今回は完璧にオリジナルの過去編です。やりたいことやってます(笑)
【お知らせ】
・前話ですが、書き換えました。書き換えたあとを読んでない方はそちらをお願いします。
それでは、どうぞ!
マイルームを出た。今日は知り合いに会うということもなく、知らない人とすれ違うばかり。その方が丁度いい。
「ふう……」
深呼吸をする。久しぶりにある所を訪れるため、気合を入れる。
病室のドアを開ける。中には、7歳のままの少女が機械の中で眠っている。少女は機械の中で治療を受けている。いつ完治するのかは分からない。ただ、感知するまでは目を覚まさないらしい。
「こんにちは。私……」
そっと、彼女に呼びかける。返事は帰ってこない。
「久しぶりだね。【若人】を倒した時の報告以来かな。少し、弱音を吐きに来たよ……」
静かな病室。高性能なメディカルマシーンからは音も聞こえない。まさに、無音だった。
「私さ、昔のことを克服したつもりだった。だけど、やっぱり無理なのかな……? 【若人】は倒した。敵は討った。はずなのに……私はあなたじゃない。そう思ってはいるけど、実感しちゃうんだ……私は貴方なんだって……」
強くなった気でいた。乗り越えたつもりでいた。だけど、私というものの上には必ず、この子がいる。
乗り越えることなんてできない……
そう、実感してしまう。
「結局、私の役目はあなたの時間を生きるだけなんだね……」
目覚めぬ少女。目覚めるまでの空白の時間を私は生きる。
ただの代替品に過ぎない……
どれだけ否定しても、これだけは事実。この記憶を受け取った時、少女は何を思うのか……
それは、この娘に託そう。私が考えることではない。
それまでは、私がレイだ。他でもない、私が……
「おーおー、滅入ってるようだな。レイちゃん」
ふと、聞き慣れた声が部屋に響いた。この声の持ち主は苦手だ。
「ショウヤ先輩……ここは誰にも教えていないはずですけど」
ここは、私とメディカルセンターの関係者、それと博士しか知らないはずだ。私は咄嗟に構える。
「わりぃな、随分と昔に調べさせてもらった。安心しろ、敵対するつもりはねぇよ」
「そう、ですか。それで、私になんの用なんですか?」
私はオルトロスを下げる。今日のショウヤ先輩からはおちゃらけた雰囲気は感じなかった。
「お前をその姿にした博士はどこにいる?」
「どういうことですか……?」
私のことを調べたのなら、博士のことは自然にあがってくるだろう。だけど、博士を探す必要性がわからない。ショウヤ先輩とは全く接点がないはずだ。
「コーエン博士に拘束及び逮捕命令が出ている。何でも、原生生物を改造し強化機甲種やタイプCエネミーを生み出し続けているらしい」
「タイプC……? その事についてはわかりませんけど、ここ数年は姿を見てないですよ」
ある時期を境に博士の姿は見ていない。なんでも、ダーカーを消滅させるための研究をすると言っていたけれど……
「それならいい……だが、お前のメンテナンスはどうしてる? お前は特殊だ。成長するキャストなんてお前くらいだ。博士がいない限り、整備は無理なはずだ」
私は特殊。そういわれると、胸がズキリとする。
「整備はほとんど必要ありません。私はほとんど人間ですから」
私はキャストだけれど、身体自体は殆どが人間だ。臓器もあるし、栄養の摂取だってできる。
ただ、違うのはこの体はレイという人間を模造され、記憶を転写したモノだということだ。人と同じ生活はできるけれど、いろんな部分が人とは違う。例えば、私に頭に脳みそはない。あるのはコンピューターだけ。そこで情報を処理して、これまでの経験を通して、物事を考えることが出来る。
いわば、人工知能だ。
「そうか……悪かった。俺はこれでお暇する」
そういうと、ショウヤ先輩は部屋から出て行った。
