ネクロマンサーぷらす   作:すすりじた

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狩猟祭

それは村中央の瓦礫が積み重なった広場に村人たちを追いやった時の事だった。

 

「うわ!?な、なんだこれは!?」

「ヒイッ!こっちに来るな!」

「いたっ!こいつ刺すぞ!」

 

 ロンデス達を警戒していた村人達が次々に恐怖の声を上げ走り回る。棒を持ったものはしきりに地面めがけて叩きつけるが最終的には他の村人同様悲鳴を上げるのだった。

 

「ロンデス、これは一体?それにあの虫はなんだ?」

「わからん。あんなのは初めて見た。」

 

 村人たちを完全に包囲したロンデス達は思いもよらない展開に困惑している。呆然と目の前の光景を眺め、そして誰もが手にした武器を強く握りしめていた。村人達を襲っている異形が、その矛先をこちらに向けるのではないかという恐怖がそうさせていた。

 

 村人達は虫のような異形のモンスター達に襲われていた。

 きめ細かい砂岩を思わせる瓦礫の隙間から這い出してきたそれは、複眼も触覚もない単純化された頭部、三対のカサカサと動く節足の生えた胸部、体長の三分の一以上を構成する得体のしれない液体を分泌する鋭く巨大な針が生えた腹部で構成されていた。

 人の腕ほどもあるこの昆虫達は、節足で俊敏に動き回り村人に肉薄すると備え付けた針を肉に打ち込んでいく。

 

「ううううう!」

 

 見た事も無い昆虫系モンスターに刺された村人達が苦悶の声を上げながら激しい痙攣を起こしている。

 

「毒か。」

 

 厄介だなとロンデスは舌打ちした。

 村人を攻撃するのは構いやしない。どの道殺す予定だったからだ。しかしあのモンスター達は村人を針で刺す以外に何かしようとはしない。その姿からロンデスはこのモンスターが蜂のような習性を持っており、巣――おそらくあの瓦礫の中にあるのだろう――に近づく外敵を排除しようとしているのだと考えた。もしかすると、村人を排除した後は自分たちにも襲い掛かってくるかもしれない。そうなると毒を持った敵というのは実に厄介と言える。一度でも攻撃に当たれば致命的な事態につながるからだ。

 

(もし襲ってくるようなら撤退も視野に入れるべきだな。)

 

 モンスター達の攻勢はすさまじく、既に集めた村人の全員がその針に刺され痙攣しながら地面に倒れている。大人も子供も、男女関係なく全ての村人がだ。

 いよいよか?ロンデス達はモンスターの攻撃に身構えた。

 

 だがモンスター達はロンデス達に襲い掛かって来なかった。

 

「戻っていく……?」

 

 モンスター達は村人達を全員刺すと、ロンデス達には目もくれず出てきた瓦礫の隙間へと滑るように潜り込んでいく。

 攻撃対象は村人達だけで、少し離れた場所にいたロンデス達は標的にならなかったのだろうか?

 理由はなんにせよ未知のモンスターと戦わずにすんだのだ。誰かがほっと安堵のため息をついた。

 

 その次の瞬間――

 

「ギャッ!!」

 

 バチバチという音と共に短い悲鳴が辺りに響く。あの声はモーレットだ!風に乗る花の香りの中に焦げ臭いものが混じる。

 一体なにがあったというのだろうか?ロンデスはモーレットの居た場所を凝視した。

 

「モ、モーレット……。」

 

 ロンデスがモーレットを見つけたのは、丁度彼が鎧の隙間から煙を立ち上らせながら倒れていく瞬間だった。

 白目を剥き出しにしながら地面に倒れるモーレット。

 その体を、引きずる者がいた。

 

 それは何気ない、ごく普通の穏やかな表情で全身から煙を立ち上らせる村人だった。

 地面に伏したその村人は虫に刺され痙攣しながら昏倒していたはずだ。

 だが、今はモーレットの足首を掴んでおりそのままの態勢で地を這って行く。表情が正気に見えるだけ行動の異様さが際立っていた。

 

「さ、さっきのは魔法か?それに村人が、おいロンデス!?なんだよこりゃあ!」

「知るか!とにかく何かまずい!さっさとこいつ等を片づけて逃げるぞ!」

 

 明らかな異常が発生しているのはわかるが、村人が生きているのなら殺さねばならない。それが任務だからだ。

 瓦礫の山に近づく事であの虫がまた出てくるようなら撤退しなくてはならないが、今のところその気配はない。

 

 ロンデスは率先して村人達の居る瓦礫の山へと足を進める。まずはモーレットを連れ去ろうとしている村人が標的だ。モーレットが生きているかどうかわからないが、とにかく救出しなければならない。

 

「うおおおお!」

 

 ロンデスは剣を振りかぶる。

 瓦礫の山へ近づいてもあの虫は出てこない。このままいける!

