今回はちょっと重いお話。相変わらず、戦闘は無いよ!!
【お知らせ】
・次話につなげるため、書き直しました!だいぶ読みやすくなったはずです!
・評価ありがとうございます!やる気アップupです!
数日が過ぎた。エンガはだいぶ仕事に慣れたようで、最近は楽しそうに仕事をやっている。
フロントで、書類の整理をしていると、電話が鳴った。
「お電話ありがとうございます。旅館仁羽屋です。ご予約ですか、それとも――」
『あ、朎さんですよねっ!? よかった、繋がった!』
どうやら、声の持ち主は相当急いでいるようだった。
「イツキくん? 旅館に電話してくるって珍しいね。どうしたの? そういえば、そろそろ合宿の時期だね」
ここに電話をしてくるということは合宿の手続きだろう。そういえば、私はよく生徒会室に出入りしてたくせに、新しい生徒会役員を見ていないことを思い出す。
『はい、今年もよろしくお願いします。って、そうじゃないんですよっ! 朎さんの携帯に繋がらなかったから旅館に電話したんです』
そういえば、携帯は自室に置いているから基本的に休み時間くらいにしか見ないんだった。メールか何かを入れてくれれば返すのに、よっぽと急いでいるようだ。
「ごめんごめん。それで?」
『とにかく大変なんですよ! テレビを付けください!!』
「テレビ……?」
私はカウンター越しから見えるテレビをのぞき込む。
「なに……これ……」
画面の中では臨時ニュースをやっていた。
東京で爆発テロ。
それが、ニュースの見出しだった。ニュースキャスターが現場で生中継をやっている。
街中の至る所が爆破され、ビルはぼろぼろに崩れている。無骨な鉄骨は至る所から飛び出している。地面を映さないのは、死体を映さないためだろう。
呼吸と鼓動が早くなっているのがわかる。次第に呼吸が荒くなっていく。
――――思い出すな――――
思い出したくない記憶が脳裏に蘇る。
あの日、ヒトがヒトでなくなる瞬間を初めて見た。
あの日、私の目の前で両親が殺された。
そして、あの日……幼い私は死んだ……
『……朎さん? 大丈夫ですか?』
「うん、大丈夫……」
嘘をついた。震えが止まらない。今にも倒れてしまいそう。克服できたと思っていたのだけれど、簡単にないかないらしい。
『これ、人の仕業じゃないですよね……?』
「うん。この前、アークスフェスでいたアレの仲間だよ」
『そう、ですか』
イツキくんはあの時、あれと戦っている。それならば任せることは出来る、とは思うけれど……
「イツキくん。変なことは考えないこと」
こんな状態じゃ、私は出撃できない。ここは、アースガイドに任せるのがいいだろう。おそらく、アッシュやヒツギちゃんも対処に向かっているはずだ。
『そりゃ考えますよ。東京はオレたちの街なんですから』
イツキくんの返事は案の定だった。私だって自分の街が破壊されていたら誰になんて言われようが出撃するだろう。
「……分かった。アイカもいるんでしょ? 学校に応援を寄越すから、それまで動かないこと。これはお願いじゃなくて、命令。アイカにも言っておいてね」
イツキくんの返事を待たずに電話を切った。
鮮明に覚えている。私にダガーを振るったヤツの顔を……
そして、その表情を……
ヤツは笑っていた……
体は酸素を欲するが、うまく呼吸ができない。
電話代に手を置き支えるが、段々と体が下がっていく。
「おい、レイ! お前大丈夫かよ?」
エンガが私に気づいて近付いてくる。
「ごめん、エンガ……清雅に……」
私は気を失った。
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私が目を覚ました時には、事件は解決していた。
アッシュから送られてきた情報によると、べトールは死んだ。マザークラスタの仲間から殺されたのだという。暴れていたという、電車型の怪物はアッシュの手により葬り去られたらしい。
現在私はというと、自室のベッドで横になっている。だいぶ回復はしたけど、あまり大丈夫だとはいえないだろう。
「ったく、急に気を失うから驚いたぜ」
部屋にエンガが入ってくる。手にはお盆。その上にお粥が乗せられている。私はそれを受け取る。
「あはは……最近の無理が祟ったかなぁ」
笑って誤魔化す。無理してたのは確かだし。
「それ、嘘だろ。いくらお前が向こうに帰って無茶な仕事してもああはならない。それくらいは俺にもわかる。何があったかは聞かねーけど、あんまり心配させんな」
「うん……ありがと……」
こんな優しい言葉をかけてくるなんて意外だった。割と対応に困ってしまう。
ツンデレってやつかな?