私が博士とあったのはあの事件の時だ。私は初めて博士とあった時のことを覚えていない。それは死にかけだったから仕方が無いだろう。
私がこんな体になった事件。レイという人間がふたりになった事件。
嫌な思い出だ……
鮮明に記憶に残っている。感情まで鮮明に……
あの時、2人と出会っていた。あの時、私は恐怖し、恨み、後悔し、絶望した。
人は記憶を失うことで、自分というものを保つ。だけれど、私にはそれが出来ない。データとして残ったモノは呪いのように永遠と私を蝕む。
「私のせいで、みんな死んだ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――13年前――
私は7歳の女の子だった。種族はヒューマン。キャストとは縁も程遠かった。
私は一人で遊ぶ子だった。私の周りに同い年の子がいなかったというのが一番の理由である。
「おかあさん! みてみてー!」
私は花で作ったサークレットを家にいる母親に見せに行った。
「あらあら、可愛いわね。さすが、私の娘だわ」
母親の笑顔はまるで向日葵のように暖かかった。
「おとーさんは?」
「そろそろ帰ってくるんじゃないかしら?」
お父さんはアークスだった。ダーカーと戦って、市民を守るのが仕事だと言っていた。戦っているお父さんを想像するだけでもかっこよかった。
お母さんは元アークスで今は専業主婦。お父さんとは仕事場で会ったと聞いている。
「お父さんが帰ってくる前にお夕飯の支度をしちゃいましょ。レイ、手伝ってくれる?」
「うん!」
お父さんが帰ってきて、私達はテーブルを囲み、夕飯を食べる。こんな平凡な日々がこれからも続いていくのだと、私は思っていた。
「うぅん……トイレ……」
トイレに行こうと、部屋を経つと、リビングから両親の声が聞こえてきた。
『最近、ダーカーの勢いが強くなってきている。上はダークファルスの封印も考えているらしいが、ここも危険だろう……』
お父さんの声。
『でも、オラクル内だったら同じでしょ……? いざとなれば私も出るわ』
お母さんの声。
アークスはダーカーと戦う仕事というのは知っているけど、ダークファルスというのは聞いたことがなかった。名前からして、ダーカーよりも危ないものということしか分からない。
『お前には戦わせないさ。任せろ。もし、この船に何かあればすぐに駆けつけるさ』
『ふふ、頼りにしてるわよ』
私は、二人のそんな会話を聞いて、部屋に戻った。
次の日も、私はお花畑でお花のサークレットを作っていた。お母さんとお父さんに褒められるのが嬉しかったから、夢中になっていた。
「花か……私もこういうところで遊んでみたかったな。普通の女の子みたいに……」
ふと声がした。その人は長い銀髪で、少し特殊な髪型をしていた。服装は、何というか、色々と際どい。
どこを見つめているかわからない、綺麗なお姉さんに私は見入っていた。
「ん? 貴女はこの辺りの子?」
お姉さんは私に気がついたようで、話しかけてくる。
「うん。お姉さんはここで何してるの?」
「何してるんだろうね。私にもわからないなぁ。普通の女の子ってどんなだろって思ったのかな」
私にはお姉さんの言っている意味がわからなかった。
「お姉さんはお花、好きなの?」
「好きでも嫌いでもないかな。私にとって不要なものだから」
お姉さんの表情はどこか寂しそうだ。
「それなら、これから好きになればいいよ」
「それもそだね。うん、それもいいかもしれない。でもそれも、もうちょっとお預けかな。平和になるまで……君、名前は?」
「レイ。お姉さんは?」
「私はクラリスクレイス。好きなように呼んで」
「クラリスクレイスお姉さん……は長いし……クラ姉」
「く、クラ姉っ!?」
クラ姉は素っ頓狂な声を上げた。
「ダメ……?」
「好きなようにしなさい……」
クラ姉は諦めたようにため息をついた。
