眠いです。
ゾンビメーカー討伐失敗から数日、私たちはもはやたまり場となった冒険者ギルドの酒場にいました。今席に座っているのはカズマさんを除くいつものパーティーメンバーです。
カズマさんは酒場の一角でほかの冒険者さんと何か話しています。後で内容を教えてもらいましょうか。
アクアさんたちは、カズマさんの様子が気になるのか、ずっとカズマさん達の方を見ています。
何をしているのか聞いたところ、「カズマがほかのパーティーに行ったら、私たちをまとめれるのがあんた以外いなくなるじゃない!」とのこと。なんだかんだで愛されてますねぇ、カズマさん。
私はというと、先日とある魔法具店で購入した『ルービックキューブ』という遊び道具をいじっています。魔力を通すとそのパーツに対応した色があらわれる仕組みなのですが、これをめぐみんさんに適当に回してもらい、一度だけ魔力を流して色を揃えれるかどうか試しています。
「…確かここは…赤だった気がするから…」
「クレールはよくそんな魔法具で遊べますね…」
「慣れたら楽しいですよ?」
めぐみんさんが呆れたように言ってきますが、これは本当になれたら面白いんです。一度やってみるのをお勧めします。
ルービックキューブに軽く魔力を通すと、赤、青、白、オレンジ、緑、黄の六色が浮かび上がりました。色は全ての面が揃っています。よし、成功です。
「……どうした?俺を、そんな目で見て。あとクレールは何してるんだ?」
アクアさんたちの視線に気づいたカズマさんが、いつの間にかテーブルまで戻ってきました。テーブルには誰が頼んだのか、野菜スティックが置かれています。
「別にー?カズマが、ほかのパーティーに入ったりしないか心配なんてしてないし。」
アクアさん、それは誤魔化す気があるんですか?
「私は少し前に購入したルービックキューブの目隠し攻略に挑戦してました!がんばったらできましたよ」
「うわっ…なんだそのマスの数と大きさ。軽くバスケットボールくらいあるぞ」
カズマさんがまるで気持ち悪い物でも見たような目で私の手の中のルービックキューブを見ています。ばすけっとぼーるというのが何かは分かりませんがかなり引かれたのはちょっと解せません。
カズマさんは席に着き、野菜スティックに手を伸ばしますが、手を伸ばした先にある野菜はカズマさんの手をひょいっとかわします。
駄目ですよ、野菜スティックは一度驚かせないと。
「何やってんのよカズマ」
アクアさんも同じことを考えたようで、手本を見せるように机を叩き、驚いて動かなくなったステックを一本つまんで食べます。
「……むぅ。楽しそうですね。楽しそうでしたねカズマ。ほかのパーティーと、ずいぶん楽しそうでしたね?」
めぐみんさんは拳を握ってテーブルを叩き、ステックを食べました。…何でしょう?嫉妬でしょうか?めぐみんさんにもそういった可愛いところがあるんでしょうか?
「……何だこの新感覚は?カズマが他所のパーティーで仲良くやってる姿を見ると、胸がもやもやする反面、何か、新たな快感が……。もしや、これが噂の寝取られ……?」
変態さんが何か言ってますが、無視しましょう。
「冒険者仲間へのコミュニケーションは大事なので、そこまで考えなくても……」
特に何もせずステックに手を近づけ、指先から魔力を少しだけ勢いをつけて噴出して、野菜をびっくりさせます。うん、おいしい。
「なんだ、どうしたんだよお前ら。こういった場所での情報収集は基本だろうが……?」
そういいつつ机をバンッと叩き、ステックに手を伸ばすカズマさんですが、またも逃げられてしまいます。
「……………だぁぁぁあらっしゃぁぁあぁああ!」
「や、やめてぇぇ!私の野菜ステックになにすんの!た、食べ物を粗末にするのはいくない!」
カズマさんは、伸ばした手でそのままコップを掴み、大声をあげて振りかぶり、床に叩きつけようとしますが、アクアさんがそれを阻止します。できれば弁償と説教は勘弁してほしいです。
「野菜ステックごときに舐められてたまるか!てゆーか今更突っ込むのもあれなんだが、なんで野菜が逃げるんだよ。ちゃんと仕留めたやつを出せよ」
「何言ってんの。お魚も野菜も、なんだって新鮮なほうが美味しいでしょ?生き作りって知らないの?」
生き作り…ダイワのサシミを魚の姿のまま出すんでしたっけ?あんまりダイワの料理はあまり知らないんですよね。ハシって言う食べるための道具は練習して使えるようになりましたけど。
「カズマさん、私たちの常識はこの世界の非常識です。あまり考えないほうが吉かと」