 ロンデスは必殺を確信しつつ、無防備な村人へと剣を振り下ろした。

 

 ドッ!

 鈍い音を立てて、村人の首が落ちる。首の断面からド ロリとした血液が緩やかに流れ出る。

 殺った。

 ロンデスがそう認識したその時だった。

 

 ギ、ギギギ。

 鋼鉄の歪む音が足元から耳に入った。

 

「なんだと!?」

 

 防具に包まれた足首と脛に激しい圧迫感。慌てて足元を見てみれば、首の絶たれた村人の死体がモーレットを掴んでいない方の手でロンデスの足を掴んでいるではないか。首が絶たれても行動を止めないその姿にロンデスは顔を引きつらせて叫んだ。

 

「アンデッド!!」

 

 ロンデスの思考が加速する。

 アンデッド。それは生者を憎む、ありとあらゆる生命ある者にとっての敵だ。負のエネルギーから仮初の生命を得た者。存在する事が悪であり、放置すればより強大なアンデッドを発生させる特性がある。死した者がアンデッド化する事は珍しい事ではない。無残に殺された死体が放置されることによってアンデッドになるというのは余りにも有名な事実だ。しかし、目の前の村人のように唐突にアンデッド化するなんていう話は聞いたことがない。彼は先ほどまで生きていたのに。

 

 一体何が……?

 ロンデスは混乱しながらも、己を掴む不浄の手を斬りはらおうと剣を振りかぶる。

 そして――

 

「ぐあっ!?」

 

 突如全身を駆け巡った電撃に意識を刈り取られたロンデスは、状況を正しく把握する事も出来ずに転倒を余儀なくされ地面へと倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

「くそっ!くそっ!くそっ!撤退だ!撤退しろ!」

 

 戦友であり代理の隊長であったロンデスが倒 れ、助ける間もなくモーレットと一緒に瓦礫の山へと連れ去られた後。

 デズンは神を罵倒しながらなんとか生き延びようとあがいていた。

 

 戦況は明らかに不利だった。

 奇妙な村人のアンデッドの数はデズン達の残存兵力を上回っていたし、その強さもデズン達には対処出来ないものだったから。

 

 まず、アンデッド達はいくら切っても全く堪えない。本来なら致命傷になるであろう傷を受けても少しよろけるだけで、後は何もなかったかのように距離を詰めてくる。そして元が人とは思えない恐るべき怪力で掴みかかってきて、次の瞬間には昏倒させられてしまうのである。

 

 敵は知性の低いアンデッドのはずなのに魔法を使うのだ。それも第三位階魔法<雷撃>に似た魔法をだ 。

 本家とは違いどうやら接触しなければ使用できないらしいがそれでも十分に厄介だ。なにしろ手足を切り飛ばそうと攻撃しても剣が敵の肉体に食い込んだその瞬間に魔法を発動させてくるのである。剣から伝わった雷撃によって既に多くの仲間達が転倒し、そのままアンデッド共に連れ去られている。

 

 このアンデッドを倒すには雷撃が通らない武器で戦うしかない。そう考えて近くにあった木の棒や石などで戦おうとしても奴らは意外と俊敏であり、最低二回に一回は回避を成功させて肉薄してくる。しかも鈍器による攻撃は敵を行動不能にするほどの攻撃力が無く、最終的には組みつかれてしまうのだった。

 勝ち目があるとすればそれは弓兵による遠距離攻撃なのだが、その弓兵を呼ぶための笛を持った仲間は早々に昏倒させられて連れ去られてしまった。

 

(いや、弓兵が来てくれたとして矢であのタフなアンデッド共を倒せるのか?)

