「あ、そう言えばサっちゃんの最初の質問に答えてないね。」
黒曜石で出来たテーブルに肘をつくリョーコが忘れていたとばかりに声を上げる。
モモンガが破壊したテーブルの代わりにと魔法で生み出したテーブルに驚いたり感心したりしていたらすっかり忘れていたのだ。実際の所、もっと早い時点で頭から抜け落ちていたのだがそれをリョーコがいう事はない。
「この村のアンデッドはどうなっているか?だったよね。」
「ええ。リョーコさんの話が衝撃的過ぎて後回しになってしまいましたが。」
豪華な彫刻の施されたテーブルの前で質素な木の椅子に座ったモモンガが穏やかに答える。やや責めているような台詞だがモモンガにそのつもりは一切ない。
その事がわかっているのでリョーコは肘をついたままの態勢で口だけの謝罪をする。
「ごめんごめん。んー、この村のアンデッドについて話すなら、私がこの世界に来たところまで遡ってお話しした方がいいかな。」
モモンガは既に「リアル」のアンデッドについて説明を受けているため、スキルが反応しないという疑問は解消している。反応しない理由はユグドラシルのアンデッドのように負のエネルギーというオカルティックな要素が全くないからだろう。そして、リアルアンデッドは個体としては死亡しているがその本体ともいえる粘菌コンピューターは生命に満ち溢れているのも関係していると思われる。
それが正解かどうかはわからないが、一応の納得は得られる答えだ。だからモモンガはここで質問に答えようとするリョーコを止めても構わないのだ。
しかしモモンガはリョーコを止めず先を促した。
プレイヤー、もといリアル人間――少なくとも精神的には――が相手ゆえNPCに対する時よりも鈴木悟としての素が表に出ているモモンガだったが最低限の警戒心は今も胸に抱いている。
相手の情報を得る事は非常に重要な事なのだ。情報を得られるチャンスをわざわざ潰すという手は無い。
「私がこの世界に来たのは、今から10日前……。」
さて、どこからどこまで話したものか?
リョーコはモモンガに伝える情報の範囲について考えながら、この世界に転移してからの日々を思い起こしていく。
◆
真っ先に異常に気付いたのはリョーコだった。いや、彼女しかいなかったとも言うが、ともかく最初に気づいたのはリョーコだった。
世界滅亡のフィナーレを飾るリョーコの本拠地『オペラハウス』に蓄えられた14個のギガトン級核兵器が一向に起爆しないのだ。リョーコの設定では地表部での各種兵器の炸裂による爆風などがオペラハウス内部に配置された『信管』に到達する事で一斉に起爆するようになっている。
なのにまだ起爆しないという事は、地上での各種兵器の余波がこれだけ時間が経ったというのに到達していないという事。
「なによ……なんで私の思い通りにならないのよ!」
美しい顔を憤怒に歪めながら立ち上がったリョーコは肩をいからせながら室内をペタペタと歩き回る。
「クソがっ!」
リョーコが足を振り上げ部屋の暗闇へと激しく打ち込む。すると、ゴッ、という鈍い音と共に何か液体が噴射する音と哀れな悲鳴が部屋に響き渡る。
「クソッ!クソッ!クソッ!」
「ひぃぃぃ!ひぃいいいい!いぎぃぃぃぃ!」
グチュ。ブチュ。ブビュル。
何度も鋭く打ち込まれる蹴りを受け、暗闇に潜んでいた何者かが悲鳴を上げながら明かりの当たる所へと転がり出た。
それは一言でいえば嗜虐心をくすぐる美しい少女……の生首だった。本来首があるはずの部分からは背骨をそのまま引き抜いたかのような尻尾があり、その根元からは無数の触手が生えていた。
それは所謂『ドラッグイーター』と呼ばれるペット用アンデッドであり、飼い主のストレス発散を目的に開発された虐待用品種『
人体に有害な毒素を含む粘液が飛び散るのを気にもせず、怒れるネクロマンサーはマリスをサッカーボールのように蹴りまくる。やがてマリスの声を発する器官が破壊され悲鳴すら上げなくなると、リョーコは先ほどまでの狂乱が嘘のような笑顔を浮かべて部屋の出口へと歩き出した。
「なんで失敗してしまったのかしら?信管の調整が悪かったのかな?」
リョーコは首に刺さっていたコードを取り外す。
施設を介して地上を確認しようとしたがカメラや各種監視用ナノマシンが全滅している事が分かって、自らの目で地上がどうなったのかを何百年かぶりに見に行くことにしたのだ。
