薪の王は機械の世界で何を見る   作:氷那

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人間性捧げた直後に死んだときって、何とも言えぬ感情が湧きあがるんですよね。
残り火使った直後に侵入されたときって大体瞬殺されるんですよね。

感想を頂いたときって、なんだか無性にはしゃぎたくなるんですよね。

というわけでまたやりました。




王は、未来の強者に懐かしき面影を見る。

「ま、薪の......王...?それは神話の中の存在じゃ........」

 

ウサギ耳の女の目が大きく見開かれる。

 

女が動かなくなったその背後から、突然何かが物凄い速度で迫ってきているのを感じた。どう考えても友好的な気配ではない何かが。

その何かはウサギ耳の女に近づくと、手に持った得物で切りかかった。

細長く、突き刺すことに特化したエストックのような物。

 

さすがに目の前で人が殺されるのを黙って見ているのは気持ちが悪いために、未だ動かない女の手をつかんでこちら側に引き寄せ、もう片方の手で相手の得物を受け取る。

確かに一撃が重いが、四騎士の処刑人と比べればまだ軽い。グッと押し返して引き離すと、腕の中にいる女に話しかける。

 

_____後ろで見ているといい。王の名が嘘偽りでないこと......証明して見せよう。

 

返事を待たずに敵に向き合い、真っ向から勝負を仕掛ける。

相手は、私をウサギ耳の女の護衛か何かと勘違いしたのだろうか、同じように真正面から突っ込んでくる。

 

月光に照らされた敵の姿はさしずめアラクネ、こいつも女のようだ。

この姿を見たとき、一瞬蜘蛛姫が脳裏をよぎったが、あの娘たちは衣服を着ていなかったから、明らかに違うとわかった。

 

余談ではあるが、蜘蛛姫の姉妹と話しているときに、なるべく体を見ないようにして話していたのだが、それに気が付いたクラーグが微笑ましいものを見たように笑いかけてきて、とても恥ずかしい気持ちになったのは、今もなお鮮明に覚えている。

 

この状況、何も知らぬ者なら絶望するだろうが、しかし、そのような強敵、混沌の苗床と私は以前戦うことがあった。

 

もし同じ蜘蛛なら弱点を知り得ている。混沌の炎が飛んでこないだけで随分楽になるだろう。

心の臓を狙った鋭く突き刺すような一撃を受け流し、続く一撃を前転することで回避する。起き上がりざまに僅かに硬直している脚に一閃。

二本同時とはいかなかったが、一本を斬り落とすことが出来た。

 

なんて脆いのだろうか、蜘蛛姫はそこらの剣では傷一つつかぬ強固な皮膚を持っていたのだが。

なかなか当たらない攻撃に痺れを切らしたのか、攻撃がだんだんと単調になってきた。攻撃も初撃の方がまだ重かっただろう、もう最初の強者としての余裕が消え去ってしまっていた。

 

_____愚かな......恐らく自らよりも弱き者たちを狩ってきたのだろう?強者とは、何時なんどきも強者たらんとしてなければならない。

 

途端、相手の動きが鈍くなった。

 

_____なぜなら、それが、強者が強者たる由縁だからだ。より強きものに挑み、そして下して見せろ。それが出来ぬのならお前はもう強者でもない。ただの臆病者だ。挑み続ける意思を失ったお前は、すでに強者ではない。

 

語りながらも、何度も刃を交えた。

切り刻み続けた体はもう会った時の原型などほとんど残していなかったが、目は、目だけは諦めたような色を微塵も見せない。

 

_____その身に刻め、これが、強者としてあるべき姿だ。

 

私の体に残り火の火が灯り、火の粉がとめどなく溢れ空へと立ち上っていく。

螺旋剣はより一層炎の揺らめきがまし、炎の剣といっても過言ではない。

敵の体に刻みつけるように十字になるように叩ききり、反対に、下から持ち上げるようにしてクロスに切りつける。

 

豪炎が周りを焼きつくし、余波によって空間が歪む。

 

倒れた体に剣を突き立て、溢れんばかりの炎を開放する。

竜の火炎のように爆発する炎は、私たちを中心に円を描いて広がっていく。

少しばかりあった緑は、先ほどの炎で焼け落ちてしまった。

 

敵はもう動かない、だが死んでいるというわけでもない。

脚は一本を残して他は切り落とされ、深い紫と赤色のボディーは、刻まれた傷によってその輝きを失っていた。

 

しかし、私を睨むその眼は俄然勢いを弱めない。

 

_____いい目をしている......強くなれ、蜘蛛姫の面影を残す者よ。強くなって私を殺しにこい。

 