 

 射撃武器による点の攻撃がどれほどの効果を出すのか甚だ疑問だった。故にデズンは撤退を叫ぶ。こうなってしまってはもはや任務もクソもない。生き残ることが大切だ。

 生き残っている仲間もデズンの声に反対などせず、重い鎧を着ながら必死に村の外へ向かって走り出す。

 

「ちくしょう!アンデッドがよぉ!ゾンビがよぉ!走るんじゃねぇよぉー!」

「とにかく走れ!追い付かれるな!」

 

 逃げるデズン達を追ってアンデッド達が猛スピードで走ってくる。眩暈のしてくる光景だった。しかし実際に眩暈を感じている暇など無い。追い付かれれば問答無用で昏倒させられ、どこかへ連れていかれてしまうのだ。アンデッドに連れていかれた先に何が待つかなど考えるだけでも恐ろしい。

 だから誰もが必死に走った。

 しかし――

 

「うおっ!?前からも来やがったぞ!!」

 

 全力で走るデズン達の足が鈍る。それもそうだろう。前方、つまりは村の外縁部から無残に体を切り裂かれたアンデッド達の群れが走り寄ってきているのだから。

 どこから沸いた、などとは思わない。それらアンデッドには見覚えがあったのだ。

 

「くそっ!殺した連中もアンデッドになってやがる!」

 

 そう。前方から迫りくるのはデズン達がこの村に来てから殺害した村人達だった。村の外縁部で切り殺されその場に放置していた死体がアンデッド化したのだろう。それら犠牲者のアンデッドはにこやかな表情のまま全身に紫電を纏わせ全速力で走ってくる。

 前門のアンデッド、後門にもアンデッド。万事休すだ。

 

「ちきしょおおおおおお!皆散らばれ!何とかして逃げるんだ!!」

 

 デズンは幼い頃、友達と共に遊んだ鬼ごっこを思い出していた。ほとんど走馬燈に近いそれと比べ、今の状況はあまりにも絶望的である。しかしそれでも。死にたくないという生命の持つ強い願望がデズンに普段以上の力を与えていた。

 

「リリク!」

「なんだデズン!って、うわああああ!?」

 

 声を掛けられたリリクがデズンを見ようとした時、鎧の一部が何かに引っかかり彼は転倒してしまった。意識はまだある。

 アンデッドに捕まったのではないのか?状況を確認しようともがくリリクは自分を置いて走り去っていくデズンの後姿を見た。そして、そのデズンが前方から迫りくるアンデッドに向かって、仲間の一人を押し飛ばしている姿も。

 

 押し飛ばされた仲間は絶望的な声を上げアンデッド達に激突すると、そのまま囲まれ短い悲鳴を上げて沈黙した。

 そしてその脇をすり抜け、デズンは一度も後ろを振り返らずに村の外へと走っていった。

 

「デズゥゥゥゥン!貴様ーーーー!」

 

 激しい怒りにリリクの視界が赤く染まる。あろうことかあの男は仲間を囮にして自分だけ逃げおおせたのだ。こんな裏切りを許せる者はいない。後で必ずぶち殺してやる。そう心に誓うリリクだったが、突如体の自由が利かなくなった事に気づき顔面を蒼白にした。

 首をひねって後ろを見れば、そこには自分の体に群がるアンデッド達のにこやかな笑顔。

 

「あっ。」

 

 バチバチバチッ!

 

 助けて!そう叫ぼうとしたリリクの口からは、もう何も声は出てこなかった。

 

 

「はっ!はっ!はぁっ!くはぁっ!」

 

 息も荒く、全身に汗をびっしょりとかきながら走るデスン。その表情は歪んでいながらも確かに笑っていた。

 

(すまん!すまんな!だが犠牲は無駄じゃなかった!ありがとうリリク!俺は生き残ってみせるぞ!)

 

 もうすぐ村の外だ。

 周囲にはアンデッドの姿はない。どうやら奴らの包囲をすり抜けられたらしい。

 だがまだだ。まだ安心できない。村の外にいる弓騎兵と合流し、馬を手に入れて一刻も早くこの村から遠ざかる必要がある 。

 

「いき、のこる!おれ、はっ、しな、ない!」

 

息が乱れるのもお構いなしにデズンは自分に言い聞かせるようにつぶやく。肉体的疲労が極限に近づきつつあるデズンを動かしているのは生にしがみつくその精神力だけだった。

 

「!!」

 

 ついに村の外が見えた。そして馬の姿もある。弓騎兵の姿が見えないのは逃亡者を監視するために村の周辺に広がっているからだろう。場合によっては合流をあきらめて一人で逃げる必要があるかもしれない。

 

 デスンは走った。馬へ向かって力いっぱい走った。

 あともう少し。あとちょっとだ。

 腕を振り上げ、よだれを垂らしながら、デズンは走る。仲間の犠牲に基づく輝かしい希望の未来に向かって。

 

「じゃじゃーん! 見・ 敵・必・殺!!」

「ほげぇっ!?」

 

