私は今、ホグワーツ特急のコンパートメントの一つを一人で占領した状態で、列車が発車するのを今か今かと楽しみに待っております。私にとっては初めての、お城の外の世界に触れられているので、とっても心がウキウキしているのです。
ある一点を除いては…
それは、列車の窓から見える笑顔で笑っていたり、子供に出発前の別れや注意をしている親、という暖かい家族の姿です。
あのような家族を壊し、引き裂いていたという御父様や御母様の娘がこのような事を思ってはいけないのでしょうが、あのような家族の姿はとても羨ましいです。
はぁ…
読書でもして気を紛らわしましょう…
ちなみに、この列車には、昨日ダンブルドア先生からフィアが許可を貰っていたそうなので、直接姿くらましをして乗りました。私としては、初めてのお城の外を満喫してみたかったのですが、長年の憧れでもあったホグワーツに入学する日に騒ぎを起こしたくありませんでしたし、フィアにも『ロンドンを歩いたりせずに、直接姿くらましをしてホグワーツ特急にお乗りになられてください』と何故かいつもとは違って強くお願いされたので、仕方なく姿くらましを使うことにしました。
それと、ドラコには私が入学出来るようになったことは伝えていませんから、ドラコはきっと私に会えば驚くでしょうね。ルシウス叔父様とナルシッサ叔母様にもホグワーツに着いたら、組分け結果と共にふくろう便を送ることと致しましょう。御二人とも喜んで頂けるでしょうか。クリスマスに会える時が楽しみですね。
さて、しばらく本でも読んで列車が動くのを楽しみに待ちましょう。
「…ちょっと!貴女私の話聞いてる?」
私が窓から外の気色を眺めていると、コンパートメントの入り口からちょっと気取ったような女の子の声がしました。私が振り向くと、栗色のふさふさした髪で、前歯がちょっと大きい女の子と、泣きべそをかいた丸顔の男の子が立っていました。女の子の方は、すでに真新しいホグワーツのローブに着替えているようです。
「ごめんなさい。外の景色を眺めるのに夢中で貴女達が入ってきたことに気付かなかったの。」
「そう… ならもう一度聞くわ。ヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの。」
その女の子の発した名前に私は心臓が、一瞬止まったかのような感覚に陥りました。
なぜなら、ネビルというのは私の御母様が、御父様が倒された後に捕らえ拷問にかけ廃人へと変えてしまい、御母様がアズカバンに投獄される事になった、闇払い夫妻の一人息子の名前だったはずだからです。
私が、女の子の隣にいた男の子に改めて視線を向けると、その男の子は私と目があった瞬間、いえ、恐らく私の厚ぼったいまぶたを見た時でしょう、一瞬だけでしたが目を見開きました。間違いなく、この男の子があの闇払い夫妻の息子でしょう。私の御母様譲りのまぶたにここまで動揺しているのですから。
「貴方がネビルでしょうか?」
「あぁ、うん… え~と、君の名前を聞いてもいいかな?」
「そうでしたね。自己紹介がまだでしたね。私の名前はサラ・ゴーントですよ。私の事はサラとでも呼んでください。貴方の事はネビルと呼んでも?」
「うん。ネビルって呼んでもらって構わないよ。」
私がそう答えると、ネビルは少し落ち着いたようでした。ネビルの前では絶対に私の御母様の話はしない方が良いでしょう。もし騒ぎになれば、両親が悲劇の闇払い夫妻であるネビルに対し、魔法界史上最凶の両親を持つ私には元死喰い人以外は世間をはじめ、先生でさえも絶対に味方などしてくれないでしょうから。ここはネビルを助けておいて、ネビルの警戒心を少しでも解いておくことがベストな選択肢でしょう。
「ネビル、貴方のヒキガエルの名前は何と言いますか?」
「トレバーって言うんだ。僕から逃げてばかりなんだ。」
「分かりました。では、少し待っててくださいね。」
ネビルに伝えると、私はポケットから御父様が私が産まれた時に作ってくださったという、私が今までずっと愛用している杖を取り出して、無言で『呼び寄せ呪文』を唱えました。
私が杖を振るうと栗色の髪の女の子が、私に再び話しかけてきました。
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもら…」
ですが、女の子が言葉を言い切る前にネビルのトレバーは、私の手元に引き寄せられてきました。
「ネビル。はい、どうぞ。この子がトレバーでしょうか?」
「うん!ありがとう!」
ネビルは大喜びで私からトレバーを引き取って、自分のコンパートメントに戻っていきました。女の子の方はなぜか、私の前に座りましたが…
「貴女、今さっき何をしたの!?」
「何って『呼び寄せ呪文』ですが?どうかしましたか?」
「私、そんな呪文なんて知らないわよ!」