施設内に保管した知性ある上級アンデッドたるサヴァントの誰かにやらせてもいいのだが、これが最後だと眠らせる前に徹底的に精神崩壊させて遊んだため再起動させるには自我及び記憶の漂白作業をしなくてはならない。それは今の気分でやるには少し面倒だった。
「パパ、行ってきます。」
出入り口に向かう途中、自らの執務机の上に飾られた男性の生首にキスをする。額にキスされたその生首は、無言でその端正な顔に笑顔を浮かべた。リョーコもつられて笑顔になる。
そしてリョーコは胸元のロケットペンダントを開くと、その中身の写真にもキスをして部屋から出て行った。
リョーコの無気力な鼻歌がオペラハウスの廊下に響く。廊下にはとても豪華な装飾品がずらりと並べられている。美しい装飾や宝石に彩られた柱が壁際に整然と設置されており、その上部には各種様々な美少女の生首が宝物のように飾られていた。
目が一つしかないもの、発光するもの、鉱石が生えているもの、花の咲いたもの、鱗に覆われたもの、ピアスだらけのもの、実に様々だ。
リョーコは両腕を広げ、それら生首達の頭部を撫でながら歩く。そして撫でられた生首達はどれもが嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。
彼女達はそのどれもが高名なネクロマンサーによって作られたドラッグイーターであり、かつての人類末期であれば信じられない程の高額で取引される超高級品ばかりだ。品評会で最優秀を取った事のあるドラッグイーターも多く、オペラハウス内に配置された全てのドラッグイーターの価値を合計すれば国家予算にさえ匹敵するだろう。
常人が見れば気分を悪くするような光景の只中、リョーコは平然と歩き続ける。それも当然だ。これらドラッグイーターは可愛らしいペットでありインテリアでありリョーコの大事なコレクションなのだ。女の子らしい可愛い趣味だと思いはしても、気味が悪いとはリョーコは決して思わない。
オペラハウスはまるで迷宮のような複雑な構造をしている。しかしリョーコは迷うことなく観賞型ドラッグイーター達を愛でながら歩き続け、やがて目的地の一つへとたどり着いた。
20メートル四方の部屋の壁は分厚い金属で出来ており、壁の一辺には表面に『00』と刻印された厚さ5メートルはある巨大な金庫扉のようなものが開け放たれた状態で放置されている。
そして部屋の中心には巨大な脊柱のような機械が鎮座しており、そこからはいくつもの細いコードが施設内部に向かって伸びていた。
「あっれー?信管が破壊されてない。というと、原因は信管じゃなくて地上の方か。」
もしかしたら使用した兵器が揃いも揃って老朽化しすぎていて正常に作動しなかったのかもしれない。整備と外部からの遠隔操作を可能にするためのネットワーク敷設にはかなりの労力と年月を費やしたのにこの結果とは。リョーコは深いため息をひとつついて開け放たれた金庫扉をくぐった。
くぐった先には強化コンクリートの壁に消えていく階段がある。それが核シェルターになっているオペラハウスの地下構造物への出入り口だった。
放射性物質と猛毒の塵がたっぷりと積もった階段。リョーコは新雪にそうするかのように溜まりに溜まった塵に足跡をつけながら地上を目指す。
階段を上るリョーコは思い出す。何体のドールが打倒ネクロマンサーを掲げこの場所で倒れていっただろうかと。様々な苦難を姉妹と共に乗り越え、無数の悲しみに心を砕かれながらもこの階段にたどり着いたドール達はかなりの数存在していたはずだ。その内の殆どが今は配置していない手駒達によって完全解体され、志半ばで絶望に沈んでいった。
宿敵の根城まであともう一歩というところで無残に負けるドール達の絶望や悲しみ、憎悪が楽しくてそれなりの年数愛用していた場所。今歩いている場所はそういったドラマの舞台なのだ。階段の一つ一つに一生懸命後日談の世界に立ち向かった少女達の歴史が刻まれている。
しかし、そんな事実は階段を上るリョーコにはゴミほどの価値もない。なぜなら既に飽きてしまった事だから。
リョーコにとって重要なのは己の心を動かすもの。退屈に麻痺した心を慰めてくれる新しいなにかだ。故に、飽きてしまった過去の遊戯の歴史など見向きもしない。確かに存在したドール達の決意や勇気、悲しみや絶望は今のリョーコにとっては最初から無かったようなものだった。
