このチョロイ子に祝福を!   作:隔離場

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本格的に風邪をひきました。隔離場です。

今度息抜きに短編でも書いてみたいと思います。


24話 チョロイ子とトラウマ

 アクアさんが湖に入ってから二時間、ヴォルフさんが去ってから一時間半ほど時間が経過しました。

 アクアさんの浸かっている地点の水は若干薄くなりましたが湖全体の浄化まではまだまだ時間がかかりそうです。今のところアクアさんに近寄ってくるモンスターらしき影は見当たりません。……もし来たとしても、割と本気でアクアさんに使った【ホーリーアーマー】が発動してくれると思うので危険性は少ないでしょうね。

 

 

「おーいアクア!浄化の方はどんな感じだ?湖に浸かりっぱなしだと冷えるだろ。トイレに行きたくなったら言えよ?檻から出してやるからー!」

 

「浄化の方は順調よ!後、トイレはいいわよ!アークプリーストはトイレなんて行かないし!!」

 

 ……あの、カズマさん?確かに水に長時間入っているとお腹が冷えますが、その聞き方はセクハラになりませんか?なんでアクアさんも普通に返してるんでしょうか。私がおかしいのですか?

 

「なんだか大丈夫そうですね。ちなみに、紅魔族もトイレなんて行きませんから」

「私もクルセイダーだから、トイレは……トイレは……。……うぅ……」

 

「ダクネスさん。張り合わなくていいですから」

 

 なんで、トイレの話題でここまで話が続くんですか?

 

「そうだぞダクネス。トイレに行かないって言い張るめぐみんとアクアの二人は、今度、日帰りじゃ終わらないクエストを請けて、本当にトイレに行かないのかを確認してやる」

 

「や、止めてください。紅魔族はトイレなんて行きませんよ?でも謝るので止めてください」

 

 …………平和ですね。カズマさんのセクハラ発言もどうかと思いますが、まだグランフェルデンよりは平和に時間が過ぎていきます。

 

 

 

「……それにしても、ブルータルアリゲーター、来ませんね。このまま何事もなく終わってくれればいいんですが」

 

 

 

 

 

 よし、警戒しますか。私の前のパーティーメンバーがこういった発言のことを『フラグが立つ』と言って、良くないことが起こる前兆を表している。と教えてくれました。

 実際、湖の一部からワニがこっちに来ているのが見えますし。

 

 

 

 

 

 

 

◇浄化開始から四時間経過

 

 

 

 

 

 

 この世界のワニ、主にブルータルアリゲーターという魔物は、濁った水を特に好む性質を持つそうです。ブルータルアリゲーターの顎の力はとても強く、人の腕などは簡単に引きちぎられてしまう程なんだとか。

 

「【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】ッッ!!」

 

 そんな凶悪な力を持つブルータルアリゲーターは、通常のワニとは違い群れで行動し、獲物を囲んで一気に水中に引きずり込んで食料を確保するそうです。

 

「【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】ッッ!ギシギシいってる!ミシミシいってる!檻が、檻が変な音立ててるんですけど!」

 

 そういえばブルータルアリゲーターは首の筋肉も発達しており、物を持ち上げる力もとても強いんだとか。

 それこそ、十匹近い数が集まれば、鋼鉄製の檻を強固な鎖で岩に括り付けたとしても少しずつ引っ張っていける程度には。

 

「アクアー!ギブアップなら、そう言えよー!そしたら鎖引っ張って檻ごと引きずって逃げてやるからー!」

 

 え?アクアさんを助けないのかって?

 

 助けに行こうとしたらカズマさんに止められました。「あいつの根性がどれくらい持つのか見てみよう。それがあいつの成長に繋がるかもしれない。」って。

 

 それに……、

 

「イ、イヤよ!ここで諦めちゃ今までの時間が無駄になるし、何より報酬が貰えないじゃないのよ!【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】ッッ!!……わ、わああああーっ!!メキッていった!今檻から、鳴っちゃいけない音が鳴った!!」

 

 本人が望んでないですし。……いや、余裕がないだけかも…?

 

「……あの檻の中、ちょっとだけ楽しそうだな……」

 

「……行かないでくださいね(行くなよ?)」

 

 

 

 

 

◇浄化開始から七時間経過

 

 

 

 

 

 

 

 全体の浄化が完了し、綺麗になった湖の岸には、ボロボロになった檻がポツン、と置かれています。言わずもがな、アクアさんが入っている檻ですね。

 

 軽く辺りを見渡してみますが、近くにブルータルアリゲーターの姿はありません。綺麗な水を嫌がって、何処かに行ってしまったみたいですね。

 

「……おいアクア、無事か? どうやらワニは、もう全部どこかに行ったみたいだぞ」

 

 カズマさんが檻の中を確認すると、膝を抱えて泣いているアクアさんの姿がありました。

 

「……ぐすっ……ひっく……うぅ……っ」

 

 やっぱり助けに入った方がよかったんじゃないでしょうか?

 

「ほら、浄化が終わったなら帰るぞ。…俺達全員で話し合ったんだが、今回の報酬は俺達いらないから」

 

 カズマさんがそう言うと、私達に目配せをしてきます。……話を合わせろ、ですね。分かりました。

 めぐみんさんとダクネスさんにも目くばせの意味は分かったようで、口々にアクアさんへ声をかけます。

 

「そうだぞアクア、三十万エリスは全部アクアのものだ」

 

「そうですね、今回の働きは全てアクアの働きですから」

 

「湖が綺麗になったのは、アクアさんの浄化のおかげですしね」

 

 『報酬はアクアさんの物』の辺りでアクアさんの肩がぴくりと動きましたが、アクアさんが檻から出てくる気配はありません。

 

「……おい、いい加減檻から出ろよ。もうアリゲーターはいないから」

 

「………まま連れてって…」

 

「……なんだって?」

 

 アクア様がぼそりと呟いた声に耳を傾ける。

 

「……檻の外の世界は怖いから、このまま街まで連れてって」

 

 どうやら、今回のクエストでアクアさんにまた一つトラウマができてしまったようです。……どうしましょう?




いあいあくとぅるふ(ボソッ

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