「上等だぜ・・・・・オオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーーーーー」
ダンテは咆哮と共に己の中に眠る魔の力を解き放つ技デビルトリガーによって魔人化していた。
「第二ラウンドだ」
魔の岩山の山頂で魔界中に響き渡らんばかりの大爆発が起こった。
それからどれほどたっただろうか、もはや数える事もできない程の激突を繰り返しながら
両者は決め手に欠けていた。
(流石親父が倒しきれなかっただけはあるな、戦闘能力だけなら、ムンドゥスよりも遥かに上か)
(素晴らしいこれ程までとはスパーダ以上ではないか、ここまで我を追い詰めるとはな・・フフ長生きしてみるものだな)
両者は再び距離を取った。戦いの中で両者は覚っていた、お互いのあらゆる攻撃が無意味だと、ここで勝負を決するには自身の最大威力の攻撃しかないと。
ボロボロの体ながらまったく威厳を損なわなず獣皇は歓喜に全身を震わせながら相手を称えた。
「どうやらこれが最後の一撃になりそうだなよくぞここまで我を追い詰めたなここまで素晴らしい戦いができたのはスパーダ以来だぞ・・・たいしたものだ」
ダンテもまた魔人化した顔に高揚した表情を浮かべていた
「あんたもな魔帝や覇王でさえ配下にできず何者にも従わず強者としか戦わなかった言われる、魔界最古の魔獣・獣皇フェンリルここまでとは思わなかったぜ」
「弱者の肉を喜んで食らう馬鹿共の乱痴気騒ぎに興味がないだけだ」
「ハッ弱い者虐めはかっこ悪いってか、なかなかcoolな事を言うじゃねえか気に入ったぜ」
「その通りだ強者の肉を強者が食らい続けるべきなのだ、弱肉強食等、所詮自身を正当化したい弱者の妄言でしかない・・・・では覚悟はいいか、我が最大の一撃をもって屠ってくれよう」
「Come on here me!!」
フェンリルが全身に闘気と魔力を纏いそこにさらに歪曲空間の全エネルギーを収束したあまりの力に周囲では暴風が荒れ狂い周囲の空間が歪曲空間との摩擦によって膨大な熱量を発生させていた今だかつてないエネルギーの凝縮が周囲のあらゆるものを融解させていく。
そしてその全エネルギー諸共にダンテに向けて渾身の突撃を敢行する。
対するダンテは防御力と耐久力を向上させるドレッドノートを使いフェンリルの突撃をロイヤルブロックで受け止めた。
「ガアアアアアアアーーーーーーーー」
「ヌオオオオオオオーーーーーーー」
完全な拮抗状態になるかという時、ダンテの体から立ち上る魔力が極大まで高まりその姿を真なる魔人へと変えていく(こ・これはまさかまだ力があがるというのか)
「ウオオオオオオオオオーーーーー」
ダンテは叫びながら全身の力を振り絞りフェンリルの口をこじあけ両顎を足で固定し両手を口の中に入れそこに膨大な魔力を集中させ、そこにロイヤルガードによって蓄えられたエネルギーと真魔人化による全魔力を収束した渾身のレーヴァテインを放った。
「Blast off!"」。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーー」
巨大な岩山の山頂部分が極大の爆風と轟音と閃光が溢れかえると共にフェンリルの悲鳴が辺り一帯に響きわたった。