「そういえば、イツキくんたちはどうなったの?」
清雅とだけ言い残して気絶したから、イツキくんたちのことが気がかりだった。
「お前が清雅とかいうからとりあえず行ってみた。そしたら、お前が応援を寄越すって言ってたらしいから指示は出しといた。まあ、そのお陰でバレたんだがな……」
今回の出撃でエンガは早々に表舞台に立ってしまった。今回ばかりは私が悪いから何も言えない。
「ごめん……それで、エンガはこれからどうするの?」
「素直に謝れると調子狂うな。どうせ俺が生きてるってバレたしな。アークスの世話になろうと思う。あっちに入れば愚妹の行動を監視できる」
「結局ヒツギちゃんなんじゃない。今回もヒツギちゃんたちが危なかったから突撃したってアッシュから聞いてるよ。このシスコン」
私はため息をつく。エンガに頼ってしまったのは私の責任だけれど、表に出たのは結局エンガの判断だ。考えてみたら私悪くなくない……?
「うっせーよ。そんじゃ、俺は行く。迎えをまたせてるからな」
そう言って、エンガは部屋を出ていった。
お粥を食べ終わった頃、次の訪問者が私の部屋の扉をノックした。
「イツキくん、アイカ、いらっしゃい」
「朎さん、大丈夫なんですか?」
部屋に入ってきたイツキくんは私を心配そうに見る。
「うん。二人は大丈夫だった?」
「もちろんです。あんなモンスターに引けをとる私ではありません」
アイカはいつも通りのようだった。
「そう、ならよかった」
「副代表、聞きたいことがあります」
あとは、世間話をして、二人と別れられたらどれだけ良かったことか……
アイカは腑に落ちない、とでも言わんばかりの顔をしている。
「副代表は倒れたと聞きました。なぜ倒れたのですか? 副代表のことです、碌でもない任務に就いていたのは察しがつきますが、倒れる、というのは納得できません。理由を説明していただきたい」
「お、おいアイカ……」
イツキくんはアイカを止めようとする。アイカは最近人間味を帯びてきたと思っていたのだけれど、こういう所は全く変わっていない。嬉しいような、悲しいようなである。
「……いいよ。その代わり他言無用でね」
私の返事に、二人は一瞬唖然とした。黙秘を続けると思っていたのだろう。どうせ、調べればわかることだ、話しても何ら問題は無い。
「私が倒れたのは私にトラウマがあるから、かな」
「トラウマ、ですか?」
トラウマ、それは大きな精神的ショックや恐怖が原因で起きる心の傷のこと。
「アイカは覚えてる? 13年前の出来事」
「それはもしや……」
アイカは分かったらしいが、イツキくんは首を傾げる。向こうの世界の歴史を勉強していない限りは、こちらの世界にとっては無縁なこと。
「ダークファルス【若人】がオラクルを襲撃した年。テレビの光景はあれに似ていたから……」
「【若人】って、確かこの前リナ先輩をさらった?」
こちらの世界で起きた事件は【若人】が関わっていた。リナが危険にさらされ、アイカもダークファルスの因子に侵された事件だ。アークス側への情報提供は情報部が止めているため、私たちしか知らない出来事。
「そう、それが私たちの船を襲った。その時、私はまだ戦いを知らなかった。だけど、アイツはオラクルで破壊の限りを尽くした……目の前で両親が死んだ。そして、私も……」
アイカはまだ腑に落ちない顔をしていた。
「それはおかしい。副代表はこうして生きているではないですか」
イツキくんは何も言わなかった。多分わかったのだ。私が、元はヒトであったということが。
「私がキャストなのはね、死損なったから。通りかかった人に応急処置をしてもらったんだけど、あらゆる臓器はボロボロ。回復は無理だって診断だった。メディカルセンターでこのまま死ぬんだろうなって思ってたんだけど、たまたまそこに博士っぽい人が来てね、それでこの体になったというわけ」
沈黙が訪れる。少し空気が重い。
「今は第二の人生ってやつかな。きちんと謳歌してるよ。まあ、トラウマっていうのはそういう事だよ」
私は笑った。
それは、精一杯の嘘だった。誰にでもない、自分についた嘘。
第二の人生? 笑わせるな。
私にそんなことは許されない。私に許されているのは、空白の時間を埋めることだけだ。
「そうでしたか……ところで、副代表はこれからも地球に?」
「ううん。エンガも向こうに行くらしいからね。それに、何かと向こうのが便利だから戻ることにするよ」
改めてこっちに来てわかったけれど、単独での情報収集は無理がある。それなら、情報が集まるオラクルに戻った方が早い。
「そうですか。こちらは任せてください」
それから少し世間話をして、二人は部屋を出て行った。
数日後、おじさんとおばさんには清雅学園から泊まり込みの仕事を依頼されたと説明して、仁羽屋を後にした。
もちろん、イツキくんに頼んだ嘘であった。
いかがでしたか?
伏線撒きまくって回収できないなんてことはないように気をつけます……
レイさんの過去編はオリジナルストーリーでお送りいたします! 次回からですね!
しかし、戦闘も苦手だけど、こういう描写も苦手だぁ……
感想・指摘などはいつでも受け付けております!