そしてそれは自分自身を含めた世界全てにも言える事だった。
リョーコは自覚している。アンデッドを現世に繋ぎ止めるための重要な精神的要素である『未練』が自分には一切無くなってしまった事を。もはや世界にはやり残した事などない。何もかもがどうでもいい。こうして階段を上り、外の世界を見に行く事だって何か特別な思いや考えがあるわけではないのだ。ただ何となく、そうしているだけだった。
――外見たらさっさと戻って信管起動させよ。
そんな事を思いながらリョーコは階段を登りきり地下と地表を隔てる蓋を押し上げた。なにがが蓋に乗っているらしく重たかったが、アンデッドとして様々な強化が施されたリョーコの身体能力の前に蓋は簡単に持ち上がっていく。
蓋の隙間から地下の闇に光が差し込む。
――なにかの兵器の閃光だろうか?いや、それにしては妙に暖かだ。
徐々に開かれる蓋の隙間から爽やかな草の香りと共にどこか懐かしい清浄さを感じる空気が流れ込む。
――変だ。出口周辺の変異植物は全て刈り尽しているし、後日談の世界ではこんな空気は洗浄機があってもあり得ない。
蓋が開け放たれると、白い雲の浮かぶ青い空と燦々と輝く太陽が見えた。
――ありえない。雲は黄色や紫で、空は赤か鼠色で、太陽はもっと禍々しく輝くものだ。
時間にして約一秒。硬直していたリョーコは弾かれたように蓋の開け放たれた穴の縁に手をかけると、服が汚れるのも気にせず地下から這い上がった。穴の周りには蓋を保護していた地上構造物の残骸が散乱していた。
「……」
地上へと這い上がったリョーコは地べたに座り込みながら、口を開けたままの呆然とした表情で周囲を見回した。
土壌汚染されていない健康な土。そこに生える変異していない正常な植物。兵器として遺伝子操作されていない昆虫。大気汚染などと一切無縁の青く透き通った空と雲。禍々しさなど一切ないむしろ神聖さを感じる太陽。
そしてなによりもそんな正常な環境の中で、土や石、木材で建設された家があり、手入れされた畑があり、そこで働く人間がいる。
それは紛れもない
「え、あ、な、なに?テレパシー攻撃?」
即座に思い当たったのはESP能力者によるテレパシー攻撃だった。自分の自我を対象の自我に干渉させる事によって道具や言葉を用いず意思を伝達する事の出来る基本的なESP能力がテレパシーだ。確かにテレパシー能力者ならば対象に偽りの光景を見せる事も出来るだろう。しかしリョーコはその考えを即座に捨てる。
所有するESP能力を使用可能なアンデッドは全て停止状態にしてあるし、野生に存在するESP能力保持者は全て捕獲ないし破壊してあるのがその理由だ。特に後者は絶対の自信がある。テレポート能力を有するあの『帰らずの子』ですら手中に収めたのだから。
ESPによる幻覚の線はありえない。ナノマシンや幻覚物質による認識の異常とも違う。そうなるとリョーコが精神崩壊を起こしており、その狂気がありえない光景を見せているというのが一番可能性が高いが果たして本当にそうなのだろうか?
発狂して見る光景がこれとは、リョーコには納得がいかなかった。
(私ならアーコロジー内部を見るはず。よりにもよってこんな大昔みたいな光景をみるわけないじゃない。)
こんな21世紀よりも昔に見える光景はリョーコには馴染みがなかった。
確かにこういう時代が地球にもあったと知識としては知っているが、リョーコにとっての地球はこんな夢みたいな美しい場所ではなく、もっと薄汚れて致命的な場所だ。後日談の世界はもとより、人類が滅びる前、リョーコが本当に少女だったあの時からそれは変わらない。
(それじゃあこれは何?まるで別の世界にでも来てしまったような、いや、それか時代を遡ったみたいな……。)
「おーい!広場の瓦礫から人が出てきたぞー!」
「!」
思考に没頭していたリョーコの意識を遠くから聞こえてきた男の声が引き戻す。首だけを動かし声のした方向を見れば少し離れた場所に鍬を持った農夫らしい男の姿が見えた。リョーコは目に仕込んであるスコープ機能を起動させる。瞳孔が不自然に拡大と縮小を繰り返し角膜もその大きさや形を微妙に変えて遠視に適した構造へと変貌する。
ほんの僅かな時間で行われた調整によりリョーコはより詳細に男の姿を観察する事が出来た。
(汗をかいてるし頸動脈が脈打っている。そして何より私が作った覚えのない造形。まさか、生きているとでも言うの?)