 少女の声が聞こえたと思ったら、それを大きな風切り音がかき消した。次いで何か硬くて重くて大きいものがデズンの腹部を猛烈に殴打した。

 まるで全身がバラバラになったかのような衝撃。胃の中身をキラキラとまき散らしながらデズンは地面に転がり、激しくえづく。

 咳をするたび胸が苦しい。肋骨が何本か折れたらしかった。

 

「な、なにが?」

 

 肺に残った空気を絞り出すようにデズンがそう言うと、少し離れたところから少女の声が聞こえた。

 

「おー、生きてる生きてる。のりで見敵必殺とか言っちゃったけど、私もなかなかやるものね。」

 

 軽い調子の声に憎悪を煽られたデズンは苦痛を堪えながら頭を声のした方へ向ける。そして目を見開いた。

 

「よっ、と。」

 

 ジャラジャラと音を立てながら鎖が宙を蛇のように移動し、その先端に取り付けられた巨大な鉄球を引き寄せる。

 そして鎖が巻き上げられる先。小柄な少女のシルエットが唸りを上げて戻って来た巨大な鉄球を片手で受け止めた。

 

 ――奇妙なシルエットだった。全体として小柄な少女のものと確かに分かる。しかしその頭部の半分からは暖かな日光を覗くことができるのだ。

 霞んでいた目が正常な機能を取り戻していく。そして今度こそ、デズンは驚愕からではなく恐怖で目を見開く。

 

「ひっ、ひぃぃ。」

 

 少女は美しかった。短く切られた青い髪、ツリ目がちな大きな瞳、身を纏う服はスカートがいささか短いものの貴族の令嬢が着るような上品な一品だ。 

 それだけなら 愛らしい少女だと言える。だがこの少女はそんな形容詞の似合う存在ではない。少なくともデズンにとっては。

 

 少女は異形だった。後ろから巨大な槍に突かれたならばあのような傷が出来るのだろうか?美しい顔の半分は醜く空いた大穴が占めており、めくれ上がった肉と脳の断面が丸見えだ。しかもその穴からはほとけかずらに似た奇妙な植物が蔦を伸ばしており、花まで咲かしている。全身の肌は血の気を失った死人のそれであり、右手には南方で生産されるという細身の曲剣「刀」が握られている。

そして左腕には長い鎖が巻き付いていて、その先端に結ばれた鉄球を手に持って弄んでいた。

 

――アンデッドの化け物がそこにいた。

 

「これで全部ね。はー、しんど。生きてる人間を相手するなんて私ら想定されてないのに。」

 

 逃げなければ。デズンは必死に体を動かそうとする。しかし非情な事に体はピクピクと痙攣するだけで動こうとはしない。

 転倒した惨めな恰好のままデズンは悔しさと恐ろしさに涙を流す事しかできなかった。

 

「さっさと戻ってコートの所にいかなきゃ。あいつらと一緒にしてたら何があるかわかったもんじゃないからね。」

 

 嘆息するような、あきれる様な少女の声。それがデズンの聞いた最後の音になった。

 

 

 

 

 

 

「どうぞ。おかけになって。」

「失礼します。」

 

 モモンガは今、襲撃されていた村の家にいた。元は村長の家だったとの事で、それなりの広さがある。その広い空間の中にはモモンガとあともう一人、 白いドレスのようなものを上半身に着て後は白いストッキングしか履いていないという凄まじいファッションセンスの少女がいた。ちなみに局部にはレースがあしらわれた前張りが張ってあった。かつての友人ペロロンチーノならば大喜びしたに違いない。

 

(とんでもない外装を作る人だなぁ。というか、運営はなんでBANしなかったんだ?)

 

モモンガは目のやり場に困りながらもテーブルを挟んでその少女と向き合っていた。彼女は恥ずかしがる様子もなく胸元のロケットペンダントを弄っている。

 

「初めましてミスターサトル。私がリョーコ、ネクロマンサーリョーコです。どうぞよろしくお願いしますわ。」

「ミスターなんていりませんよ。こちらこそよろしくお願いしますリョーコさん。」

 

この場にアルベドはいない。プレイヤー同士の話し合いをNPCに聞かれては今後のナザリックでの過ごし方に悪影響があるかもしれないと危惧したモモンガが直々に席を外すように命じたのだ。

アルベドは最初は抗議したもののモモンガの有無を言わせぬ命令によって今は家の外で待機している。

会談の相手であるリョーコが護衛を一人もつけていないのにモモンガだけつける訳にはいかない。

 

「じゃあサっちゃん。何から話しましょうか?」

 

 サっちゃん!?