カズマさんだけに聞こえるように言いつつ、野菜ステックをカズマさんに差し出します。ほんの少し魔力で野菜を脅かしつつですが。
「おう。そうするわ。ほんと何なんだろうな、この世界」
そういいながら野菜を食べたカズマさんは、美味しかったのか少し目を見開きます。
「結構うまいなこれ……いや、それよりお前らに聞きたいことがあるんだよ。レベルが上がったら、次はどんなスキルを覚えようかと思ってな。はっきり言ってバランスが悪すぎるからな、このパーティーは。自由の利く俺と完全支援型のクレールで何とか穴を埋める感じで行きたいんだが……お前らのスキルってどんな感じだ?」
なるほど、正論ですね。少し前にサポートは全員のやりたいことが分かってないと完璧なサポートはできないと誰かさんに伝えた気がしますので、私も聞いておきたいですね。
「私は【物理耐性】と【魔法耐性】、各種【状態異常耐性】で占めてるな。あとはデコイという、囮になるスキルくらいだ」
「……【両手剣】とか覚えて、武器の命中率を上げる気はないのか?」
「ない。私は言っては何だが、体力と筋力はある。攻撃が簡単に当たるようになってしまっては、無傷でモンスターを倒せるようになってしまう。かといって、手加減してわざと攻撃を受けるのは違うのだ。こう……、必死に剣を振るうが当たらず、力及ばず圧倒されてしまうのが気持ちいい」「もういい、お前は黙ってろ」
「……ん……っ!自分から聞いておいてこの仕打ち……」
変態さんは常時平常運転のようで安心しました。盾にしかなれないなんて、快感を感じる暇もなく消し飛べばいいと思います。
「私はもちろん爆裂系スキルです。【爆裂魔法】に【爆裂魔法威力上昇】、【高速詠唱】など。最高の【爆裂魔法】を放つためのスキル振りです。これまでも。もちろん、これからも」
「……どう間違っても、【中級魔法】スキルとかは取る気はないのか?」
「無いです」
正直に言うと、めぐみんさんの爆裂魔法を連続で放つためのスキルが無いことは無いのですが、必要なものが今入手できてないので、後で買いましょうかね?
おっと、私の番ですか。
「私のスキルを全部言うとキリがないのですが……全部言うのと、要点だけ絞って言うの、どっちがいいですか?」
「ん?確かこの前冒険者カードを見せてもらったとき、そんな多いってほどじゃなかったと思うんだが?新しく覚えたのか?」
「いえ、実は私の覚えているスキルの中に、≪常時発動≫スキルがあるんですけど、これは冒険者カードに表示されない見たいなんです」
「ちなみにどのくらい覚えてるんですか?」
「20は優に超えるかと……」
「チートか」
「モンスターかなにかですか?」
「少し多すぎないか?」
「流石に多すぎて引くわ……」
まさかの滅多打ち。うちの世界じゃこのくらい持ってる人結構いましたよ?
「じゃあ、主要な≪常時発動≫スキルと、よく使うスキルだけ教えてくれ」
「了解しました。では≪常時発動≫スキルを一つだけ……どれにしましょうか…。…【アニマルエンパシー】なんてどうです?……動物たちと話せるスキルなんですが」
「……それだけか?」
「よく使うのがこれだったんですよ。"動物の王"の皆さんと話せますよ?」
「考えるだけにしとく。次を頼む」
「…はい。うーんと、≪楽器演奏≫スキルの【ファイトソング】なんてどうでしょう?一日に一度しか使えないようなスキルをもう一度使えるようにするスキルです」
「そんなスキルがあるのですか!?それを使えば日に二度も爆裂魔法が打てるのですか!?」
「…楽器さえあれば、数日後にはできるんじゃないでしょうか?」
「?なんで疑問形なんだ?」
質問をしてきたカズマさんの顔に私の顔を寄せ、小声で話します。
(あくまで
(な、なるほど…)
…なんで顔が赤いんでしょうか?
「よし、クレールは後回しだ。あとで聞くことにしよう」
「じゃぁ私の番ね。……えっと、私は……」
「お前はいい」
「えぇ!?」
アクアさんってアークプリーストのスキルは全部持ってるんでしたっけ?あと宴会芸。
「なんでこう、パーティーのまとまりってもんがないんだ…。本当にクレールだけ連れて移籍を……」
「「「!?」」」 byアクア、めぐみん、ダクネス
「?」 byクレール
……あ、野菜、もう無くなってましたね。
……パッシブ(常時発動)スキルは本当にたくさんあります。
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