生きた人間なんて、ここしばらくパーツ用に培養しているクローン人間しか見たことがない。自らがその目で確認したことなのに、それを信じる事が出来ずに悩むリョーコは何か行動を起こすことが出来なかった。
そうしている内にどんどん人が増え、リョーコへと近づいてくる。
「貴族のお嬢様じゃないのか?あのドレス。」
「貴族?なんで貴族様がいきなり出てきた瓦礫の山から這い出して来るんだよ。」
「そりゃわからねぇけどさ。でもどう見ても貴族だろありゃ。俺らが近づいたらまずいんじゃないか?」
「そうだなぁ。誰ぞ女に任した方がいいかもな。お、エンリ。丁度いいところに。」
何か互いに囁き合っているが、リョーコの困惑は増す一方でろくに頭に入ってこない。無数のありえないと、だがだしかしが延々とループしていた。
しかしそのループも無限には続かない。
ジャリ、という音と共にリョーコの視界に影が差す。ぼんやりと頭を影の元へと向けてみれば、私緊張していますと言わんばかりに身体を強張らせた少女が立っていた。
愛嬌のある顔立ち。健康そうな肌。三つ編みにした金色の髪の毛。即座に解体してパーツにしたいと思うほどに魅力的な部位の多い少女だった。
「あの、大丈夫でしょうか?どこかお怪我はありませんか?」
心配そうな少女にリョーコは答えない。
「あぁ、酷い顔色!どこか具合が悪いんじゃ……。」
リョーコの前で少女は暫くオロオロとしていたが、やがて意を決したように小さく息を吐いた。そして小さく失礼しますと言ってから、リョーコの手をとり……素っ頓狂な声を上げた。
「大変!体が冷え切ってるわ!急いで温めなきゃ!貴族様、ご無礼お許しください!」
体が冷え切っているのはリョーコが死体だからだ。しかしどうやらこの少女はリョーコが動かないのも声を発さないのも凍えているからだと勘違いしたらしい。
少女は意外な力強さでリョーコを背負うと、よろけながら瓦礫の山を歩き出した。
(あったかい。心臓の鼓動が聞こえる。あぁ、わかるわ。この子は、生きているのね。)
熟練のネクロマンサーの手にかかれば体温があり心臓が脈打つアンデッドを作ることは可能だ。その事を知るリョーコだったが、自分を背負う少女が生きた人間であると確信していた。これに関してはもはや理屈ではなかった。そして理屈ではないからこそ、困惑するリョーコの思考を問答無用で納得させてしまった。
すなわち、ここは生きた人間の存在する後日談の世界ではないどこかなのだと。
「くす、くすくすくす……。」
「え?」
知らず知らずのうちに笑みがこぼれる。突然の笑い声に困惑する少女のうなじに埋めた顔が歓喜に歪んでいく。
(わけわからない。わけわからない事が、起きた!)
わけがわからない。未知の状況。
それはリョーコが渇望してやまない退屈を殺すための新たな光だ。なぜこんな事になったのかなど関係ない。そんな事は、まぁ気になるが今はどうでもいい。重要なのは今、隅から隅までしゃぶり尽したあの後日談の世界ではない未知の環境にいるという事!
(私は今、新しい遊び場を手にいれた!)
環境が変われば今まで無意味に思えた様々なものが有益なものに思えてくる。
この世界にサヴァントやドールを放てば彼女達はどう行動するだろうか?どんな反応をするだろうか?たったそれだけの事を考えるだけで噴火のように湧きあがる歓喜が精神をどこまでも高揚させる。それはもう理性では制御不能な感情の爆発だった。
(大事に大事に遊ばないと。でも新しい遊び場で遊ぶにしても最低限の知識は必要よね?)