 確かにミスターは要らないと言ったが、あまりにも気安い呼び方にあっけにとられてしまう。しかし別にこの程度の事で目くじらを立てる必要はないだろう。なにせ相手は貴重で重要な現時点でただ一人のプレイヤーだ。このぐらい我慢するべきだ。

 

「そうですね……まずはこの村のアンデッドについて教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

 モモンガは森からこの村、カルネ村に移動するまでの間で気になるものをいくつか見ていた。鎧を半円状に窪ませた弓兵4人を運ぶ頭に大穴を開けた少女、うすら寒い笑みを浮かべたまま何かの肉片を貪っては傷をなおしていく村人達。そして村の中央にある大量の鉄筋コンクリートの残骸。

 

 この家まで案内してくれたのは弓兵を運んでいた大穴の少女だったが、彼女の見た目はとても生きているようには見えない。

 だからモモンガはこの少女こそ森でリョーコが言っていたアンデッドだと思った。しかし直後におかしなことに気づいた。

 モモンガの持つアンデッ ドの気配を感知するスキル<不死の祝福>が全く反応しないのである。

 リョーコがネクロマンサーの魔法でアンデッドを創造しているなら<不死の祝福>が反応しないなんて事はありえない。アンデッドであることを隠す装備もあるが、例の少女の両手を見ても首元を見てもその手のアイテムは見つけられなかった。それが不可解でならないのだ。

 

「あら?なにか変わったところでもあったかしら?」

「私の持つアンデッドを探知するスキルが彼らに反応しないのですよ。ですからなにか特別なアイテムを持たせているのかと。」

「……スキル?アイテム?ふふっ……よくわからないけど、サっちゃんってまるでゲーマーみたいな事を言うのね。」

 

 くゆくゆと笑うリョーコにモモンガは首を傾げたくなった。確かに自分は廃人と呼ばれても仕方のないプレイ時間と課金量だが、先ほどの発言はゲーム脳扱いされる程のものではないだろうに。

 

「ゲーマーだなんてそんな。ユグドラシルをやってれば日常的に使う言葉でしょう?スキルやアイテムだなんて。」

「ユグドラシル?」

 

 リョーコが首を傾げた。つられてモモンガも傾げた。お互い、何言ってんだこいつとでも言いたげな視線で相手を見ている。

 

「ユグドラシルって世界樹?それとも……えーと私が3歳ごろだから、そう!2126年ぐらいに発売されたDMMO-RPG?」

 

 記憶を探りようやく思い出したといった感じのリョーコの態度にモモンガはますます訳が分からなくなる。

 

「それです。というか……リョーコさんもユグドラシルプレイヤー……なんですよね?」

「え?PL(プレイヤー)?違うわ。私はNC(ネクロマンサー)よ?」

 

カパーン!とモモンガの顎がいい音を立てて開け放たれる。プラプラと揺れるその様は顎が外れているようにも見えてどこか滑稽だった。リョーコはそんなモモンガを見て笑うと、優し気に話し始めた。

 

「ねぇサっちゃん。なんだか私達、お互いに誤解があるみたい。それを正すために私から質問してもいいかしら?」

「……どうぞ。」

「ありがとう。それじゃあサっちゃんはこの世界に来る前は何をしていたの?」

「ユグドラシルにログインして、自分の拠点でサービス終了時間まで遊んでいたんです。そしたら急に……。」

「この世界に転移していたと。」

 

 リョーコの言葉にモモンガは頷く。リョーコの美しい黒い瞳は好奇心にキラキラと輝いている。少女らしい可愛らしい表情だが、その輝きのどこかになにか不穏なものが混じっているようだった。

 

「という事は2138年の世界からサっちゃんはやって来たってことね。興味深いわ!」

「リョーコさんは違うんですか?」

「違うわ。」

 

椅子の上で片膝を抱えたリョーコは膝に顔をうずめるようにしながらモモンガを見た。少女の見た目にはそぐわない妖艶な雰囲気を纏うリョーコを前にして、モモンガは緊張しながら次の発言を待った。

 

「私はね。2155年に起きた最終戦争で人類が滅びたさらに未来。地球が滅亡するのと同時にこの世界にやって来たの。」

 

 カパーン!

 再び顎をいい音立てて盛大に開け放ったモモンガ。

 その眼窩からは鬼火が消え失せていた。

 

 

 

 

 

 




というわけで法国の皆さんにはエレクトリッガーと鎖鉄球で転倒しまくってもらいました。
アンデッド相手なら転倒だけど生身の人間だったら手加減しても気絶は免れない攻撃だと思います。
連れ去られた人たちは多分そのうちTSして活躍することになるんじゃないかなと。
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