「まままま、毎日毎日毎日毎日っっ!おお、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んで城の入口に大穴を開けた、頭のおかしい大馬鹿者は、誰だあああああー!!」
怒りで体を震わせ、首が砕けそうなほど拳を握りしめたデュラハンさんは、我慢の限界といった感じで声をあげました。なにがこのデュラハンさんをここまで怒らせ、この街に来る原因になったのか、すぐに分かります。
ほかの冒険者の皆さん方もその原因となる人物に心当たりがあったようで、同じパーティー内で顔を見合って話しています。内容としてはこんな感じですね。
「……爆裂魔法?」
「爆裂魔法っていったら……。」
「爆裂魔法を使えるやつって言ったら……」
皆さんの視線は自然とカズマさんの隣に立っているめぐみんさんに向けられます。皆さんにそんな感じで認識されてるんですね、めぐみんさん。
カズマさんとめぐみんさんは最近爆裂魔法のめぐみんさんに撃たせてストレスを解消させていたようですし、大方爆裂魔法の標的にしていた地点がデュラハンさんの住んでいた所なのでしょう。お二人の冷や汗だけでここまで察してしまった自分に何とも言えない気持ちになります。
やがて、めぐみんさんが観念したようにため息をつき、ゆっくりと前に出始めます。私はそれに付いていきましょう。カズマさん達の「えっ」て感じの声が聞こえましたがスルーします。
「お前がっ……!お前らが、毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んでいく大馬鹿者か!この俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているのなら、堂々と正面から攻めてくるがいい!その気がないなら、街で震えて隠れているがいい!」
デュラハンさんはそこで言葉を区切り、掲げた首を左右に傾かせました。…よく落ちませんね。
「なあ、なんであんな陰湿な嫌がらせするの?この、こんな、低レベルの雑魚しか居ない街だと思って放置しておれば、毎日毎日飽きもせず、ポンポンポンポンと……っ!本気で頭おかしいんじゃないのか貴様らぁ!!」
うーん、まさかここまで怒っているとは思いませんでした。確か爆裂魔法の威力はかなり強かったので、一週間も撃ち込まれては城も危ないでしょう。
どうしようかなぁー。
「我が名はめぐみん!アークウィザードにして、爆裂魔法を操るもの……!」
堂々とめぐみんさんが名乗ると、デュラハンさんがピタリと動きを止め、肌を刺すようなプレッシャーの多少薄まります。
「……めぐみんってなんだ?馬鹿にしてんのか?」
「ち、違わいっ!」
「というかなんであのタイミングで名乗ったんですか?自己紹介ですか?」
「ちょっ、クレールまでそっちに付かないでください!……コホン。我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い!我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部のあなたをおびき出す為の作戦……!こうしてこの街に、まんまと一人でやって来たのが運の尽きです!」
気を取り直してデュラハンさんに杖を突きつけるめぐみんさん。戦闘開始は今はちょっと遠慮したいですね……。誰かに力借りましょうかね?
