今私は他の一年生たちと共に、大広間の前の扉の前で組分けの儀式を待っています。組分けの儀式の方法を知らない子達は、どうやって組分けされるのかを議論しています。
コンパートメントでハリーの隣にいたウィーズリー家の子供は、お兄さんに明らかなウソを吹き込まれているようで、トロールと戦わされるんじゃないかと青ざめています。そんな、組分けあるわけないじゃないですか… あれば面白そうですけど。
ハーマイオニーはというと、今までに覚えてきた呪文についての知識などを早口に呟いていました。マグル生まれにもかかわらず、あそこまでの知識をすでに持っているとは、余程入学が決まってから勉強してきたのでしょう。
ハリーはというと、列車を降りてからここに来るまでには、よく彼からの視線を感じましたが、今はいろんな人の言葉に混乱しているようでした。
ちなみに、私の周りはというと、隣にドラコがいて、クラッブとゴイルは私の護衛のように後ろに控えています。私的には、そのようなことをしてもらわなくても構わないのですが、ルシウス叔父様曰く、元死喰い人達にとっては私は最優先の保護対象ということらしく、その子供達にもしっかりと教育を施しているようです。私は彼らの期待に、いつかは、御父様の娘として応えなければならないのでしょうか…
確かに既に『死の呪い』『磔の呪文』『服従の呪文』の『許されざる呪文』と呼ばれる3つの呪文に関しては、ルシウス叔父様の手ほどきもあり、連射が出来るまでには使いこなせるようにはなっているのですが…
「サ、サラ?ど、どうしま… どうしたんだい?」
「ドラコ、もう少し何とかならないのですか?」
私が一人で思い悩んでいると、ドラコが声をかけてくれました。
ドラコがこんな話し方になっている原因は…
~コンパートメントにて~
「ドラコ、クラッブ、ゴイル。これからホグワーツに行くに当たりお願いがあります。」
「なんでしょうか?姫様」
「ええ、その話し方の事です。私に対する敬語を止めてください。」
これは、私のホグワーツ生活を快適にし、私の身の安全を確保するためには必要な事なのです。私の出生の秘密を知っているのは、元死喰い人とその家族、そして、ダンブルドア校長だけです。元死喰い人の子供のスリザリン生、特にドラコのような親の地位も高いような子が、私に対して敬語などを使っていれば、勘の良い人なら私の容姿なども含めれば、私の親が誰であるのか気づいてしまう可能性があるからです。
「姫様。その事については前にも話したと思いますが…」
ドラコは直ぐに私の言葉を理解したのか慌てて拒否しようとしてきました。クラッブとゴイルは私の言葉の意味を理解できたのかは分かりませんが、頷いてくれました。
ルシウス叔父様曰く、私に敬語を使う理由は、敬語を使わずに話しているのを私の御父様に知られたら、たとえルシウス叔父様であっても御父様に殺されかねないという事情があるらしいのですか…
ドラコの反応が健全な反応だと本当は私も思っています…
「ドラコ。では、お願いをやめましょう。」
「そうして頂けると本当に助かります。姫様」
ドラコは安堵したように息を吐きましたが、私はこの事については譲る気はないですよ?
「ドラコ。お願いではなく、ホグワーツで私に敬語を使わないように過ごすことは、私がドラコに下す最初の命令とします。」
私がそう言うと、ドラコはこの世の終わりが訪れたかのような顔になりました。
私も本当は幼馴染みであるドラコには、命令など与えたくなかったのですが、これだけは私の命にも関わってくるので仕方ありません。
「姫様、どうかそれだけは…」
ドラコは、ルシウス叔父様に私の御父様の私への溺愛ぶりを徹底的に刷り込まれているらしく、恐怖に怯えているようでした。
「ドラコ。大丈夫ですよ、安心してください。たとえ、ホグワーツで私に敬語を使っていなかったことが、私の御父様に知られてしまったとしても私の命令があったと伝えてくれて構いませんから。私もドラコを始め、スリザリン生達を御父様からかばってみせますから。ですから、私に敬語を使うことは、せめて、ホグワーツにいる間だけでもやめてくれませんか?」
私に対して敬語を使わずに話してもらいたいというのは、御父様の娘ということを隠す事だけが理由じゃないのです。
せめて、幼馴染みのドラコだけにでも、私の事をサラと名前で呼んでほしいという、私の物心ついた時からの長年の想いがあるのです。
ドラコは私の目をしばらく見つめてから
「わかりま… わかった。ひめ… サ、サラ。」
と、答えてくれました。
という出来事がホグワーツ特急に乗っているときに起こっていたのです。それ以来、ドラコや、クラッブ、ゴイルは私に対して出来るだけ普段の口調で話すように頑張ってくれています。
まだ、ぎこちないですがね…
これはこれで面白いですけれどね。
できればホグワーツにいる間に、私に対して敬語を使わないことに慣れていってもらいたいです。