『呼び寄せ呪文』を知らないなんて、まさか『マグル生まれ』の子供でしょうか?ルシウス叔父様が以前『マグル生まれ』は排除すべきだと言っていましたが… ルシウス叔父様は、彼らの事を『穢れた血』とも呼んでいましたね。
ちなみに、ルシウス叔父様は私の御父様が為さっていた、魔法族の浄化という名のマグルいじめやマグル殺しを、私か、もしくは御父様を倒した赤ん坊“ハリー・ポッター”を担ぎ出して、御父様がお倒れになったときに散り散りになった死喰い人を再結集させて、再開しようと考えているようです。
「『呼び寄せ呪文』って、けっこう有名で使い勝手の良い呪文なんですけど、本当に知らないのですか?」
「知らないわよ。私の家族には誰も魔法族はいないの。だから、手紙をもらったときはうれしかったし、驚いたわ。 教科書はもちろん暗記してきたのだけれど、それだけじゃ足りなかったようね…」
女の子は、そういうと少し落ち込んだような雰囲気を醸し出し始めた。
やっぱり、この子は『マグル生まれ』のようですね。でも、この子には少し親近感が湧きますわね。私も、ホグワーツに行けると知ったときは、とてもうれしかったですし、驚きましたから。これから私は7年間、ダンブルドアの牙城とも言えるホグワーツに通うわけですから、私がホグワーツで快適に過ごせるためにもこの子と仲良くしておくのは得策かも知れませんね。どんな手段をつかってでも目的は達成しなければなりませんからね。
まぁ、もし、万が一御父様が復活なされたり、御母様がアズカバンから脱獄したときには、この子の事で問い詰められるかもしれませんが、そこは、勇気をもって説得してみましょう。
「あの… 顔を上げてください。貴女のお名前はなんというのでしょうか?」
「ハーマイオニーよ」
「ハーマイオニー。もし、良ければ私が色々と教えて差し上げましょうか?」
ハーマイオニーは、私の言葉に少し迷ったように固まってしまいました。
そして……
「けっこうよ。私は今まで一人でやって来たの。私が嬉しかったとき、怒ったとき、いつも不思議なことが起きたわ。魔法が発現したの。そのせいで、私の周りからは友達がいなくなっていったの。だから、これからも私は一人で頑張っていくわ!」
ハーマイオニーは私にそう言うと、大きな音を立ててコンパートメントの扉を開けて、荒々しく出ていきました。
まさかの、拒絶されてしまいましたね…
誰かに拒絶されるなんて、私の人生において初めての経験です。
それにしても、ハーマイオニーは私とはまったく違っているようで、どこか似ているところがあるようですね。
私は、御父様が『闇の帝王』として多くの死喰い人を従えていましたから、その死喰い人の中の一人でもあった、ルシウス叔父様やルナシッサ叔母様、そして幼馴染みである息子のドラコも、私がどんなにお願いしても私と対等には話してはくれませんでした。
ハーマイオニーもまた、今まで孤独に耐えてきたのでしょう。何も知らないマグルの中で、突然魔法が発現したら恐れられたりするのも当然の事かもしれませんね。
私が時計を見てみると、いつの間にか、ホグワーツ特急が出発してからかなりの時間が経過したようです。そろそろ着替えた方が良いでしょう。私は、列車が出発してからはずっと外の景色を眺めていました。外の世界が見れるというのも、昨日までなら考えられないことでしたから、人の声が聞こえないほどにまで、ずっと熱中してたのでしょう。
よく考えれば、さっきのハーマイオニとネビルの登場に気付かなかったことは良くなかったですね。相手が闇払いなら間違いなく殺されるか、良くて杖を取り上げられてこの場で捕まっていたでしょうね。これからは常に周りの事に気を配っておきましょう。
さて、そろそろ御父様を倒した赤ん坊であり、ルシウス叔父様が私と同じく死喰い人の再結集の時の旗頭にしようと考えているらっしゃる、“ハリー・ポッター”にでも会いにいってみましょうか。何かしら特別な力を持っているかもしれませんし、彼にはとても興味があります。
ハリー・ポッターがいる、というコンパートメントは直ぐに見つかりました。なぜなら、列車中で彼のことが話題に上がっていたからです。私はそのコンパートメントに向かってみました。
そこでは……
「もう一ぺんいってみろ」
「へぇ、僕たちとやるつもりかい?」
「いますぐ出ていかないならね」
「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう?僕たち、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはまだあるようだし」
赤毛で鼻にそばかすがついている背の高い男の子と、クラッブとゴイルをボディーガードの様に従えたドラコと、くしゃくしゃの黒髪で目が明るい緑色で壊れた眼鏡をかけた小柄な男の子が喧嘩をしていました。
赤毛の子は、特徴からしてウィーズリー家の子供でしょうか。とすると、あの小柄な男の子の方が“ハリー・ポッター”なのでしょうか?
