アイドルマスターシンデレラガールズIF 〜シンデレラの絵本〜   作:松前正樹

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たったひとつのロックなやりかた 4

 私たちの曲作りはその後、順調そのものだった。

 

 曲を作ったことのない私に、なつきちは色々なCDを貸してくれたり、実際にギターで音を奏でたりしてくれて、申し訳ないなぁとも思いつつかなり楽しかった。作詞に関しても、基本的に目指す方向性が同じだったからかそこまで大きな衝突もなかった。

 

 それを少し残念だと思うあたり、私もだいぶ毒されているみたいだけれど。

 

 そして、あの騒動の2週間後――

 

「~~っ、できたー!」

 

「あぁ、中々長かったな」

 

 事務所の机を囲む私となつきちは満面の笑みを浮かべる。机の上には何十枚もの楽譜が散乱しているが、その中心にある四枚に私たちの視線は集中していた。

 

「これで後は練習あるのみだ。もう2週間弱しか時間はないけど、いけるか、だりー?」

 

「もっちろん! ささ、早速練習しよっ!」

 

 私は楽譜を手に取り立ち上がると、未だソファに座るなつきちに手を差し出す。

 

 なつきちは少しの間ぽかんとしていたが、すぐにいつものクールな笑みを浮かべた。

 

「やっぱ、だりーといるとなんか落ち着くよ」

 

 そう言って私の手を強く握るなつきち。つないだその手の温もりを感じながら、私は早足でレッスン室へと足を伸ばす。

 

 私自身のロックと共に。

 

 

 ×××

 

 

 ステージを照らす光の色は目まぐるしく変わる。割れんばかりの歓声に、全身に伝わる音の響き。ステージの袖からチラッと客席を見ると、そこには膨大な人、人、人。それぞれが思い思いに飛び跳ね、叫び、己の”楽しい”を表現している。

 

 そんな様子に思わず息を飲む私。すると、隣から聞き慣れた声が聞こえてくる。喧騒の中でも、しっかり私に届くその声の主は、前髪を豪快なリーゼントへ仕立て上げ、黒を基調とした衣装に身を包んでいる。

 

「どうした? ここに来て怖気づいたのか?」

 

 その端正な顔に悪戯っぽい笑みを浮かべ、そう問いかけるなつきち。

 

 それに私は思わず反論しようと口を開くが、出た言葉は違った。

 

「……うん、確かにちょっと緊張してるかな。でも大丈夫。もう私は迷わないよ! ここにいる全員を最高に楽しませてみせる!」

 

 私はこのフェスに招待した、たった一人の大切な人の顔を思い浮かべながら、大きな啖呵を切ってみせた。

 そんな私を見て、なつきちは豪快に笑い、お決まりの口上を口にする。

 

「李衣菜のロックと?」

 

「夏樹のビート!」

 

 前の組の演奏も終わり、次は私たちの番。私は覚悟を胸に抱き、ステージを見据える。

 

 私の隣に立つなつきちはまだ、私にとっての憧れで、輝きで、多分一生そうだと思う。

 

 でも、私はもう二度と彼女に負い目を感じることはないだろう。

 

 彼女はこうして、私の隣に並んでくれる存在なんだから。

 

 そして私は今日走り出す。最高にロックな、ステージの元へ。

 

「「いくぜ! ロック・ザ・ビート!」」

 

 

 ×××

 

 

「李衣菜ちゃん、夏樹ちゃん、お疲れ様! 最高だったにゃ!」

 

「みく! 来てくれたんだね!」

 

「おー、みくじゃんか。今日はサンキューな。相方、貸してもらったぜ」

 

 ライブの後、控え室にいた私の元に訪れたのは私のパートナー、みくだった。なんでもプロデューサーに無理を言って楽屋裏に入れて貰ったらしい。

 

「礼には及ばないにゃ。それより、2人が仲直りできたみたいで本当に良かったにゃ!」

 

「あー……その節は誠にお世話になりました……」

 

 あまり蒸し返したくない話題を振られ、思わず口ごもる私だったが、なつきちは爽やかに笑って一言。

 

「ホント助かったぜ。やっぱりみくに相談して正解だったな」

 

 ……え?

 

 みくに相談したのって私だよね?

 なんでなつきちが?

 

「ちょ、夏樹ちゃん! しーっ、しーっにゃ!」

 

「あっ、すまんつい」

 

 あからさまに慌ててみせるみく。鈍い私も流石に気づいた。二人の間で何が行われていたのか。

 

 私は笑顔で、極めて好意的に尋ねる。

 

「みく? 確か電話で、パートナーなんだから悩んでることぐらいわかるー、とか言ってたよね?」

 

「はいにゃ……」

 

「それで? 本当はなつきちに相談を受けて私に電話してきたってこと?」

 

「はいにゃ……」

 

「……」

 

 ホントなら、励ましてくれたことを感謝するべきなのだろう。実際に私はみくにかなり助けられているんだから。

 だが、その時の私はそんなことを考えられなかった。

 

 私は握った拳を震わせ、俯いたまま顔を上げようとしないみくに一言。

 

「解散だーーーっ!」

 

 

 

 たったひとつのロックなやりかた fin




これで、『たったひとつのロックなやりかた』は終了となります。最後まで読んでくださった方、一話でも読んでくださった方、ありがとうございますm(_ _)m
しかし、作品自体はまだまだ続きます。次は頂いたリクエストに沿って書こうと思っております。リクエスト、本当にありがとうございます!

*追記・9月21日:話の流れを考慮して3話と4話を一緒にしました。話は変わりませんので、よろしくお願いします。
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