クエストを成功できた代わりに檻の外の世界に対するトラウマを持ってしまったアクアさんを連れ、街までかえって来ました。
「ドナドナドーナードーナー……」
「…おいアクア、もう街中なんだからその歌は止めてくれ。ボロボロの檻に入って膝抱えた女を運んでる時点で、ただでさえ街の人たちの注目を集めてるんだからな?というか、いい加減出て来いよ」
「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらく出ないわ」
アクアさんがかなり女神としてアウトなことを言っています。聖域がそんなボロボロの檻じゃダメでしょう……。
そんなことを考えていると、いつの間にか一人の男性が近づいてきていました。
「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、そんなところで!」
男性は、アクアさんの入っている檻に手を伸ばし、あろうことか鉄格子をいとも簡単にぐにゃりと曲げてしまいました。男性は唖然と押している皆さんを無視して、アクアさんに手を伸ばしますが、その手は届きません。
「これは……っ!?」
「【プロテクション】という魔法です。流石に、あなたの行動をこれ以上無視するわけにもいきません」
「その通りだ。私の仲間に馴れ馴れしく触るんじゃない。貴様は何者だ?アクアとの知り合いにしては当の本人が一切反応してないのだが」
男性の手は、私の≪障壁魔法≫による妨害と、肩を掴んだダクネスさんによって止められました。
…今は口に出しませんが、ダクネスさん。いつもそんな感じなら悪口も減ると思いますよ。
男性はため息を吐きながら手を引き、首を振りました。……何でしょう。この「自分は厄介ごとには巻き込まれたくないのだが…」みたいな対応は。流石にイラっと来ますよ。そんな表情していいのは、普段から苦労しているカズマさんくらいでしょう!
後ろではカズマさんがアクアさんを説得して何とかしてもらおうとしているようです。
「おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。お前があいつを何とかしろよ」
女神様……そういえばアクアさんが女神って知ってるのはカズマさんと同じニホンジンの方々でしたか。だとするとこの人もニホンジンなんでしょうか?
「――……女神?…そう、そうよっ!女神よね私は!それで、女神の私にこの状況を何とかしてほしいわけね!?しょうがないわね!」
アクアさんが元気に立ち上がりましたが、今自分が女神ってこと忘れてませんでしたか?ため息を吐きつつも男性から目を離さないようにしていると、ごつんと檻の中で何かがぶつかる音が鳴りました。
「いった!何よこれ!通れないじゃない!」
「あ、すいません。解くの忘れてました」
「まったく、しっかりしなさいよ!私の神々しい顔に傷が付いたらどうすんのよ!……で、あんた誰?」
あの、アクアさん?知り合いじゃないとか、そういうパターンですか?男性が目を見開いていますよ?
「何言ってるんですか女神様!僕です、
「…………?」
アクアさんは、心当たりが全く無いようで首をかしげています。
「あの、カズマさん。この人、ミツリャギさん?は二ホン出身の方ですか?」
「ミツルギな。その間違い方はわざとと思われるから直しとけ。……魔剣とかいういかにも特殊そうな物を持ってるんだったら、可能性は高いな」
声を潜めてカズマさんに聞いてみましたが、修正されました。ミ、ミツラギさん?は二ホン出身者の可能性が高くなりました。
……ふむ。戦闘、初心者ですね。
ミツラギさんは鮮やかに輝く青い鎧を纏っているのですが、使い込まれた様子も、モンスターなどの攻撃によって付くであろう跡も無し。ダクネスさんは自分から当たりに行くことを除いても、騎士である以上、修理が必要なほど鎧が消耗します。
見た感じ動き回って相手を撹乱するような性格ではないでしょう。鉄格子を曲げたのが何よりの証拠です。シーフ……盗賊なら鍵を誰にも誰にもばれないように開けて静かに逃げるはずですしね。
………リュートさんの道場で数日持つかどうか、ですね。武器に頼りすぎです。
「――あぁ!いたわね、そういえばそんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ってきたし、忘れたってしょうがないわよね!」
アクアさんとは一度お話した方がいいですね。名前は忘れても顔を忘れるのはいけませんよ。
「え、ええっと、お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張っています。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました。……ところでアクア様はなぜここに?というかどうして檻の中に閉じ込められていたのですか?」
ここで、カズマさんに目線を移すミツラギさん。カズマさんはこの世界に来て、ここに至るまでの経緯を説明し始めました。
「……馬鹿な。ありえないそんな事!君は一体何を考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?あろうことか今回のクエストでは檻に閉じ込めて湖に浸けた!?」
ミツラギさんが激昂してカズマさんの胸倉に手を伸ばしますが、
「【プロテクション】…させませんよ?」
「キミは……ッ」
ミツラギ……あれ?ミツルギ?さんがこちらを恨めしそうに見ますが、軽く流します。
「ス、ストップ!いや、別に私は結構楽しい毎日を送ってるし、ここに連れてこられた事は、もう気にしてないわよ?それに、今回のクエストだって怖かったけどクレールの援護もあって無傷で完了したの。しかも、クエスト報酬三十万、それを全部くれるって言うの!」
えっ?援護…?………【ホーリーアーマー】のことでしょうか?あれ全然消耗してなかったんですけど……黙っておきましょう。
「……アクア様、こんな男にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当ですよ。そんな目に遭って、たった三十万……?あなたは女神ですよ?それがこんな……。ちなみに、今はどこに寝泊まりしているんです?」
たしかに、教会とかに行けばもっといい扱いをされたのかもしれませんが、神が暇をつぶしに来るグランフェルデンじゃないので、「私女神です。」って言っても変な人扱いされるんじゃないですか?
「え、えっと、皆と一緒に、馬小屋に寝泊まりしてすけど……」
「は!?」
ミツルギさんの腕がまたもカズマさんに伸びます。さっきより手に力が入ってますね。
「【プロテクション】」
させませんけど。
ミツルギさんが親の仇を見るような目で見てきます。
「家を買うために貯金中なんです……察してください…」
「あ、あぁ。すまない」
ミツルギさんは、この時ばかりは引いてくれました。
クレールは イライラ している !
ミツラギさんが引いた理由は、クレールが「私だってそろそろ宿に泊まりたいですよ…」って顔で言ったからです。
活動報告に『裏設定:【魔眼】』を追加しました。