シスコン(ブラコン)じゃない兄弟はいない 作:炭酸ジャンキー
青春と言えばやはり、高校生活ではないだろうか。
青春を描いた作品の多くは高校生がメインだ。その影響が大きいかもしれないが、青春と言えば高校、高校と言えば青春と言っても過言ではないだろう。
そして青春と言えば、部活である。
仲間とともに汗を流し、高い目標をもって目指す。それこそ青春の汗を流すように、謳歌するものだ。
と青春っぽいことをしようにも、俺にはそういった青春を謳歌できるような趣味も特技も、ましてや続けてきたものはない。べつに運動が苦手というわけではないが、小学校、中学校とスポーツはしていない。そもそも部活動や習い事をしていたこともない。青春以前に人生が寂しい。
そんな俺だから、家にこもって読書をすることは多かった。趣味というよりは暇つぶしだった。読書以外はなにをしていたかと言われれば、宿題をするか結衣の世話だった。
完全に無趣味だった。
部活動をしようにも、無趣味な俺では、所属できる部は少ない。新しくスポーツを始める気も起きない。でも部活はしようと思った。
そこで俺は、無難に文芸部を選択。
ここであれば気楽にやれるだろうし、読書する頻度が多い俺にはいい部活だった。
のだが、そうでもなかった。特に調べもせず、ほぼ勝手な想像と思い込みで入部したが、実は結構ガチな部活だった。のほほんと読書をしているだけかと思えば、意外と制作活動をしていた。ほぼ毎日活動。
さらに翼に生徒会の手伝いをさせらるので、充実しているとは言わないまでも、多忙だった。
そして久々に部活動に出た今日、俺に、まるで試練のようにある壁が立ちふさがった。
・ポエム班:小山田 遼介
ホワイトボートに黒で書かれているマイネーム。タイトルには文化祭用文集班割りと書かれていた。聞くところによると、昨日決まったらしい。翼の手伝いをしていたら、まさかのポエム班。おのれ翼、許すまじ。
しかも班員は俺ともう1人。欠席していた女子と2人だ。
「愚痴ってても仕方ないよ。私も頑張るから」
そう言う彼女もあまり乗り気ではない。
彼女の名は倉敷 凛。
大人しめの女の子。髪は二つ結び。スレンダーで美形。倉敷 連の双子の妹。連つながりで知り合った。
「とりあえず、何か考えてみようよ」
「なにか、なにかねー」
つってもなあ。ポエムだろ? 恥ずかしい。痛い。他の連中が知ったら絶対笑われる。そもそもポエムってなんだ。なにを題材にすれば。
「ポエムと言ったら?」
「え? えぇ? やっぱり恋…………とか?」
「恋………………かあ。…………………………はい、早速1つ」
「え? もう? すごいね小山田くん」
「ん、んん! 耳を澄ませて、恋の足音、聞こえてくる………………………おええええええええええええ」
「…………」
「好き、足す、好きは、無限大、なんだよ…………………………おええええええええええええ」
「…………」
「隣に居れば、胸の音、聞こえるかな…………………………おええええええええええええ」
「…………」
「追いかけて、追いかけて、追いかけて、追いかけた分だけ、君との関係、進んでる………………………おえええええええええええ」
「…………」
「…………もう1つぐらい…………いける、かな」
「いや、もういいよ!? そんなんになるぐらいなら、しなくていいよ!? もうフラフラだよ!?」
「振り払っても、振り払っても、私の中は、君のことだけ…………………………………おええええええええええええ」
「だからもういいって! そ、そうだ! 過去の文集見て考えようよ。ヒントがあるかも」
ああ、それはいいかもしれない。ちょっと限界デス。
奥にある本棚で過去のやつを見る。
結構あるな。整理されてないけど。つーか雑。積み重なってる。
散らかっているせいかやけに狭い。
「この辺、全部ポエム集みたい」
「ちゃんと区分けされてんのか。散らかってんのに」
「とりあえずこれから」
[ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと]
「おい、これ1ページ全部、ずっと、なんだけど」
「それだけ好きだったんじゃないの? ポエムじゃないけど」
ページをめくる。
そのページにはでかでかと、簡潔に
[嫌いだった]
「嫌いだったの!?」 「嫌いだったの!?」
じゃあ書くな!