とりあえず私は腰から先日買ったフルートを取り出します。
作戦って、何なんでしょうね?楽しみにしましょう。
「……おい、あいつあんな事言ってるぞ。探求と訓練とストレス解消の為だって駄々こねるからから連れ出したんだが、いつの間に作戦になったんだ?」
「……うむ。しかもさらっとこの街随一の魔法使いとか言い張っているな」
「しーっ!そこは黙っておいてあげなさいよ!今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろにたくさんの冒険者と、隣にクレールがいるからちょっと強気なのよ。今良いところなんだから、このまま見守るのよ!」
後方の人混みの中からカズマさん達の囁き声が聞こえてきます。……作戦はないんですか?カズマさんが作戦考えたら面白いことになると思ったんですけどね…。
めぐみんさんを見ると、片手で杖を突きつけたポーズのまま、ほんのりと顔が赤くなっているのが分かります。
「……めぐみんさん?無理しないでくださいね?」
「やめてください、優しい目を私に向けるのは」
私たちのやり取りと後ろの会話を聞いていたデュラハンさんはなにかに納得したように話しかけてきます。
「……ほう、紅魔族の者か。なるほど、なるほど。そのイカれた名前は、別に俺を馬鹿にした訳ではなかったのだな。それよりも、そこのエルフよ。お前はこの俺を前にして余裕のように見えるが、何者だ?あとその笛は何だ?舐めてるのか?」
「おい!両親から貰った私の名に文句があるなら聞こうじゃないか!」
「初めまして、デュラハンさん。エルフのクレールと申します。今後ともよろしくお願いいたします。ただのヒーラーですので私のことは気にしないで下さい。あと笛は吹くものであって舐めるものではないですよ?」
こう、それとなく挑発することでこっちに注意がいくようにしたいですが、ここで想定外の返し方をされました。
「知っとるわ、そんくらい!……いや、ただのヒーラーが俺を前にして余裕そうにしているのが不思議でならん。これでも、このあたりの魔物であれば逃げ出すくらいには威圧感を出しているのだがな?」
このデュラハンさん、結構見てるんですね。演技には自信があったのですが。(普通に立っていました。苦悶の表情とはほど遠い微笑みを浮かべていました)
「慣れてるだけですよー気にしないでくださーい」
「おい、ふざけるなよ。なんだその棒読み。……………フン、まぁいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいをかけにこの地に来た訳ではない。この地には、ある調査の為に来たのだ。しばらくは、あの城に滞在する事になるだろうが、もうこれからは爆裂魔法は使うな。それさえやめれば、もう用はない」
「それは、私にに死ねと言っているも同然なのですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」
「お、おい、聞いたことないぞそんなこと!適当な嘘をつくな!」
「そうですよ。なんなら私に向かって撃ってくださいよ。全部相殺するので」
「ほう、我が最強の爆裂魔法を相殺すると?面白い、やってもらおうじゃないか!」
「出来ればそうしてもらいたいものだな。お前のためにも。だが、どうあってもあの迷惑行為を止めるつもりが無いと言うなら、俺にも考えがある…!」
デュラハンさんはそういいつつ私の方に指を向けてきます。視界の端でダクネスさんが嬉々とした表情でこちらに走ってくるのが見えました。
『汝に死の宣告を!お前は一週間後に死ぬであろう!!』
デュラハンさんの指が紫色に輝きます。ふむ、死にたくないので少し本気で対処しますか。幸い、まだ攻撃は来ていませんし。
すぐ後ろまで来ているであろうダクネスさんの対処もしないと。
「ダクネスさん自己犠牲禁止!【プロテクション】!【カタルシス】っ!」
ダクネスさんの足元に脛くらいの高さの障壁を展開して躓かせます。うん、きれいに転びました。
それよりもデュラハンさんにかなり魔力を込めて≪浄化魔法≫をかけてみます。デュラハンさんの足元に魔方陣が展開され、光の柱が立ちます。
「ぎゃぁあああああ!?消える消える!!!」
「んっ!」
結果は私の負けですね。【死の宣告】は私の体に当たり、呼吸が苦しくなります。デュラハンさんは乗ってきた馬のような生き物が消し飛び、デュラハンさんは体が半分ほど透明になっただけです。
「浄化しきれませんでしたか…実力不足ですね」
「もう嫌だこの街!冒険初心者どこだよ!!」
その後、デュラハンさんは一週間後に私が死ぬこと、それを止めてほしくば城に正面から戦いに来ること、ざまぁみろ紅魔の娘!バーカバーカ!とだけ言って城に帰りました。カズマさんとめぐみんさんは責任感を感じたのかデュラハンさんの城に早速向かおうとしますが、
「【セイクリッド・ブレイクスペル】!」
アクアさんの唱えた解呪の魔法によって私の呪いが解け、何とも言えない顔をしていました。
なおレベルアップした模様。
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