彼からは特別な力などは全くといっていいほど感じませんが…
喧嘩の方は大方ドラコの方から何か仕掛けたのでしょう。それにしても、ドラコがあそこまで強く出ているのを私は初めてみました。やはり、私が御父様の娘だからと、ルシウス叔父様に何か言われていたのでしょうか。私の前では、あんな傲慢な発言はしていなかったと思うのですが。
私としては、“ハリー・ポッター”と出来れば近付いてから、彼の秘密について知っておきたいのです。なので、ここはドラコを宥めてあの二人からの好感度を上げておきましょう。ついでに、彼の眼鏡も直しておきましょう。
「ドラコ、クラッブ、それにゴイル。3人とも喧嘩をするのは、やめてください。そこは彼らのコンパートメントなのでしょう?他人のものをとってはいけませんよ。3人ともこれ以上やるようなら、ご両親に報告しますよ。」
私が声をかけると、喧嘩をしていた男子5人組が一斉に私の方を振り向きました。
ドラコは、私がこの列車にいることに驚いたのか、口をポカンと開けて、固まってしまいました。
クラッブとゴイルの二人は、双子なのですか?とつっこみたくなるほどまでに、二人揃ってノロノロと私にお辞儀をしてきました。
ウィーズリーの子供の方は、彼らの反応が意外だったのか目を丸くして私とドラコ達を交互に見ていました。
そして、私の目当てのハリー・ポッターはというと…
私をじっと見つめていました。
「あの、どうしましたか?」
私が彼の方を向いてそう聞くと、彼は私と目があってしばらくしてから、突然慌てたように
「あぁ、 うん、なんでもないよ!」
と顔を真っ赤にして私から顔をそらして、くしゃくしゃの髪を押さえ付け、壊れた眼鏡を隠しながら答えてくれました。隣のウィーズリーの髪より、顔が赤くなっているみたいです。もしかしたら、彼に私が御父様の娘だとバレたのでは?とも思いましたが、そうではなかったようです。なぜ、眼鏡を隠したりするのかは謎ですが。
彼に見つめられた時には、心臓がドキリとしましたが、バレたわけではなかったのですね。さて、眼鏡を直して差し上げましょうか。
「貴方がハリー・ポッターですか?私は、サラ・ゴーントと言います。サラとでも呼んでくださいね。」
「え!? あぁ、うん。僕がハリー・ポッターだよ。じゃあ、君のことはこれからサラって呼ぶね!その代わり、僕のことはハリーって呼んでくれないかな?」
「分かりました。これから、貴方のことはハリーと呼ばせていただきますね。早速ですが、ハリー、さっき壊れた眼鏡をかけていませんでしたか?」
「そんな物、かけてなかったよ」
ハリーはまったく落ち着きがないようです。それに、彼は眼鏡を隠そうとしていますが、私には彼の後ろにある右手に、握られたままの壊れた眼鏡が見えているのですが…
はぁ…
「ハリー、窓の外にドラゴンが飛んでいますよ。」
「え!ドラゴン!?どこにいるの?」
彼は私の言葉に反応して、すぐに窓の外に目を向けました。こんな簡単な嘘に引っ掛かるなんてハリーって面白いですね。私はハリーが窓の外に目を向けたときに、私の方を向いた右手にある、壊れた眼鏡を取り上げて、さっと直してあげました。
「ハリー、ドラゴンなんて飛んでるわけないじゃないですか。右手を見てください。」
「そうだよね。あれ?眼鏡が直ってる?どうしたの?」
ハリーは眼鏡をかけ直して、私に質問してきました。
「魔法ですよ」
「うわぁ。サラが直してくれたの?すごいね!」
「ありがとうございます、ハリー」
ハリーは目をキラキラさせながら、私を褒めてくれました。ちょっと嬉しかったりしたのは私だけの秘密です。
そのあと、私はなぜか不機嫌さが増しているドラコに連れられて、コンパートメントを私が乗っていたコンパートメントに移動して、ホグワーツ特急が止まるまで昨日からの出来事を説明したり、彼らに注意してほしいことを伝えました。
それにしても謎です。
何故あんな大して特別な力を持っていなさそうな男の子に御父様は負けたのでしょうか。
それに、彼に見つめられてからしばらくたったのにも関わらず、何故未だに私の心はざわついているのでしょうか。
このような感覚は始めてです。
何なのでしょうか、この気持ちの名前は……
実は……
サラの組分けどうするのか未だに決めれてません。
それによってストーリーが大きく変わってしまう、一番大きな分岐点なので…
ストーリーを作っていく上で、グリフィンドール、スリザリンの2寮はそれぞれメリットとデメリットがありますから。
もしかしたら、さいころころころになるのかな?