ネクロマンサーが舞台について全くの無知であるなどあってはならない。
そんな考えと共にリョーコの黒髪の一本がピンと立ち上がった。
「あ、あのぅ貴族様。なにを笑ってらっしゃるのでしょ……!」
首を回して背後を見た少女の声が途中で途切れる。自分が背負っていた人物の、瞳孔の開ききった金色の瞳と目が合ってしまった為に。
それは背筋がぞっとするような狂気を孕んでいた。
少女が反射的に背負ったリョーコを振り払おうとする。しかしそれよりも早く、リョーコは喜色に満ち満ちた表情で大空に向かって叫んだ。
「ゴライアス!ショータイム!」
その瞬間、この村、リ・エスティーゼ王国領カルネ村に局地的な地震が発生した。
村から少し離れた平原の一部が地中から爆発したのだ。そしてその爆心地から巨大な人型が複数射出されドスンという音と衝撃と一緒にカルネ村に着地した。
その衝撃によって体勢を崩した少女から素早く飛び降りると、リョーコは転倒する少女を嗜虐的な眼で嘗め回しながら実に楽し気に声を上げた。
「さぁゴライアス共!この村の人間を全員捕らえるのよ!」
未知の状況では情報こそが重要だ。それも多種多様な、それでいて正確な情報が。そんな情報を人から手っ取り早く得たい時、ネクロマンサーは会話や拷問などの手段を選ばない。
もっとお手軽な手段、つまり脳みそから直接情報を抜きだせばいいだけなのだから。
「きゃあああ!」
「うわあああ!化け物だぁ!」
村のあちこちから悲鳴が上がる。それは着地したままの丸まった姿勢を維持していた巨大な何かがゆっくりと立ち上がったから。
それはまさに巨人と呼ぶにふさわしい存在だった。
立ち上がったその身長は6メートル程はあり、筋肉の繊維が露出している肉体は力強く隆起している。その体には内蔵がなく、腹部はぽっかりと空洞になっていた。運動をするための筋肉だけで構成されているかのような異様な外見は、この巨人が命ある存在ではないと村人たちに直感的に気づかせた。
「アンデッド……アンデッドの巨人だ!にげろおおおお!」
村人の誰かが叫んだその言葉に村人たちが蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出した。
そしてそれを追って、長い脚と長い腕を持った死肉の巨人ゴライアス達が動き出す。
長閑な村が一瞬で怒号と悲鳴の木霊する修羅場と化した。
必死に逃げる村人達が、一見鈍重そうな動きのゴライアスに追い付かれ次々に捕らえられていく。長い脚による歩幅の違いが露骨に現れた結果だった。
手に捕らえられた村人達は必死に拘束から抜け出そうともがくが、怪物の手に生えた棘が衣服に引っかかり誰も抜け出せないでいた。そうしてもがいている内に、怪物の手がギュッと村人たちを死なない程度に圧迫し昏睡させていく。意識を失った村人達をその場の地面にそっと置くと、ゴライアス達は次の獲物を見つけて歩き出すのだった。
それはまさに悪夢の鬼ごっこと言える光景だ。
「き、貴族様!あのモンスター達を止めてください!どうか、どうかお願いします!」
村人達を追いかけるゴライアスを楽し気に眺めていたリョーコの足元に先ほどの少女が縋り付く。明らかに指揮官であるリョーコに対して懇願する少女の判断は正しい。敵いそうもない巨大アンデッドに立ち向かうよりはよっぽど賢明だと言える。
リョーコは縋り付く少女に微笑みかけ、すっと地面に膝をついて視線を合わせた。
「あっ……。」
真正面から見つめるリョーコの表情に、少女は深い慈愛を垣間見た。微かな希望に少女の胸が躍った。
「だめです。」
そして、無慈悲に放たれたリョーコの言葉に少女の顔が絶望に染まった。
ファッキューNC。
モモンガ様の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい傲慢っぷりです。女王様気分が抜けきってませんね。でもお山の大将なのがネクロマンサーってものでしょう。
そんなNCの悪い印象を和らげるためにちょっと女の子らしい可愛い趣味を持たせてみました。女の子らしさ倍増だと思うのですがどうかな。