「つ、次、見ようか」
ページをめくる。
今度は短く一言。
[愛してる]
「みじけー」
「ストレートでいいと思うな、私。こういう真っすぐな言葉はドキってするなあ」
「凛は王道少女漫画とか好きそうだなあ」
「え? う、うん…………」
「なんで照れてんの」
「なんか恥ずかしい。ズバリ言い当てられると…………。でも、これもポエムじゃないよね」
「はい次ー」
ページをめくる。
[愛してる]
「あ、あれ? 印刷ミスかな?」
「綴じられてるし、続きじゃねーの?」
とりあえず次ー。
[殺したいほど愛してる]
「重っ!」
続きだった! ページ空いてんの、仕様だった!
しかも同じページで続きは
[箱の中に閉じ込めたい]
怖い! 怖いよ、これ! ヤンデレすぎる!
部屋じゃなくて箱ってところが特に怖い。詰め込みたいってことか? なんにしろ怖い。
「つ、次、見よっか…………」
ページをめくる。
[あの女はだれ?]
「よーし! 別のやつにしよう!」
これはあれだ。ただの恋日記だ、ヤンデレ女の。
「じゃあ…………これ……」
開くのためらう凛さん。
まあ、開いたのがアレだからなあ。そこは信じるしかない。
代わりにページをめくる。
[おっぱい ちっぱい メガパイ ぺちゃぱい よせぱい いっぱいぱい]
煩悩篇かな? それともマニア?
どっちにしろハズレだ、これ。俺は学んだ。これはハズレだ。
「で、凛」
「え!? な、なに?」
「なんで自分の胸触りながら見つめてんの?」
「そんなことしてないもんっ!」
もんって。
「そんなこと言って、私のお、おおおおおおっぱい揉もうとしてもダメなんだから!」
「しないし。別に変なこと言ってないだろ」
それに揉めるほどないだろ。
「い、いま、そんな絶壁揉めるかって思った!」
「思ってないよ!?」
鋭い。胸にコンプレックス持ちすぎだろ。
「思ってたもん! 絶対思ってたもんっ!」
そっぽを向いてしまう凛。結構子どもっぽい。
仕方ないので1人で探す。
今度はカバーが付いてるのを選ぶ。他のとは違うし、多分アタリだ。
めくる。
「Oh…………」
アタリだった。
確かにアタリだった、男にとって。
ポエムでもない。文でもない。絵だった。というか漫画だった。
[赤ちゃんできちゃうううううううううううううううう!!]
エロ本だった。
木の葉を隠すなら森の中的な? だからカバー付いてたのか。
ふむ、でかい。
「小山田くん……………………?」
「げっ…………」
見つかった。
「いま、その絵と私のおっぱい比べてた!」
「そっち!?」
普通、なんてもの見てるのじゃねーの!?
どこに注目してんの?
「そんなにちっちゃいのがいけないの? 私だって好きでちっちゃいわけじゃないのに!」
近い近い近い近い近い!
こんな狭いとこでそんな詰め寄られたら、こけるって!
「きゃっ……」
こけた。
俺を下敷きにするようにこけた。そんな風に倒れた場合、上の人を支えようとする。だがいかんせん、手の位置が悪かった。
耳まで赤くなる凛。リンゴのように赤くという表現がよくわかる。
悪かったな、凛。ちっちゃくても結構ある方だったんだな、形が分かるぐらいには。
「~~~~~~~~~~~~っ!!」
そして部室に綺麗な音が響く。
これぞ青春。
ありがとう。やわらかかったです。
ばちこーん!
こんなイベントって実際にあるのだろうか。
誤解されないよう追記しておくと、ポエムをバカにしているわけではありません。
文学の1つとして否定もしてません。でもこの年頃の男は多分こうだろうと思ってます。