緊急アナウンスが街中に響き、カズマさん達と一緒に正門前に急ぎ足で向かっている私たちですが、体力が皆無な私と重装備のダクネスさんはカズマさんの速さに追いつけないので、後ろからゆっくりと向かうことにしました。
「ダクネスさん。今回の緊急アナウンス、一体どういう内容だと思いますか?私たちのパーティーが名指しで呼ばれてましたが…」
「私たちが関わっていて、ギルドの職員が切羽詰まったような声で呼び出す……そういえば、ちょうど一週間前にデュラハンの襲撃があったな」
「うーん、私が呪いで死んだか確認しに来たんでしょうか?もしそうならあのデュラハンさん結構性格悪いですよね」
「あの死の宣告を私がもし食らっていたら、あのデュラハンにいったいどんなひどい目に遭わされていたのだろうな……想像しただけで……」
ああ、もう!途中まで真剣に考えてるように見えたのに、もうトリップし始めましたよこの人!
…まぁ、普通に考えてもあのデュラハンさんの確率は高いんですよね。あ、正門見えてきましたね。
「この俺が真に頭に来ているのは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気はないのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士とつもりだった。その俺から言わせれば、仲間の不手際を責めるどころか、魔王軍幹部という称号に一歩も引かず、あろうことか俺にダメージを与えるほどの魔法をあの状況下で放った、あの神官の鏡のようなプリーストを見捨てるなど……!
しかもだ!仲間の危機を救おうと、届かないまでも前に出てきたあのクルセイダーなど騎士の鏡と言えるだろう。彼女らの信念を見捨てて、悠々と生活している貴様ら冒険者を見ているだけで胸糞悪いわ!」
どうやらデュラハンさんがお怒りのようです。……どうしましょう?
「あの、ダクネスさん?結構出ていきにくい状況なんですが……」
「う、うむ。だが、前の方にカズマの姿を見つけてな……。行くしかないだろう……」
そう言いながらかなり気まずい空気を漂わせた私たちはカズマさんの両隣に立ちます。
ダクネスさんは騎士の鏡と褒められ気恥ずかしくなったのか、赤い顔でデュラハンさんにおずおずと片手をあげます。私は、なんでお前らいるんだという目をしているデュラハンさんに向かって深くお辞儀をします。
「……や、やぁ……」
「…一週間ぶりですね。デュラハンさん。まさかそれほど素晴らしい騎士道を持ってらっしゃるとは……私、デュラハンさんを少し誤解してました」
「…………あ、あれぇーーーーー!?」
デュラハンさんは、先ほどまでの威厳はどこへやら、素っ頓狂な声をあげています。
「なになに?クレールに呪いをかけて一週間が経ったのに、ピンピンしてるから驚いてるの?このデュラハン、私たちが呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと私たちを待ち続けてたの?帰った後、あっさり呪い解かれちゃったとも知らずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」
あの…アクアさん?私、そういう発言した人が物凄い数のモンスターに狙われるの見たことがありますよ?ほら、デュラハンさん凄い肩がプルプルしてますもん…。
「……おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず切り捨てて、街の住人を皆殺しにすることだって出来るのだ。いつまでも見逃してもらえる思うなよ?疲れを知らぬこの不死の体。お前たちひよっこ冒険者どもでは傷もつけられぬわ!」
「させるとお思いですか?あなたの実力は確かに分かりませんが、今まで何人デュラハンさんを相手にしたと思ってるんですか。街の住人に、指一本触れれると思わないほうが身のためですよ」
「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデットの分際で、こんなに注目集めて生意気よ!」
なおもアクアさんは挑発をしていますね。…まぁいいです。一緒に攻撃してみましょうか。
「消えてなくなんなさいっ、【ターンアンデット】ッ!」
「援護します、【カタルシス】ッ!ついでに支援も、【ヴィジテイション】!」
アクアさんが魔法を放つのを見ても、何の反応も見せなかったデュラハンさんですが、私が魔法を放つ用意をすると、「ゲッ」と嫌そうな声を出します。
「ぎゃあああああ!!」
大急ぎでその場を離れようとしたデュラハンさんですが、私の【カタルシス】の範囲はすごく広いんです。逃がしませんよ~。
体中から黒い煙を立ち上らせ、地面をゴロゴロと転がっているデュラハンさんにもう一度魔法を仕掛けようとしますが、カズマさんに制止されます。
「その辺にしといてやれよ……なんか可哀そうに思えてくるからさ」
「はーい」
ここで連続で使えば何とかなると思ったんですが、リーダーの命令ならしょうがないですね。
「ク、ククク……。かわいそうなどと、同情のつもりか?この俺はべルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのべルディアだ!そこら辺のプリーストの【ターンアンデット】など全く効かぬわ!……効かぬのだが……。な、なあお前たち。お前たちは今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出しが集まる街なのだろう、この街は?」
そういいつつ手に乗せた首を傾けます。…よく落ちませんね。
何レベルかと聞かれて、答えないのもあれですね。でも、一応個人情報ですし…そうだ、冒険者カードを見せるだけにしましょう。体の前に持ってくるだけですが。
「……おい、そこのエルフ――クレールとか言ったか。質問に答えようとする姿勢は嬉しいが、遠すぎて全く見えんわ。ある意味不親切だぞ。……まぁいい。本来は、この街周辺に強い光が二度落ちてきただのと、うちの占い師が騒ぐから調査に来たのだが……。面倒だ、いっそこの街ごと無くしてしまえばいいか」
それ、どっかで同じこと言って一瞬で浄化された人を思い出しますね。ベルディアさんは右手を高らかと掲げ、威圧感をこちらに向けてきます。
「フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。……さぁ、お前たち!この俺をコケにした連中に、地獄というものを見せてやれ!」
もう見てきたんで結構です。もう二度と行きたくないです。
「あっ!あいつ、お前らの魔法が意外に聞いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」
そうなんですか?べルディアさん最低ですね。
「ちち、違うわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレなわけがなかろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と……」
「【セイクリッド・ターンアンデット】ー!」
「【カタルシス】!」
「ひぁああああああああああ!」
またゴロゴロと地面を転がるべルディアさん。魔王の幹部と言えば、最前線で一対多数相手に圧倒する物でしょう。何言ってるんでしょう。
「こ、この……っ!台詞は最後までちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前らっ街の連中を……皆殺しにせよ!」
こちらに向けて、突撃命令を下しました。
向かってきているのは、共同墓地で見たようなゾンビではなく、鎧を着込んだ筋肉質なゾンビ、アンデットナイトですね。私にとってはさほど脅威ではないのですが、街の人たちを見る限り、そうでもないようですね。
「おわーっ!?プリーストを!プリーストを呼べー!」
「誰かエリス教の教会行って、聖水をありったけ貰ってきてくれぇええ!」
「ほい、【カタルシス】」
街に向かって全力疾走してくるアンデットナイトに向けて一気に浄化魔法を放ちます。
アンデットナイト達はすごく充実したような表情で足元から透明になって消えていきました。うん、気持ちいい。
『は?』
「は?」
……?どうしたんでしょう、街の冒険者さんたちも、べルディアさんも固まって……。
『はぁぁああああああああ!!!!?』
「ふぁ!?」
み、耳が!耳が!痛い!痛いです!へるぷ、カズマさんヘルプー!!
クレールの苦手なもの:大きな音。
聞いた時の悪影響:赤恥をかく。
活動報告に感情を追加しました