薪の王は機械の世界で何を見る   作:氷那

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モチベーションが上がって、書き上げました。

今回は、短いですがそこは許していただけるとありがたいです。



王は、正体を明かしその中の真意を見出す。

「あんた.........一体何者?」

 

肌に刺さるような殺気を放ちながら、ウサギ耳の女は口を開いた。

この現状は、本当のことを話した方がいいのだろうが、私の正体である『薪の王』は、神話の中の架空の人物である。

本当のことを言ったところで、頭が蝕みにやられた奴としか思わないだろう。

ではこの状況をどう覆すか。簡単だ、実に簡単だ。

 

 

_________戦略的撤退あるのみである。

 

 

ハベルの指輪2、寵愛の指輪2、狼の指輪2、カーサスの乳環を装備して、ウサギ女に背を向けて全力で走り出した。

たとえここで舌論に移ろうとも、相手は恐らくそういったことの達人あたりなのだろう。どういうわけか、そんな感じの気配が体から漏れ出している。

 

こちらには、それを打破しえるほどの技術も手札もない。敗北は必然である。

この行動には驚いたのか、目を見開きながら立ち尽くしている。

が、すぐに立て直したのかいつの間にか手にした装置を握ると、いつか見た人型の群れの数倍という数が目の前に現れる。

 

今度は私が驚く番だった。

一体どこにいたのかとか、何故前の時より増えているのかとかいろいろ聞きたかったが、ようやく分かった。以前返り討ちにした女が言っていた、この女尊男卑の世界を作り上げた張本人。確か篠ノ之束といったか?のが多すぎて舌を咬みそうな名前だ。

 

咄嗟に装備したファランの大剣の剣技で、目の前で剣を振り降ろしていた人型の背後にすべり込む。突然私の姿を見失った人型は、もう一度私の姿を見ることなく体と足が死に別れ、土埃を巻き上げて倒れた。

 

今回は相手の挙動がたまたま見えたからよかったものの、今は星の輝く夜。

今のところは何とか避けて反撃しているが、それがいつまで続くか分からない。

 

「あーんもう!なんで玉ねぎみたいな鎧つけてるくせにそんなちょこまかと.......!いい加減に捕まれ!!!」

 

玉ねぎとは失礼な!誇り高きカタリナ騎士の鎧を侮辱するとは!!

ジークバルトとジークマイヤーが聞いたら、一瞬にして人型を殲滅してしまうだろう。

しかし、いま怒りに身を任せれば思いもよらぬことになる、静めろ、静めろ......。

 

というよりか、ドラゴンの下半身付の奴が溶岩の海でおいでおいでしてるのに突っ込むアホはいない。まだ若かったころはがむしゃらに突っ込んで即死キックを喰らって篝火に戻ったのはいい思い出だ。

つまり、自ら捕まりになど行くわけがない。

 

七色石をそこらじゅうにばら撒きつつ、その中を走り抜ける。七色石の輝きが見えなくなれば、その瞬間に奴らが近くを通った証拠になる。

前後左右から襲い掛かる敵を、墓王の剣で薙ぎ払いながら一心に走る。

やがてそこらじゅうにあった気配が引いていき、ちょうど前方、私の進路方向に一つだけ気配が残っていた。

 

警戒しながら進むと、腕を組み、仁王立ちしているウサギ耳の女が。なぜかしてっやったとでもいうような顔が腹が立つ。

というより走ってた私より先にたどり着いたのだろう。私が焦っていたのもあるが、感じ取れなかったということは、かなりの隠密能力があるとみてもいい。それに、ジグザグに走っていた私の進路を特定するなど、至難の業だ。

 

内心で跳ね上がる危険度よそに、ウサギ耳の女が口を開いた。

 

「ホントに何者なの?出来そこないとはいえ、代表候補生くらいなら一機で潰せるんだけど......それを一人で....あの数を殲滅なんてたかが鎧を着たくらいじゃ出来ないよ」

 

気付けば、周りを人型に囲まれていた。

今までとは一風変わった、カーサスの剣士のような軽装装備の敵だ。

 

「お前はイレギュラーなんだよ、やりすぎたんだ。世界最強はちーちゃんなのさ。お前じゃない。お前ほどの技量の持ち主ならばこんな腐りきった世界なんかでも上の方の人間になれるはずだ。たまたま見た地上で、ISと人間が戦っていたからね、この束さんも興味が惹かれたよ」

 

みていたのか、ならばなぜ......いや、だからこそここまで私を殺そうとしているのか。見たことのない戦闘方法、見たことのない武器、情報はたくさんあったな。私がそれに気付かなかっただけで。

 

「お前は倒した。たかが公式の警備兵とはいえ生身で勝利した。お前の動きは戦う人間の物じゃなかった。ただ相手を殺すことだけを考えた、実に合理的で、実に滑らかな動きだったよ。あきらかにあのような『対人・対物戦』を前提に立てられたものだった」

 

それに______

 

「それにあの光の柱。光が地球上の物体に物理的な干渉が出来るなんてありえない。なんど解析しても、お前のような現象は起きなかった。手に金属すら溶かし尽くすほどの炎を球体に保ったまま『投げつける』など、炎を一つの固定化概念としての前提でしか考えられないんだよ。その手には火傷も損失も何も起きてないのに」

 

「それだけじゃない、地面から噴き出した焔海も地面に活火山のような地脈が走っているわけでも無かった。お前は無から有を生み出したんだ。この世界では何かの前提代償がなければ何も起きない。この束さんの最高施設の技術をフル活動させても全く分からなかったんだ。この『天災』をもってしてだよ?」

 

「もう一度聞かせてもらおうか。お前は__________何者だ」

 

視線だけで私を殺そうとするかのように、鋭い目つきで睨んでくる。

私はこの視線を一度だけ見たことがある。かつて私が斃した『罪の都』の薪の王、巨人ヨームだ。

 

彼は、かつて罪の都に大侵攻があった時、背で震える民を見て、目の前の侵略者たちを力の限り睨みつけていた。思わず神もたたらを踏むような咆哮を上げ、大鉈と大盾をてに真正面から突撃した。彼はたった一人で侵略者を蹂躙し尽くしたが、手には大盾がなかった。

 

己を助けに来た友を守れなかったのだと、彼はそういった。

それ以来彼は盾を捨て、大鉈に両手で持てるように改造し、防御を捨てた。

その時の彼の眼と、女の目がどこか似ていて........。

 

気が付けば私は名乗っていた。

火継ぎの装備に切り替わり、火の粉が舞いあがり、そしてそれは、文字となって表れた。

 

_____彼の者に負けずとも劣らない覚悟を持つ者よ。許せ、いまだ名を名乗っていなかった。

 

女がより深く警戒をあらわにする。

宣言し言葉を伝えるには無粋の者を、始まりの剣___螺旋剣___で焼き尽くす。

 

自らの身を媒介にして火の粉を散らすその姿は、まさしく薪そのもの。

 

 

_____名も無き都が主、二つ名を『極致』.........孤独で哀れな薪の王だ。

 

 

不死の呪いを受けたものとして、終わりなき使命を背負ったものとして、不死隊の儀礼にて、私は静かに名乗りを上げた。




光り云々、ヨーム云々はオリ設定です。
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