シスコン(ブラコン)じゃない兄弟はいない    作:炭酸ジャンキー

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第3話 肝試し

 

 人間は実に不思議な生き物だ。

 自身が思っていることとは正反対の行動をとる。感情とは裏腹に全く違う行動をとる。いや、分かっていながらも、やってしまうのだろう。

感情と理性は別物。

 正にその通りだ。そしてそれこそが、人間が人間である所以の1つであろう。

 ただ問題なのは、感情と理性は別物と言っても、どちらが行動原理の根本をなしているかだ。普通は理性が感情を抑えている。だが、1度感情的になると理性はもう使い物にならない。そう考えると、人間の基本は感情なのだろう。

 危険と分かって、やる。無理と知って、やる。ダメだと理解して、やる。つらくても、頑張る。辛くても食べる。そして、怖いと分かって、見る。

 そう、ホラーだ。

 怖いなら見なければいいのにと思う。が、そもそもホラーは怖がるためにあるのだ。怖いから見ないでは意味がない。怖くないホラーはホラーじゃない。翼曰く、泣けない全米が泣いた系、らしい。意味が分からん。言わんとしていることはわかるが。

 本当に不思議だ。

 始まる前は楽しそうにしているのに、いざ始まれば蛇に睨まれた蛙のようになる。

 そんなに怖いなら無理しない方がいい。いくら怖がるものとはいえ、無理はよくない。しないでほしい。しないでください。

 こっちが怖くなる。

 

 

「ちょっと…………歩くの、早く、ない?」

 

「むしろ合わせてるんだけど。あと服を引っ張るな、首が締まる」

 

 

 絞め殺されそうで怖い。

 さっきから服を引っ張るから、そのせいで首が締まって苦しい。

 夜道を女の子と2人きりで歩く。別にデートではない。

 肝試しだ。

 1年生の親睦を深めるためのオリエンテーションの一環。2泊3日のお泊り会。その初日にこの肝試しをしている。男女のペアをくじで決め、宿泊施設の近くを1周するというものだ。案内板によれば15分で回りきれるようだが、明らかに15分以上、しかもまだ半分も回れてなかった。

 しかも教師がノリノリでおどかしてくる。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

「ぐああああああああああああああ!! 締まる! 締まる締まる!」

 

 

 肝試しってこんなイベントだっけ?!

 男女でやるって言ったら、女が男にしがみついて胸押し付けられてムフフなことになるんじゃねーの!?

 泉は胸でかいから期待してたのに!

 お願い! 服を引っ張らないで!

 

 

「じゃあ、何を掴めばいいっていうのさ!? ナニを掴めばいいのさ!」

 

「すでに結論でてるけど!? やめて、ちぎれる!」

 

 

 多々良 泉。

 クラスメイト。セミショートの巨乳。本人曰くF。下ネタが意外と多い。現在、めっちゃくっちゃビビッてる女の子。開始前は怖くて漏らすなよ、とか言っていた。

 

 

「ビビッてないよ。そんなことあるわけないじゃん。やだなーもー、べしべし!」

 

「足震えてるけど」

 

「これは、あれだよ。イキすぎて痙攣してるだけなんだよ。女の子はみんな、男の子の隣では常に発情してるんだから」

 

「やばいだろ、それ」

 

 

 日常生活、送れねーだろ。どんな言い訳だ。

 

 

「実はこれ、いま女子の間で人気の漫画でね、君の隣で発情中っていう漫画のヒロインのセリフなんだよ」

 

「廃刊になれ」

 

「よくならないよねー、すごいねー」

 

「ねー、すごいねー。この話、すでに10回してるよねー」

 

 

 全く同じ会話を10回もするって結構すごい。時間がループしてるんじゃね、これ? ループ・ザ・ループしてんじゃね? 実は同じとこグルグル回ってんじゃね? 普通の肝試しなのに、ガチホラーみたいだよ。

 ていうか、早く帰りたい。足疲れてきたわ。

 

 

「手、引っ張ってやるから、ちょっと走ろうぜ」

 

「えー、なにー? 怖いのー? 仕方ないなぁ、もー」

 

「もう少しゆっくり行くか」

 

「ちょっと早歩きしよっか!」

 

 

 素直じゃない。

 ちょっと結衣に似てる。あいつも素直じゃないからなあ。どっちかって言うと見栄っ張りだけど。いつも、仕方ないなぁおにーちゃんは! て言うから。あ、そう思うと、こいつ、超可愛いんじゃね? やばいわこれ。妹と思うとすごくかわいい。普通にこいつ可愛いけど、妹と思うとすごくかわいい。頭撫でたほうがいいかな、いいよね! 妹の頭撫でるのは普通だし!

 

 

「どったの? 手をワキワキなんかさせて」

 

「いや、なんでもない…………」

 

 

 しまった、つい。

 

 

「もしかしておっぱい揉みたいとか? やだなー、もー、ばしばし!」

 

「いや違う」

 

「じゃあ告白?」

 

「違う。どうやったら告白になるんだ」

 

「君発の告白シーンから。ヒロインのことが好きな男の子がね、『ぼくのこの思い、君のその胸に届くかな』って言いながら、おっぱい揉もうとするんだよ」

 

「ただの変態じゃねーか」

 

「ちなみに返事は『ごめんなさい、私は君のオナペ…………」

 

「はいストップ。ストップストップ」

 

 

 それ以上はダメ、ゼッタイ。

 なんだその18禁ギリギリな内容。よく売れるな、それ。どこだよ出版社。

 

 

「小○館」

 

「まじで!?」

 

「うそ」

 

 

 はっ倒すぞ貴様。

 マジでびっくりしただろうが。ビビったぞ。肝試し関係ないところでビビったぞ。

 

 

「やーい、やーい、騙されてやんのー!」

 

「俺、先行くなー」

 

「あ、ちょ、まっ――――きゃっ」

 

 

 と少しペースを速めたとき、泉がこけた。

 泉はずっと俺の服を掴んでた。つまり、ほぼ密着状態だった。

 人間は倒れるときなどは、近くにあるものを掴もうとする。近くにあるもの、つまり俺。そして掴めるとしたら服だ。

 泉はその法則にしたがって、俺の服を、ズボンを掴んだ。もちろんそんなことをすれば、ズボンをずり落ちる。もちろん、ずり落ちた。ついでにパンツも脱がされた。

 下半身フルオープンである。

 反射的に局部を隠し、こけた本人を見る。

 ここで最初の、肝試し開始時の思考がよみがえる。

 本当に人間は不思議な生き物だ。感情と理性は別物。行動と思考は必ずしも一致しない。これは泉も例外ではなかった。さんざんエロっぽいことを言いながら、赤面する泉。やはり生で見るのはダメらしい。

 

 

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 本日一番の叫び声だった。

 

 

 

 

 




君発:君の隣で発情中の略。過激な内容と描写で人気を誇る少女漫画。現在3巻まで発売。売上部数は1巻の時点で10万冊突破。

実話1割:肝試しで服を掴む。これ、ダメ、ゼッタイ。あれはマジで苦しい。肝試しでムフフなことは起こらないorz

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