冒険者登録から三日経ちました。
あの後私は冒険者ギルドにいることができなかったので泊まるのにお金のかからない
馬小屋で休憩して、軽く外食をしてから一日を終えました。
二日目は朝から冒険者ギルドに向かい、依頼を受けて資金を稼ぎました。
受けた依頼は『子供たちの世話』というもので、孤児院の子供たちの勉強や遊びに一人でついていくのは大変という理由で依頼されたものでした。
一日でも大丈夫、とのことでしたが子供たちの純粋な笑顔は、何度見ても癒されるものです。
その後は傷ついて帰ってきた冒険者さんたちの傷をつい癖で治療していました。…無料でいいといったのですが、無理やり料金を押し付けられてしまいました。突き返すのも失礼なので、渋々ではありますが頂きました。
今日、私は街から少し離れた草原に来ています。
といっても依頼を受けたわけではなく、私が使えるスキルの確認をしに来ました。
この世界でのスキルの取得方法は、経験値をためてレベルを上げ、レベルアップ時にもらえるスキルポイントを決められた分支払うと職業に応じたスキルを取得できるそうです。
今回私が取得したのは前の世界で愛用していた魔法が属するであろうスキルを選びました。なぜレベルアップしてないのにスキルが取得できるのか?ふっふっふ、それはですね……
分かりません。はい、分からないんです。
最初のレベルが1だったのですが、なぜかポイントが溜まっていたのと、職業のボーナスでのポイントでたくさんのスキルが取得できるそうなんです。
受付嬢のハルさん(教えてもらった)によると、「もう驚きません」とのこと。
話が逸れました。
私のスキルはもともと持っていたスキルを合わせて
≪障壁魔法≫
≪浄化魔法≫
≪回復魔法≫
≪召喚魔法≫
≪支援魔法≫
≪楽器演奏≫
≪料理≫
の七つです。
実際は『障壁魔法の~~』という形で種類があり、名前のところに逆三角形のマークがあり、指で押したら展開されるんですが、したらしたでスキルの名前でカードが染まっちゃうのでまとめました。
では、いろいろ試してみようと思います。
まずは障壁魔法から。
「【プロテクション】!」
スキルの発動と同時に私から前方3mくらいのところに薄い光の壁が張られました。
【プロテクション】
障壁魔法の一つで、光の障壁を張ることで物理的な攻撃や魔法攻撃を防ぐスキルです。…今使える障壁魔法の中で魔法の発動が分かりやすく、コストの安いものです。ほんとは相手の攻撃をピンポイントで防ぐものですが、モンスターの前に一人で出ていくのも怖いのでこれだけにしておきます。発動が確認できただけでも御の字です。
≪支援魔法≫、≪浄化魔法≫、≪回復魔法≫を試したいのですが、≪回復魔法≫は昨日の時点で効果が確認できましたし、≪支援魔法≫と≪浄化魔法≫は、ほかの人やアンデットがいないと効果がないものですからこちらもスルーです。
では、≪召喚魔法≫です。
「【フォーアラードゥング・シームルグ】!」
スキルの発動が成功した手ごたえとともに空の彼方から大きな鳥がやってきます。
茶色い翼に金に近い黄色の五本の尾、私の三倍は大きな体。
間違いありません。私の友達で、“空飛ぶ鳥の王”シームルグのフォーゲルさんです。
『友よ。呼び出すのはいいが。異世界に転移しているとは知らなかったぞ』
『あはは…、すいません。ブリガンティア様に会えたことに感動しすぎて報告し忘れてました』
フォーゲルさんは口調こそ厳しめのものでしたが、どこか嬉しそうな声で話しかけてくれました。ちなみに、私がフォーゲルさんと話せているのは、【アニマルエンパシー】という動物の言葉や気持ちが分かるようになるスキルのおかげです。このスキルは初めてフォーゲルさんに会ったとき(話してみたいなぁ)っと思った次の日には話せるようになりました。冒険者カードにはなぜか出てこないようですが。
『ほぉ、ブリガンティア様に会ったのか。どんなお方だった?』
『姿は神殿に飾ってある石像と大体同じでしたよ。貫禄は桁違いですが』
『それはよかったな。それで、なぜ私を呼んだのだ?』
『この世界でどの程度スキルが発動できるのかの試験です。今回は一番優しそうなフォーゲルさんに協力してもらいました。…あと、できれば少しの間でも一緒にいてほしいなぁと』
『後半がメインだろう?…まぁいい、付き合ってやろう』
『ありがとうございます!』
『とりあえずある程度試せたので街に戻って依頼を受けますね…って、フォーゲルさん、小型化できますか?あまり目立ちたくなくて……』
『ふむ?ではやるだけやってみようか』
そう言って魔力を体に循環させ始めたフォーゲルさんの体は強い光に包まれ…
掌に乗るような大きさの小鳥になりました。
鳥の王に相応しい神々しさを身にまとうままの状態で。
かわいいような、かっこいいような……?
これ勘が鋭い人には神鳥って気づかれるのでは……?
◇
結局、フォーゲルさんの体からあふれ出る神々しさは収めることができず、肩にとまって羽休めをしてるフォーゲルさんを落とさないように街に戻ることにしました。
そして、いま私は冒険者ギルドの依頼が貼り出されているいるところ、掲示板の前に立っています。
「森に悪影響を与えるエギルの木の伐採……力がないし無理ですね。
迷子になったペットのホワイトウルフを探してほしい……野生に帰ったんでしょうか。
息子に剣術を教えてほしい……論外です。
魔法実験の練習台を探しています……身の危険を感じます…。」
『ここにはまともな内容の依頼はないのか?』
『いえ、昨日はちゃんとまともな依頼を受けれたのですが……運がないんですかね?』
最悪魔法実験の練習台になりましょうか。報酬は高いですし、私の魔法抵抗力はかなりありますし。他の依頼といえば討伐系の依頼が過半数を占めています。
どうしましょう仕事ができません。
もう一度いい依頼がないか掲示板の隅から隅まで探してみると、パーティー募集の張り紙が。
大きな黒い文字で上級職限定の募集の張り紙が見つかりました。
『パーティーの募集か……』
『はい、討伐系の依頼は筋力最低値、攻撃方法いまだ無しの私には辛いので、いつものように仲間となる人をサポートしようかなと』
『それにしても……』
フォーゲルさんは少し不機嫌そうに何かを言おうとしています。…どうしたのでしょう。
『汚い字だな』
『はい』
次回はついにカズマとの出会いです。