奥の方から、もう一機が近づいてくる。

その機体は私には目もくれず、目の前で横たわっている女に必死に話しかけていた。

遅れて返事が返ってくるとよほど安堵したのか、ため息が漏れていた。

 

耳に手を当て何事か呟くと、ようやくこちらを向く。

静かに向けられる視線には、その裏に猛々しい思いを秘めていた。

蜘蛛の女を抱きかかえ、背を向ける。

その女はこちらを見ることもなく、一言つぶやく。

 

「.........次こそ必ず」

 

そう言い残して遥か彼方へと去って行った。

 

後ろで呆然としていたウサギ耳の女は、どこか死んだ目で小さくつぶやいていた。

 

「あの戦闘能力......ちーちゃんを遥かに凌いでるほどの技術。それ以上に鉄の剣のはずなのに、剣が炎を纏ってるんじゃなくて剣そのものから炎があふれ出してる?そんな物質聞いたこともないし見たこともない......。それ以前にあんな凄腕相手に汗一つかいてないのがおかしいんだ。素人から見ても激戦なのに受けてるダメージがほとんどない。こんなの普通の人間じゃあり得ない............」

 

目の死んでる女が私を見ながら何事かを呟くという、ある意味の恐怖に襲われた私は、この女をしばらく放置して、篝火を制作することにした。

 

 

 

 

篝火を作り終えて早五分、エストを飲みながらくつろいでいると、後ろから躊躇いがちに声が掛かった。

 

「ねぇ、さっき使ってたあんたの剣.........少し見せてもらっていい?」

 

私はもう一度螺旋剣を取り出すと、ウサギ耳の女に手渡す。

そんなんで大丈夫なのかなどと言われそうだが、螺旋剣はもともとはソウルでできている。この女が、不死の呪いに罹っているわけでも無ければ盗まれなどしない。

 

上下逆さにしたり裏返したりと、熱心に見ている。

そんなに面白いものなんだろうか......私にはさっぱりわからない。

しばらく螺旋剣を見ていた女は、剣を脇に置くと両手を私の兜に添えてきた。

何がしたいのか分からないが、何か意味がある事なのであろう、そう判断してそのままでいると、私の行動をどう解釈したのか、こともあろうに兜を取ってしまった。

 

篝火を作ったとはいえ、ここが完全に安全地帯かと言われれば、否と答える。

篝火で休憩しても敵が付近にいることは何一つ変わりはない。

戦士とは、何が起きても冷静に対処できるもののことをさす。力も必要だがそれ以上に心落ち着ける場所を自ら作れるということも必要なのだ。

 

そう思って取り返そうとすると、ウサギ耳の女が私を見ながら固まっている。心なしか顔が赤く染まっているようにも見える。兜を返せと言わんばかりに近づくとその分だけ女が下がる。

 

あとはもう予想通りだ。

さがって追って下がって追って下がって追って下がって追って下がって追ってをひたすらに繰り返す。なかなか捕まらないから、思わず鞭で足を絡め捕って拘束してしまった。

 

 

あのあと一悶着あったものの、なんとか事態は沈静化した。

 

 

.........のだが、あれから一向にこちらの顔を見ようとしない。

目どころか、顔自体をあさっての方向に向ける始末。

一体どうしたというのか、顔を近づけるとまた顔を赤くしてのけぞる。

しばらくそんなことを続けていると、遂に両手で顔を隠してうずくまってしまった。

 

本当に訳が分からない。

 

ウサギ耳が生えてる人間は、キノコ人のような独特の感性でもあるのだろうか。

 

これは大発見ではないか。もしかしたらこの女、珍しい火種などを持っているかもしれん。

それ以上に、私の故郷でも類稀な輝かしいソウルの持ち主でもあるのだ。

世界が違えば、この女が火を継いだ可能性も無きにしも非ずであろう。

 

ふと思ったのだが、私の元いたあの世界はどうなっているのだろうか。

彼の世界の薪たる私が、違う場所にて命を紡いでいるということは、なにかしらの原因でもあったのだろうか。今の私に出来るのは、せめて暗黒の世界が広がっていないことを祈るばかりである。

 

ところで..............。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

だの

 

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛」

 

だのと唸っているこのウサギ耳の女は、一体どうすればいいのだろうか。




蜘蛛姫様に大量の人間性を捧げたひと、先生褒めてあげるから出てきなさい。

老魔女の指輪が手に入らなくてお話しできなかった人、慰めてあげるから出てきなさい。

蜘蛛姫様の胸部装甲を眺め続けた変態紳士の皆さん、ちょっとお話しましょう?


因みに私は、声を聴いて無意識に立ち上がってガッツポーズしてました。
ほんとうにびっくりしました。


でもヨルシカ様もいいと思うんだ(小声
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