度重なる【プロテクション】による妨害と、カズマさんへのフォローを繰り返しながらミツルギさんと話していると、彼は冷静さを取り戻し、周りにも目を向けるようになりました。
一度私たちを見て、カズマさんに視線を戻します。
「……クルセイダー、アークウィザード、それに君は賢者だったかな?……上級職と最上級職がパーティメンバーなのか?……しかも、随分綺麗な人達だな。君は、パーティメンバーには恵まれてるんだね。それなら猶更だよ。君は、アクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊まりさせて、恥ずかしいと思わないのか?さっきの話じゃ、就いてる職業も、最弱職の冒険者らしいじゃないか」
私は、この人が言っていることには最初だけは賛成です。このパーティーは他の人から、職業だけ見れば優秀な人達の集まりに見えるでしょう。
例えば、アクアさんは、あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなせ、前線でも問題なく戦える職業です。めぐみんさんは強力な魔法攻撃、ダクネスさんは強靭な防御力がそれぞれの職に付けられたイメージです。
事実、めぐみんさんはクレーターを作り出せるほどの威力を持つ魔法を放てますし、ダクネスさんは自他ともに認める防御力を持っています。
ですが、これまでの冒険で一番活躍しているのは、間違いなくカズマさんです。アクアさんがジャイアントトードに捕食された時も、爆裂魔法を撃って動けなくなっためぐみんさんを運ぶ時も、快楽を求め危険なモンスターに無謀にも立ち向かおうとするダクネスさんを止める時も、カズマさんが一番働いています。決して、最弱職と馬鹿にしてはいけません。
カズマさんは、自分が最弱職であることを気にかけ、パーティーの役に立つためにいろんな職の冒険者に頼み込んでスキルを教えてもらっていました。私は、自分の欠点を努力で補おうとするカズマさんを、尊敬しています。
ですから、
「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは、僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝せないし高級な装備品も買い揃えてあげよう。パーティーの構成的には魔法職が多めだけど、後衛の火力は多い方がいいしね」
こんな、剣の力に頼り切って成長した人の
彼の差し出してきた手を見て、アクアさんたちは後ろの方でひそひそと何かを話し合っています。
「ちょっと、ヤバいんですけど。あの人本気で引くくらいヤバいんですけど。ていうか勝手に話進めるしナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」
「どうしよう、あの男はなんだか生理的に受け付けない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは無性に殴りたい」
「撃っていいですか?あの苦労知らずの、スカしたエリート顔に、爆裂魔法撃っていいですか?ていうか、よくあんなのと笑顔で対話できますよね。クレールは」
一人だけ、何も言おうとしない私をカズマさんが見てきますが、行かない、という意を込めてゆっくりと首を振って返します。
「えーと。俺のパーティーは満場一致であなたのパーティーには行きたくないみたいです。俺達はクエスト完了報告があるから、これで……」
その場を立ち去ろうとしたカズマさんの前に、ミツルギさんが立ちふさがります。
どうあっても、納得のいく答えを引き出したいみたいですね。
「悪いが、僕に魔剣という力を与えてくれたアクア様を、こんな境遇の中に放ってはおけない。君には世界は救えない。魔王を倒すのはこの僕だ。アクア様は、僕と一緒に来た方が絶対にいい」
…………。彼は、どこかで聞いたことのある口調で続けます。
「僕と勝負しないか?アクア様を、持ってこられる『者』として指定したんだろう?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら、なんでも一つ、言う事を聞こうじゃないか」
この言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが切れ、視界が真っ赤に染まります。…あぁ、この感覚、懐かしいなぁ、なんだっけ?どっかでこんなのを……―――
クレールのスイッチその一、です。