「クラ姉ってアークスでしょ? 見たらわかるよ、戦う人の顔をしてる」
「へぇ、分かっちゃうんだ」
「うん。お父さんがアークスなの。お父さんと同じ顔をしてたから、そうかなって」
「へぇ、貴女のお父さんもアークスなのね」
「最近だーくふぁるすっていうのが、近くに来ているって言うのを聞いたの。ねえ、クラ姉……ここは大丈夫なのかな……?」
お父さんとお母さんはここも危ないって言っていた。私はそれが不安で仕方なかった。
「大丈夫、心配しないで。私が必ずみんなを守るから。レイちゃんは安心して遊んでて」
私は震えていた。そんな私をクラ姉はギュッ、と抱きしめてくれた。
「……ありがと、クラ姉」
「もう、こんな時に通信? ……分かった。その人に話を聞けばいいんだね。ごめん、レイちゃん。ちょっとお仕事が入ったから行ってくる。すぐに戻ってくるね」
「絶対?」
「絶対だよ。もうちょっとあなたとお話がしたいからね。それに、ここにあの人が来そうだから」
そう言って、クラ姉は街の方に走っていった。
「昔はこんな場所があったんだな……分かってる、マトイだけを危ない目に合わせるつもりは無い。ていうか、ここで合ってるんだよな?」
ちょうど、クラ姉と入れ替わりで、男の人が来た。アークスというのはすぐにわかった。その人はお父さんより若くて、ツンツン頭が特徴的だった。
通信をしているのか、1人で喋りながら、あたりを見渡している。
「っ……!? レイ……?」
そのお兄さんは私に気づいてそう呟いた。
「お兄さん誰……? なんで私の名前を知ってるの?」
「あー、えーと……たまたま似てる人を知っててね。まさか同じ名前だとは思わなかったよ」
「……不審者」
この人は危ない人だ。そう思った。
「違うからっ! なんでお前はいつもいつも……って、それは君に言っても仕方ないことだった……なんだこれ、やりにくすぎるぞ……」
一人でなにかブツブツ言っている。やっぱり不審者なのではないだろうか。
「お兄さん、怪しすぎるよ」
「別に怪しいものじゃない。アークスだ」
「それは見たらわかる。どうしてこんなところに来たの?」
アークスはこんなところに来る必要は無いだろう。休暇であっても、男の人がこんなところに来るなんて怪しすぎる。
「ただの散歩だよ。そうしたらたまたまここにたどり着いたってわけだ」
「アークスなのに暇なの?」
「いちいち棘があるな……人を探していたんだよ」
「おまわりさんに見つかる前に見つかるといいね」
なんだか、私はこの人をいじるのが面白くなっていた。
「だから俺は不審者じゃないってば。ああ、どうしたら分かってくれるんだ……」
「アッシュ……レイちゃんとは仲良しだったんだね」
お兄さんが頭を抱えているのを面白げに見ていると、後ろから声が聞こえた。
「おかえり、クラ姉」
「うん。ただいま」
「なんだ、反応があったのはさっきまでここにいたからか。ていうか、さっきまでのやり取りを見て仲良しだと思うんなら、お前の目は節穴だぞ」
「そう?」
ふふ、と笑うクラ姉。
「それにしても、レイちゃんの名前を知ってるなんて、本当にやましいことは無いの?」
「あるわけないだろ。たまたま知っていただけだ」
お兄さんはため息をつく。
「たまたま、ね。アッシュは何かと不思議だね」
「皮肉だろ。俺にも色々あるんだよ」
「そういうことにしておいてあげる」
二人はまるで恋人のようだった。
「クラ姉たち、付き合ってるの?」
思ったことが声に出ていた。
「「いや、ない」」
二人の声は綺麗に重なった。
結構お似合いだと思うんだけどな。
今回は地味にesの方も絡めてみました。
自分でも面倒なことしてると思ってます()
レイの過去編は次回までです。
アッシュとマトイとは過去にあってたんですねー(棒読み)
そして、次回は彼女と会う!?