ダンテとフェンリルの渾身の一撃により山頂は消滅し広範囲が火山の噴火口のような惨状となっていた、あちこちから様々な物が焼き焦げる煙が、立ち上りここが、かつては岩山だった等とは誰も思わないだろう。
その惨状の中心で横たわるフェンリルをダンテが見下ろしていた。
先の激闘の直後だというのにフェンリルは悪魔らしかぬ穏やかな表情をしていた。
「見事だダンテよ、貴様の勝ちだ、我が力を手に、さらなる高みを目指すといい、我は貴様の一部となり貴様の生き様を見届けるとしよう、さあとどめを刺すがいい」
ダンテはリベリオンを振り上げるもそのまま何もせずに下した。
「では遠慮なく・・・とはいかねえな」
そのダンテの行動にフェンリルは訝しげな表情をした。
「何?きさま、我に情けをかけるつもりか、勝利した以上相手を取り込むのは勝者の権利だ、何を躊躇う事がある」
「あんたの殺気からは悪意がまったく感じられなかったからな、俺は唯、現世に戻りたいだけだ、時空の門を開いてくれるだけでいい」
「まったく異な事を言う、まあ良い負けた身としては何を言ってもいたしかたないであろう、だが他に何か望みはないか」
「他にないかといわれてもな・・・・・」
と軽く思案するダンテの視界の端に先の戦闘の余波によって破壊されたバイクの残骸が映った。
「なら、あの壊れたバイクどうにかできるか、割と気にいっていてな、それにいままで随分世話になっちまったんでね」
ダンテは苦笑しながら言った。
「あの人間の作った絡繰りか、良いだろう、ここに居続けるのにも飽いた事だしな、貴様と共に駆け回るのも悪くない、では我が力を受け取るがいい」
とフェンリルは言うと全身が光に包まれ一つの光球になるとバイクの残骸と融合した
眩い光が収まるとそこには、狼の意匠が随所に施された大型の漆黒のバイクが現れた。
「ヒューこいつはすげえな、じゃ早速」
ダンテは上機嫌に口笛吹くと颯爽とフェンリルに跨りアクセルを踏み込み辺りを疾走する。
「ハッハッーーーーーーーーー」
ひとしきり走らせた後、最後は高速のスピンを決めた。
「too easy」
(フンたわむれるのもその辺にしておけ)
「いいだろ別に、んじゃ早速時空の門を開いてくれ行先は現世だ」
(承知した)
すると目の前に光の門が現れダンテは迷う事なく飛びこんでいった。
その事務所の様子を見た人は、一様にして顔をしかめるであろう、内装として置いてあるのは、ビリヤード台、年代物のジュークボックス等のこれらは一つ一つはまともな物だ、しかし壁には得体の知れない骨に剣や刃物が刺さっており他にも奇怪なオブジェがいくつも置いてあり、あちこちには、破損を修繕した跡が散見される。
これらにより、言い様のない混沌とした雰囲気を醸し出していた。
おおよそ客を迎えるのに相応しくない事務所の中でダンテを一人待つ女性がいた、髪は赤く、スレンダーでしなやかな肢体をしており、腰には短剣を吊り下げている彼女の名前はルシア、とある魔術師の手により産み出された人造の半人半魔である。
ルシアは悲しげな表情で主のいない革張りのデスクチェアと高級マホガニーの机を見つめていた。
そんな時、外から聞こえてきたバイクの音に気付くと事務所の外に飛び出した、そこには漆黒のバイク、フェンリルに乗ったダンテがいた。
ルシアは目を潤ませてダンテに駆け寄った。
「ダンテ・・・無事・・・だったのね・・・・・良かった」
「ああ今戻ったぜ、色々心配かけさせちまったな」
と二人は事務所に戻ると互いの近況やフェンリルの事等を話した。
「そうか、マティエのばあさんは元気か・・・その調子じゃ後100年くらい楽勝なんじゃねえか」
「そんな事言っているとナイフが飛んでくるかもしれないわよ、あれでまだまだナイフくらいは使えるんだから」
「オイオイマジかよ」