ルシウス叔父様から聞いていた、ホグワーツ名物のゴースト達が通り過ぎたとき、厳しい声がしました。
「組分けの儀式がまもなく始まります。さぁ、一列になって。ついてきてください。」
大広間の中はとても美しい光景が広がっていた。魔法のかかった天気が変わる天井に、何千という数の空中に浮いたろうそく、そして、寮ごとの4つのテーブル。金色の皿やゴブレットがキラキラと輝いていた。
教職員テーブルを見ると、魔法薬を教えているというセブルスを始め、多くの先生方が並んで座っていました。私が、先生方を見渡していると、頭に紫のターバンを着けた先生が私の見間違いなのか、軽くお辞儀をしてくれました。あの人は、今まで私に挨拶にきた元死喰い人のメンバーや家族の中にはいなかったはずなのですが。
そして、真ん中にはダンブルドア先生が座っていて、ダンブルドア先生のキラキラした目と私の目があいました。
~前日~
私は、ホグワーツ特急の切符をもらった後に、どうしても聞きたかったことの内の1つをダンブルドア先生に質問しました。
「ダンブルドア先生、貴方はなぜ私を入学させるのですか?私は、闇の帝王とその最強の副官の娘ですよ?今年は、私の御父様の仇ともいえる“ハリー・ポッター”が入学してくるのではないのですか?私が御父様の仇を取ろうとするとは考えてはいないのですか?それに、御母様がアズカバンに投獄される原因となった、あの闇払い夫婦の一人息子も入学するのではないのですか?何が目的なのですか?」
私とダンブルドア先生は互いに開心術と閉心術をかけあいましたが、互いに成果はなかったようです。
「ほう。もうその年でわしの開心術を防いだ上に、反撃までしてくるとは大したものじゃ。」
ダンブルドア先生は笑ってそう言いました。
この人の守護霊はタヌキではないのでしょうか?
「取引ですか?」
「うむ。なかなか賢いのう。まったくもってその通りじゃ。ところで、組分けの儀式については知っておるかの?組分け帽子という、おんぼろ帽子を被れば良いのじゃよ。」
前世はタヌキだったのではないのでしょうか?
「貴方が私に望むことはなんですか?」
「そうじゃの。サラ、君にはグリフィンドールに入ってもらいたいのじゃ。」
はい……?
今、私の目の前にいるこのタヌキさんはなんといったのでしょうか?
御父様はまだなんとかなるかもしれませんが、御母様はそうはいかないでしょう。
私がグリフィンドールなどに入れば、御母様から『血を裏切る者』として『磔の呪文』を私の気が狂ってしまうまで掛け続けられてしまうでしょう。
私の名前の由来である、高貴なるご先祖様、ホグワーツ創設者の一人であらせられる、サラザール・スリザリン様の末裔がグリフィンドールに入るなどありえないことです。
それに、今まで私に期待してくださっていた、ルシウス叔父様を始めとした、元死喰い人達やその家族になんと言えばいいのでしょうか。
「サラ。もちろん、君の立場もよく理解しておる。君は今まで、『闇の帝王の一人娘』、『サラザール・スリザリンの末裔』として育ててこられたのじゃ。君にとってはグリフィンドールに入ることは、そう簡単に出来ることではないことも分かっておる。じゃから、もし、君がグリフィンドールに入る決断をしてくれるのであれば、わしは君の願いを三つほど聞いてあげよう。そうすれば、君の父親や母親、それに死喰い人達には、『グリフィンドールに入ることでホグワーツに入学ができ、ダンブルドアに願いを三つも聞き入れさせることができた。』と言えるであろう。どうかね?」
確かに、ダンブルドア先生の提案は悪くはないでしょう。グリフィンドールに入ることによって、ダンブルドア先生に私の願いを三つも聞き入れさせることができるのであれば。
でも…
「ダンブルドア先生、それは今すぐに決めなければならないのでしょうか?」
「いやいや。明日の組分けの儀式までに、決めてもらえれば構わぬぞ。」
「そうですか。ちなみに、その願いを聞き入れるというのはどの程度の事までですか?」
「そうじゃの。他の誰にも危害を与えず、わしにできる範囲の事ならば何でもよかろう。もし、君がわしを信用ならんと思うのであれば『破れぬ誓い』も結ぼう。」
「分かりました。では、明日」
「うむ。では、サラ。また明日じゃ。君がグリフィンドールに来てくれるのを、わしは待っておるぞ。校長室への案内はセブルスに頼むとよい。」
「考えておきます。」
はぁ…
私は、どうするべきなんでしょうか…
それにしても、あのダンブルドア先生があそこまでして、私をグリフィンドールに勧誘する理由はなんでしょうか?
はい!組分けは次回に持ち越しです!(持ち越すな!)
このまま書いていったら七千字オーバーになりそうだったので、分けることにしました。
サラの寮もこれからの流れもだいたい固まってきました。
それでは次回!