アイドルマスターシンデレラガールズIF 〜シンデレラの絵本〜   作:松前正樹

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照らす星々の光

 昔から星を眺めるのが好きだった。キラキラと輝く星たちは幻想的ななでに美しくて、小さな頃は夜になると空ばかり見ていた。ロシアでも、10歳の頃に引っ越してきた北海道でも、場所は違えども星の輝きは同じで、いつかその光を見る目は、感動から憧れに変わっていた。

 

 月日は流れ、今私は更に別の場所で暮らしている。そこは東京。日本の中心地で、人も建物も多くて、そして、星がほとんど見えない。

 

 最初は不安だった。今までとはまるで異なる環境で、しかも両親と離れて一人寮で生活しなければならない。そして、心の支えだった星もそこにはない。

 

 でも、それは違ったみたい。東京にも、燦然と輝く星は存在するのだ。私はそれを知って、それになりたいと思った。

 

 アイドル、アナスタシア。

 それが今の私。星のように輝くための、私のお仕事。

 

 

 ×××

 

 

「星を見に……ですか?」

 

「ええ、この前のライブ、大成功だったでしょ? それでプロデューサーさんが、どこでも好きなところに連れて行ってくださるんだって!」

 

「その通り! さあ、我が盟友アーニャよ! 共に神魔の世界へ足を踏み入れようぞ! (そうなんです! だからアーニャさん、私たちと天体観測に行きましょう!)」

 

 いきなりのことで、驚いてしまった。どうやら事情はミナミの話した通りみたい。この前私とミナミとランコの三人でやったライブの事を言っているのだろう。でも、私には少し気がかりなことがあった。

 

「アー……ミナミ? 私、とても嬉しいです。でもミナミとランコはそれでいいんですか?」

 

 そう。二人の気持ちだ。二人が星を見に行こうと言ってくれたのはとても嬉しいことだが、二人の気持ちをないがしろにしてまで行きたくはない。

 

「もちろん! 私、アーニャちゃんと星を見るの、好きだから。アーニャちゃんが本当に星を好きと思ってるのが伝わってくるから」

 

「我も異存はない。我が盟友と共に地の果てまで征けるのだ。これ以上の幸福はなかろう! (私も賛成です。お、お友達とどこかに行けるってだけで、とても嬉しいんです!)」

 

 二人はそう言って優しい笑みを浮かべる。そんな二人を見て、思わず私も頬が緩んでしまう。

 

「ミナミ……ランコ……スパシーバ。私も二人と星、見たいです!」

 

 私の言葉に、二人はより一層の笑顔を見せてくれた。そんな二人が、私にはとてもキラキラと輝いて見えて、なんというか、星のようだと感じた。

 

 ……ほら、こんな近くに私にとっての星がある。

 

 

 ×××

 

 

 ここは、ナガノケンのとある林、らしい。と言うものの、私は日本の地理にあまり詳しくないため、場所に関してはプロデューサーとミナミ、そしてランコが決めてくれたのだ。

 

 私は三人に感謝しながら、ついさっき日の落ちた林の中を歩いていく。少し歩いた先に目的の丘があるみたいなのだが……。

 

「プロデューサー、貴殿の光魔法、決して絶やすでないぞ! (プロデューサーさん、絶対に懐中電灯消さないでくださいね!)」

 

「確かに真っ暗だもんね。電灯が一本もないし、木で月とか星の光も入ってこないし。もしかしたらおばけとかがでるかも……」

 

「ひ、ひいぃぃ! おばけは嫌ですぅ!」

 

 ミナミに脅かされたランコは鳴き叫びながら私の服の裾にしがみついてくる。

 

「大丈夫ですよ、ランコ。おばけなんていませんから。それとミナミ。ランコを怖がらせないでください」

 

「ご、ごめんごめん。軽い冗談のつもりだったんだけど……ごめんね、蘭子ちゃん」

 

「ぐすっ……許す」

 

 ミナミの謝罪に涙を拭って応えるランコ。普段は気丈に振る舞っているランコのこういうところは、可愛いポイントの一つだと思う。

 

「……あ、あれ見て! 目的地だよ!」

 

 そんな他愛もないことを考えていると、突然ミナミがそう言って走り出した。見るとその先には開けた場所。月明かりに照らされて幻想的な雰囲気を醸し出している。

 

「わぁ……」

 

 思わずといった風に感嘆の声を漏らすランコ。いつの間にかプロデューサーが持つ懐中電灯の光は消えていたが、何の支障もない。

 

 空に輝く数多の星々が、みんなを照らしているから。

 

「ハラショー……」

 

 頭上に広がる大空を彩る星々。その一つ一つがそれぞれの輝きを持って、精一杯光っている。

 

「なんか、私たちみたいだね」

 

 隣に立っているミナミがそんな事を口にした。確かに、あの星はまさに私たちなのかもしれない。各々の輝きを、各々の形で表現する。

 

 それはまるで、アイドルの様。

 

「アーニャちゃん、ランコちゃん。私、2人と出会えてよかった」

 

「ミナミ……」

 

「美波さん……」

 

 突然の言葉に私とランコは驚いて何も言えない。でも、ミナミの口からは溢れるように言葉が紡がれた。

 

「アーニャちゃんと出会って、蘭子ちゃんと出会って。一緒にレッスンして、合宿に行って、本番に私が倒れちゃった時は、蘭子ちゃんが私の変わりをやってくれた。アーニャちゃんのソロ活動の話が出た時も、これは冒険なんだって、決して離れ離れなんかじゃないって、そう思えた」

 

 月と星の光を受けて、ミナミは一心に想いを紡ぐ。その様はまるで女神のようで、私の心に淡く温かな光を当ててくれた。

 

「私、二人が大好きだよ」

 

 そう言って微笑むミナミ。その表情に嘘も偽りもない。純粋に、ミナミの気持ちをさらけ出してくれている。

 

「……ダー。私も大好きですよ。ミナミ」

 

「もっ、もちろん私も! 美波さんには、大切なことを教えて貰ったから」

 

 私たちは、星空の下で笑いあう。

 

 今日という日に、感謝しながら。

 

 2016年9月19日、私にとってこの日は決して色褪せることのない大切な日。友たちと星を眺めた、かけがえのない1日。

 

「アーニャちゃん」

「アーニャさん」

 

 不意に二人はこちらを向く。

 

 正直な話、なぜこの日にわざわざみんなで仕事を開けてここまで来たのかという疑問の答えは、自分の中で定まっていた。優しい二人のことだから、この日も敢えて選んだんだろう。でも、私はその答えを胸の中に仕舞い込む。

 

 今はただこの喜びを噛み締めて。

 

「「お誕生日おめでとう!」」

 

 

 

 照らす星々の光 fin




今日は私の担当の1人であるアーニャの誕生日ということで、とても短いながら一作書かせていただきました!
え? 次はリクエストなんじゃないかって?
……申し訳ありませんm(_ _)m
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