おどけた調子で言うダンテにルシアは苦笑しながら言い返すとダンテは表情を緩めた。
「それにしてもあの最強の魔獣フェンリルを倒して帰ってくるなんて呆れた人ね」
ルシアは外に止まっている、巨大な漆黒のバイクと成ったフェンリルをみやり、呆れて言葉もない表情で言った。
ダンテは大変楽しげな表情になりフェンリルとの激闘を回想しながら
「ハッ、なかなか刺激的だったぜ、覇王なんかよりもはるかにな」
と事もなげにあっさりとそう答えるのであった。
「そんな軽い事が言えるのはあなたくらいな、ものよ自分がどれだけとんでもない事をやったかわかっているの、まったく」
ルシアは頭を抱えざるを得なかった無茶苦茶な人物だと思っていたが、ここまでとは想像できなかったからである。
どこに、現世に帰る為に魔帝よりも強いと言われ神殺しの魔狼と伝説にまで歌われる大魔獣を倒す奴がいるというのか、現世に戻る手段がそれしかないというならまだしも、スパーダの記録には他にも手段が記載されているのである。
「刺激があるから人生は楽しい、だろ」
そんなルシアの言葉にダンテはまたも事なげに答えるのであった。
しばしルシアと話した後ダンテは表情を改めて真っ直ぐにルシアを見やり口を開いた。
「ルシア」
「何、ダンテ」
「その様子じゃ少しはふっきれたみたいだな・・・・・」
「まだ完璧ってわけじゃないけどね、でも、私は守り手としてそして人間として生きてみせるは」
ルシアは口元に笑みを浮かべると自分の決意を口にしたそこには、確かな意思と思いが宿っていた。
「そうかそれを聞いて安心」、したぜと言おうとしてダンテは事務所の外で異常な力を感じた。
「ルシア」
二人は表情を引き締めた。
「ええわかっている」
二人は外の様子を見るとそこには透明な門があったその門を見てルシアは訝しげな顔をした。
「なにこれ地獄門じゃなさそうだけど」
「オイ、フェンリルこれはおまえがやったのか」
(いや、突然なんの前触れもなく現れたのだがな、消し去る事も可能だが)
「フーン、そうか・・・・・」
ダンテはしばし考え込んだ後。
「どうするの、ダンテ」
ルシアの真剣な表情による問いかけに。
「決まってる」
とダンテは口元に不敵な笑みを浮かべて返すと。
「ルシア、悪いがレディとトリッシュにまたしばらく留守すると伝えておいてくれないか」
ルシアは呆れた顔をしながら溜息を付き諦めた表情で。
「いいけど今度は依頼料を取るわよ、それに二人に事情を説明するのも大変なんだから」
「すまねえな、だがせっかく招待を受けたんだ、行かないわけにはいかないだろ」
ダンテは事務所に戻ると今まで集めた魔具や銃器を持ちだしてきたその顔にはまるでピクニックいくような気軽さがあった、そんなダンテの様子にルシアは思わず笑ってしまった。
「どこに繋がっているかもわからずにいこうなんて、悪魔狩人のカンってやつ」
「まあな、ただ悪魔とは少し違うような気がするんだがな」
ルシアは不思議そうな表情をした。
「どういう事、それ」
「さあな、それこそ行ってからのお楽しみというやつだ」
「まったく本当に呆れた人ね、それとダンテ忘れ物よ」
ルシアは魔界に行く前にダンテから預かった裏表が同じコインを差し出した。
「おっと、サンキュー、ルシア、やっぱりこれがないとな・・・・それじゃ行ってくる」
ダンテは颯爽とフェンリルに跨った。
「ダンテ」
「なんだ」
「必ず戻って来るのよ」
優しい微笑みを浮かべた、ルシアの言葉にダンテは不敵な笑顔を浮かべた後、手を挙げて一指し指と中指を揃えて振るとアクセルを踏み込み門の中へと飛び込んでいった。
オ・・・・ネ・・ガ・・・・イ
タ・・・・・
ス・・・・
ケ・・・・テ・・・・・・・
潜ったときダンテの脳裏に助けを求めるせつない声が聞こえたような気がした