1話 チョロイ子と神
「クレール・フラシアさん、ようこそ死後の世界へ、あなたは不幸にもつい先ほど、亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
私は目を覚ますと目の前の女性にそう告げられました。先ほど目にしていた景色との明確な違いに戸惑ってしまいます。…ここは…どこでしょう?
周りを見渡してもただただ白い空間が目に付きます。それに私は初めて見るタイプの椅子に座っていました。なんでしょうこれ、くるくる回ります。楽しいです。
「えっと、いいかしら?」
「あ、はい」
あ、つい遊びすぎちゃったみたいです。女性が話しかけてきました。というか、いくつか気になる単語が…
「死後の世界?私は死んだのですか?」
「いや、あれは一種のお決まりみたいなものでね?実際はかなり違うわね」
「えっと、どうゆうことでしょうか?」
「その前に、自己紹介だけしておきましょうか。後から言うのも余計に混乱しそうだし。私はブリガンティア。予言や魔術を司る女神よ」
ブリガンティア。私がその名前を聞き間違えるわけがありません。先ほど彼女が言った通り、ブリガンティア様は予言、魔術を司る月の女神であり、私の崇拝している"七大神信仰"における一角を担っているお方です。
また、私たちエルダナーンという種族を生み出されたお方でもあるのです。
つまり、遠回しの生みの親です。
心の中では神様に会えたことで大喜びですが、失礼のないように心のみに抑えておきます。
「うん。その様子だと少なからず信じてくれたみたいね?さて、さっき違うって言ったことなんだけど、今あなたの意識があるのが天界。
「意識だけ天界に来たって事は分かりました」
「えぇ、そんな感じ。それで、あなたをここに呼んだ理由なんだけど……」
◇
ブリガンティア様の説明によると、知り合いの管理している世界にいる魔王が市民に被害を出しているため、二ホンという国から若くして亡くなってしまった方々を転生させ魔王討伐に力を当てているそうです。
しかし、転生していく方が魔王の軍勢によって返り討ちにされてしまい、このままではまずいと考えたその世界を担当している神様は、先輩にあたる七大神の皆様に助けを求めたそうです。
「後輩の頼みなら聞いてやるか!」と言う相手が女神だから余計にやる気が満ち満ちている"太陽神"アーケンラーヴ様の声掛けで、自分が思う"異世界に送ったら魔王軍に対抗できそうな人物"を七柱の皆様が指名したところ、半数が私を指名したそうです。主な理由としては、「あなたより戦闘能力高い子送ったらオーバーキルだからでしょうね」とのことです。
「――っと、ここまでいいかしら?」
「はい、なんとか」
「まぁ一言でいうなら異世界に行ってきてほしいんだけど……これは強制じゃないし、断ってもらってもいいのよ?こっちが勝手に指名しただけだし……」
「いえ、ここまで聞いたら引き下がれませんし……。何より、神様に期待されてるならそれに答えるのも信者としての喜びですよ」
そういうと、ブリガンティア様は微笑を浮かべながら「ありがとう」と言ってくれました。……もう一回お願いできませんか?すごい原動力になりそうです。
「じゃあ、あなたの肉体を向こうに送るわね。それと、向こうの通貨は
あ、生活費は嬉しいです。無一文は何もできませんから。
「あとこれはサービスよ」
その言葉とともに私の前髪を軽く上げ、額に唇を当てました。
「あなたの行く先が幸いで満ちるよう、額に祝福の口づけをってね」
すると、額のちょうど口づけされたところがほんのりと温かくなるのを感じました。
「女神ブリガンティアからの餞別よ。
ブリガンティア様が嫌味たっぷりの言葉を吐きながら後ろを振り向くと、苦笑いと冷や汗を顔に浮かべた六人の男女が。もういろんな神気に当てられて浄化されそうなんですが……。
「さ、じゃあ転移開始するわよー」
「え?あの方々は……?」
「我儘に突き合わせてるのに顔の一つも見せないようなのはほっときましょ」
いいのかな……と考える私の足元には一瞬にして展開された魔法陣が。なんか、最後にものすごいもの見たような気がします。
……それにしても珍しい魔法陣!何だろうこの術式!展開までの時間も短かったし、さすが魔術の神!
「では、クレール・フラシア……貴方はこれより異世界に転移し、魔王を倒すために戦いの世に身を投じてもらうわ!」
ってことはこれ世界越えちゃう規模の魔法陣!?うわー、覚えたい。
「もし魔王を倒した暁には、貴方の願いを何でも一つ叶えてあげるわ!」
「願わくば、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒す者となることを祈っています。さあ、旅立ちなさい!あと、後輩の神を見つけたらよろしく言っといてね!しっかりと、異世界を楽しんできなさい!」
光で埋められていく視界の中で、七柱の皆様が笑顔で見送ってくれるのが見えました。
やる気出てきた!!
タイトル通り、クレールはちょろいです。
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