シスコン(ブラコン)じゃない兄弟はいない    作:炭酸ジャンキー

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第2話 俺と姉と関係

 生きていくうえで最も難しいのは、人間関係だと俺は思う。

 友人。恋人。上司。部下。先輩。後輩。親。

 そして兄弟。

 人間は多くの関係を、様々な関係を、複雑な関係をつくり、築く。

 その関係には一定のラインが存在する。

 知っていいこと。知ってはいけないこと。

 友人はプライベートにはそうそう踏み込まないが、恋人になればある程度共有することになる。さらに関係が進めば、結婚し、家族になり、家庭ができ、ほぼ完全に共有することになる。

 共有というよりは、距離の問題だ。

 近くなればよく見えるし、遠ければ見えない。どこまで近づけて、どこから踏み入ってはいけないか。

 そう、距離の問題だ。

 と言うのは早計。早とちりというか、そんな単純な話ではない。そうであれば、人間関係のトラブルで警察が出てくることはない。

 近くても、目を逸らしてしまうこともある。近くにいても、いや、いるからこそ、つい目を逸らしてしまうこともあるだろう。

 だが俺の場合は、見ていいのかどうか、判断に困る。

 そもそも近いのか遠いのか。ラインがあるのかないのか。判断に困るというか区別がつかないというか。

 そんなあいまいな距離で、複雑。

 そんな関係にあるのが、俺の義理の姉である。

 家族であって、そうでない。血のつながりはなくとも家族。他人だが、赤の他人ではない。友人でなければ、恋人でもない。だがそれ以上の関係。

 近いのか遠いのか。

 そういった関係のせいか、俺はいまだに義姉との距離をつかめていない。接し方は友人。だがプライベートは家族レベル。

 別に仲が悪いわけではない。むしろ良好だ。

 8年も一緒に過ごしているのだ。当然、互いに裸を見たことがある。今でも、風呂に行けば、ばったり出くわすこともある。それでも動じない。

 でも、それでも、やはり義姉とは他人だ。

 すでに8年も寝食をともにしているというのに、未だに義姉との関係に困惑している。

のは、きっと俺だけだろう。

 いや、俺だけだ。義姉は、あいつはそんな風に思ってないだろう。普通に弟として見ているだろう。いや、それもそうだろう。だが、他人だなんて思ってないだろう。

俺も思いたくない。他人とは言ったが、やはり8年間一緒にいるのだ。そんな風に思いたくない。他人と思っていれば、こんな風に生活できないだろう。なんやかんだ言いながら姉だと認めているのだ。

 他人だったら、こんな風にできない。

 

 

「じゃあ、今度はこの書類、やっといてー」

 

 

 生徒会役員でもないのに生徒会の仕事でこき使うやつが、他人と思っているはずがない。むしろ都合のいい弟と思ってそうだ。

 

 

「なんか、ごめんね。迷惑だったら、帰っていいんだよ?」

 

「いいんです、いいんですよ。来なかったら、家でやらされるんですから。」

 

 

 小山田 翼。

 義理の母の連れ子。1つ年上の義姉。同じ高校に通う2年生で生徒会長。文武両道で容姿端麗。成績優秀で、たまに勉強を教えてもらっているので、こういうことを頼まれると断りづらい。ていうか強迫してくる。

 高校に入って1か月経とうとしているが、週に3回ほど手伝わされる。始まりは入学式の2日前。書類に不備があるかなんかで義姉に呼び出され学校に。何故義姉がと思いつつ、生徒会長やってるからかと行けば、そんなことはなかった。男手が足りないからと入学式の準備を手伝わされた。新入生なのに。さらに言うなら後片付けも手伝わされた。新入生なのに。

 

 

「なんでこんな………………」

 

「いやほら、もうすぐオリエンテーションで3日間いないじゃない。その分働いてもらわないと」

 

「そうじゃない。そこではない」

 

「ああ、帰ってきてからしたかったの」

 

「違う、それ以前の問題だ! 俺がなんで手伝わなきゃいけないのかってことだ」

 

「かわいい弟のためよ」

 

「俺の素晴らしいお姉ちゃん、いえお姉さま。かわいい弟は帰りたいです」

 

「だめよ」

 

 

 かわいい弟の頼みを聞いてくれない。

 本当にこの義姉は、俺のことをどう思っているのだ。都合よく使われている気がしてならない。

 それでも憎めないのは、やはり家族として認めているからだろう。基本的にはいい人だから。こういうところを除けば。こき使われているけれど、帰りにアイスを買ってくれたり、一応それなりに気遣いのようなことはされている。もっとも最初から巻き込まないでほしいが、無理な話だろう。だめよと一蹴される気しかしない。

 そういった遠慮のなさから、俺も普段からこんな小難しいことを考えずに済む。

 結衣が支えてくれているとしたなら、翼は俺を引っ張ってくれている。不安定な俺が倒れずに済んでいる。2人がいなくなったらどうなるのだろう。そう思うと、妹に対しても義姉に対しても、かなりのシスコンな気がする。

 

 

「そろそろ帰りましょうか」

 

「お、まじか。よっしゃー」

 

「帰ってからするわ」

 

 

 絶対手伝わされる。

 と愚痴りながらも義姉の気遣いを感じる。長時間働いた分の休憩だ。なんて考えるのは、都合が良すぎるだろうか。

 都合よく考えるのは、考えてしまうのは、この距離をごまかしたいからか、それともシスコンの妄想なのか。

 どちらにせよ、複雑な関係は変わらない。

 近いのか遠いのか。見ていいのか、逸らすべきなのか。踏み込んでいいのか。

 だが最近、逸らしてはいけないのではないかと思っている。向き合うべきだと。

 

 

「ねえ、これの3巻はどこにあるのかしら」

 

 

 人の部屋で裸でアイスを食べながら漫画を読む義姉を見て、結衣がああなったのは、こいつのせいではないかと。

 最近、割と真面目に考えてる。

 

 

 

 




大丈夫…………はずです。
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